概要:
物理化学は,化学および応用化学分野における専門基礎科目の1つであり,材料学を深く学ぶ基礎となる。物質の状態を正しく把握し,気体を本質から理解し,さらに物質の状態変化に伴う仕事やエネルギー変化,および化学反応に伴う反応熱などについての基本的事項を学習することによって,化学技術者としての専門的基礎知識を習得する。ものづくりの現場で実務経験のある教員によって,実際に化学工場や研究所といった職場内での実務や製品の機能性そのもの等に活かされている物理化学の原理的な側面を解説することで,実務で幅広く活用できる能力を養成する。
授業の進め方・方法:
授業は随時演習を取り入れた講義形式で進めていく。この中で、平均週1回を目安に前週までの内容に関する小テストを実施する。また、必要に応じて随時課題がある。
注意点:
【成績評価の基準・方法】
試験の成績90%,小テストと課題からなる平常点10% の割合で総合的に評価する。学期毎の評価は中間と期末の各期間の評価の平均,学年の評価は前学期と後学期の評価の平均とする。
なお,後学期中間の評価は前学期中間,前学期末,後学期中間の各期間の評価の平均とする。技術者が身につけるべき専門基礎として,到達目標に対する達成度を試験等において評価する。
【事前・事後学習】
本科目は事後学習に重点を置いている。事後学習を十分に進めたうえで次の授業の最初に実施する小テストに臨むこと。
場合によっては課題を課すことがある。課題に関しては,次の授業の予習となる内容であり,すでに習った内容を思い出すために課す場合が多い。必ず自身で事前学習として実施して〆切までに提出すること。
【履修上の注意】
この科目を履修するにあたり,1年生の化学Ⅰ,物理Ⅰの一部(第Ⅰ章「力学」)2年生の化学Ⅱ, 材料学基礎, 3年生の化学計算演習の内容を十分に理解しておくこと。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
◇物理化学の目的と役割および物質のとらえ方 ◇単位と基礎用語:SI単位系,基本的な物理量 ◇物質の三態,状態変化,状態図,臨界点 |
化学工業での物理かが分野の役割と重要性を理解する 物理量とそれに伴う単位を説明でき,物理化学の基礎的用語を正しく使用できる 物質の三態,およびそれらの相互変化について説明できる 純物質の状態図と臨界点の特徴を説明できる
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2週 |
◇理想気体の各種法則の演習 |
理想気体に関する各種法則を利用する各種演習問題を解けるようになる。
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3週 |
◇実在気体の状態方程式 ◇ファンデルワールスの式の導出 ◇ファンデルワールス式およびビリアル方程式に関する演習 |
実在気体の状態方程式の導出とその説明ができる ファンデルワールス式およびビリアル方程式を使っての計算ができる。
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4週 |
◇理想気体の分子運動論 ◇理想気体の速度分布と平均速度 |
理想気体のモデルを説明でき,分子運動論から圧力の式を導出できる 平均速度を説明でき,計算できる
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5週 |
◇化学熱力学に関係する系の考え方 ◇仕事と熱,熱と平衡
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系と外界の関係,および系の準静的過程による変化について説明できる
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6週 |
◇熱容量と比熱 |
熱容量,比熱を区別して計算できる
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7週 |
◇熱力学第一法則 ◇定圧・定積変化 |
エネルギー収支と熱力学第一法則を説明できる 定圧および定積変化における系と外界の熱と仕事の出入りを計算できる
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8週 |
◇状態量 ◇エンタルピー |
状態量が何かを説明できる エンタルピーとは何かを説明できる
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4thQ |
9週 |
◇様々なエンタルピー |
様々なエンタルピーの種類を説明できる。
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10週 |
◇状態変化とエンタルピー |
状態変化とエンタルピー変化を関係づけることができ,これに基づいた化学量論計算ができる。
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11週 |
◇ヘスの法則 |
エンタルピー変化のデータをもとに,ヘスの法則に基づいた熱量計算ができる。各種標準エンタルピー変化を利用した熱量計算ができる
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12週 |
◇ヘスの法則 |
エンタルピー変化のデータをもとに,ヘスの法則に基づいた熱量計算ができる。各種標準エンタルピー変化を利用した熱量計算ができる
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13週 |
◇標準状態と標準生成エンタルピー |
標準生成エンタルピーがどのようにして決定されたか理解できる。標準生成エンタルピーからの反応エンタルピーの計算ができる
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14週 |
◇反応熱の温度依存性と熱容量 |
反応熱の温度依存性に関するキルヒホッフの法則を理解し,化学量論計算に活用できる。
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15週 |
◇クラウジウス・クラペイロンの式 |
クラウジウス・クラペイロンの式を用いて,減圧下の沸点計算,目標の沸点までの圧力計算ができる。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 熱 | 原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。 | 4 | 後7,後8 |
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。 | 4 | 後12 |
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。 | 4 | 後12 |
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。 | 4 | |
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。 | 4 | |
気体の内部エネルギーについて説明できる。 | 4 | 後12 |
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。 | 3 | 後13 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 化学・生物系分野 | 有機化学 | σ結合とπ結合について説明できる。 | 2 | |
混成軌道を用い物質の形を説明できる。 | 2 | |
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。 | 2 | |
無機化学 | 主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。 | 2 | |
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。 | 2 | |
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 2 | |
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。 | 2 | |
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。 | 2 | |
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。 | 3 | |
イオン結合と共有結合について説明できる。 | 2 | |
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。 | 3 | |
金属結合の形成について理解できる。 | 2 | |
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。 | 2 | |
配位結合の形成について説明できる。 | 3 | |
水素結合について説明できる。 | 3 | |
物理化学 | 気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。 | 4 | |
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。 | 4 | 後7 |
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。 | 4 | 後9 |
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。 | 4 | 後5 |
混合気体の分圧の計算ができる。 | 4 | |
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。 | 4 | |
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。 | 4 | |
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。 | 4 | |
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。 | 4 | |
エンタルピーの温度依存性を計算できる。 | 4 | |
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。 | 4 | 後13 |