到達目標
1.金属錯体の構造や結合理論から、磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できる。
2.液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解できる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 金属錯体の構造や結合理論から、磁性の計算や分光化学系列などの説明ができる。 | 金属錯体の構造や結合理論から、磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できる。 | 金属錯体の構造や結合理論の理解が不十分である。磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できない。 |
評価項目2 | 液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解でき、実際の分離への方法が説明できる。 | 液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解できる。 | 液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論が理解できない。 |
評価項目3 | | | |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
分析化学において物質の分離や濃縮は重要なテーマであり、種々の方法がある。本科目では、一相内での分離に使われる金属錯体、および二相間での物質の移動に基づく分離法(溶媒抽出法等)について取り上げ、その基礎理論や応用について学ぶ。なお、金属錯体は、分離、マスキング、検出など分析化学での利用だけでなく、工業化学や材料化学における触媒や中間体、生命科学においても酵素等で重要な役割を担っていることから、結合理論など基礎的事項から学ぶ。
授業の進め方・方法:
前半は、金属錯体の命名法、立体化学、結合に関する理論や諸物性(磁性、光吸収など)、錯体生成のしやすさについて学ぶ。後半は二相間分配に基づく分離濃縮法として重要な溶媒抽出法、固相抽出法、イオン交換法についてその理論と実際を学ぶ。演習問題を多く取り入れて、理解を深める。
定期試験(中間、期末試験)100%の割合で評価する。総合評価は100点満点として60点以上を合格とする。答案は採点後返却し、到達度を確認させる。
注意点:
本科の「無機化学」、「分析化学」において学んだことが基礎となる。量子化学、溶液化学などの物理化学、分析化学の知識が必要となる。分配平衡の解析など計算を用いた演習問題も行うので、電卓を用意すること。試験、小テストなどは返却し模範解答するので、自分の到達度を把握しさらに勉強すること。
自学自習は到達度試験(中間試験を含む)や小テストにて評価する。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
金属錯体の基礎、原子軌道、酸・塩基 |
有機配位子における置換基による電子の吸引性、供与性に基づく、プロトンとの親和性や金属との結合力の関係が説明できる。HSAB則について説明でき、酸・塩基の結合力の推定に応用できる。
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2週 |
金属錯体の命名法 |
単純な錯体の化学式、名称(英語名、日本語名)が書ける。
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3週 |
錯体の異性 |
錯体の幾何異性体、光学異性体などの異性体を描ける。
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4週 |
結晶場理論、錯体の磁性 |
結晶場理論から導かれる、正八面体型、正四面体型、正方平面型錯体におけるd軌道の分裂が描ける。正八面体型錯体において、任意のd電子の数における高スピン型、低スピン型錯体の電子配置が描け、結晶場安定化エネルギー、不対電子の数が計算できる。
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5週 |
分子軌道法、吸収スペクトル |
配位子における「分光化学系列」とは何か、理解している。遷移金属化合物の発色の原因(d-d遷移、CT遷移、原子価間遷移、配位子の特性吸収)が説明できる。
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6週 |
錯体の安定度 |
Irving-Williams系列とは何か、またなぜそのような順番になるか説明できる。Jahn-Teller効果とは何か説明できる。
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7週 |
演習、中間試験 |
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8週 |
溶媒抽出法(分配定数、分配比、有機酸の分配平衡) |
溶媒抽出における、分配比と抽出率の定義がわかり、水相と有機相中の目的物質の濃度から計算できる。酸解離やプロトン化を行う有機化合物の分配挙動を説明できる。
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2ndQ |
9週 |
溶媒抽出法(金属イオンの抽出平衡) |
金属イオンの抽出における抽出定数を求めたり、抽出定数から分配比を計算できる。
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10週 |
溶媒抽出法(抽出で用いられる操作) |
協同効果抽出、イオン対抽出とは何か説明できる。
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11週 |
固相抽出法 |
固相抽出がどのようなものか説明できる。
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12週 |
イオン交換法(交換容量と選択係数) |
イオン交換樹脂の交換容量と選択係数についての計算ができる。
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13週 |
イオン交換法(イオンの相互分離) |
イオン交換樹脂を用いた分離について説明できる。
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14週 |
イオン交換法(その他のイオン交換体) |
種々のイオン交換体について説明できる。
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15週 |
期末試験 |
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16週 |
期末試験の答案返却とまとめ |
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 無機化学 | 主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。 | 5 | |
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。 | 5 | |
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 5 | |
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。 | 5 | |
錯体の命名法の基本を説明できる。 | 5 | |
配位数と構造について説明できる。 | 5 | |
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。 | 5 | |
分析化学 | 錯体の生成について説明できる。 | 5 | |
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。 | 5 | |
溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。 | 5 | |
評価割合
| 試験 | 合計 |
総合評価割合 | 100 | 100 |
基礎的能力 | 0 | 0 |
専門的能力 | 100 | 100 |
分野横断的能力 | 0 | 0 |