半導体デバイス工学

科目基礎情報

学校 香川高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 半導体デバイス工学
科目番号 3038 科目区分 専門 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電子システム工学科(2018年度以前入学者) 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 高橋清 著「森北電気工学シリーズ4 半導体工学 第3版」森北出版/自作教材
担当教員 長岡 史郎

到達目標

電気磁気学や量子力学を基礎として材料中での電子の振る舞いや物理現象を取り扱った分野であり、それらの現象を理解することは電気系の技術者としてデバイスを利用するために重要となる。
本授業では、微視的世界の物理現象をイメージし、物理現象やデバイスの動作原理を説明できるようになることを目標とする。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
半導体の特徴について簡単に説明できる。半導体の特徴について、理解し、説明できる。 半導体の特徴について、概ね説明できる。 半導体の特徴について、説明できない。
接合に関する基本事項について説明できる。接合に関する基本事項について理解し、説明できる。 接合に関する基本事項について、概ね説明できる。 接合に関する基本事項について、説明できない。
降伏現象について説明できる。降伏現象について理解し、説明できる。 降伏現象について理解し、概ね説明できる。 降伏現象について理解し、説明できない。
発光素子と受光素子の動作原理を定性的に説明できる。発光素子と受光素子の動作原理を理解し、定性的に説明できる。 発光素子と受光素子の動作原理を定性的に、概ね説明できる。 発光素子と受光素子の動作原理を定性的に説明できない。
トランジスタの動作原理を定性的に説明できる。トランジスタの動作原理を理解し、定性的に説明できる。 トランジスタの動作原理を概ね、定性的に説明できる。 トランジスタの動作原理を定性的に説明できない。
半導体を構成する元素の電子配置について説明できる。半導体を構成する元素の電子配置について理解し、説明できる。 半導体を構成する元素の電子配置について、概ね説明できる。 半導体を構成する元素の電子配置について説明できない。
主な化合物半導体の結晶構造について知っている。主な化合物半導体の結晶構造ついての知識があり、その概要を説明できる。 主な化合物半導体の結晶構造についての知識を概ね説明できる。 主な化合物半導体の結晶構造についての知識がない。
結晶の種類について知っている結晶の種類についての知識があり、その概要を説明できる。 結晶の種類についての知識を概ね説明できる。 結晶の種類についての知識がない。
物質の結合について説明できる。物質の結合について理解し、説明できる。 物質の結合について概ね説明できる。 物質の結合について説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
教科書の内容に沿って講義する。説明が必要と感じた部分は、自作教材を用いて補足しながら講義をすすめる。半導体デバイスの基礎であるpn接合までのおさらいを行った後、ダイオード、バイポーラトランジスタ、MOS、MOS FET、化合物系のトランジスタについて電気特性の解析をしながら説明する。さらに、半導体の光学的性質、熱電的性質の説明とそれを使ったデバイスについても説明する。最先端デバイスについても説明を加える。
授業の進め方・方法:
本授業では、半導体のみならず個体の様々な物理現象を感覚的に理解し、半導体物性や半導体デバイスの動作原理を俯瞰できるように配慮して講義する。各種モデルやグラフの意味するところを中心に説明し、微視的世界に興味を持てる内容にしたい。板書とパワーポイントで進める。
注意点:

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
半導体とは? 
1年間で学ぶ学習項目を理解する。
2週 固体のバンド理論 概要説明
量子論入門 黒体輻射、パルマー系列
光と電子の粒子性と波動性を説明できる。
D2:1-3
3週 ボーアの水素原子モデル
ドブロイの関係式, シュレーディンガーの波動方程式
シュレーディンガーの波動方程式の導出過程及び意味を説明できる。D2:1-3
4週 束縛粒子
フェルミエネルギー
束縛粒子に関する簡単な計算ができる。D2:1-3
5週 状態密度関数
固体の結合力
固体の結合力について説明できる。D2:1-3
6週 結晶 ブラべー格子、ミラー指数 ブラベー格子について説明できる。
ミラー指数を計算できる。"D2:1-3
7週 "固体の帯理論
帯理論の定性的説明
波動方程式による帯理論
"
帯理論定性的な説明ができる。D2:1-3
8週 答案返却、問題解説、出欠及び前期総合成績確認

ブリルアンゾーン
2ndQ
9週 波動方程式による帯理論
波動方程式による帯理論の導出過程を説明できる。D2:1-3
10週 "統計力学の基礎
エネルギー分布則の種類
フェルミディラックの分布関数"
エネルギー分布則の種類について説明できる。
フェルミディラックの分布関数を使った計算ができる。"D2:1-3
11週 "p-n接合 
半導体接合の分類 エネルギーバンド図"
p-n接合のエネルギー準位図が書ける。
D2:1-3
12週 p-n接合の電流電圧特性 整流性の定性的説明
p-n接合のエネルギー準位図を使って、整流特性が説明できる。D2:1-3
13週 整流性の定量的説明
p-n接合の電流の式の導出過程を説明できる。
D2:1-3
14週 "整流性の定量的説明
理想係数"
p-n接合の電流の式を用いた簡単な計算ができる。
D2:1-3
15週 p-n接合の逆方向降伏現象
p-n接合の逆方向降伏現象について説明できる。
D2:1-3
16週 答案返却、問題解説、出欠及び前期総合成績確認
後期
3rdQ
1週 前期末のおさらい整流性 理想係数
p-n接合の電流の式の導出過程の説明とそれを用いた簡単な計算ができる。
D2:1-3
2週 "p-n接合の接合容量 
階段形不純物分布の接合容量"
階段型不純物分布をもつp-n接合の接合両々を計算できる。D2:1-3
3週 "傾斜形不純物分布の接合容量
トンネル(エサキ)ダイオード"
傾斜型不純物分布をもつp-n接合の接合両々を計算できる。
トンネルダイオードの動作を説明できる。
D2:1-3
4週 "金属半導体接触
金属半導体接触のエネルギー準位図"
金属半導体接触のエネルギー準位図が書ける。
整流特性を説明できる。
D2:1-3
5週 ヘテロ接合のエネルギー準位図
ヘテロ接合のエネルギー準位図が書ける。
6週 "ヘテロ接合の電流輸送機構と電子素子への応用
ダブルへテロ接合"
ヘテロ接合の電流輸送機構について説明できる。
ヘテロ接合の電子素子への応用について、説明できる。D2:1-3
7週 トランジスタ 接合形トランジスタの基礎動作
トランジスタを分類して説明できる。
接合型トランジスタのエネルギー準位図が書ける。
エネルギー準位図を用いてトランジスタの動作を説明でる。D2:1-3
8週 答案返却、問題解説、出欠確認
4thQ
9週 "電界効果型トランジスタの基礎動作
電荷結合素子"
電界効果トランジスタの動作を説明できる。
D2:1-3
10週 電界効果トランジスタ MOS
MOS構造のエネルギー準位図が書ける。D2:1-3

11週 電界効果トランジスタ MOS
MOSトランジスタの動作をエネルギー準位図を用いて説明できる。D2:1-3
"
12週 集積回路
集積回路の歴史と現状について説明できる。
集積回路の作製プロセスを説明できる。D2:1-3
13週 半導体の光学的性質
半導体からの発光について説明できる。
光電効果について説明できる。D2:1-3
14週 発光デバイスと受光デバイス
発光ダイオード、半導体レーザーダイオードの動作原理を説明できる。
太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタの動作について説明できる。D2:1-3
15週 半導体の各種性質
熱電適正室について説明できる。
磁電効果について説明できる。
ひずみ抵抗効果について説明できる。
D2:1-3
16週 答案返却、問題解説、出欠及び総合成績確認

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電子工学電子の電荷量や質量などの基本性質を説明できる。4前2,前4,前5
エレクトロンボルトの定義を説明し、単位換算等の計算ができる。4前2,前4,前5
原子の構造を説明できる。4前2,前3,前4
パウリの排他律を理解し、原子の電子配置を説明できる。4前2,前3,前4,前6
結晶、エネルギーバンドの形成、フェルミ・ディラック分布を理解し、金属と絶縁体のエネルギーバンド図を説明できる。4前4,前5,前6,前9,前10
金属の電気的性質を説明し、移動度や導電率の計算ができる。4前5,前6,前7
真性半導体と不純物半導体を説明できる。4前7,前9,前10
半導体のエネルギーバンド図を説明できる。4前7,前9,前10
pn接合の構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてpn接合の電流―電圧特性を説明できる。4前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後10
バイポーラトランジスタの構造を理解し、エネルギーバンド図を用いてバイポーラトランジスタの静特性を説明できる。4前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後10
電界効果トランジスタの構造と動作を説明できる。4前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後10

評価割合

試験発表レポートノート合計
総合評価割合70101010100
基礎的能力60551080
専門的能力1055020