基礎電子回路

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 2018
授業科目 基礎電子回路
科目番号 0034 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電気情報工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 前期:2 後期:2
教科書/教材 堀桂太郎、よくわかる電子回路の基礎(電気書院)
担当教員 平 智幸

到達目標

1. 半導体の電気伝導に関する用語を書け,それぞれの用語が何を指しているのかを説明できる.
2. ダイオード、バイポーラトランジスタについて、構造の模式図を図示でき、その特徴を説明できる。
3. トランジスタの各種接地回路について増幅器として動作するために必要な電圧のかけ方を図示でき,
その電圧増幅率や電流増幅率等を数式を用いて表現できる.
4. トランジスタの増幅の様子をエミッタ接地回路の電流I-電圧V特性の図を用いて説明できる.
5. トランジスタや FET などの等価回路を用いて、増幅率や周波数特性、入力インピーダンスや出力インピーダンスなどを数式を用いて表すことができる。
6. dBを用いた計算ができる.
7. トランジスタやFETの動作に必要な直流バイアスを与える手法を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1ダイオード、トランジスタ、FET の特徴や働きを図を用いて正しく説明できる。ダイオード、トランジスタ、FET の特徴や働きを用意された図を用いて正しく説明できる。ダイオード、トランジスタ、FET の特徴や働きを用意された図を用いても説明できない。
評価項目2トランジスタ、FET の等価回路を用 いて、各種動作量を正しく計算でき る。トランジスタ、FETの等価回路を用 いて、各種動作量を計算できる。トランジスタ、FET の等価回路を用 いて、各種動作量を計算できない。
評価項目3トランジスタ、FET のバイアス回路の役割を正しく説明でき、バイアス回路に関する計算ができる。トランジスタ、FET のバイアス回路の役割を説明でき、バイアス回路に関する計算ができる。トランジスタ、FET のバイアス回路の役割を説明できず、バイアス回路に関する計算ができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 電気情報工学科の教育目標① 説明 閉じる
学習・教育到達度目標 本科の教育目標③ 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 デジタルによる信号処理が盛んな現代においても,アナログ回路が必要な場面は多い.例えば,皆さんが持っているスマートフォンなどで音楽を聴く場合を考える.音楽のデータはデジタルで保存されているが,D/A変換や増幅を経て,最終的にはアナログの信号となり,電流を流すことでイヤフォンから音が出ている.アナログ信号をうまく取り扱うためには,電気回路や電磁気学,物理の知識を集結させ,半導体の中でどんな現象が起きることで,電子回路で実現したい機能がどのようにして得られるのを十分に理解しておく必要があります.(機能:大きな電流を作り出す.電圧を高める等)
 この授業では,基本的な半導体素子である,ダイオードやトランジスタ,FET を一つもしくは複数個有する回路を取り扱うことで,半導体素子特有な性質がどんな場面で使えるのかを学び,それぞれの素子を用途に合った使い方ができるようになることを目的とする。

授業の進め方・方法:
前半は、半導体の基礎からダイオード、トランジスタ、FETの基礎的な動作を学び、増幅器としての使い方、等価回路を用いた回路解析について学ぶ。後半は、複数個のトランジスタを組み合わせて使用する具体的な手法や、動作を数式等を用いて表現できるようにする。また、FETについてもその基礎的な内容および、使用方法、等価回路を学ぶ。

授業は、教科書に沿って進行し、演習問題を解くことで、理解を深める。
小テストおよびレポート課題により理解の定着を図る。
注意点:
・電気回路の基礎的な内容を十分に理解している必要がある。
・教科書で指定している以外の図書も多数出版されているため、そちらも参照して理解を深めるようにしてください。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 授業の概要,進め方,評価方法などを確認 電子回路に必要な知識の確認
電子回路で使う電圧や素子を説明できる。半導体やダイオードに関する用語を説明できる。
2週 半導体やダイオードに関する用語とダイオード、トランジスタの構造と動作 ダイオード、バイポーラトランジスタについて、構造を図示でき、それぞれの特徴を説明できる。
3週 必要な電圧のかけ方とトランジスタ内部で起きるキャリアの移動
バイポーラトランジスタで使用される用語、トランジスタの静特性、増幅度を説明できる。
4週 トランジスタ内部のキャリアの移動 ベース接地のバイポーラトランジスタの動作を理解し、入出力の関係を導出でき、その意味を説明できる。
5週 エミッタ接地増幅回路
エミッタ接地の動作を理解し、入出力の関係を導出でき、その意味を説明できる。
6週 コレクタ接地増幅回路
コレクタ接地の動作を理解し、入出力の関係を導出でき、その意味を説明できる。
7週 負荷直線と増幅の様子(エミッタ接地回路)
次週テストを実施する。

負荷直線を作図でき、その意味を説明できる。また、増幅回路における動作点の意味を説明できる。
8週 負荷直線と増幅の様子(エミッタ接地回路)

小信号等価回路の考え方を理解し、トランジスタの小信号等価回路を描くことができる。
2ndQ
9週 トランジスタの小信号等価回路
- 小信号等価回路 -
小信号等価回路の考え方を理解し、トランジスタの小信号等価回路を描くことができる。
10週 トランジスタの小信号等価回路
- hパラメータの物理的意味 -
hパラメータの物理的意味を説明でき、動作状態のトランジスタの具体的な数値を計算できる。
11週 トランジスタの小信号等価回路
- hパラメータの評価 -
トランジスタの h パラメータ測定方法を理解し、h パラメータを導出できる。
12週 増幅回路の入出力抵抗と整合
- 入力抵抗と出力抵抗 -
入力抵抗、出力抵抗の考え方を理解し、入出力抵抗により用途別の利用回路を選ぶことができる。
13週 増幅回路の入出力抵抗と整合
トランジスタの各接地方式の入出力抵抗の値が計算できる。
14週 増幅回路の入出力抵抗と整合- デシベルと電力利得 - デシベル表記に慣れ、デシベル表記での利得の計算ができる。
15週 増幅回路の入出力抵抗と整合 デシベル表記に慣れ、デシベル表記での利得の計算ができる。
16週 前期末試験 学んだ知識の確認ができる。
後期
3rdQ
1週 直流バイアス回路
トランジスタを動作させるためのバイアス回路を理解でき、説明できる。また、必要な動作をさせるための具体的な数値を計算できる。
2週 直流バイアス回路
バイアス回路がトランジスタの動作に与える影響を理解でき、説明できる。
3週 直接結合増幅回路
トランジスタを複数個接続した場合について動作を理解でき、利得を計算できる。
4週 直接結合増幅回路
ダーリントン接続、差動増幅回路の基礎を理解し、その動作を数式等を用いて説明できる。
5週 CR 結合増幅回路
- コンデンサによる増幅回路の接続 -
複数のトランジスタをコンデンサを用いて結合した増幅回路の動作を理解し、コンデンサの影響を説明できる。
6週 CR 結合増幅回路
- コンデンサの影響 -
コンデンサが増幅回路の利得の周波数依存性へ与える影響を理解し、コンデンサのない場合との違いを説明できる。
7週 CR 結合増幅回路
- コンデンサの影響 -
次週、中間試験を行う
コンデンサが増幅回路の利得の周波数依存性へ与える影響を理解し、コンデンサのない場合との違いを説明できる。
8週 CR 結合増幅回路
- ミラー効果 -
高周波で影響のあるミラー効果を理解し、遮断周波数の計算ができる。
4thQ
9週 CR 結合増幅回路
- ミラー効果 -
高周波で影響のあるミラー効果を理解し、遮断周波数の計算ができる。
10週 CR 結合増幅回路
- 帯域幅 -
多段増幅回路としたことが帯域幅に与える影響を理解し、広帯域化の手法を説明できる。
11週 FET増幅回路
-FETの特徴-
FETの構造、動作原理を理解できる。バイポーラトランジスタとの違いを理解し、説明できる。
12週 FET増幅回路
-FETのバイアス回路-
FETの動作に必要なバイアスを理解し、バイアス回路を説明できる。
13週 FET増幅回路
-FETの等価回路-
FETの等価回路を導出でき、回路解析に使用できる。
14週 負帰還増幅回路 負帰還増幅回路の効果を説明でき、増幅度を計算できる。
15週 負帰還増幅回路 負帰還増幅回路の効果を説明でき、増幅度を計算できる。
16週 学年末試験 学んだ知識の確認ができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学電気・電子系分野電子回路ダイオードの特徴を説明できる。4前1,前2
バイポーラトランジスタの特徴と等価回路を説明できる。4前2,前3,前5,前6,前10,前11,前12,前13
FETの特徴と等価回路を説明できる。4後11,後12,後13
利得、周波数帯域、入力・出力インピーダンス等の増幅回路の基礎事項を説明できる。4前12,前13,後10
トランジスタ増幅器のバイアス供給方法を説明できる。4後1,後2,後12
情報系分野その他の学習内容トランジスタなど、ディジタルシステムで利用される半導体素子の基本的な特徴について説明できる。3前3,後11

評価割合

試験小テスト・レポート合計
総合評価割合6040100
基礎的能力101020
専門的能力503080
分野横断的能力000