物理化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 有明工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物理化学Ⅱ
科目番号 4C019 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 1
開設学科 創造工学科(応用化学コース) 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 前期:1
教科書/教材 アトキンス物理化学要論第7版(東京化学同人)P.Atkins、J.Paula著(稲葉、千葉、鈴木 訳)
担当教員 近藤 満

到達目標

1.Gibbsエネルギーを理解し、その応用ができる。
2.Gibbsの相律を理解し、自由度が計算できる。
3.束一的性質を理解し、その応用ができる。
4.化学平衡を理解し、その応用ができる。
5.溶液における化学平衡を理解し、その応用ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1Gibbsエネルギーを理解し、自発的反応の方向性、平衡定数の算出、平衡組成の算出に応用できる。Gibbsエネルギーを理解している。Gibbsエネルギーを理解できていない。
評価項目2Gibbsの相律を理解し、自由度を計算できる。Gibbsの相律を理解している。Gibbsの相律を理解できてない。
評価項目3束一的性質を理解し、束一的性質を利用した諸計算ができる。束一的性質を理解し、束一的性質を利用して溶質の分子量が計算できる。束一的性質を理解できていない。
評価項目4化学平衡を理解し、Gibbsエネルギーと関連付けて平衡定数、平衡組成を計算でき、物理および化学的変化の自発的進行の方向を判定できる。化学平衡を理解している。化学平衡を理解できていない。
評価項目5溶液の平衡を理解し、各種溶液のpHの計算、不均一系平衡の計算ができる。溶液の平衡を説明でき、単純な系(強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩の溶液)のpHが計算できる。溶液の平衡を理解できていない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 B-2 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学は種々の物質の構造と特性について、巨視的および微視的な2つの立場から理解しようとするものである。
物理化学Ⅱでは、物理化学Ⅰで学んだ熱力学パラメータの理解を深める。特に、ギブズエネルギーは化学分野では便利なエネルギーであり、物理的および化学的工程が自発的に進む方向を判定できるほか物質の状態までわかる優れものである。これらの熱力学的パラメータは反応物系(始点)と生成物系(終点)に注目し、その途中は吟味していないことを忘れてはならない。また、ギブズの相律を学び、物質の分離・精製および物質の創成の考え方につながる純物質、混合物(2成分系)の相平衡状態図の読み方を理解する。また、化学反応での反応物、生成物での化学反応平衡から物質生成(化学反応の進行)の予想、平衡溶液の物質の平衡から溶液のpHや沈殿生成などを計算によって求められることは、工場等での適用が重要な位置を占めることを理解する。
授業の進め方・方法:
教科書の「アトキンス物理化学要論第7版」に準拠し、講義形式で進める。物理化学Ⅱではテーマ4からテーマ5(トピック5G)までが該当する。また,必要に応じて資料や問題を配布する。授業中に教科書の例題、例題の類題、自習問題、演習問題、配布プリントの問題などの計算問題を解いて理解を深めるので関数電卓は必ず持参すること。定期試験においても関数電卓は持ち込みとする。時間的制約からすべての問題を授業中に解くことはできないので、自主的にこれらの問題を解いて理解を深める。化学・生物分野では、専門用語の英語は極めて重要である。専門用語の英語は早いうちから慣れておくことを必須課題とする。具体的には、テキスト脚注の英単語は必須とし、別途、試験を実施する。
注意点:
物理化学の理解には数式の取り扱いが必須であり、これまで数学で学んだことを活用する必要がある。これまで数学で学んだ、解析学(指数対数を含む)、幾何学、微積分などを活用していくことになるので、数学が苦手であった学生には数学の復習も重要となる。自然の法則が数式で記述できることに感動を覚え、自身の努力(計算)で科学現象を導く醍醐味、未来を予測(予想)できることの感動、工学(工場)での応用・活用への第一歩を知る歓びを知って欲しい。また、
 1.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。
 2.計算時は愚直に電卓に向かい合うことと同時にどう楽をするか(どう効率的に行うか)ということを意識して欲しい。
 3.計算機のほか、紙と鉛筆による数式の手計算も重要である。また、エクセルやPCソフトの活用も有効である。
 4.「単位」は非常に重要である。物理化学でも数値だけの解答であることは特殊な場合(無次元数)を除いてない。異なる単位同士の足し算、引き算はあり得ないし、単位の掛け算、割り算により別の単位が生成することを思い出して欲しい。また、接頭のミリ、センチ、ヘクト、キロなどを軽んじることなく、細心の注意を払って単位を見ることも重要である。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 概要説明 物理化学Ⅰで学んだこと確認する。
2週 相転移の熱力学
Gibbsエネルギーを理解する。
3週 純物質の相図(1) 純物質の相図を理解する。物質に固有な点を説明できる。
蒸気圧曲線などの相境界を説明できる。
4週 純物質の相図(2) Gibbsの相律を理解し、純物質、混合物の自由度を計算できる。
様々な濃度の表し方を理解し、様々な濃度の計算ができる。
5週 部分モル量 部分モル量を理解し、その計算ができる。
自発的な混合をGibbsエネルギーを使って説明できる。
6週 溶液 ラウールの法則とヘンリーの法則を説明できる。
理想溶液、理想希薄溶液に関する計算ができる。
7週 束一的性質 束一的性質(①蒸気圧降下、②沸点上昇、③凝固点降下、④浸透)を理解し、それらに関する計算ができる。
8週 【前期中間試験】
2ndQ
9週 試験返却 中間試験で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的理解を深める。
10週 混合物の相図 平衡状態を理解し、気液平衡などを説明できる。
てこの規則を使って各相の相対的な存在量を求めることができる。
11週 化学変化と化学平衡(1) 化学平衡、反応比、平衡定数について理解し、ルシャトリエの原理を説明できる。
標準生成Gibbsエネルギー、反応Gibbsエネルギーを理解する。
12週 化学変化と化学平衡(2) 平衡定数とGibbsエネルギーの関係を理解し、その計算(平衡定数、平衡組成、エネルギーなど)ができる。
13週 化学変化と化学平衡(3) プロトン移動平衡や多プロトン酸について説明できる。
14週 化学変化と化学平衡(4) 酸塩基平衡について理解し、様々な溶液のpHが計算できる。
溶解度平衡を説明できる。
15週 【前期末試験】
16週 試験返却
物理化学Ⅱのまとめ
期末試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野分析化学電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。4前6,前14
物理化学純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。3前3
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。3前10
束一的性質を説明できる。4前7
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4前7
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4前7
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4前4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4前11,前13
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4前11
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4前12,前14
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4前1,前2,前5,前11,前12
平衡定数の温度依存性を計算できる。4前11

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000