概要:
無機化学は,原子の構造や結合状態など物質の本質を理解する根幹となり,近年の材料開発の発展を支える分野である。
この授業では,無機化学基礎で学修した電子構造および化学的結合の基礎概念とその周期表との関連を理解しながら,代表的な元素とその化合物を学修する。更に,錯体化学は分析化学・触媒化学・生物無機化学など広い分野にわたる重要な学問分野の一つであることから,金属錯体の構造・物性などに関する内容も学修する。
授業の進め方・方法:
中間試験,期末試験ともに50分間の試験を実施する。
定期試験の成績80%,課題等の成績20%として総合的に評価する。60点以上を合格とする。
注意点:
電子構造および化学的結合を考えるための基礎となる電子状態,及び,その周期表との関連をいつも念頭において物質の性質を考えること。
これまでに習得した物理化学,無機化学基礎および有機化学の基礎領域を十分復習しておくことが大切である。特に,化学結合,構造などに関する基礎理論を理解しておくことが必要である。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
序論(1) |
周期律表と元素の性質,元素の性質と周期律,イオン化エネルギーと周期律,電気陰性度(電気親和力)と周期律
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2週 |
序論(2) |
原子半径・イオン半径と周期律,原子軌道,一般の原子における電子配置
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3週 |
単体の構造と性質 |
単体の構造:分子,ルイス構造,簡単な分子の分子軌道
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4週 |
単体の構造と性質 |
共有結合結晶,金属,金属結合と自由電子,電子のバンド構造
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5週 |
単体の化学(1) |
無機化合物の命名法・化学的な性質の概略,アルカリ金属,アルカリ土類金属
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6週 |
単体の化学(2) |
13~17族元素
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7週 |
整理・復習 |
第6週までの内容確認
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8週 |
まとめ / 水素の化合物(1) |
第6週までのまとめ,水素の性質,水素化合物の分類
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2ndQ |
9週 |
水素の化合物(2) |
14~17族の水素化合物と水素結合
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10週 |
分子性酸化物とオキソ酸(1) |
典型元素の酸化物とオキソ酸,13~17族までの元素の酸化物とオキソ酸,共鳴,共鳴構造
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11週 |
分子性酸化物とオキソ酸(2) |
13~17族までの元素の酸化物とオキソ酸,遷移元素の分子性酸化物とオキソ酸
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12週 |
ハロゲン化物と希ガスの化合物(1) |
典型元素のハロゲン化物
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13週 |
ハロゲン化物と希ガスの化合物(2) |
ハロゲン間化合物,VSEPR理論
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14週 |
ハロゲン化物と希ガスの化合物(3) |
希ガスの化合物
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15週 |
まとめ |
前期学習領域のまとめ
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16週 |
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後期 |
3rdQ |
1週 |
金属錯体の立体構造と命名(1) |
d軌道が持つ立体と対称性、および配位結合の理論を説明し、配位化合物を命名することができる。
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2週 |
金属錯体の立体構造と命名(2) |
配位数と立体配置、配位化合物の命名法について説明できる。
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3週 |
金属錯体の立体構造と命名(3) |
錯体の対称性、異性体(構造異性、幾何異性、光学異性)および磁性について説明できる。
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4週 |
金属錯体の電子構造と結晶場理論 |
結晶場理論を用いて、多様な色を持つ金属錯体の電子構造と吸収スペクトルについて説明できる。
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5週 |
金属錯体の電子構造と配位子場理論 |
配位子場理論を用いて、金属錯体の電子構造について説明できる。
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6週 |
金属錯体の電子構造と分光化学系列 |
配位子が有する軌道の影響を考慮して、分光化学系列について説明できる。
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7週 |
金属-金属結合を有する金属錯体 |
金属-金属間に結合を有する金属錯体において、結合に関与する電子軌道と結合様式について説明できる。
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8週 |
まとめ |
第7週までの内容確認
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4thQ |
9週 |
金属錯体の反応(1) |
錯体の安定度、安定度定数について説明できる。
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10週 |
金属錯体の反応(2) |
配位子置換反応の機構とトランス効果について説明できる。
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11週 |
特殊な配位子を持つ有機金属錯体 |
オレフィンやシクロペンタジエニル、カルベンなどを配位子とする有機金属錯体について説明できる。
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12週 |
有機金属錯体の反応(1) |
配位子置換反応、酸化的付加および還元的脱離反応について説明できる。
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13週 |
有機金属錯体の反応(2) |
挿入反応およびβ水素脱離反応について説明できる。
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14週 |
有機金属錯体を利用した反応 |
Ziegler-Natta触媒によるオレフィン重合、Hoechst-Wacker法、キラルな配位子を用いた不斉触媒反応、Grubbs触媒によるオレフィンメタセシス、Pd触媒によるクロスカップリング反応などについて説明できる。
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15週 |
まとめ |
後期学習領域のまとめ
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 無機化学 | パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 4 | 前2,前3,前4,前10,前11 |
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。 | 4 | 前1,前2,前3,前5,前10,前11,前13,前14,後8 |
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。 | 4 | 前1,前2,前5,前6,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14 |
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。 | 4 | 前1 |
配位結合の形成について説明できる。 | 4 | 後1,後5 |
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後3 |
錯体の命名法の基本を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後3 |
配位数と構造について説明できる。 | 4 | 後2,後4 |
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。 | 4 | 後3,後4,後11,後14 |
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。 | 4 | 前3,前4,前5,前6,前8,前9,前10,前11,前12,前13,前14 |
分析化学 | 錯体の生成について説明できる。 | 4 | 後1,後4,後5,後9 |