無機化学

科目基礎情報

学校 函館工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 無機化学
科目番号 0044 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質環境工学科 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 Professional Engineer Library 化学(実教出版)、動画教材(自作)
担当教員 小林 淳哉

到達目標

1. 化学反応にともなう熱の出入り、化学反応速度の計算および化学平衡状態における物質量の計算ができる
2. 原子、イオンを電子配置や電子軌道から説明できる
3. 代表的な金属や非金属元素の単体・化合物の原子配置、性質、製法を説明できる
4. 錯体に関する基本的な性質や構造を説明できる
5.技術者の社会に対する役割や責任について説明できる

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1熱化学方程式を作成し、熱の出入りを計算でき、実社会で用いられている化学平衡状態について物質量のコントロールについて説明できる。熱化学方程式が与えられれば、熱の出入りを計算でき、典型的な反応で特定の物質の濃度を計算できる左記に達していない。
評価項目2元素の電子殻・電子軌道からイオン化や周期表の構造の説明ができる特定の原子の電子殻・電子軌道を説明できる左記に達していない。
評価項目3周期表の金属、非金属を同族元素に分類して単体・化合物の性質、製法を説明できる。また結晶性物質に関する各種の計算ができる。代表的な元素の単体・化合物の性質、製法を説明できる。また結晶性物質の充填率の計算ができる。左記に達していない。
評価項目4錯体命名法、構造、色、適用例を複数挙げることができる。錯体の命名法、構造、色を説明できる。左記に達していない
評価項目5ポートフォリオを通して獲得した知識が将来どのように活用できるかを具体的に表現できる。ポートフォリオを通して獲得した知識が将来どのように活用できるかをおおよそ表現できる。左記に達していない

学科の到達目標項目との関係

函館高専教育目標 B 説明 閉じる

教育方法等

概要:
原子の構造や結合状態など物質の本質を理解する根幹となり、近年の材料開発の発展を無機材料開発分野から支えるための基礎となる科目である。このため、物質を構成する基本単位である様々な元素の性質を理解し、各元素が持つ特異な性質が原子核を取りまく電子の様々な振る舞いによることを周期表と関連付けて説明でき、 元素の組み合わせからなる様々な無機元素や化合物の構造、結合状態、性質、反応性について説明することができるようになる。したがって、今後「化学が関係する様々な課題に対して無機化学の関連の基礎知識を適用(応用)してこれを解決していける」ための基本となる科目である。
授業の進め方・方法:
<定期試験は期末だけで、単元など一定の塊ごとに達成度の試験をする>
<毎回PCを持ってくること> 毎回の教材はTeams常にアップロードする。
高校生が学ぶ内容であるが,それをより発展させて,実社会において使える知識としてイメージできるような授業を心がける。このため,グループワークを行なうとともにICTを活用し,単に知識の暗記ではなく「使える知識」にすることが必要であることを気づいてもらえるような授業にする。演習問題はBlackBoarddやOffice365(Forms)を併用するので毎回PC等持参すること。自宅学習用の教材も用意するので解いてみること。
注意点:
オンデマンド教材(動画含む)も活用する。動画と演習がセットになっている場合もある。ポートフォリオとは、「自分が備えた無機化学の知識の理解を他の人にも説明する」ためのものである。
たとえば、会社の面接で「私は無機化学の知識をここまで理解し△△に活用できるから、御社にふさわしい人材だと自己評価します」など自分の評価の資料となる。このためにこの学校で蓄積されていく知識を継続してまとめていくことが重要である。ポートフォリオでは「自身のなりたい姿へのデザイン(キャリアデザイン)を考えることができる態度志向性の能力」を評価する。自学自習も主体性と自己管理能力として評価する。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 1. ガイダンス
2.(1)化学反応と熱
反応熱の定義を理解して熱化学方程式を作ることができる
2週 (2)化学反応による反応熱の計算 ヘスの法則を利用して反応熱の算出ができる。実社会における反応熱の利用について説明できる。
3週 (3)同上 反応前後の結合エネルギーから活性化エネルギーを算出できる
4週 3.反応速度と化学平衡
(1)反応速度、反応次数
反応速度が計算でき、反応次数、可逆反応・不可逆反応について説明できる
5週 (2)化学平衡と平衡定数の計算 濃度平衡定数が計算できる。濃度平衡定数から平衡時の物質量が計算できる。
6週 (3)圧平衡定数 圧平衡定数の計算ができる。
7週 (4)溶解平衡 溶解平衡から沈殿の生成の有無を判断できる
8週 (5)平衡移動の法則 平衡移動の法則を利用して、反応を効果的に進める条件を判断でき、実社会における化学平衡の利用について説明できる。
2ndQ
9週 (6実課題における化学平衡 化学平衡を意識した工業化学分野の応用例を挙げられる
10週 5. 固体の構造・結合
(1)金属結晶、イオン結晶
金属やイオン結晶の結晶格子の分類や原子やイオンの充填率・密度などの計算ができる
11週 6. 周期律
(1)電子配置と電子(原子)軌道
電子殻が電子軌道・電子配置から説明できる。
12週 (2)希ガス構造とイオンの生成 電子配置やキガス構造、イオン化エネルギー、電子親和力の大小からイオンの生成について説明できる。
13週 (3)周期表の構造・構成
元素の周期表から族・周期、典型元素・遷移元素の別、イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度の大小、金属性・非金属性など示すことができる。
14週 7. 期末範囲の復習 期末試験に備えた演習問題を解き理解の状況を確認する
15週 前期期末試験
16週 試験答案返却・解答解説 間違った問題の正答を求めることができる
後期
3rdQ
1週 8.元素の性質 代表的元素の性質・化合物、用途などSBGs
2週 (1)元素の性質 元素資源の世界的な状況、リサイクルの必要性と目的、配慮すべき状況などSDGsの観点から説明できる
3週 (2)1族元素の性質・化合物・製法・用途 1族の特徴を電子配置から説明でき、水素、アルカリ金属の性質、化合物の製法、用途などを説明できる
4週 (3)2族元素の性質・化合物・製法・用途 2族の特徴を電子配置から説明でき、単体、化合物の製法、用途などを説明できる
5週 (4 )pブロック元素 pブロックのうち代表的な元素についてその特徴を電子配置から説明でき、単体、化合物の製法、用途などを説明できる
6週 (5)同上 同上
7週 (6)同上 同上
8週 (7)同上 同上
4thQ
9週 (7)遷移元素の性質・化合物・性質・用途
鉄族、銅、貴金属元素のの特徴を電子配置から説明でき、単体、化合物の製法、用途、分離法、検出法などを説明できる。またSDGsの観点から資源の有効利用、環境への配慮がなされていることも説明できる。
10週 (8)同上 同上
11週 (9)同上 同上
12週 9.錯体の基本 配位結合から錯体(錯イオン)の形成について説明でき、配位数、配位子について説明でき、命名できる。
13週 9. 錯体の命名・社会における利用 錯体に正しく命名できる。錯体が社会でどのように使われているかを説明できる。
14週 期末試験準備 期末試験範囲の演習問題に取り組む
15週 学年末試験
16週 試験答案返却・解答解説
ポートフォリオ作成
間違った問題の正答を求めることができる。現状としての自らの到達度をポートフォリオとして自己評価できる

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力数学数学数学整式の加減乗除の計算や、式の展開ができる。3前2,前3,前5,前6,前9
分数式の加減乗除の計算ができる。3前2,前3,前5,前6,前9
実数・絶対値の意味を理解し、絶対値の簡単な計算ができる。3前2,前3,前5,前6,前9
平方根の基本的な計算ができる(分母の有理化も含む)。3前2,前3,前4,前5,前6,前9
解の公式等を利用して、2次方程式を解くことができる。3前3,前5,前6,前9
簡単な連立方程式を解くことができる。3前2,前3,前5,前6,前9
自然科学化学(一般)化学(一般)物質が原子からできていることを説明できる。3前1,前6,前9,前10
単体と化合物がどのようなものか具体例を挙げて説明できる。3前2,前6,前9,前10
同素体がどのようなものか具体例を挙げて説明できる。3前10
純物質と混合物の区別が説明できる。3前10,前11
混合物の分離法について理解でき、分離操作を行う場合、適切な分離法を選択できる。3
物質を構成する分子・原子が常に運動していることが説明できる。3前4,前6,前8,前9,前13,後2,後10
ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル-シャルルの法則を説明でき、必要な計算ができる。3前3,前6,前9
原子の構造(原子核・陽子・中性子・電子)や原子番号、質量数を説明できる。3
同位体について説明できる。3
放射性同位体とその代表的な用途について説明できる。3
原子の電子配置について電子殻を用い書き表すことができる。3後5
価電子の働きについて説明できる。4後5
原子のイオン化について説明できる。3前8
代表的なイオンを化学式で表すことができる。3前8
原子番号から価電子の数を見積もることができ、価電子から原子の性質について考えることができる。4後2
元素の性質を周期表(周期と族)と周期律から考えることができる。3
イオン式とイオンの名称を説明できる。3前7
イオン結合について説明できる。3前10
イオン結合性物質の性質を説明できる。3前10
イオン性結晶がどのようなものか説明できる。3前10
共有結合について説明できる。3前10
自由電子と金属結合がどのようなものか説明できる。3前10,前11,後5
金属の性質を説明できる。3前10,前11,後5
アボガドロ定数を理解し、物質量(mol)を用い物質の量を表すことができる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前9,前15
分子量・式量がどのような意味をもつか説明できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前8,前9,前15
気体の体積と物質量の関係を説明できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前8,前9,前15
化学反応を用いて化学量論的な計算ができる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前8,前15
酸化還元反応について説明できる。3前8
イオン化傾向について説明できる。4前10,前13,後1,後2
金属の反応性についてイオン化傾向に基づき説明できる。4前10,前13,後1,後2
電気分解反応を説明できる。3後1,後2,後9,後10,後11,後15
電気分解の利用として、例えば電解めっき、銅の精錬、金属のリサイクルへの適用など、実社会における技術の利用例を説明できる。2後9,後10,後11,後15
工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史社会における技術者の役割と責任を説明できる。3後2,後9,後10,後11,後13,後14,後15
科学技術が社会に与えてきた影響をもとに、技術者の役割や責任を説明できる。3前8,後2,後9,後10,後11,後14,後15
科学者や技術者が、様々な困難を克服しながら技術の発展に寄与した姿を通し、技術者の使命・重要性について説明できる。3後2,後9,後10,後11,後14,後15
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。3前11,前12,前13,前14,前15
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。3前11,前12,前13,前14,前15
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。3前11,前12,前13,前14,前15
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。3前11,前12,前13,前14,前15
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。3前11,前12,前13,前14,前15
イオン結合と共有結合について説明できる。4前14
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4前14
金属結合の形成について理解できる。4前14
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4前6,後9
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4前10,前15
配位結合の形成について説明できる。4後10,後14,後15
水素結合について説明できる。4前10,後2
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4後10,後12,後13,後14,後15
錯体の命名法の基本を説明できる。4後12,後13,後14,後15
配位数と構造について説明できる。4後12,後13,後14,後15
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4後9,後12,後13,後14,後15
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4前12,前13,前14,後1,後3,後4,後5,後6,後7,後8,後9,後10,後11,後13,後14,後15
分析化学錯体の生成について説明できる。2後9,後10,後11,後12,後15

評価割合

期末試験単元の達成度確認テスト課題ポートフォリオ合計
総合評価割合404015500100
基礎的能力55000010
専門的能力35351550090
分野横断的能力0000000