技術者倫理

科目基礎情報

学校 釧路工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 技術者倫理
科目番号 0083 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 機械工学分野 対象学年 5
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 ①教科書 北原義典著『はじめての技術者倫理』講談社、2015年 ②参考書 小出泰士著『技術者倫理入門』丸善出版、2010年 ③参考書 中村昌允著『技術倫理とリスクマネジメント』オーム社、2012年
担当教員 島 信夫

到達目標

[到達目標1]消費者をはじめとする社会の人々の権利保護の重要性を理解する。
[到達目標2]技術者が直面する倫理問題の特徴を理解する。
[到達目標3]社会の動向に適合する倫理の姿を理解する。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1人権を尊重し、技術者が社会的責任を果たせるように、個別の事案を解決できる。人権を尊重し、技術者が取り組む研究や開発のあり方を的確に理解できる。人権を尊重し、技術者が取り組む研究や開発のあり方を理解できない。
評価項目2技術者固有の倫理問題を理解し、これを解決する方法を提示できる。技術者が直面する倫理問題の特徴を的確に理解できる。技術者が直面する倫理問題の特徴を理解できない。
評価項目3時事問題に関心を寄せ、実践的な倫理のあり方を提示できる。社会の動向に適合する倫理の姿を的確に理解できる。社会の動向に適合する倫理の姿を理解できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 A 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 数ある職業の中から技術者の途を選択した皆さんが、職業生活の中で向き合う倫理または道徳の問題を考察します。これは、個人的または主観的問題ではありません。そうではなく、これは社会的問題に他なりません。それというのも私たちは、自給自足で生活を送っているわけではなく、文明の成果を信頼し、生活のニーズを満たしています。そこには人類が勝ち得た社会のあり方と文明の享受が見られます。その一方で、常識を覆す生命倫理上の問題や痛ましい製品事故の報道に触れることもあります。つまり社会の進化ならびに文明の享受と人間の尊厳が揺らぐ状況という矛盾が、技術者を目指す皆さんの前に立ちはだかります。これは直ちに解決できるものではありません。寧ろ、これは皆さんの職業人生全般で試行錯誤する中で解決すべき課題です。この難題に取り組むべく、職業人生のスタートラインに立つ皆さんと共に、社会のあり方に対応した職業倫理像の理解に努め、これを実践するべき未来に向けた準備を進めていきたいと考えています。
授業の進め方・方法:
 技術者倫理は、職業一般の倫理という側面をもつだけでなく、技術開発や製品開発という固有の問題を扱います。それだけ広い視野が求められ、その内容を理解しないと、社会に負の影響を及ぼします。そのため、倫理の問題を深く掘り下げ、これを他面的に理解できるように、授業を進めていきます。また本科目は通年で開講するので、以下の成績評価は前期・後期共に適用されます。総合評価は、中間試験で60%、学期末のレポートで40%の配分をして、それぞれを加算した総合点数の6割以上で合格とします。また不合格者にはレポートの提出を求め、この評価が満点の6割以上であれば合格とします。
注意点:
 技術者倫理は実践的な性質をもっています。常に時事問題に関心を寄せ、その中にある倫理問題へのアプローチ、合理的な論の進め方や反証の可能性を考慮してください。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 技術者の社会的責任と倫理 現代社会で技術者がもつ倫理像を説明できる。
2週 技術者の社会的責任と倫理 人権に照らして、技術者倫理の基礎を説明できる。
3週 技術者の行動規範 実践可能な倫理像を説明できる。
4週 技術者の行動規範 企業の業務管理の特徴を説明できる。
5週 研究倫理 研究活動の適否の判断ができる。
6週 研究倫理 公正な研究の判断基準を示すことができる。
7週 説明責任 技術者が直面する説明責任の特質を説明できる。
8週 中間試験
2ndQ
9週 説明責任 法と企業経営からみた現代の説明責任の特質を説明できる。
10週 情報新技術と知的財産権 技術者の創造性と知的財産権の関係を説明できる。
11週 情報新技術と知的財産権 知的財産権の基礎にある人権思想の特質を説明できる。
12週 内部告発 倫理問題のジレンマを理解し、適切に対処する方法を示すことができる。
13週 内部告発 ジレンマを公正に解決するプロセスを説明できる。
14週 製造物責任 企業が広範な社会的責任を負うことを説明できる。
15週 製造物責任 製造物責任法をめぐる司法判断の特徴を説明できる。
16週 前期末試験 : 実施しない
後期
3rdQ
1週 ヒューマンエラー エラーに潜む認知の構造と機能の固有の限界を説明できる。
2週 ヒューマンエラー 組織文化の長所と短所を説明できる。
3週 化学と倫理 化学技術の進歩がもたらす功罪を理解し、これを社会の発展に寄与させる方法を説明できる。
4週 化学と倫理 化学技術の進歩が社会厚生に与える影響を説明できる。
5週 バイオテクノロジーと倫理 他面に及ぶバイオテクノロジーの成果を説明できる。
6週 バイオテクノロジーと倫理 バイオテクノロジーの進歩が開いた倫理問題の重要性を説明できる。
7週 情報ネットワーク社会と倫理 権利保護の観点から、情報ネットワーク社会で新たに求められる倫理の要件を説明できる。
8週 中間試験
4thQ
9週 情報ネットワーク社会と倫理 近年の事例を手掛かりにして、個人情報保護法の趣旨を説明できる。
10週 情報新技術と倫理 人権侵害の懸念を払拭する情報新技術の要件を説明できる。
11週 情報新技術と倫理 個人情報保護法が人権保護に資する法であることを説明できる。
12週 環境保全と倫理 21世紀の人類の危機である環境問題の重要性を説明できる。
13週 環境保全と倫理 環境問題を文化や文明の進化の観点から説明し、これに取り組む見方を説明できる。
14週 ナノテクノロジーと倫理 ナノテクノロジーの功罪を説明できる。
15週 ナノテクノロジーと倫理 ナノテクノロジーの功罪を説明できる。
16週 前期末試験 : 実施しない

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。3前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後3,後4,後7,後9,後10,後11,後14,後15
現代社会の具体的な諸問題を題材に、自ら専門とする工学分野に関連させ、技術者倫理観に基づいて、取るべきふさわしい行動を説明できる。3前14,前15,後1,後2,後5,後6,後7,後9,後10,後11,後12,後13,後14,後15
技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を認識している。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後14,後15
社会における技術者の役割と責任を説明できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後14,後15
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。3前10,前11,後7,後10,後11
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。3前10,前11,後7,後10,後11
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。3後12,後13
環境問題を考慮して、技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3後12,後13
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。3後12,後13
過疎化、少子化など地方が抱える問題について認識し、地域社会に貢献するために科学技術が果たせる役割について説明できる。3前1,前2,前10,前11
知的財産の社会的意義や重要性の観点から、知的財産に関する基本的な事項を説明できる。3前10,前11
知的財産の獲得などで必要な新規アイデアを生み出す技法などについて説明できる。3前10,前11
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後12,後13
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。3後12,後13
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。3後5,後6,後12,後13
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。3後12,後13
科学技術が社会に与えてきた影響をもとに、技術者の役割や責任を説明できる。3前1,前2,前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4,後5,後6,後12,後13,後14,後15
科学者や技術者が、様々な困難を克服しながら技術の発展に寄与した姿を通し、技術者の使命・重要性について説明できる。3前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後12,後13
グローバリゼーション・異文化多文化理解グローバリゼーション・異文化多文化理解それぞれの国の文化や歴史に敬意を払い、その違いを受け入れる寛容さが必要であることを認識している。3後12,後13
様々な国の生活習慣や宗教的信条、価値観などの基本的な事項について説明できる。3後12,後13
異文化の事象を自分たちの文化と関連付けて解釈できる。3後12,後13
それぞれの国や地域の経済的・社会的な発展に対して科学技術が果たすべき役割や技術者の責任ある行動について説明できる。3後12,後13
分野横断的能力態度・志向性(人間力)態度・志向性態度・志向性法令やルールを遵守した行動をとれる。3前1,前2,前5,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後7,後9
他者のおかれている状況に配慮した行動がとれる。3前1,前2,前5,前6,前12,前13,前14,前15,後7,後9,後12,後13
技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を認識し、技術者が社会に負っている責任を挙げることができる。3前1,前2,前5,前6,前7,前9,前14,前15,後3,後4,後5,後6,後7,後9,後12,後13,後14,後15
自身の将来のありたい姿(キャリアデザイン)を明確化できる。3前3,前4
その時々で自らの現状を認識し、将来のありたい姿に向かっていくために現状で必要な学習や活動を考えることができる。3前1,前2,後12,後13
キャリアの実現に向かって卒業後も継続的に学習する必要性を認識している。3前3,前4
これからのキャリアの中で、様々な困難があることを認識し、困難に直面したときの対処のありかた(一人で悩まない、優先すべきことを多面的に判断できるなど)を認識している。3前3,前4
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業や大学等でどのように活用・応用されるかを説明できる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6
企業等における技術者・研究者等の実務を認識している。3前3,前4,前5,前6,前7,前9
企業人としての責任ある仕事を進めるための基本的な行動を上げることができる。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15,後1,後2,後3,後4
企業における福利厚生面や社員の価値観など多様な要素から自己の進路としての企業を判断することの重要性を認識している。3前1,前2
企業には社会的責任があることを認識している。3前1,前2,前3,前4,前5,前6,前7,前9,前12,前13,前14,前15,後7,後9
企業が国内外で他社(他者)とどのような関係性の中で活動しているか説明できる。3前3,前4,前7,前9
調査、インターンシップ、共同教育等を通して地域社会・産業界の抱える課題を説明できる。3前7,前9,後10,後11,後12,後13
企業活動には品質、コスト、効率、納期などの視点が重要であることを認識している。3前3,前4
社会人も継続的に成長していくことが求められていることを認識している。3前3,前4
技術者として、幅広い人間性と問題解決力、社会貢献などが必要とされることを認識している。3前1,前2,前5,前6,後5,後6
技術者が知恵や感性、チャレンジ精神などを駆使して実践な活動を行った事例を挙げることができる。3前3,前4,前5,前6,前10,前11,後1,後2
高専で学んだ専門分野・一般科目の知識が、企業等でどのように活用・応用されているかを認識できる。3前1,前2,前5,前6
企業人として活躍するために自身に必要な能力を考えることができる。3前3,前4,前10,前11,後1,後2
コミュニケーション能力や主体性等の「社会人として備えるべき能力」の必要性を認識している。3前5,前6,前7,前9,前12,前13,後2

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他(レポート)合計
総合評価割合60000040100
基礎的能力0000000
専門的能力60000040100
分野横断的能力0000000