物理化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 函館工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物理化学Ⅱ
科目番号 0113 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質環境工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 PEL 物理化学(実教出版):3年次から継続利用
担当教員 小原 寿幸

到達目標

1.化学熱力学における重要な因子であるエントロピーおよび平衡論における重要な因子であるギブズエネルギーについて説明できる。
2.Gibbsの自由エネルギー、化学ポテンシャル、理想溶液・混合溶液の性質、溶液の束一的性質について説明できる。
3.酸化還元反応について説明できる。電気化学反応について説明でき、関与する反応の平衡定数とNernstの式を説明できる。
4.Schrodinger方程式や不確定性原理などの量子化学の基礎的事項について説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1化学熱力学における重要な因子であるエントロピーおよび平衡論における重要な因子であるギブズエネルギーについて説明できる。教科書を見ながらであれば、化学熱力学における重要な因子であるエントロピーおよび平衡論における重要な因子であるギブズエネルギーについて説明できる。 左記ができない。
評価項目2Gibbsエネルギー、化学ポテンシャル、理想溶液・混合溶液の性質、溶液の束一的性質について説明できる。教科書を見ながらであれば、Gibbsエネルギー、化学ポテンシャル、理想溶液・混合溶液の性質、溶液の束一的性質について説明できる。左記ができない。
評価項目3酸化還元反応について説明できる。電気化学反応について説明でき、関与する反応の平衡定数と関連ずけるNernstの式を説明できる。 教科書を見ながらであれば、酸化還元反応について説明できる。電気化学反応について説明でき、関与する反応の平衡定数と関連ずけるNernstの式を説明できる。左記ができない。

学科の到達目標項目との関係

函館高専教育目標 B 説明 閉じる

教育方法等

概要:
物理化学は化学全般の基礎であり、有機化学、無機化学、分析化学などの全ての化学分野の理論的な面を担うものである。本講義では、物理化学の極めて重要な分野である化学熱力学と平衡論、溶液の性質における基礎的知識を習得し、特に反応系への応用が実際の問題でどのように行われるかを学ぶことを目的とする。
なお、授業内容は公知の情報のみに限定されている。
授業の進め方・方法:
物理化学は基礎的理論であり、物質の化学変化に対する一般的法則を与えるものである。法則であるからには多少とも数学的表現を用いなければならないが、出来るだけ平易に時間をかけて講義するので、授業中のノート作成や復習を十分に行うこと。特に、化学熱力学・平衡論は、化学・物質環境工学の重要な柱であるので、興味を持って学習して貰いたい。
注意点:
自分で演習問題を解くことが理解を一層強めるために極めて有効であるので、章末の演習問題を解くことを勧める。また、原著に挑戦することも意義のあることである。
授業中態度が悪い(居眠り,携帯電話の使用など)場合は減点とするので十分に注意すること。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 化学熱力学について エンタルピーやエントロピーを用いた化学熱力学に関して復習。
2週 温度変化とエントロピー 相転移、温度変化に伴うエントロピー変化を求めることができる。
3週 化学反応とエントロピー 純物質の絶対エントロピーおよび化学反応でのエントロピー変化を計算できる。
4週 カルノーサイクル Carnotサイクルについて説明できる。
5週 ギブスの自由エネルギーとヘルムホルツの自由エネルギー Gibbsの自由エネルギーとHelmholtzの自由エネルギーの定義について説明できる。
6週 ギブス自由エネルギーを用いた計算 Gibbsの自由エネルギー変化を用いて、平衡定数・組成を計算できる。
7週 相律と状態図について 相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。
8週 到達度試験 化学反応に熱力学を適用して問題を解くことができる。
2ndQ
9週 気液平衡 2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる
10週 混合系における熱力学状態 気体の全圧とモル分率から混合気体中の気体の分圧を計算できる。
11週 ラウールの法則 混合物中の各成分の蒸気圧はRaoultの法則にしたがうことを説明できる。
12週 ヘンリーの法則 希薄」溶液における揮発性溶質の蒸気圧は
Henryの法則にしたがうことを説明できる。
13週 化学ポテンシャル 化学ポテンシャルは物質量の変化に伴うGibbsエネルギー変化であることを説明できる。
14週 溶液の束一的性質 蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。
15週 前期期末試験 液体の束一的性質に関連した問題を解くことができる。
16週 試験答案返却・解答解説
間違った問題の正答を求めることができる
後期
3rdQ
1週 化学反応と平衡定数、ルシャトリエの法則
平衡定数(質量作用の法則)とLe Chatelierの法則について説明できる。
2週 化学ポテンシャルと化学平衡の関係 化学ポテンシャルと化学平衡の関係について説明できる。
3週 濃度平衡定数 熱力学的平衡定数と濃度の関係から実際の平衡定数を求めることができる。
4週 圧平衡定数 分圧の関係から実際の平衡定数を求めることができる。
5週 平衡定数と活量 熱力学的平衡定数と活量の関係から実際の平衡定数を求めることができる。
6週 ネルンストの式 Nernstの式を用いて、電極反応の平衡定数を求めることができる。
7週 電子授受と化学電池 化学電池における酸化還元反応を電子の授受により説明できる。
8週 到達度試験 熱力学的平衡定数に関連した問題を解くことができる。
4thQ
9週 原子の電子構造 不確定性原理、Bohr模型について説明できる。原子軌道について説明できる。
10週 電子の運動とシュレディンガー方程式 電子の運動がSchrodingerの波動方程式で表されることを理解できる。
11週 電子軌道とエネルギー準位 パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。
12週 電子配置と周期表 元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的性質を説明できる。
13週 量子数 4種類の量子数(主量子数、方位量子数、磁気量子数、電子スピン量数)について説明でき、各原子の電子配置を正確に決定することができる。
14週 分子軌道 代表的な分子に関して、原子価結合法や分子軌道法から共有結合を説明できる。
化学結合は電子スピンを含めた波動関数を考える必要があることを理解できる。
15週 学年末試験 量子力学に関連した問題を解くことができる。
16週 試験答案返却・解答解説 間違った問題の正答を求めることができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力数学数学数学解の公式等を利用して、2次方程式を解くことができる。4後5
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4
配位結合の形成について説明できる。3
水素結合について説明できる。3
物理化学純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4前11
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4前13
束一的性質を説明できる。4後3
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4後4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4後4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4前12
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4後5
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4後5
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4後7
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4前6,前7
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4前4
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4前3
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4前10
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4後6
平衡定数の温度依存性を計算できる。4後9
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4前1
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。3
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。4後14

評価割合

定期試験到達度試験課題態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力500000050
専門的能力500000050
分野横断的能力0000000