1. 各振動現象を微分方程式を用いて記述し、方程式を解くとともに、その物理的意味を正しく説明できる。
2 波動現象の基礎的事項を数学的・図形的表現とともに正しく説明でき、各種の問題について解くことができる。
3. 物質の熱的性質に関する基礎的事項を説明して、状態変化、熱量の計算、熱量の移動に関する問題を解くことができる。
概要:
応用物理は各技術分野の基本となる力学・波動・熱学的現象を取り扱うものであり、これら物理現象と物理法則を学習する事により自然科学分野での基礎力と電気電子工学分野におけるこれら利用例の理解と応用力を養う。
授業の進め方・方法:
多くの物理現象が微分方程式の形であらわされるため、数学的理解を深めておくこと、また、力学的現象と電気磁気的現象の対応関係、電気電子工学における応用に留意することが重要である。様々な形で主体的、対話的な学びを実践し、学習の深化(アクティブラーニング)を行う。
注意点:
補助教材として動画資料やグループ学習用大判プリント教材(LSH)、課題プリントなどを活用しながら継続的に学習していくことが重要である。また夏季休業中の課題プリントの取り組みと実力試験を重視した指導を行う。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
ガイダンス・運動について:並進運動と回転運動について運動方程式による記述と数学的扱い |
並進運動と比較しながら、回転運動における各物理量を用いて運動方程式をたてて、微分方程式として簡単な場合の回転運動を解くことができる。
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2週 |
振動現象:フックの法則と単振動について |
単振動におけるフックの法則を理解し、単振動における運動方程式をたてて、各条件での方程式の解を求め、式とグラフを用いてその運動を説明できる。
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3週 |
振動におけるオイラーの公式、j演算子の利用と数学的な扱いについて |
振動に関する運動方程式の解法におけるオイラーの公式と電気回路におけるj演算子の利用について、その数学的な扱いを理解して基本的な問題について適用することができる。
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4週 |
物理振り子について(重心、慣性モーメントと力のモーメント) |
単振り子の場合と異なる、物理振り子の重心、慣性モーメント、重力による力のモーメントを理解して、基本的な場合についての運動方程式を解き、その運動を説明できる。
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5週 |
慣性モーメントの計算(直交軸の定理、平行軸の定理)とねじれ振動 |
慣性モーメンの計算における直交軸の定理、平行軸の定理を理解して、その導出と基本的な場合について計算することができる。ねじれ振動についてその運動の図形的説明と運動方程式による記述をすることができる。
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6週 |
減衰振動:振動の分類、機械モデル、微分方程式とその解法(特性方程式) |
減衰振動の運動を理解して、特性方程式により運動方程式(斉次微分方程式)を解く(一般解)ことができる。運動方程式における判別式による振動の分類(減衰振動、臨界制動、過制動)、対応する機械モデルの提示ができる。
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7週 |
減衰振動について:初期条件を含む振動問題の解法と運動の分析 |
初期条件を含む減衰振動の運動方程式を解き、その運動(特殊解)を説明することができる。
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8週 |
中間試験 |
試験範囲となった物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
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2ndQ |
9週 |
外力が正弦波の場合の強制振動について:j演算子を用いた解法と電気回路との比較 |
正弦波として記述される外力が振動系に作用する強制振動の場合について、その運動方程式を電気回路におけるj演算子を用いて解くことができ、電気回路との比較からその運動を説明できる。
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10週 |
外力が正弦波の場合の強制振動と共振現象について:共振現象と電気回路との比較 |
強制振動における変位共振・速度共振の条件の導出と、共振状態の記述・説明ができる。電気回路との比較からその特徴を説明できる。
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11週 |
力学現象と電気的現象の基本的対応関係(等価回路) |
力学としての振動現象とLCRからなる電気回路の比較から基本的対応関係と、基本的な場合における等価回路を示すことができる。
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12週 |
振動問題の解法とラプラス変換について |
ラプラス変換の定義を理解して諸定理の導出ができ、基本的な微分方程式について適用して方程式を解き、振動問題に適用することができる。
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13週 |
ラプラス変換演習:基本的な問題演習と物理への適用 |
授業で取り上げた振動問題について、その運動方程式をラプラス変換を用いて解くことができる。
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14週 |
ラプラス変換を用いた振動問題の解法:オーバーシュートとリンギングについて |
正弦波として表されない外力f(t):擬ステップ関数(ランプ+ステップ)がおもりとばねから成る振動系に作用した場合について、ラプラス変換による解法の説明ができ、オーバーシュートとリンギングの発生条件に付いて説明できる。
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15週 |
前期中の学習事項の振り返りと総合演習 |
学習した物理現象の説明、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
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16週 |
期末試験 |
試験範囲となった物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
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後期 |
3rdQ |
1週 |
物質の力学的性質について:変形と歪・応力について、フックの法則と各弾性率 |
物質の力学的性質について変形の種類、歪・応力の関係について図を用いて説明することができる。フックの法則と各弾性率(ヤング率、体積弾性率、剛性率)について図式を用いて説明できる。
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2週 |
波動現象:波動の種類と波動方程式、波動を表す式、音波・電磁波(光)について |
波動現象についてその特徴を波動の種類とともに説明ができる。式を用いて波動方程式、方程式を満たす波動を表す式が説明できる。音波・電磁波(光)について、その諸特徴を図表を用いて説明できる。
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3週 |
弦を伝わる横波、固体を伝わる縦波の方程式と波動方程式について |
弦を伝わる横波、固体を伝わる縦波について、各点における運動(振動)の図示と運動方程式をたてることができ、それらから波動ととしての方程式を導くことができる。
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4週 |
進行波と定常波、媒質の疎密と固定端反射と自由端反射、物体の固有振動について |
進行波と定常波の式としての記述ができる。境界を有する波動の進行において、媒質の疎密の判断とそれに伴う固定端反射と自由端反射の判定ができる。入射波と反射波による合成波を求めることができ、境界を有する棒などの物体に生じる振動、固有振動について図式を用いて説明できる。
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5週 |
音響インピーダンスと波の透過と反射、工学における応用 |
媒質の音響インピーダンスによる計算から、境界における波の透過率、反射率を求めることができる。またこれらの原理の工学的応用例を図式を用いて説明できる。
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6週 |
波動特有の諸性質:重ね合わせの原理、反射・屈折、うなり、ドップラー効果について |
波動特有の諸性質である重ね合わせの原理、反射・屈折、うなり、ドップラー効果について、図式を用いて説明することができ、基本的な問題について解くことができる。
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7週 |
物理光学 反射・屈折・吸収、干渉、回折、分散、偏光、光学機器の原理 |
光学としての反射(全反射を含む)・屈折・吸収、干渉、回折、分散、偏光、光学機器の原理について、図式を用いて説明することができ、基本的な問題について解くことができる。
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8週 |
中間試験 |
試験範囲となった物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して次の学習に結び付けることが出来る。
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4thQ |
9週 |
物質の熱的性質:温度の概念、絶対温度、熱的諸性質、ボイル・シャルルの法則と気体の状態、内部エネルギー、熱力学法則 |
絶対温度を含む温度の概念を理解し、物質の熱的性質を説明できる:気体における熱力学法則、ボイル・シャルルの法則と状態、内部エネルギーについて基本的な場合の説明ができる。
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10週 |
温度の変化に伴う物質の膨張収縮、状態変化・相図について |
物質の三態を理解し、温度の変化に伴う物質の膨張収縮、状態変化・相図について式・図表を用いて説明できる。
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11週 |
物質の熱量、熱容量と状態の変化について |
物質の熱量、熱容量、比熱について適切に使い分け、水に氷を加える、氷に水蒸気を当てるなどの場合の状態の変化について、基本的な問題を解くことができる。
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12週 |
伝熱の3形態と熱伝導率、温度勾配、熱伝導、ヒートパイプについて |
伝熱の3形態を図示とともに説明できる。熱伝導で基本となる熱伝導率、温度勾配、熱伝導を説明できる。ヒートパイプについて原理とその工学的利用を説明できる。
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13週 |
熱伝導方程式について:方程式の導出とその解法 |
諸物理量を理解して熱の移動を図示し、熱伝導方程式を導出できる。簡単な熱伝導を表す式(解)を熱伝導方程式を用いて判定できる。
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14週 |
総合問題演習:前期、後期を通じて学習した事項の確認と総合問題演習 |
後期扱った物理現象について、諸法則を用いて説明できる。代表的な問題を解いてその現象、状態を説明できる。
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15週 |
学年末試験 |
学習した物理現象の説明と、関連する問題を解くことできる。また、理解が不足している点を確認して最終的な学習目標の達成に結び付けることが出来る。
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16週 |
学年末試験返却、問題解説 |
理解が不足している点を確認して最終的な学習目標の達成に結び付けることが出来る。
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 力学 | 速度と加速度の概念を説明できる。 | 3 | 前1 |
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。 | 3 | 前1 |
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。 | 3 | 前1 |
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。 | 3 | 前1 |
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。 | 3 | 前1 |
平均の速度、平均の加速度を計算することができる。 | 3 | 前1 |
物体に作用する力を図示することができる。 | 3 | 前2 |
力の合成と分解をすることができる。 | 3 | 前2 |
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。 | 3 | 前2,後1 |
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。 | 3 | 前2 |
質点にはたらく力のつりあいの問題を解くことができる。 | 3 | 前2 |
慣性の法則について説明できる。 | 3 | 前1 |
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。 | 3 | 前1 |
運動方程式を用いた計算ができる。 | 3 | 前4,前6,前7 |
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。 | 3 | 前4,前6,前7 |
運動の法則について説明できる。 | 3 | 前1 |
仕事と仕事率に関する計算ができる。 | 3 | 前5 |
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | 前4 |
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | 前7 |
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | 後1 |
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。 | 3 | 前7 |
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。 | 3 | 前3,前4 |
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。 | 3 | 前3,前4 |
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。 | 3 | 前3,前4 |
力のモーメントを求めることができる。 | 3 | 前4 |
角運動量を求めることができる。 | 3 | 前5 |
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。 | 3 | 前5 |
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。 | 3 | 前5 |
重心に関する計算ができる。 | 3 | 前5 |
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。 | 3 | 前5 |
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。 | 3 | 前4,前5 |
熱 | 原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。 | 3 | 後9,後10 |
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。 | 3 | 後12,後13 |
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。 | 3 | 後11 |
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。 | 3 | 後11 |
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。 | 3 | 後9 |
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。 | 3 | 後9 |
気体の内部エネルギーについて説明できる。 | 3 | 後9 |
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。 | 3 | 後9 |
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。 | 3 | 前11,後9 |
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。 | 3 | 後9 |
熱機関の熱効率に関する計算ができる。 | 3 | 後9,後14 |
波動 | 波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。 | 3 | 後2 |
横波と縦波の違いについて説明できる。 | 3 | 後2,後3 |
波の重ね合わせの原理について説明できる。 | 3 | 後2 |
波の独立性について説明できる。 | 3 | 後2 |
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。 | 3 | 後6 |
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。 | 3 | 後4 |
ホイヘンスの原理について説明できる。 | 3 | 後2,後4 |
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。 | 3 | 後2,後4 |
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。 | 3 | 後6 |
気柱の長さと音速から、開管、閉管の固有振動数を求めることができる(開口端補正は考えない)。 | 3 | 後6 |
共振、共鳴現象について具体例を挙げることができる。 | 3 | 後6 |
一直線上の運動において、ドップラー効果による音の振動数変化を求めることができる。 | 3 | 後6 |
自然光と偏光の違いについて説明できる。 | 3 | 後6,後7 |
光の反射角、屈折角に関する計算ができる。 | 3 | 後6,後7 |
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。 | 3 | 後6,後7 |