1. トランジスタ増幅回路のDC解析(動作点の導出)、AC解析(小信号等価回路を描き、それに基づいた利得や入出力インピーダンスの算出)ができる
2. 帰還の概念を理解し、帰還回路の動作利得等の動作量を求めることができる
3. トランジスタの電流増幅機能を応用した各種回路の設計条件を求めることができる
概要:
電子回路は家電製品に代表される電子機器や通信機器のほとんどに組み込まれており、現代社会の基盤を支える技術分野に属するものである。中でも、情報伝達のための『増幅』を目的とした回路の果たす役割は大きいため、この授業を通して増幅に関連した回路設計の基本をマスターすることを目指す。特に、回路に接続される負荷や他の増幅器の影響等についても考察できるようにし、得た専門知識の応用性を広げることをねらいとする。学ぶ主項目として、回路解析法、周波数特性、帰還(フィードバック)効果、あるいはその応用回路等が挙げられる。回路解析においては、DC解析およびAC解析のうち後者を中心として学ぶ(前者については電子回路Ⅰで多く取り扱っている)。
授業の進め方・方法:
●基礎知識の養成
回路やその取扱いについては,これまで確立されている体系があるため,それらを最初に学ぶことが本科目をマスターする上でもっとも効果的であると考えられる.そのため,座学を中心に行う.授業中は,頻繁に学生に質問を投げかける.
●知識の定着・応用力の養成
・教科書に記載されている基礎・応用問題を解く
・配布された練習問題を解く
注意点:
●板書をノートに書き写す際,丸写しではなく,メモを頻繁に付け加えると,後で開いて復習する際に役に立つ.
●定規を使った回路図のノートへの描画については,時間を要す傾向にあるため,板書を写す速度が遅いと感じる人には,お勧めしない.
●成績不良の学生の多くに,指定された問題を定期試験前に解いていない傾向がある.これは,授業内容の復習だけでは,必要な専門的知識が定着しないことを意味している.
●複素数の基礎的な計算ができない学生が少なくない傾向がある.複素数の絶対値,分数で表された複素数の絶対値,あるいは複素数の極座標形式の表現方法など,再確認することを勧める.
●試験勉強に際し、過去テストの出題傾向などは参考程度に留めるべきであり、またその解説(解答)はしない[過去テストと同様な出題を期待し、失敗したケースが多々報告されている]。
●ノートを中心とした学習が有効であるが注意してほしいことがある。ノートを開いてわかったような気になるケースが後を絶たない(危険な勉強である)。復習の方法として,ノートの最初(問題提起)から、自力で答えが導けるようになっているのかのチェックが何よりも大切である。これがノートを中心とした学習になる。
教育到達目標評価 定期試験100%(B)ただし,前期中間試験については,web試験と課題提出をその代替措置とする.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
ガイダンス(1h)
1.増幅回路の基礎(コア)(1h) ◇FET増幅回路、バイポーラトランジスタの増幅回路の動作量(コア) |
授業計画、評価方法の説明
増幅回路の動作量について説明できる.
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2週 |
◇FET増幅回路の動作量(コア) |
FET増幅回路の小信号等価回路に基づいて動作量(入力インピーダンス・出力インピーダンス・電圧利得)を導くことができる
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3週 |
◇FET増幅回路の動作量(続き) ◇トランジスタ増幅回路の動作量(コア) |
FET増幅回路・トランジスタ増幅回路の小信号等価回路に基づいて動作量(入力インピーダンス・出力インピーダンス・電圧利得)を導くことができる
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4週 |
◇トランジスタ増幅回路の動作量(続き)(コア) |
トランジスタ増幅回路の小信号等価回路に基づいて動作量(入力インピーダンス・出力インピーダンス・電圧利得)を導くことができる
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5週 |
◇図式解析手法(コア) ・負荷線解析 |
キルヒホッフの電圧則に基づいて,回路の抵抗や電源電圧の値に基づいて,負荷線の方程式を求めることができる.また,負荷線を図示できる.
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6週 |
◇図式解析手法(コア) ・DC負荷線,AC負荷線 |
トランジスタの特性およびDC負荷線の交点として動作点を求めることができ,AC負荷線解析ができる
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7週 |
◇デシベル計算 |
電卓を使わないで以下のデシベルの計算ができる ・電圧,電力の絶対値 ・増幅器の出力(電圧値,電力値)
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8週 |
前期中間試験 |
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2ndQ |
9週 |
試験答案返却・解答解説(1h) 2.低周波増幅回路(コア)(1h) ◇RC結合トランジスタ増幅回路 ・等価回路と周波数特性 |
誤解答部分や未解答部分の正当な解法を確認できる RC結合トランジスタ増幅回路に関する ・増幅度を計算できる ・理論的な周波数特性を導ける
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10週 |
◇RC結合トランジスタ増幅回路(コア) ・等価回路と周波数特性 |
RC結合トランジスタ増幅回路に関する ・増幅度を計算できる ・理論的な周波数特性を導ける
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11週 |
◇RC結合トランジスタ増幅回路(コア) ・等価回路と周波数特性 |
RC結合トランジスタ増幅回路に関する ・増幅度を計算できる ・理論的な周波数特性を導ける
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12週 |
◇高域周波数帯におけるトランジスタ増幅回路の等価回路(コア) |
・ミラー効果を説明でき,高域周波数帯におけるトランジスタ増幅回路の等価回路を導くことができる
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13週 |
◇周波数選択増幅回路(コア) |
周波数選択増幅回路の増幅特性を説明できる
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14週 |
◇電力増幅回路 ・A級電力増幅回路 |
信号電力を有効に増幅する回路について説明できる。
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15週 |
前期期末試験 |
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16週 |
試験答案返却・解答解説 |
・誤解答部分や未解答部分の正当な解法を確認できる
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後期 |
3rdQ |
1週 |
3.負帰還増幅回路 ◇帰還の概念・負帰還増幅回路の特長 ◇負帰還増幅回路のブロック図 |
・負帰還をかけたシステムの利点および欠点について説明できる ・このシステムのブロック図を描け,利得を導出できる
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2週 |
◇負帰還増幅回路の利点・欠点
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・負帰還回路の利得の変動率・周波数特性の改善について,式を使って説明できる ・負の利得を持つ増幅器を使う場合の負帰還について説明できる
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3週 |
◇各種帰還方式 ◇閉ループ利得・入出力インピーダンス |
・各種帰還方式を説明できる.また,それぞれの場合の閉ループ利得・入出力インピーダンスが求められる
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4週 |
◇実際の回路例 ◇回路の安定性 |
・負帰還回路の具体的な回路例について,説明できる ・ナイキストの安定度判別法に基づいて,帰還回路の安定度について説明できる
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5週 |
4.発振回路(コア) ◇発振条件(コア)
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・発振(持続的な電気振動)が生じる原理とその条件を説明できる ・LC発振回路の動作を説明できる
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6週 |
◇LC発振回路(コア) (小信号等価回路) |
・LC発振回路の小信号等価回路を描き,それに基づいて正帰還が生じる条件を説明できる
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7週 |
◇LC発振回路(コア) (発振周波数条件・インピーダンス条件) |
・LC発振回路の発振周波数条件・インピーダンス条件を導くことができる
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8週 |
後期中間試験 |
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4thQ |
9週 |
試験答案返却・解答解説 ◇水晶振動子
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・誤解答部分や未解答部分の正当な解法を確認できる ・水晶振動子について説明できる
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10週 |
◇水晶振動子の周波数特性
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・水晶振動子のリアクタンスの周波数特性について説明できる
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11週 |
◇ピアス回路 ◇RC発振回路(コア) |
・LC発振回路に水晶振動子を組み込んだピアス回路の特徴を説明できる ・RC移相発振回路の基本形について説明できる・網目法を使った電流の計算ができる
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12週 |
◇RC発振回路(コア) |
・RC移相発振回路の発振条件を導ける
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13週 |
6.トランジスタを使った差動増幅回路 ◇差動増幅回路 |
トランジスタを使った差動増幅回路について小信号等価回路について説明でき,差動利得・同相利得を導くことができる
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14週 |
◇カレントミラー回路 |
トランジスタを使った電流複製回路について説明および回路設計ができる
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15週 |
学年末試験 |
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16週 |
試験答案返却・解答解説 |
誤解答部分や未解答部分の正当な解法を確認できる
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 電気・電子系分野 | 電子回路 | バイポーラトランジスタの特徴と等価回路を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3 |
FETの特徴と等価回路を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3 |
利得、周波数帯域、入力・出力インピーダンス等の増幅回路の基礎事項を説明できる。 | 4 | 前9,前10,前11 |
トランジスタ増幅器のバイアス供給方法を説明できる。 | 4 | 前4,前5,前6 |