生化学

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 2019
授業科目 生化学
科目番号 0037 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質化学工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 基礎からしっかり学ぶ 生化学(山口雄輝、成田央 羊土社)
担当教員 杉本 敬祐

到達目標

生体分子の特性を知り,生命現象を化学の観点から考えられることを目的とする。
1. 基礎化学を生物化学分野に応用することができる。
2. 生物の共通性である,細胞の仕組みと遺伝情報の発現の仕組みについて理解する。
3. 炭水化物、タンパク質、核酸、脂質について、生体内での機能と化学構造・性質を結びつけて理解する。
4. 酵素の役割・性質、生体内における役割を理解する。
5. 代謝における物質の変化・制御とエネルギーの出入りを結びつけて理解する。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1基礎化学を生物化学分野に応用することができる。基礎化学を生物化学分野に応用している例を理解することができる。基礎化学を生物化学分野に応用することができない。
評価項目2細胞と遺伝情報の発現の仕組みについて理解し,発展的に考えることができる。細胞と遺伝情報の発現の仕組みについて理解することができる。細胞と遺伝情報の発現の仕組みについて理解することができない。
評価項目3炭水化物、タンパク質、核酸、脂質について、生体内での機能と化学構造・性質を結びつけて理解し,発展的に考えることができる。炭水化物、タンパク質、核酸、脂質について、生体内での機能と化学構造・性質を理解することができる。炭水化物、タンパク質、核酸、脂質について、生体内での機能と化学構造・性質を結びつけて理解することができない。
評価項目4酵素の役割・性質、生体内における役割を理解し,発展的に考えることができる。酵素の役割・性質、生体内における役割を理解できる。酵素の役割・性質、生体内における役割を理解できない。
評価項目5代謝における物質の変化・制御とエネルギーの出入りを結びつけて理解し,発展的に考えることができる。代謝における物質の変化・制御とエネルギーの出入りを結びつけて理解できる。代謝における物質の変化・制御とエネルギーの出入りを結びつけて理解できない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 物質化学工学科の教育目標 ② 説明 閉じる
学習・教育到達度目標 本科の教育目標 ③ 説明 閉じる

教育方法等

概要:
生体がどのような物質で構成されているか,およびそれらの生体分子の化学的性質や構造を理解する。さらに生命活動における異化・同化経路や、遺伝情報の保存・発現の仕組みについても習得する。
授業の進め方・方法:
・授業範囲が広いため、授業スピードをやや速める必要がある。このため、講義ではプロジェクターを用いて授業を行い、学生は板書をノートではなく、教科書に書き込むことで書き写す時間を短縮する。その後、自学自習時間を利用し、講義内容をノートにまとめ上げるようにすることを勧める。もちろん、授業スピードが速すぎる場合は、遠慮無く申し出ること。
注意点:
・履修にあたっては,化学、生物,分析・無機化学,有機化学の内容を適宜復習することが望ましい。また教科書およびハート「基礎有機化学」を使って,毎回の予習復習を行うと共に,日常的に農業,水産業,工業分野でのバイオ関係のニュース,および医療問題などに関心をもつこと,さらに生物である自分の身体に関心を持ち講義に臨むこと。

・評価については,合計点数が60点以上で単位修得となる.

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ・ガイダンス
・生化学とは
・生物の分類
・真核・原核生物(細胞)について
・生化学の意義を理解することができる。
・生物が7つの階層で分類されていることを理解することができる。
・真核・原核細胞の違いを理解することができる。
2週 ・アミノ酸について
・pKaと等電点について その1
・タンパク質を構成するアミノ酸の化学構造をすべて覚え,それらアミノ酸の性質を説明することができる。
・アミノ酸とpHの関係をpKaを用いて考えることができる。
3週 ・pKaと等電点について その2
・緩衝溶液について
・アミノ酸とpHの関係をpKaを用いて考えることができる。
・アミノ酸、タンパク質における等電点について考えることができる。
・生化学実験で緩衝溶液を調製するための基本的考え方を身につけることができる。
4週 ・ペプチド結合
・ジスルフィド結合
・非共有結合(水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用、van der Waals相互作用)
タンパク質の立体構造を構成する結合・相互作用について理解することができる。
5週 タンパク質について その1 一次構造から四次構造までを理解することができる。
6週 タンパク質について その2 ・一次構造から四次構造までを理解することができる。
・球状、繊維状タンパク質や抗体などタンパク質の実例からその構造を理解することができる。
・ヘモグロビンにおけるアロステリックを理解することができる。
7週 タンパク質の分析・解析法 その1
次週、中間試験を実施する。
・クロマトグラフィーを理解し、生化学実験で活用することができる。
・ゲル電気泳動について理解することができる。
8週 中間試験 ・中間試験を通して、これまでの修得した範囲を改めて理解することができる。
2ndQ
9週 タンパク質の分析・解析法 その2 ・ゲル電気泳動について理解することができる。
・超遠心の利用方法を理解することができる。
・タンパク質の一次構造を解析する方法の概要を理解することができる。
・タンパク質の立体構造解析の概要を理解することができる。
10週 単糖 その1 ・単糖の基本的な化学構造を理解することができる。
・単糖の異性体の種類を理解することができる。
11週 単糖 その2 ・単糖の異性体の種類を理解することができる。
12週 単糖 その3
多糖 その1
・環状化反応とα、β表記を理解することができる。
・修飾糖の分類をすることができる。
・多糖の概要を理解することができる。
13週 多糖 その2 ・多糖の化学的構造を理解することができる。
・多糖の働きを理解することができる。
14週 脂質と細胞膜 その1
脂質の構造と機構を理解することができる。
15週 脂質と細胞膜 その2 脂質の構造と機構を理解することができる。
16週 期末試験
後期
3rdQ
1週 答案返却&解説
核酸の構造と機能 その1
核酸の構造を理解することができる。
DNAやRNAの性質を理解することができる。
2週 核酸の構造と機能 その2
ゲノムと遺伝子
・DNAと遺伝情報を結びつけて理解することができる。
・ゲノムと遺伝子の関係を理解することができる。
3週 細胞周期、体細胞分裂、DNAの複製の関係
減数分裂と染色体の分配
・DNAの複製と細胞周期の関係を理解することができる。
・減数分裂の仕組みを理解することができる。
4週 DNAの複製 その1 DNAの複製の概要を理解することができる。
5週 DNAの複製 その2
転写
・DNAの複製の概要を理解することができる。
・転写の概要を理解することができる。
6週 翻訳 その1 翻訳の概要を理解することができる。
7週 翻訳 その2
次週、中間試験を実施する。
翻訳の概要を理解することができる。
翻訳後の修飾についても理解することができる。
8週 中間試験
・中間試験を通して、これまでの修得した範囲を改めて理解することができる。
4thQ
9週 酵素 その1 酵素とは何か説明することができる。
補酵素について説明することができる。
10週 酵素 その2 ・ミカエリス定数をラインウィーバー・バーグプロットから求めることができる。
・酵素の阻害様式(拮抗、非拮抗、不拮抗阻害)について理解することができる。
11週 解糖系 その1 解糖系の概要を説明することができる。
12週 解糖系 その2
糖新生
解糖系のその後として、好気・嫌気呼吸について概要を説明することができる。
糖新生の概要を説明し、解糖系の関係を説明することができる。
13週 クエン酸回路
クエン酸回路の概要を説明することができる。
14週 電子伝達系と酸化的リン酸化1
電子伝達系と酸化的リン酸化の概要を説明することができる。
15週 電子伝達系と酸化的リン酸化2 電子伝達系と酸化的リン酸化の概要を説明することができる。
16週 学年末試験 グリコーゲン代謝やその制御(グルカゴン、アドレナリン、インスリン)の概要を説明することができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野分析化学強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。4前2,前3
緩衝溶液とpHの関係について説明できる。4前3
クロマトグラフィーの理論と代表的な分析方法を理解している。2前7
基礎生物原核生物と真核生物の違いについて説明できる。3前1
核、ミトコンドリア、葉緑体、細胞膜、細胞壁、液胞の構造と働きについて説明できる。3前1,前14
葉緑体とミトコンドリアの進化の説について説明できる。3前1
代謝、異化、同化という語を理解しており、生命活動のエネルギーの通貨としてのATPの役割について説明できる。4後12,後15
酵素とは何か説明でき、代謝における酵素の役割を説明できる。4後9,後10
DNAの構造について遺伝情報と結びつけて説明できる。4後1,後4
遺伝情報とタンパク質の関係について説明できる。4後4
染色体の構造と遺伝情報の分配について説明できる。3後4
細胞周期について説明できる。4後3,後4
ゲノムと遺伝子の関係について説明できる。4後4
細胞膜を通しての物質輸送による細胞の恒常性について説明できる。3前14,前15
フィードバック制御による体内の恒常性の仕組みを説明できる。3後16
情報伝達物質とその受容体の働きを説明できる。3後16
生物化学タンパク質、核酸、多糖がそれぞれモノマーによって構成されていることを説明できる。4前5,前10,後1
生体物質にとって重要な弱い化学結合(水素結合、イオン結合、疎水性相互作用など)を説明できる。4前4
単糖と多糖の生物機能を説明できる。4前10
単糖の化学構造を説明でき、各種の異性体について説明できる。4前10,前11
グリコシド結合を説明できる。4前12
多糖の例を説明できる。4前12
脂質の機能を複数あげることができる。4前14,前15
トリアシルグリセロールの構造を説明できる。脂肪酸の構造を説明できる。4前14,前15
リン脂質が作るミセル、脂質二重層について説明でき、生体膜の化学的性質を説明できる。4前15
タンパク質の機能をあげることができ、タンパク質が生命活動の中心であることを説明できる。4前6
タンパク質を構成するアミノ酸をあげ、それらの側鎖の特徴を説明できる。4前3
アミノ酸の構造とペプチド結合の形成について構造式を用いて説明できる。4前4
タンパク質の高次構造について説明できる。4前5,前6
ヌクレオチドの構造を説明できる。4後1
DNAの二重らせん構造、塩基の相補的結合を説明できる。4後1,後5
DNAの半保存的複製を説明できる。4後2,後5
RNAの種類と働きを列記できる。4後5,後6
コドンについて説明でき、転写と翻訳の概要を説明できる。4後6,後7
酵素の構造と酵素-基質複合体について説明できる。4後9,後10
酵素の性質(基質特異性、最適温度、最適pH、基質濃度)について説明できる。4後9,後10
補酵素や補欠因子の働きを例示できる。水溶性ビタミンとの関係を説明できる。4後9
解糖系の概要を説明できる。4後11,後12
クエン酸回路の概要を説明できる。4後13,後14,後15
酸化的リン酸化過程におけるATPの合成を説明できる。4後14,後15
嫌気呼吸(アルコール発酵・乳酸発酵)の過程を説明できる。4後12
生物工学原核微生物の種類と特徴について説明できる。2前1

評価割合

試験課題合計
総合評価割合8020100
基礎的能力201030
専門的能力601070
分野横断的能力000