基本的な金属材料の種類や特徴,変形や破壊に関する基礎的事項を理解し,金属材料の強化に必要な専門知識,およびそれらの関連知識を説明できる.
概要:
金属材料は強度と延性のバランスに優れるため構造物や部品の構成材料として使用されている.一方,変形や破壊は重大事故の要因となりうるため,材料工学技術者として基本的な金属材料の種類と特徴を理解することは重要である.金属材料では基本的な金属材料の種類と特徴,変形や破壊に関係している格子欠陥,転位やすべり,種々の強化法とそのメカニズムについて学習する.本科目は国立研究開発法人物質・材料研究機構において金属材料の高強度化および破壊特性を専門に研究していた教員が,その経験を活かして金属材料の変形,破壊,強化法の理解に必要な基礎的知識,代表的な金属材料への適用などについて講義形式で授業を行うものである.
授業の進め方・方法:
・すべての内容は,学習・教育目標(B)<専門>に相当する.
・授業は,講義形式で行われる.適宜演習を行う.講義中は集中して聴講する.
・「授業計画」における各週の「到達目標」はこの授業で習得する「知識・能力」に相当するものとする.
注意点:
<到達目標の評価方法と基準>下記授業計画の「到達目標」を網羅した問題を中間試験および定期試験で出題し,目標の到達度を評価する.各到達目標に関する重みは同じである.合計点の60%の得点で,目標の達成を確認できるレベルの試験を課す.
<学業成績の評価方法および評価基準>中間試験, 期末試験の2回の試験の平均点を100%として評価する.最終評価が60点に満たない場合には,中間試験および期末試験の再テストを実施する場合がある.日常的にオフィスアワーズなどを利用して積極的に質問・学習を進めること.
<単位修得要件>学業成績で60点以上を取得すること.
<あらかじめ要求される基礎知識の範囲>本科目は,材料工学科第3年次前期までに学習した材料工学序論,基礎材料学および材料評価学に関する知識が基礎となる科目である.
<レポート等>理解を深めるため,必要に応じて演習課題を与える.
<備考> 金属材料の変形,破壊,強化法の理解に必要な基礎的かつ重要な知識を学習する科目であるため, 教科書を中心とした予習, 復習を自分でしっかりと行うこと.本科目は,基礎材料学,材料評価学,塑性加工,鉄鋼材料,非鉄金属材料,素形材工学,材料保証学,非破壊検査工学(専攻科)および材料強度工学(専攻科)と強く関連し, それら科目の基礎となる科目である.
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
材料のプロセスと強度,材料工学と材料力学 |
1. 材料のプロセスと強度,材料工学と材料力学の概要が説明できる.
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2週 |
結晶構造とミラー指数 |
2. 結晶の面と方向の表し方を説明できる.
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3週 |
格子欠陥 |
3. 金属材料の代表的な結晶構造と欠陥が説明できる.
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4週 |
塑性変形と転位 |
4. 応力ひずみ曲線,双晶変形,すべり変形と結晶の関係について説明できる.
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5週 |
転位と材料強度1 |
5. 材料の理想強度と転位の関係について説明できる.
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6週 |
転位と材料強度2 |
6. 交差すべりと部分転位について説明できる.
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7週 |
転位と材料強度3 |
7. 転位の増殖,交切,転位と溶質原子の相互作用について説明できる.
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8週 |
中間試験 |
これまでに学習した内容を説明し,諸量を求めることができる.
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2ndQ |
9週 |
材料の強度と強化方法1 |
8. 加工硬化と回復・再結晶,結晶粒の微細化,固溶強化の機構について説明できる.
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10週 |
材料の強度と強化方法2 |
9. 析出強化の機構を説明できる.
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11週 |
材料の強度と強化方法3
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10. 複合強化の機構を説明できる.
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12週 |
材料強度の評価法 |
11. 延性破壊と脆性破壊の特徴を説明できる..
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13週 |
鉄鋼材料における材料強化法 |
12. 鉄鋼材料の強化方法を説明できる.
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14週 |
アルミニウムおよびアルミニウム合金における材料強化法 |
13. アルミニウムおよびアルミニウム合金の強化方法を説明できる.
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15週 |
銅、チタン,マグネシウムにおける材料強化法 |
14. 銅、チタン,マグネシウムの強化方法と最先端の材料強化法を説明できる.
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 材料物性 | 金属の一般的な性質について説明できる。 | 3 | |
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。 | 3 | |
ミラー指数を用いて格子方位と格子面を記述できる。 | 3 | |
代表的な結晶構造の原子配置を描き、充填率の計算ができる。 | 3 | |
材料組織 | 純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。 | 3 | |
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。 | 3 | |
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | 前1,前3,前9 |
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。 | 3 | 前12,前13 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。 | 4 | 前10 |
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。 | 4 | 前11 |
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。 | 3 | |
鋳造用・展伸用アルミニウムについて、その成分や熱処理による組織学的変化の観点から適切な合金を応用できる。 | 3 | |
物理化学 | 高分子の熱的性質を説明できる。 | 4 | |
環境 | 複合材料の発展や分類について説明できる。 | 2 | |
複合材料の機械的強度や複合則について説明できる。 | 2 | |
強化材を分類でき、強化機構について説明できる。 | 4 | |
繊維強化プラスチックの成形法を説明できる。 | 4 | |
金属材料 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 4 | |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 4 | 前10 |
面欠陥である積層欠陥について説明できる。 | 4 | |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。 | 4 | 前6,前10 |
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。 | 4 | |
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。 | 4 | |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 4 | 前6,前10 |
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。 | 3 | |
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。 | 3 | |
再結晶粒の成長機構を説明できる。 | 4 | 前10,前12 |
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。 | 4 | |