応用物理

科目基礎情報

学校 苫小牧工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 応用物理
科目番号 A4-1810 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 4
開設学科 電気電子工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 前期:4 後期:4
教科書/教材 小出昭一郎著「物理学(三訂版)」裳華房
担当教員 長澤 智明,柿並 義宏

到達目標

1. ニュートンの運動方程式を微分方程式として理解して、物体の運動を求めることができる。
2. 剛体の運動に関する問題を解くことができる。
3. 熱力学の第1・2法則、カルノーサイクルとエントロピーについて説明できる。
4. 量子力学の必要性および特徴的な結果について説明することができる。
5. 実験と理論とを結びつけて理解でき、実験結果を考察しレポートとしてまとめることができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
1. ニュートンの運動方程式を微分方程式として理解して、物体の運動を求めることができる。ニュートンの運動方程式を微分方程式として理解して、物体の運動を求めることができる。いくつかの場合について、ニュートンの運動方程式を解いて、物体の運動を求めることができる。ニュートンの運動方程式を解いて、物体の運動を求めることができない。
2. 剛体の運動に関する問題を解くことができる。剛体の運動に関する問題を解くことができる。剛体の運動に関する基本的な問題を解くことができる。剛体の運動に関する基本的な問題を解くことができない。
6. 熱力学の第1・2法則、カルノーサイクルとエントロピーについて説明できる。熱力学の第1・2法則、カルノーサイクルとエントロピーについて説明できる。熱力学の第1・2法則、カルノーサイクルとエントロピーについてある程度説明できる。熱力学の第1・2法則、カルノーサイクルとエントロピーについて説明できない。
6. 量子力学の必要性および特徴的な結果について説明することができる。量子力学の必要性および特徴的な結果について説明することができる。量子力学の必要性について説明することができる。量子力学の必要性および特徴的な結果について説明することができない。
7. 実験と理論とを結びつけて理解でき、実験結果を考察しレポートとしてまとめることができる。実験と理論とを結びつけて理解でき、実験結果を考察しレポートとしてまとめることができる。実験結果をまとめレポートとしてまとめることができる。実験結果をまとめレポートとしてまとめることができない。

学科の到達目標項目との関係

JABEE基準1 学習・教育到達目標 (c) 数学及び自然科学に関する知識とそれらを応用できる能力
JABEE基準1 学習・教育到達目標 (d)(1) 専門工学(工学(融合複合・新領域)における専門工学の内容は申請高等教育機関が規定するものとする)の知識と能力
JABEE基準1 学習・教育到達目標 (e) 種々の科学,技術および情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
学習目標 Ⅱ 実践性
学科目標 D(工学基礎) 数学,自然科学,情報技術および電気磁気学,電気回路などを通して,工学の基礎知識と応用力を身につける。
本科の点検項目 D-ⅱ 自然科学に関する基礎的な問題を解くことができる
学校目標 E(継続的学習) 技術者としての自覚を持ち,自主的,継続的に学習できる能力を身につける
本科の点検項目 E-ⅱ 工学知識,技術の修得を通して,継続的に学習することができる

教育方法等

概要:
科学技術の進歩に対応できる基礎能力を養う。前期では各週座学4時間とし、力学と熱力学を学習する。後期では各週座学2時間と実験2時間の計4時間とする。座学では量子論を学習する。実験では5つのテーマについて実験を行い、レポートを書いてまとめる力をつけることを目標とする。
授業の進め方・方法:
力学では運動の法則といくつかの保存則(エネルギー、運動量、角運動量)、剛体の回転運動の扱い方について学習する。熱力学の分野では準静的変化を扱う際の考え方とエントロピーについて学習する。量子論の分野では粒子性とともに波動性をも示す電子の運動を記述するためには量子力学が必要であることを学習する。実験では自然現象を物理的側面から考察し理解する能力を養成し、実験誤差の処理および測定機器の操作に習熟する。実験は10班に分かれて応用物理実験室で行う。なお、各班の具体的な実験種目に関するスケジュールは応用物理実験室に掲示する。
注意点:
3学年までに学習した物理や数学(ベクトル、微分積分など)の基礎知識を前提とする。授業中に配布される演習課題に対して自学自習により取り組むこと。レポート提出については授業中に指示する。目標が達成されていないと判断される場合は再提出を求める。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 (力学)速度と加速度
(熱力学)熱平衡状態と温度
(力学)ベクトル量としての位置、速度、加速度を理解し、それらベクトル量の合成と分解ができる。
(熱力学)温度、圧力、体積、内部エネルギーの定義を説明できる。
2週 (力学)運動方程式1
(熱力学)状態方程式
(力学)力が一定の場合、力が時間にの依存する場合の物体の運動に関する問題を解くことができる。
(熱力学)理想気体の状態方程式を説明でき、関連する計算ができる。
3週 (力学)運動方程式2
(熱力学)熱力学の第1法則
(力学)力が速度の依存する場合の物体の運動に関する問題を解くことができる。
(熱力学)熱力学の第1法則を説明できる。
4週 (力学)運動方程式3
(熱力学)熱容量、比熱、熱量の保存
(力学)力が座標に依存する場合の物体の運動に関する問題を解くことができる。
(熱力学)熱容量、比熱に関連する計算ができる。
5週 (力学)放物運動、円運動
(熱力学)理想気体の状態変化1
(力学)放物運動と円運動に関する問題を解くことができる。
(熱力学)定積変化、定圧変化に関連する計算ができる。
6週 (力学)単振動、単振り子
(熱力学)理想気体の状態変化2
(力学)単振動、単振り子に関する問題を解くことができる。
(熱力学)等温変化、断熱変化に関連する計算ができる。
7週 (力学)仕事とエネルギー
(熱力学)カルノーサイクル
(力学)仕事とエネルギーの関係を理解する。
(熱力学)カルノーサイクルとその効率について説明できる。
8週 (力学)力学的エネルギー保存則
(熱力学)熱力学の第2法則
(力学)力学的エネルギー保存を理解し、応用できる。
(熱力学)熱力学の第2法則について説明できる。
2ndQ
9週 (力学)力のモーメントと角運動量
(熱力学)エントロピー1
(力学)回転運動に関わる力のモーメントと角運動量を理解する。
(熱力学)エントロピーの定義を説明できる。
10週 (力学)角運動量保存則
(熱力学)エントロピー2
(力学)角運動量保存則に関する問題を解くことができる。
(熱力学)エントロピー増大の原理を説明できる。
11週 (力学)固定軸の周りの剛体の回転運動
(熱力学)エントロピー3
(力学)固定軸の周りの剛体の回転運動を記述する基礎方程式を理解する。
(熱力学)エントロピーに関連する問題を解くことができる。
12週 (力学)成果発表および追実験
回転運動1
(熱力学)気体分子運動論1
(力学)回転の運動方程式に関する問題を解くことができる。
気体分子の運動を気体の圧力や温度を関係づけて説明することができる。
(熱力学)気体分子の運動と気体の圧力、温度との関係を説明できる。
13週 (力学)回転運動2
(熱力学)気体分子運動論2
(力学)回転に関する問題を解くことができる。
(熱力学)気体分子の内部エネルギーに関係する計算ができる。
14週 (力学)剛体の平面運動1
(熱力学)マクスウェル分布1
(力学)剛体の平面運動に関する簡単な問題を解くことができる。
(熱力学)マクスウェル分布について説明できる。
15週 (力学)剛体の平面運動2
(熱力学)マクスウェル分布2
(力学)剛体の平面運動に関する問題を解くことができる。
(熱力学)マクスウェルの速度分布関数を使って、エネルギー等分配の法則を導ける。
16週
後期
3rdQ
1週 (実験)実験ガイダンス
(量子論)古典物理学で説明できないこと
(実験)実験で使用する機器や測定等に関する基礎的事項を理解する。
(量子論)古典物理学で説明できないことを理解する。
2週 (実験)実験1:液体の密度
(量子論)光電効果
(実験)各種濃度の溶液試料について求めた密度から、濃度と密度の関係を表す実験式を求めることができる。
(量子論)光量子仮説によって光電効果を説明できる。
3週 (実験)実験1:液体の密度
(量子論)コンプトン効果
(実験)各種濃度の溶液試料について求めた密度から、濃度と密度の関係を表す実験式を求めることができる。
(量子論)コンプトン効果を説明できる。
4週 (実験)実験2:光の干渉と回折
(量子論)ボーアの原子模型1
(実験)光の波動性について実験を通して理解する。
(量子論)ボーアの仮説を元に水素原子における電子軌道の式を導出することができる。
5週 (実験)実験2:光の干渉と回折
(量子論)ボーアの原子模型2
(実験)光の波動性について実験を通して理解する。
(量子論)ボーアの仮説をもとに水素原子における電子軌道と電子の波動関数を求めることができる。
6週 (実験)実験3:気体温度計
(量子論)ドブロイ波長
(実験)シャルルの法則に基づき、気体の温度と体積から未知の水温が計測できることを確認する。
(量子論)物質波の考えを理解し、ドブロイ波長を計算することができる。
7週 (実験)実験3:気体温度計
(量子論)シュレディンガー方程式の構造
(実験)シャルルの法則に基づき、気体の温度と体積から未知の水温が計測できることを確認する。
(量子論)シュレディンガー方程式の構造を説明することができる。
8週 (実験)実験4:フランクヘルツの実験
(量子論)波動関数の確率解釈
(実験)フランクヘルツの実験から、原子の定常状態について理解する。
(量子論)波動関数の解釈を説明することができ、規格化条件を用いた計算をすることができる。
4thQ
9週 (実験)実験4:フランクヘルツの実験
(量子論)位置の期待値
(実験)フランクヘルツの実験から、原子の定常状態について理解する。
(量子論)波動関数が与えられたときに、位置の期待値を計算することができる。
10週 (実験)実験5:放射線の測定
(量子論)無限に深い井戸型ポテンシャル1
(実験)放射線の測定を通して放射線の理解を深める。
(量子論)無限に深い井戸型ポテンシャル中の電子の波動関数とエネルギーを求めるための過程を計算することができる。
11週 (実験)実験5:放射線の測定
(量子論)無限に深い井戸型ポテンシャル2
(実験)放射線の測定を通して放射線の理解を深める。
(量子論)無限に深い井戸型ポテンシャル中の電子の波動関数とエネルギーを求めることができる。
12週 (実験)レポート指導、追実験
成果発表および追実験
(量子論)線形代数と量子論1
(実験)レポートの体裁および内容について指導を受け、必要であれば追実験を行う。
(電磁気学)コイルに働く起電力を説明できる。
13週 (量子論)線形代数と量子論2 (量子論)複素成分をもつ行列に対して、固有値と固有ベクトルを求めることができる。
14週 (量子論)線形代数と量子論3 (電磁気学)コイルが持つエネルギーを理解し、計算できる。
15週 (量子論)水素原子 (量子論)水素原子中の電子の波動関数とエネルギー固有値を求めるための計算過程を説明することができる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学速度と加速度の概念を説明できる。3前1
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。3前1
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。3前1
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。3前1
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。3前1
自由落下、及び鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前2
鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前2
水平投射、及び斜方投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。3前2
物体に作用する力を図示することができる。3前2
力の合成と分解をすることができる。3前2
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。3前2
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。3前2
慣性の法則について説明できる。3前2
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。3前2
運動方程式を用いた計算ができる。3前2
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。3前2
静止摩擦力がはたらいている場合の力のつりあいについて説明できる。3前2
最大摩擦力に関する計算ができる。3前2
動摩擦力に関する計算ができる。3前2
仕事と仕事率に関する計算ができる。3前7
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。3前7
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前7
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前7
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3前7
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。3前9
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。3前9
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。3前9
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。3前6
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。3前6
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。3前6
万有引力の法則から物体間にはたらく万有引力を求めることができる.3前6
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。3前6
力のモーメントを求めることができる。3前9
角運動量を求めることができる。3前9
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。3前9
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。3前9
重心に関する計算ができる。3前9
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。3前9
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。3前9
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。3前1
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。3前4
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。3前4
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。3前4
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。3前8
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。3前5
気体の内部エネルギーについて説明できる。3前5
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。3前3
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。3前6
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。3前7
熱機関の熱効率に関する計算ができる。3前7
物理実験物理実験測定機器などの取り扱い方を理解し、基本的な操作を行うことができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11
安全を確保して、実験を行うことができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11
実験報告書を決められた形式で作成できる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11
有効数字を考慮して、データを集計することができる。3後2,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11
熱に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後6,後7
光に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後4,後5
電磁気に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後4,後5
電子・原子に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。3後8,後9

評価割合

試験小テスト・課題実験レポート合計
総合評価割合602020100
基礎的能力40101060
専門的能力20101040
分野横断的能力0000