到達目標
①議院内閣制のしくみについて、議会や内閣、政党などの成立の歴史を学んで、様々な歴史的経緯の中で形成されたものであること、それゆえに完全な制度ではないことを理解する。
②大統領制との比較を通じて、議院内閣制は政治権力集中を促す政治体制であることを「ウェストミンスター・モデル」という観点から説明できる。
③同じ議院内閣制でも、選挙制度や第二院のしくみの違いなどによって、権力の作用が多様であることを学び、その作用のあり方について自分自身で考察し説明できるようになり、これらを通じて、特に日本の議院内閣制の特質について説明できる。
④政治社会構成員の同質性を前提とする多数代表型の日英米などとは異なり、多元社会の政治秩序を維持するための「コンセンサス・モデル」のしくみを学んで、政治体制が民主的であることの条件について各自で考え説明できる。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
民主主義の政治体制にも様々なものがあること、ならびにそれぞれの特質について理解できる。 | 民主主義の政治体制にも様々なものがあること、ならびにそれぞれの特質について説明できる。 | 民主主義の政治体制にも様々なものがあること、ならびにそれぞれの特質について理解できる。 | 民主主義の政治体制にも様々なものがあること、ならびにそれぞれの特質について理解できない。 |
大統領制など他国の政治体制との比較の中で、日本の議院内閣制の特質を理解できる。 | 大統領制など他国の政治体制との比較の中で、日本の議院内閣制の特質を説明できる。 | 大統領制など他国の政治体制との比較の中で、日本の議院内閣制の特質を理解できる。 | 大統領制など他国の政治体制との比較の中で、日本の議院内閣制の特質を理解できない。 |
イギリス議院内閣制の形成史を学び、「完成形」に見える政治制度が、様々な歴史的偶然の中で徐々に形成されたことを理解でき、そこから様々な政治制度は改善可能であることを理解できる。 | イギリス議院内閣制の形成史を学び、「完成形」に見える政治制度が、様々な歴史的偶然の中で徐々に形成されたことを説明
でき、そこから様々な政治制度は改善可能であることを説明できる。 | イギリス議院内閣制の形成史を学び、「完成形」に見える政治制度が、様々な歴史的偶然の中で徐々に形成されたことを理解でき、そこから様々な政治制度は改善可能であることを理解できる。 | イギリス議院内閣制の形成史を学び、「完成形」に見える政治制度が、様々な歴史的偶然の中で徐々に形成されたことを理解できず、そこから様々な政治制度は改善可能であることを理解できない。 |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
本講義では、議院内閣制の母国イギリスの議院内閣制を中心に、アメリカの大統領制やその他ヨーロッパの政治体制を比較する。これにより、それぞれの政治体制の作動の仕方や長短を理解するとともに、日本の議院内閣制の特質の理解をめざす。この目的を達成するために、本講義では、主に2部構成を採る。第1部では、時間軸における比較の観点から、イギリスの議院内閣制の形成史を概観する。その際、単に通史を追うのではなく、議会や内閣、政党や選挙制度など議院内閣制を支える様々なしくみの成り立ちに注目する。また、「ウェストミンスター・モデル」と言われる権力の集中が進んでいった過程について、政治支配層の特徴などを、同時期に主権国家を形成したフランスやプロイセンなどと比較しながら見ていく。第2部では、同時空間における比較の観点から、イギリスの議院内閣制を引証点として、現代の代表的な民主主義体制を紹介する。第1に、アメリカ大統領制の形成史を概観して、特に権力分立論の観点から、議院内閣制とアメリカ大統領制の違いを明らかにする。第2に、言語や宗教、人種などが異なる複数の社会を抱える多元社会を民主的に維持しているベルギーなどの多元共存型の民主的政治体制をウェストミンスター・モデルと比較して、民主的な政治体制が成立する条件を検討する。イギリスを中心に、我が国の議院内閣制を他国と比較することを通じて、日本の政治制度の特色をよりクリアに理解し、また比較することの意義や面白さを感じてほしい。
授業の進め方・方法:
講義形式。担当教員が配布する講義プリントに沿って授業を進める。
※「世界史」(2022年度)における「宗教改革」ならびに「宗教改革と主権国家の成立」の項目の歴史的知識を前提に講義を進めるので、復習しておくことが望ましい。
注意点:
講義プリントに沿って授業を進めるが、プリントは授業内容の骨格しか書かれていないものであるため、きちんと講義を聴いて、しっかりとノートを取ること。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
ガイダンス |
前半部の内容を理解する。
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2週 |
イギリス議院内閣制の歴史(1)―議会の成立 |
議会の意義、イギリスにおける議会の発祥について理解する。
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3週 |
イギリス議院内閣制の歴史(2)―イギリス宗教改革と集権化 |
イングランド宗教改革の中で、王権に権力が集中していく過程を理解する。
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4週 |
イギリス議院内閣制の歴史(3)―イギリス革命と議院内閣制の成立①ステュアート朝と内乱 |
ステュアート朝の成立の経緯を学び、王権と議会との対立が生じた事情を理解する。
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5週 |
イギリス議院内閣制の歴史(4)―イギリス革命と議院内閣制の成立②共和政~名誉革命 |
復古王政後、名誉革命に至る王権と議会の対立を理解する。これをふまえ、議会主権の成立の経緯を理解する。
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6週 |
イギリス議院内閣制の歴史(5)―イギリス革命と議院内閣制の成立③議会主権と議院内閣制 |
18世紀イギリスで議院内閣制が成立した経緯を理解する。
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7週 |
イギリス議院内閣制の歴史(6)―イギリス議院内閣制と階級社会 |
議院内閣制が民主化されていく歴史を理解する前提として、近代イギリスの支配階級(ジェントルマン)について理解する。
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8週 |
中間試験 |
これまでの授業の理解を確認する。
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4thQ |
9週 |
イギリス議院内閣制の歴史(7)―政治的民主化と二大政党制 |
19世紀のイギリスで政治的民主化が進展した経緯を理解する。
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10週 |
イギリス議院内閣制の歴史(8)―ウェストミンスター・モデルの成立と動揺
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イギリス議院内閣制のしくみと「ウェストミンスター・モデル」という観点から学び、日本との違いを理解する。
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11週 |
アメリカ大統領制の歴史(1)―アメリカ合衆国の独立と大統領制の形成① |
アメリカ大統領制が成立した経緯を理解する。
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12週 |
アメリカ大統領制の歴史(2)―アメリカ合衆国の独立と大統領制の形成② |
アメリカ大統領制が成立した経緯を理解する。
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13週 |
アメリカ大統領制のしくみ―大統領制と議院内閣制 |
アメリカ大統領制のしくみとそれを支える思想について学び、議院内閣制との作用の相違を理解する。これを踏まえて、日本の議院内閣制の特質について理解する。
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14週 |
コンセンサス・モデルの政治体制(1)―ベルギー(とオランダ)の歴史 |
多元的な国家において採られている「コンセンサス・モデル」の政治体制をベルギーを事例に理解する。
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15週 |
コンセンサス・モデルの政治体制(2)―ベルギー(とオランダ)の政治体制 |
多元的な国家において採られている「コンセンサス・モデル」の政治体制をベルギーを事例に理解する。
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16週 |
定期試験 |
これまでの授業の理解を確認する。
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文社会科学 | 社会 | 地理歴史的分野 | 民族、宗教、生活文化の多様性を理解し、異なる文化・社会が共存することの重要性について考察できる。 | 3 | 後9,後10 |
公民的分野 | 自己が主体的に参画していく社会について、基本的人権や民主主義などの基本原理を理解し、基礎的な政治・法・経済のしくみを説明できる。 | 4 | |
現代社会の考察 | 現代社会の特質や課題に関する適切な主題を設定させ、資料を活用して探究し、その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について人文・社会科学の観点から展望できる。 | 4 | |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 100 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100 |
基礎的能力 | 80 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 80 |
専門的能力 | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10 |
分野横断的能力 | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10 |