到達目標
1.生物の反応を物理化学的観点から理解する。
2.量子力学を理解する。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
評価項目1 | 生物の反応を物理化学的観点から理解し、物質の構造と関連付けて説明できる。 | 生物の反応を物理化学的観点から理解する。 | 生物の反応を物理化学的観点から理解できない。 |
評価項目2 | 量子論を理解し、原子、分子の挙動、原子(分子)軌道を説明できる。 | 量子論を理解する。 | 量子論を理解できない。 |
評価項目3 | | | |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
中学生の時期から、「仕事」と「熱」の概念が導入され、それらが相互に変換可能であることを学んできた。高専生では「系」という概念が正式に導入され、「仕事」と「熱」の関係を深く学修してきた。すなわち、内部エネルギーという状態量を導入し、さらに条件を限ることで便利な状態量のエンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギーを駆使することで、化学現象、化学反応について深く理解することを行ってきた。5年生前期までのこれらの学修から、「生物の反応」、「原子・分子レベルでの反応」がつじつまが合わないのではないかという疑問を持った学生も多いと推察する。一見「生物の反応」、「原子・分子レベルでの反応」は今までの学修から逸脱しているように見える。しかし、これは誤りで「生物の反応」を理解するには、系(細胞や生物)と外界(環境)の全体を正しく見ていくことが重要であり、「原子・分子レベルでの反応」を理解するには『量子論』という考えを導入する必要がある。『量子論』はその名は出ないものの様々な科目で断片的に学修し、体得している感が否めないが、本科目で集約し、系統立てて理解していく。本科目では、『生物反応』と『量子論』の学修を行い、それらが特殊なものではなく、今まで学修してきた体系と矛盾ないものであることを体感し、理解を深めて欲しい。
「4.質の高い教育を皆に(SDGs)」
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。前半は「Essential細胞生物学第4版」の3、13、14章を中心に「アトキンス物理化学要論第7版」の関連部分(テーマ2、3、5など)を用いて、後半は「アトキンス物理化学要論第7版」のテーマ7、8を中心に行う。前半では3、4、5年生での生物系の科目(生物化学1・2、生物工学基礎、生物工学)の学修および3、4年生の物理化学(物理化学1の系、内部エネルギー、エンタルピー、エントロピー、物理化学2のGibbsエネルギー、物理化学3の電気化学)の学修が重要であることから、これらの理解が不十分である場合は、当該部分の復習をして理解を深めて授業に臨んでほしい。後半では3年生の無機化学などで学修した波動方程式、波動関数(s、p、dオービタルを含む)を理解することであるので、当該分野の理解が不足している場合は、当該部分の復習をして理解を深めて授業に臨んでほしい。また、時間的制約からすべての問題を授業中に解くことはできないので、自主的にこれらの問題を解いて理解を深めてほしい。学修単位科目であることから事前、事後の学修として、一部または全部をレポート課題にするので指定した期日までに提出をすること。化学・生物分野では、専門用語の英語は極めて重要である。専門用語の英語は早いうちから慣れておくことが重要であり、必須課題とし、テキストの脚注英単語はその意味を含めて定期試験に出題する。
注意点:
本科目はテスト80%、ポートフォリオ20%で評価する。
物理化学の理解には数式の取り扱いが必須であり、これまで数学で学んだことを活用する必要がある。これまで数学で学んだ、解析学(指数対数を含む)、幾何学、微積分などを活用していくことになるので、数学が苦手であった学生には数学の復習も重要となる。特に量子論では微分・積分が重要であるので、復習をして、使いこなせるようになっておくこと。自然の法則が数式で記述できることに感動を覚え、自身の努力(計算)で科学現象を導く醍醐味、未来を予測(予想)できることの感動、工学(工場)での応用・活用への第一歩を知る歓びを知って欲しい。また、
1.「単位」は非常に重要である。付け足しでつけるものではない。物理化学でも数値だけの解答であることは特殊な場合(無次元数)を除いてない。異なる単位同士の足し算、引き算はあり得ないし、単位の掛け算、割り算により別の単位が生成することを思い出して欲しい。また、接頭のミリ、センチ、ヘクト、キロなどを軽んじることなく、細心の注意を払って単位を見ることも重要である。計算で出てきた数字に適当に単位を付けておくことは言語道断である。
2.数字の取り扱いも重要である。意味ある数字は足し算、掛け算しても意味があるが、意味のない数字は足し算、掛け算しても意味がない。すなわち、有効数字を意識して数字を取り扱うことが重要である。計算で出てきた数字を自分の感覚で取り扱うことはあってはならない行為である。
3.関数電卓の使い方に慣れ、単純な計算でも必ず実行して最終結果まで自身で導くこと。計算時は愚直に電卓に向かい合うことと同時にどう楽をするか(どう効率的に行うか)ということを意識して欲しい。計算機のほか、紙と鉛筆による数式の手計算も重要である。また、エクセルやPCソフトの活用も有効である。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
概要説明 物理化学の復習 |
系と外界、内部エネルギー、仕事と熱、エンタルピー、Gibbsエネルギーを説明できること。
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2週 |
生体エネルギー論① |
平衡、標準状態が説明でき、標準Gibbsエネルギーと平衡関係からGibbsエネルギーが計算できること。 標準Gibbsエネルギーと生物学的標準Gibbsエネルギーを理解し、相互に計算することができること。
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3週 |
生体エネルギー論②基質レベルのリン酸化(解糖系、嫌気呼吸、クエン酸回路) |
共役反応、Gibbsエネルギーを理解し、基質レベルのリン酸化(解糖系、クエン酸回路)について分子レベル、エネルギー的な説明できること。
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4週 |
生体エネルギー論③化学浸透共役 |
化学浸透共役について説明できること。 電池および電気ポテンシャルを理解し、電位差とGibbsエネルギーの関係(ネルンストの式)が説明できること。 化学ポテンシャルを理解し、濃淡電池、受動輸送について説明できること。 電池、電気ポテンシャル、化学ポテンシャル、電気化学ポテンシャルに関する諸計算ができる。
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5週 |
生体エネルギー論⑤電子伝達系 |
電気化学ポテンシャルを理解し、酸化的リン酸化を説明できること。 プロトン駆動力に関する諸計算ができること。
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6週 |
生体エネルギー論⑥光合成 |
光エネルギーの吸収と電子の流れおよび電気化学ポテンシャルと関連付けて光リン酸化を説明できること。
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7週 |
生体エネルギー論⑦光合成 |
光リン酸化と関連付けて、二酸化炭素固定反応を説明できること。 光リン酸化と酸化的リン酸化の類似点、相違点を理解し、それらを説明できること。
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8週 |
中間試験 |
中間試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
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4thQ |
9週 |
試験返却 量子論①(量子論の出現) |
電子、陽子などの小さな粒子が発見された歴史を説明できること。 ボーアのモデルを説明できる。
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10週 |
量子論②(量子論の出現)
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エネルギーが離散的であることついて理解・説明できること。 光電効果と電子線の回折について理解し、波-粒子二重性について説明できること。 波動関数の概念を理解できること。
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11週 |
量子論③(微視的な系の動力学)
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波動関数の概念を理解し、シュレディンガー方程式の意味を理解できること。 ボルンの解釈を理解・説明できること。 不確定性原理を理解・説明できること。
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12週 |
量子論④(並進運動1) |
一次元の運動(井戸型ポテンシャル)を理解し、解くことができること。 一次元の運動を理解し、二次元・三次元の運動を理解できること。
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13週 |
量子論⑤(並進運動2) (回転運動) (振動運動) |
トンネル現象について理解・説明できること。 回転運動について理解・説明できること。 振動運動について理解・説明できること。
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14週 |
原子の構造(水素型原子) |
水素型原子について理解し、オービタル(s、p、dオービタル)について説明できること。
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15週 |
期末試験 |
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16週 |
試験返却 物理化学のまとめ |
期末試験の範囲で理解不足であった点を認識する。理解できていた点でも別解法や多面的な理解を深める。
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | その他 | 合計 |
総合評価割合 | 80 | 0 | 0 | 0 | 20 | 0 | 100 |
基礎的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
専門的能力 | 80 | 0 | 0 | 0 | 20 | 0 | 100 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |