応用物理化学

科目基礎情報

学校 苫小牧工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 応用物理化学
科目番号 0004 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 創造工学科(応用化学・生物系機能材料コース) 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教科書 福地賢治 他著「物理化学」実教出版 / 参考図書 W.J.Moore著,細矢 治夫 他訳「ムーア基礎物理化学」東京化学同人 D.W.Ball 著,阿竹 徹 監訳「ボール物理化学」東京化学同人 D.A.McQuarrie,J.D.Simon 著,千原 秀昭 他訳「物理化学―分子論的アプローチ」東京化学同人 P.W.Atkins著,千原 秀明 他訳「アトキンス物理化学」東京化学同人 大竹 伝雄 他著「演習化学工学熱力学」丸善株式会社 杉原 剛介 他著「化学熱力学中心の基礎物理化学」学術図書出版社 D.A.McQuarrie,J.D.Simon,Physical Chemistry: A Molecular Approach,Univ Science Books,(1997) D.A.McQuarrie,J.D.Simon,Physical Chemistry: A Molecular Approach,Univ Science Books,(1997)
担当教員 樫村 奈生

到達目標

工学において重要な物質の振る舞いを決めるエネルギーの保存の法則とエントロピー増大の法則を基礎とした化学熱力学を修得することを目標とする。特に以下の事柄を理解,修得する。
1) 熱力学の第1,第2および第3法則
2) 内部エネルギー,エンタルピー,エントロピー,自由エネルギー,化学ポテンシャルなどの各熱力学関数の定義,算出方法
3) 標準反応エンタルピー,標準反応ギブズエネルギーの算出
4) 相律における自由度の算出
5) 1成分系および2成分系の蒸気圧と沸点,凝固点の算出方法
6) 理想溶液および理想希薄溶液,活量の定義とこれらを用いた蒸気圧の算出と状態図の作図方法
7) 束一的性質の定義,束一的性質を用いた分子量の算出方法
熱力学の応用であるエクセルギーに関して次の事柄を理解し習得する。
1) エクセルギーの定義と意義を説明できる。
2) 種々の状態のエクセルギーを計算できる。
3) エクセルギーを用いて効率的なエネルギー利用法を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
到達目標1実在気体と理想気体の違いから,van der Waalsの状態方程式を説明できる。実在気体と理想気体の違いを説明できる。実在気体と理想気体の違いを説明できる。
到達目標2臨界点付近の圧力-体積の関係を書いて,気体の臨界現象を説明できる。臨界点付近の圧力-体積の関係を図示されていると,気体の臨界現象について説明できる。臨界点付近の圧力-体積の関係が図示されても,気体の臨界現象について説明できない。
到達目標3臨界条件と対応状態原理を説明し,実在気体の密度をZ線図から推算できる。対応状態原理を説明し,実在気体の体積をZ線図から推算できる。対応状態原理を説明し,実在気体の体積をZ線図から推算できない。
到達目標4種々の物理現象を,熱力学の第一,第二,第三法則の観点から議論できる。熱力学の第一,第二,第三法則を説明できる。熱力学の第一,第二,第三法則を説明できない。
到達目標5複雑な過程における理想気体などの種々の熱力学関数を算出できる。単純な過程における理想気体の熱力学関数を算出できる。単純な過程における理想気体の熱力学関数を算出できない。
到達目標6複雑な反応の標準反応エンタルピー,標準反応ギブズエネルギーを算出しできる。簡単な反応の標準反応エンタルピー,標準反応ギブズエネルギーを算出できる。簡単な反応の標準反応エンタルピー,標準反応ギブズエネルギーを算出できない。
到達目標7蒸気圧,沸点を算出し,1成分系の状態図を作図できる。蒸気圧,沸点を算出できる。蒸気圧,沸点を算出できない。
到達目標8理想溶液,理想希薄溶液,活量を説明し,蒸気圧を算出し,2成分系の状態図を作図できる。理想溶液,理想希薄溶液,活量を説明し,蒸気圧を算出できる。理想溶液,理想希薄溶液,活量を説明し,蒸気圧を算出できない。
到達目標9平衡条件から束一的性質を導出し,例を挙げて束一的性質を説明し,溶質の分子量を推算できる。例を挙げて束一的性質を説明し,溶質の分子量を推算できる。例を挙げて束一的性質を説明し,溶質の分子量を推算できない。
到達目標10資料がなくとも,エクセルギーの定義と意義を説明できる。資料があれば,エクセルギーの定義と意義を説明できる。資料があっても,エクセルギーの定義と意義を説明できない。
到達目標11種々の状態のエクセルギーを計算し,これから効率的なエネルギー利用法を説明できる。種々の状態のエクセルギーを計算できる。種々の状態のエクセルギーを計算できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
この講義は化学熱力学に関する知識を教授する。エンジン内での燃焼は化学エネルギーの仕事への変換であるが,熱力学はエネルギー変換を定量的に扱う学問である。
また,効率的なエネルギー利用を定量的に評価法する手法としてエクセルギーの概念,簡単な系でのエクセルギーの算出方法を教授する。
授業の進め方・方法:
理想気体の気体分子運動論,実在気体の方程式と臨界現象,熱力学の第1・第2・第3法則の概念,それを用いた熱力学諸量の算出方法を教授する。また,熱力学の化学への応用として,相平衡と束一的性質,化学平衡について教授する。Webで講義用資料,演習問題およびその解答を公開する。授業前は資料をノートに写すこと。授業には,事前に予習したノート,電卓を用意すること。授業直後に回想カードを記入して提出すること。授業後は演習問題をノートに写して,解き自己採点すること。
注意点:
3,4年生の物理化学で学習した内容を前提とする。特に理想気体の状態方程式,ドルトンの分圧の法則,状態図の読み方は重要である。また,微分・積分を扱うので,不得手な学生は微分・積分の定義を読み返し,簡単な微分・積分の演習問題を解くこと。評価が60点に満たなかった学生を対象に再試験を実施することがあるが,所定の期日までに手書きの講義ノートと演習および回想カードが提出しなかった学生はその対象とはならない。この科目を履修するにあたり,60時間の自学自習時間を要する。授業中に配布される演習課題などを用いて自学自習により取り組むこと。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 4章 実在気体 実在気体と理想気体の違いを説明できる。
臨界点付近の圧力-体積の関係を図示されていると,気体の臨界現象について説明できる。
対応状態原理を説明し,実在気体の体積をZ線図から推算できる。
2週 5章 熱力学第一法則
・過程
等温過程の仕事を計算できる。
3週 ・熱力学第一法則 第一法則の定義と適用方法を説明できる。
種々の過程の仕事,熱,内部エネルギー,エンタルピーを計算できる。
4週 ・熱化学 標準生成エンタルピーおよび反応のエンタルピーを用いて,別な反応のエンタルピーを計算できる。
異なる温度の反応エンタルピーから反応エンタルピーを計算できる。
5週 6章 熱力学第二法則
・熱力学第二法則
カルノーサイクルを説明し,その計算ができる。
熱力学の第二法則の定義と適用方法を説明できる。
エントロピーを計算できる。
6週 ・熱力学第三法則
・自由エネルギーと変化の方向
熱力学の第三法則を説明できる。
ギブスエネルギーの定義,特性を説明し,計算ができる。
7週 ・熱力学の関係式
・化学ポテンシャル
マクスウェルの関係式から熱力学関数の関係式を導出できる。
化学ポテンシャルの定義を説明できる。
8週 中間試験 1週~7週までの内容
2ndQ
9週 7章 相平衡と溶液
・純物質の相平衡
純物質の沸点,蒸気圧を計算できる.
10週 ・2成分系の気相-液相平衡条件と溶液の性質 理想溶液と理想希薄溶液の定義を説明し,蒸気圧を算出できる。
11週 ・2成分系の気相-液相状態図
・活量
活量の定義を説明し,蒸気圧を算出できる。
理想溶液の2成分系の状態図を理解できる。
12週 ・束一的性質 例を挙げて束一的性質を説明できる。
束一的性質から溶質の分子量を計算できる。
13週 エネルギーとエクセルギー
・エクセルギーの定義
エクセルギーの定義と意義を説明できる。
熱エネルギーのエクセルギーを計算できる。
14週 ・エネルギー変換プロセス
・燃焼によるエクセルギー損失
種々の物理変化によるエクセルギー変化を計算できる。
種々な物質のエクセルギーを計算できる。
エネルギー変換ダイヤグラムから,燃焼によるエクセルギー損失を議論できる。
15週 ・ヒートポンプと水蒸気改質
・燃料電池
ヒートポンプと水蒸気改質のエネルギー変換ダイヤグラムを作成できる。
燃料電池エネルギー変換ダイヤグラムを作成できる。
16週 定期試験

評価割合

定期試験中間試験課題合計
総合評価割合453520100
基礎的能力453520100
専門的能力0000
分野横断的能力0000