金属材料の性質を左右する組織を考えるうえで基本となる平衡状態図を理解し,拡散についての基礎的事項を理解し,液相-固相変態および固相-固相変態の基礎的事項を理解し, 熱的条件による金属材料の性質のコントロールに応用できる.
概要:
材料は,その製造履歴により組織が多様に変化し,それに応じて性質が変化する.この材料の組織を系統的に調べる学問が,材料組織学である.当科目では,基本である平衡状態図を理解した上で,熱的条件下で材料が示す諸性質の変化の機構についての基礎知識を身につけることを目標とする.また,授業で得た知識を材料に関する身近な問題に適用し,問題を解決する力を身につけることをめざす.
授業の進め方・方法:
・全ての内容は,学習・教育目標(B)<専門>に対応する.
・授業は講義形式で行う.
・「授業計画」における各週の「到達目標」は,この授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>「到達目標」の全てを網羅した問題を中間試験,期末試験で出題し,目標の達成度を評価する.評価における各項目の重みは概ね均等とする.評価結果が百点法の60点以上の場合に目標達成とする.
<学業成績の評価方法および評価基準>中間試験と期末試験の平均点で評価する.ただし,中間試験,期末試験について60点に達していない者(無断欠席の者は除く)には再試験を課すこともあり,その場合,再試験の成績が該当する試験の成績を上回った場合には,60点を上限としてその試験の成績を再試験の成績で置き換えるものとする.
<単位修得要件>上記基準に従った学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本科目には基礎材料学,金属材料の習得が必要である.
<備考>規定の単位制に基づき,自己学習を前提として授業を進めるので,日頃から予習・復習などの自己学習に励むこと.
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
熱力学と状態図(一成分系・二成分系単相) |
1. 一成分系・二成分系単相の凝固と熱力学について説明できる.
|
2週 |
熱力学と状態図(二成分・二相共存系) |
2. 二成分・二相共存系の熱力学と状態図について説明できる.
|
3週 |
Fe-C系状態図 |
3. Fe-C系状態図について説明できる.
|
4週 |
3成分系状態図の基礎 |
4. 3成分系状態図について説明できる.
|
5週 |
3成分系状態図 |
上記4
|
6週 |
材料の組織と性質(単相組織・複相組織) |
5. 単相組織・複相組織の組織と性質について説明できる.
|
7週 |
材料の組織と性質(共析組織) |
6. 共析の組織と性質について説明できる.
|
8週 |
中間試験 |
これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
|
4thQ |
9週 |
再結晶(加工組織・回復・再結晶) |
7. 加工組織,回復と再結晶について説明できる.
|
10週 |
拡散(拡散機構・フィックの拡散法則) |
8. 拡散機構およびフィックの拡散法則について説明できる.
|
11週 |
拡散変態(拡散変態の種類と駆動力・成長と析出) |
9. 拡散変態の種類と駆動力,成長と析出について説明できる.
|
12週 |
拡散変態(スピノーダル分解・規則-不規則変態) |
10. スピノーダル分解と規則-不規則変態について説明できる.
|
13週 |
マルテンサイト変態(マルテンサイト変態の特徴) |
11. マルテンサイト変態の特徴について説明できる.
|
14週 |
マルテンサイト変態(形状記憶効果・TRIP効果) |
12. 形状記憶効果とTRIP効果について説明できる.
|
15週 |
マルテンサイト変態(高強度鋼・ベイナイト変態) |
13. 高強度鋼とベイナイト変態について説明できる.
|
16週 |
|
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 金属材料 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 4 | |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 4 | |
面欠陥である積層欠陥について説明できる。 | 4 | |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。 | 4 | |
ギブスの相律から自由度を求めて系の自由度を説明できる。 | 4 | |
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。 | 4 | |
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。 | 4 | |
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。 | 4 | |
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。 | 4 | |
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。 | 4 | |
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。 | 4 | |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 4 | |
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。 | 4 | |
拡散係数の物理的意味を説明できる。 | 4 | |
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。 | 4 | |
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。 | 4 | |
再結晶粒の成長機構を説明できる。 | 4 | |
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。 | 4 | |
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。 | 4 | |
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。 | 4 | |
無機材料 | 内部エネルギー、熱、仕事の符号の規則を説明でき、膨張の仕事を計算できる。 | 3 | |
エンタルピーの定義およびエンタルピーが状態量であることを説明できる。 | 3 | |
エントロピーの定義を理解し、不可逆過程におけるエントロピー生成について説明できる。 | 3 | |