到達目標
1.塑性加工とはどのような加工法か,また,日常の身近な生活品の中に塑性加工を利用した製品が数多くあることを認識し,これらの製品が塑性加工の中でもどのような加工法で作られているのかを理解し,説明できる.
2.塑性力学の基礎を学習し,塑性加工(変形)を施す際に必要な加工応力,加工荷重を適切に計算することができる.
3.実際の塑性加工の例として鍛造加工,引抜き加工,押出し加工に塑性力学を適用して,加工応力や加工荷重が計算できる.
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 塑性加工とはどのような加工法か,また,塑性加工を利用した製品がどのような加工法で作られているのかを理解し,正しい語句を使用して詳細に説明できる. | 塑性加工とはどのような加工法か,また,塑性加工を利用した製品がどのような加工法で作られているのかを理解し,説明できる. | 塑性加工とはどのような加工法か,また,塑性加工を利用した製品がどのような加工法で作られているのかを理解していない.あるいは説明できない. |
評価項目2 | 塑性力学の基礎を学習し,塑性加工(変形)を施す際に必要な加工応力,加工荷重を適切に計算することができ,応用問題まで正しく計算できる. | 塑性力学の基礎を学習し,塑性加工(変形)を施す際に必要な加工応力,加工荷重を適切に計算することができる. | 塑性力学の基礎を学習し,塑性加工(変形)を施す際に必要な加工応力,加工荷重を適切に計算することができない. |
評価項目3 | 実際の塑性加工例として,鍛造加工,引抜き加工,押出し加工を取り上げ,これらに塑性力学を適用して,加工応力や加工荷重に関して,あらゆる発展問題まで計算することができる. | 実際の塑性加工例として,鍛造加工,引抜き加工,押出し加工を取り上げ,これらに塑性力学を適用して,加工応力や加工荷重に関して,計算することができる. | 実際の塑性加工例として,鍛造加工,引抜き加工,押出し加工を取り上げ,これらに塑性力学を適用して,加工応力や加工荷重に関して,計算することができない. |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
自動車,航空機・ロケット,造船,鉄道車輌,重機械,電気・電子部品製造装置,家電機器,携帯電話,コピー機等のOA機器,パソコン機器等の様々な分野において,塑性加工による部品が随所に使用されている.塑性加工の主な種類だけでも圧延加工,鍛造,曲げ加工,せん断加工,引抜き加工,押出し加工,板成形加工(絞り加工,張出し加工,スピニング加工)等がある.
本教科の第1の目標は,塑性加工とはどのような加工法か,また,日常の身近な生活品の中に数多くある塑性加工製品がどのような加工法で作られているのかを理解することである.
第2の目標は塑性力学の基礎を学習し,塑性加工(変形)を施す際に必要な加工応力,加工荷重を適切に見積ることができることである.そのためには,弾性力学(本校のカリキュラムでは材料力学Ⅰ,Ⅱに相当)の知識は勿論のこと,塑性力学特有の体積一定条件,流動方程式(応力とひずみあるいは応力とひずみ速度の関係式),ミーゼスやトレスカの降伏条件式等を新たに学習し,フックの法則(弾性領域における応力とひずみの関係)とを照らし合わせながら理解できることである.
第3の目標は実際の塑性加工例として鍛造加工,引抜き加工,押出し加工にこれらの塑性力学を適用して,加工応力や加工荷重が計算できることである.
本科目はSDGsの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」に関する内容を学びます.
授業の進め方・方法:
この講義ではパワーポイント(以後,PPTと呼ぶ)を中心に用いて授業を進める.授業内容を学生用に編集したPPTを配付し,授業中に書き込むような形式にしている.ある程度学習内容が進展した段階で授業後半に課題プリントや演習問題を解き,提出させる.
注意点:
塑性力学を理解するためには材料の弾性領域を主に取り扱う材料力学Ⅰ,Ⅱにおける応力,ひずみあるいは応力とひずみの関係(フックの法則)等の知識が土台となる.また,塑性域でのミーゼスやトレスカの降伏条件式,偏差応力ーひずみ(ひずみ速度)関係を示すLevy-Misesの流動方程式等を理解する上で数学の基本的な微積分や対数指数の知識も必要である.
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
塑性加工の意義と種類(塑性加工とは,塑性加工事例) |
塑性加工とはどのようなものなのかを他の機械加工法(切削加工,鋳造+溶接=溶融加工)と対比しながら説明ができること.
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2週 |
塑性加工の意義と種類(塑性加工の特徴と分類) |
様々な塑性加工法の種類(鍛造,打ち抜き,曲げ,押出し,引き抜き,圧延,深絞り等)と特徴や用途が説明でき,分類もできること.
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3週 |
金属材料の塑性変形と降伏応力・変形抵抗(応力-ひずみ) |
弾性・塑性変形,弾性限度,比例限度,降伏点(上下降伏点),耐力等の基礎用語の意味が分かり,線図上で説明できる.また,公称応力,真応力,公称ひずみ,真ひずみの関係式が分かり,使い分けができること.
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4週 |
金属材料の塑性変形と降伏応力・変形抵抗(降伏応力,変形抵抗,偏差応力と静水圧応力) |
降伏応力と変形抵抗(流動応力),偏差応力と静水圧応力について理解し,説明することができること.
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5週 |
塑性力学の基礎理論(フックの法則とロイスの方程式,ミーゼスの降伏条件式:相当応力) |
弾性力学で使用するフックの法則を発展させたロイスの方程式およびミーゼスの降伏条件式を理解し,説明できること.
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6週 |
塑性力学の基礎理論(Levy-Misesの流動方程式)
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レビィ・ミーゼスの流動方程式の導き方を理解し,この式とミーゼスの降伏条件式が説明できること.
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7週 |
塑性力学の基礎理論(基礎事例演習) 塑性力学の基礎理論(応用事例演習) |
塑性力学に関する基礎および応用演習問題を体積一定条件,ミーゼスの降伏条件式(相当応力)およびLevy-Misesの流動方程式を理解し,説明できること.
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8週 |
後期中間試験 |
7週までの授業内容について,後期中間試験を実施することによって学生の理解度を確認する.
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4thQ |
9週 |
中間試験答案返却および点数確認,解答の説明
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後期中間試験の結果を踏まえ,解答の説明を通して試験範囲の振り返りを行い,内容を理解できること.
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10週 |
鍛造加工(鍛造加工の効果と分類,鍛造加工の基礎) |
鍛造の特徴,鍛造金型の違いによる分類{自由鍛造,型鍛造(半閉塞鍛造,閉塞鍛造,押出し)},材料の変形形態による分類{(据込み,延伸,押出し(直接押出し,間接押出し,前後方押出し),型鍛造,回転鍛造}あるいは温度または素材の形態による分類(溶湯鍛造,熱間鍛造,温間鍛造,冷間鍛造,等温鍛造,粉末鍛造)等が分かり,熱間鍛造,温間鍛造,冷間鍛造の長短所を簡潔に表現できること.
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11週 |
鍛造加工(鍛造理論) |
直方体(平行平板の平面ひず圧縮相当)および円柱ブロックの据込み鍛造における加工荷重,加工応力を初等解析法(スラブ法)にて解くことができること.その際,力の釣り合い方程式の立て方,変数分離形を応用した積分,境界条件の入れ方等も理解できること.
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12週 |
鍛造加工(鍛造機械) |
各種鍛造機械{液圧プレス,機械プレス(クランクプレス,エキセンプレス,ナックルプレス,フリクションプレス),ハンマ}の機構と特徴を理解できること.
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13週 |
引抜き(引抜き加工,引抜き理論) |
引抜き加工の種類と特徴を理解し,引抜き力や荷重の計算ができること.
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14週 |
押出し(押出し加工,押出し理論) |
押出し加工の種類と特徴を理解し,押出し力や荷重の計算ができること.
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15週 |
学年末試験 |
14週までの授業内容について,学年末試験を実施することによって学生の理解度を確認する.
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16週 |
学年末試験答案返却と成績確認および解答の説明 |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 工作 | 塑性加工の各加工法の特徴を説明できる。 | 4 | 後1 |
降伏、加工硬化、降伏条件式、相当応力、及び体積一定則の塑性力学の基本概念が説明できる。 | 4 | 後2,後3,後4,後5,後6,後7,後9 |
平行平板の平面ひずみ圧縮を初等解析法により解くことができる。 | 4 | 後10,後11,後13,後14 |
軸対称の圧縮を初等解析法により解くことができる。 | 4 | 後10,後11,後13,後14 |
材料 | 引張試験の方法を理解し、応力-ひずみ線図を説明できる。 | 4 | 後3,後4 |
塑性変形の起り方を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後3 |
加工硬化と再結晶がどのような現象であるか説明できる。 | 4 | 後1,後2,後3 |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 70 | 0 | 0 | 0 | 30 | 0 | 100 |
基礎的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
専門的能力 | 70 | 0 | 0 | 0 | 30 | 0 | 100 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |