概要:
現代社会において、数多くの有機化合物が材料や薬剤として、あるいはエネルギー源として使われている。その範囲は広く、石油化学製品とそれより合成される繊維・プラスチック、油脂化成品、界面活性剤、医薬・農薬など多岐に渡っている。また、新たな機能を有する有機材料の開発は、新たな産業の基盤となる可能性を常に秘めている。本科目では、産業にとって重要な役割を担っている有機化合物の反応論を、これまで体系的に学んだ基礎的な有機化学を基盤とした総合的に解説によって有機化学の知見を深めると同時に、さらに高度な有機反応論について学ぶ。これより、化学技術者として、有機化学反応をより実践的に取り扱うことが出来るようになることを目指す。
授業の進め方・方法:
これまで体系的に学んだ有機化学を基盤として、反応の形式(求核置換、脱離、求電子付加、協奏反応、求電子置換など)に分類された視点で有機化学を再構築する。この際、さらに高度な反応論を適宜取り入れる。個別の有機反応については、反応機構・有機電子論を適宜使いながら説明する。また、有機化学を学ぶ上で必要となる有機化合物の命名法も修得する。随時学生諸君からの解答を求める演習問題を行い、各自の到達度を確認する。
中間試験50%、期末試験50%として評価を行い、総合評価は100点満点として、60点以上を合格とする。
答案は採点後返却し、達成度を伝達する。
注意点:
高専本科で学んだ有機化学を基に授業を行うため、反応論、物性論、命名法などの予習復習等、日常的な自学自習が必要である。また、演習問題や有機化学の基本である構造式が書ける練習等を常に行うこと。学んだことを活かせるように、多くの演習問題ならびに2回の到達度試験に取り組んでもらう。
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 有機化学 | 有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。 | 5 | |
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。 | 5 | |
σ結合とπ結合について説明できる。 | 5 | |
混成軌道を用い物質の形を説明できる。 | 5 | |
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。 | 5 | |
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。 | 5 | |
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。 | 5 | |
共鳴構造について説明できる。 | 5 | |
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。 | 5 | |
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。 | 5 | |
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。 | 5 | |
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。 | 5 | |
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。 | 5 | |
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。 | 5 | |
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。 | 5 | |
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。 | 5 | |
高分子化合物がどのようなものか説明できる。 | 5 | |
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。 | 5 | |
高分子の分子量、一次構造から高次構造、および構造から発現する性質を説明できる。 | 5 | |
高分子の熱的性質を説明できる。 | 5 | |
重合反応について説明できる。 | 5 | |
重縮合・付加重合・重付加・開環重合などの代表的な高分子合成反応を説明でき、どのような高分子がこの反応によりできているか区別できる。 | 5 | |
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の反応を説明できる。 | 5 | |
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の特徴を説明できる。 | 5 | |
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。 | 5 | |
反応機構に基づき、生成物が予測できる。 | 5 | |