流体工学I

科目基礎情報

学校 釧路工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 流体工学I
科目番号 0069 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学分野 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:単位が取れる流体力学ノート 著者:武居昌宏 発行所:講談社,参考書:①水力学(改訂・SI版) 著者:生井武文ほか 発行所:森北出版,②水力学(基礎と演習) 著者:北川能監修ほか 発行所:パワー社,③例題と演習・水力学  著者:中村克孝ほか 発行所:パワー社
担当教員 小杉 淳

到達目標

流体工学がかかわる現象を物理的な解釈で説明でき,またそれらの現象を数学的に記述できるようにする。
様々な原理・法則(連続の定理、ベルヌ-イの定理、運動量の定理等)を駆使して、流体現象の理解に必要な流速や圧力などの計算ができるようにする。
また教科書・演習問題の65%以上の問題ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1流体の物性を理解・説明でき,物性値の計算およびそれらを組み合わせた応用的な計算から,流体の性質について定量的な評価ができる. 流体の物性値について認識でき,それらを評価する基本的な計算ができる.流体の物性値について認識・説明できず,それらを計算によっても評価することができない.
評価項目2パスカルおよびアルキメデスの定理を組み合わせ,静止流体中の物体に作用する力について説明できるとともに,応用的な計算問題を解くことができる.パスカルおよびアルキメデスの定理について認識でき,これにかかわる基本的な計算問題を解くことができる. 静止流体の基本的な性質について理解できない.
評価項目3定常流の力学について理解・説明でき,運動量理論やベルヌーイの定理を用い,あるいはそれらを組み合わせて応用的な計算問題を解くことができる.定常流の力学について認識でき,運動量理論やベルヌーイの定理を用い,あるいはそれらを組み合わせて基本的な計算問題を解くことができる.オイラーの運動方程式,運動量理論,ベルヌーイの定理について理解できず,簡単な計算問題も解くことができない.

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 C 説明 閉じる
JABEE d-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
流体とは水や空気に代表される液体や気体がどのように流れたり,物体に作用することなどについて学ぶ学問である.流体工学は、機械系力学の基礎科目でもあり、現在、産業界のあらゆる範囲で活用される応用範囲の広い学問である。多くの演習・例題を取り入れ、計算力を養うことはもちろん,流体の自然科学の現象を理解する力を身につけて、基礎工学の知識を把握させる。さらにこの知識を基に応用力を付ける。
 なお,この科目は企業で流体を用いる化学工学機器の研究開発を担当していた教員が,その経験を生かし,流体工学の必要性や重要性および力学的な取扱い方法などについて講義形式で授業を行うものである.
授業の進め方・方法:
授業は教科書に沿った自作のプリント配布し,プロジェクターを利用して行う.資料には空欄があり,プロジェクター見ながらそして話し聞きながら適宜必要なことを書き込んでいく.ほぼ毎回授業に沿った演習を別途配布する問題用紙で行う.演習の際には必要に応じ,グループを作りアクティブラーニング的に行うこともある.
合否判定:4回の定期試験(80%)と複数回の小テスト(20%)の平均点が60点以上を合格とする。
最終評価:4回の定期試験の平均×0.8+小テストの平均×0.2+課題評価(max10点)
なお,最終評価は100点を超えることはない.合格している者(合否判定で60点を超えているもの)は未提出のレポートがあっても60点以下の評価にはならない.再試験を受けて合格した者は課題評価による加点の対象とならな い.なお,再試験については前期末再試験のほか,学年末再試験を前期分と後期分に分けて実施する(後期末再試 験は行わない).ただし,各再試験においては事前に課される課題の提出を必須とし,未提出の場合には受験でき ない.再試験の合否は受験しなければならない試験すべてが60点以上であること.
注意点:
基礎的な数学力が必要であり、特に微積分および三角関数を十分に理解していること。また,関数電卓は、十分使いこなせるようにしておくこと。さらに授業で出される演習問題は必ず予習復習を行い,十分理解すること。流体工学は,工学・自然科学の分野において見られる様々な流体現象を理解する上で重要な学問である.美しい,あるいは不思議な現象もたくさんあり,是非とも興味を持って履修してもらいたい.なお,授業はスライド資料を配布して書き込みしていく形式とする.単元ごとに与えられる演習問題は各自で解き,授業の理解を深めて欲しい.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス(流体工学が応用されている分野) 流体工学の必要性や関連事例を説明できる.
2週 流体の物理的性質-1 流体の定義および物性値(圧縮性,密度,比重,比重量)について計算と説明ができる.
3週 流体の物理的性質-2 流体の粘性について理解でき,ニュートンの粘性法則およびニュートン流体・非流体の違いが説明できる.
4週 小テスト-1
流体の物理的性質-3
レイノルズ数の物理的な意味と管路内流れの層流・乱流について説明できる.管路内流れの状態を計算によって求めることができる.
5週 流体の物理的性質-4
表面張力
レイノルズの相似則について説明できる.表面張力の発生機構とその効果について説明できる
6週 圧力の発生とパスカルの原理 圧力の表わし方とパスカルの原理について説明できる.パスカルの原理に基づき油圧ジャッキに発生する力を計算できる.
7週 重力場の圧力-1(密度変化のない場合) 重力場における圧力の発生機構とその計算方法が説明できる.
8週 前期中間試験:実施する
2ndQ
9週 中間試験の解答および解説
重力場の圧力-2(密度変化ある場合)
密度変化を考慮した大気圧の計算ができる.
10週 圧力の測定方法 各種液柱管による圧力計測の方法が理解でき計算で圧力を求められる.
11週 平板壁に作用する全圧力と圧力中心 液体中に平面に作用する全圧力とそれの作用点となる圧力中心について理解でき,計算でそれらを求めることができる.
12週 小テスト-2
曲面に作用する全圧力
曲面に作用する全圧力は方向成分に分けて考える必要があり,計算でそれらを求めることができる.
13週 浮力とアルキメデスの原理 物体に作用する浮力についてアルキメデスの原理から説明でき,これを計算で求めることができる.
14週 浮揚体とメタセンタ 浮揚体の安定性についてメタセンタから説明できる.
15週 前期総合演習 前期中間試験後に行った範囲を主体にした演習問題を解くことができる
16週 前期末試験・実施する
後期
3rdQ
1週 流体力学で用いられる用語と流速計,流量計 流動流体を特徴づける用語について説明でき,流速と流量の概念およびそれらを計測する基本的な機器を説明できる.
2週 流体力学の基礎式-1(質量保存の法則と連続の式) 連続の式を説明することができ,これに関する基本的な問題を解くことができる.
3週 流体力学の基礎式-2(流体の加速度とオイラーの運動方程式) 流体の加速度について剛体運動との違いを説明でき,オイラーの運動方程式について説明できる
4週 小テスト-3
流体力学の基礎式-3(エネルギー保存の法則-1)
流体のエネルギーは,速度,位置,圧力の3つに分類されることを説明できる.
5週 流体力学の基礎式-3(エネルギー保存の法則-2) オイラーの運動方程式から導出されるベルヌーイの定理について説明できる.
6週 ベルヌーイの定理の応用 連続の式とベルヌーイの定理を組み合わせて種々の問題を解くことができる.
7週 流体力学の基礎式-4(運動量保存則と流体力-1) 流体力学における運動量の考え方およびその保存則と流体力について説明できる.平板や斜板に作用する流体力を計算で求めることができる
8週 後期中間試験を実施する
4thQ
9週 流体力学の基礎式-4(運動量保存則と流体力-2) 管路内を流体が流れる場合の流体力について圧力による力を加味しなければならないことを説明でき,これに関する問題を解くことができる
10週 管路内流れ(層流,乱流)の速度分布 管路内の流れが層流の場合について速度分布やパーゲンポアズイユ流れについて説明できる.管路内流れが乱流の場合について速度分布を説明できる.
11週 円管路流れにおける損失(管摩擦損失)-1 管摩擦の発生機構が層流と乱流では違うことが説明でき,管摩擦損失をダルシーワインズバッハの式とムーディ線図などを組み合わせ計算で求めることができる.
12週 小テスト-4
円管路流れにおける損失(管摩擦損失)-2
管摩擦の発生機構が層流と乱流では違うことが説明でき,管摩擦損失をダルシーワインズバッハの式とムーディ線図などを組み合わせ計算で求めることができる.
13週 円管路以外の管摩擦損失
各種管路における圧力損失
等価円直径について説明でき,これを用い円以外の断面の管摩擦を計算できる.各種管路で発生する圧力損失の主な原因と,その計算ができる.
14週 損失を考慮したベルヌーイの定理 管路の損失計算において損失を考慮したベルヌーイの定理について説明でき,これに関する問題を解くことができる.
15週 後期総合演習 後期中間試験後に行った範囲を主体にした演習問題を解くことができる
16週 後期末試験を実施する

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野熱流体流体の定義と力学的な取り扱い方を理解し、適用できる。4前2
流体の性質を表す各種物理量の定義と単位を理解し、適用できる。4前2
ニュートンの粘性法則、ニュートン流体、非ニュートン流体を説明できる。4前3
絶対圧力およびゲージ圧力を説明できる。4前6
パスカルの原理を説明できる。4前6
液柱計やマノメーターを用いた圧力計測について問題を解くことができる。3前9,前10
平面や曲面に作用する全圧力および圧力中心を計算できる。4前10,前12
物体に作用する浮力を計算できる。4前13,前14
定常流と非定常流の違いを説明できる。4
流線と流管の定義を説明できる。4
連続の式を理解し、諸問題の流速と流量を計算できる。4
オイラーの運動方程式を説明できる。4
ベルヌーイの式を理解し、流体の諸問題に適用できる。4
運動量の法則を理解し、流体が物体に及ぼす力を計算できる。4
層流と乱流の違いを説明できる。4前4
レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し、流れの状態に適用できる。4前4
ダルシー・ワイスバッハの式を用いて管摩擦損失を計算できる。4
ムーディー線図を用いて管摩擦係数を求めることができる。4
境界層、はく離、後流など、流れの中に置かれた物体の周りで生じる現象を説明できる。4
抗力について理解し、抗力係数を用いて抗力を計算できる。4
揚力について理解し、揚力係数を用いて揚力を計算できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力0000000
専門的能力10000000100
分野横断的能力0000000