材料化学Ⅱ

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 材料化学Ⅱ
科目番号 0080 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 物質化学工学科 対象学年 5
開設期 前期 週時間数 前期:4
教科書/教材 宮越担当A:無機材料化学[第2版] (荒川 剛、江頭 誠、平田好洋、松本泰道、村田治人、共著、三共出版)梅田担当B:基礎有機化学(著者H.ハート 秋葉等訳 培風館)
担当教員 梅田 哲,宮越 昭彦

到達目標

1. 磁性材料および発光材料の基本特性を理解するとともに、それぞれの原料がどのような化学特性に基づいて機能性を発揮するのかを具体的に説明することができる。
2. 高温材料に必要な基本性能を理解するとともに、代表的なセラミックスの特性を説明することができる。
3. 多置換ベンゼンの合成戦略について芳香族求電子置換反応および求核置換反応を組み合わせて設計することができる。
4. 有機化合物について各種分光法を組合せて構造決定ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1磁性材料および発光材料の基本的な特性や機能原理について具体例を挙げて正確に説明できる。磁性材料および発光材料の基本的な特性や機能原理について説明できる。磁性材料および発光材料の基本的な特性や機能原理について説明できない。
評価項目2 構造材料に関する基本特性や物理的な用語について具体例を挙げて正確に説明できる。構造材料に関する基本特性や物理的な用語について説明ができる。構造材料に関する基本特性や物理的な用語について説明ができない。
評価項目3 多置換ベンゼンの合成戦略について芳香族求電子置換反応および求核置換反応を組み合わせて正しく設計することができる。多置換ベンゼンの合成戦略について芳香族求電子置換反応および求核置換反応を組み合わせて設計することができる。多置換ベンゼンの合成戦略について芳香族求電子置換反応および求核置換反応を組み合わせて設計することができない。
評価項目4 有機化合物について各種分光法を組合せて正しく構造決定ができる。有機化合物について各種分光法を組合せて構造決定ができる。有機化合物について各種分光法を組合せて構造決定ができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 物質化学工学科の教育目標 ③ 説明 閉じる
学習・教育到達度目標 本科の教育目標 ② 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 この科目は企業で溶液処理装置や機能性素材の開発・市販化に携わった教員が、それら経験を活かし、有機材料物質の特性や合成手法、ならびに無機材料物質の特性や性能発現の原理について講義形式で授業を行うものである。それぞれの概要については下記の通りである。
宮越担当A:磁性、光機能性を利用した材料の原理と実用例について学ぶほか、構造材料としてのセラミックスを取り上げ、機械的性質を活かすための機能や特徴を学ぶ。さらに工業的に利用される材料の特性に基づいて、受講者自らで材料改善のための設計指針や相互の性能比較ができる視点を体得する。
梅田担当B:芳香族求電子置換反応および求核置換反応について学び、それを利用した多置換ベンゼンの合成方法について習得する。また、各種スペクトルデータによる構造解析の方法を習得する。
授業の進め方・方法:
宮越担当A:各種材料の特徴、機能発現の原理、実用化への問題点などを系統づけて勉強するとよい。
梅田担当B:授業時間中にもグループワーク等で演習問題をたくさん解くことになる。予習をしっかり行い授業に臨むこと。
注意点:
・総時間数90時間(自学自習30時間)
・自学自習時間(30時間)として,日常の授業(60時間)のための予習復習時間,理解を深めるための演習課題の考察・解法の時間および定期試験の準備のための学習時間を総合したものとする。
・評価については,合計点数が60点以上で単位修得となる.その場合,各到達目標項 目の到達レベルが標準以上であることが認められる。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス
A. 磁性材料(1)
セラミックスの磁性
B. 置換ベンゼンの性質(1)
求電子置換基効果
A&B.授業の進め方と成績の評価方法が理解できる。
A. 各種磁性体の定義と磁性発現の機構を説明できる。
B. 電子置換反応における置換基効果を説明できる。
2週 A. 磁性材料(2)
強磁性体の特性曲線
B. 置換ベンゼンの性質(2)
求電子置換反応
A. 強磁性体の特性曲線について理解でき、とくにフェライト系磁性体の磁性が何に依存して発現する
のかを表現できる。
B. 置換ベンゼン類における代表的な電子置換反応について説明できる。
3週 A. 磁性材料(3)
フェライト系磁性体の特性と応用
B. 置換ベンゼンの性質(3)
求核置換基効果
A. ハードな、ソフトな―フェライトに関する応用例を説明できる。
B. 求核置換反応における置換基効果を説明できる。
4週 A. 発光材料(1)
ルミネッセンスと蛍光体
B. 置換ベンゼンの性質(4)
求核置換反応
A. 固体の光吸収作用を理解でき、蛍光体の発光原理を説明できる。
B. 置換ベンゼン類における代表的な求核置換反応について説明できる。
5週 A. 発光材料(2)
レーザーの原理と応用
B. 置換ベンゼンの合成戦略(1)
基本的な合成戦略
A. レーザーの発光機構とその利用法について表現できる。
B. 置換ベンゼンの基本的な合成反応を理解し、単純な置換ベンゼン類の合成経路を提案できる。
6週 A. 発光材料(3)
有機EL材料の特性
B. 置換ベンゼンの合成戦略(2)
多置換基ベンゼン類の合成戦略
A. 有機EL材料の発光機構とその利用法について表現できる。
B. 基本的な置換ベンゼン類の合成反応を利用して、多置換ベンゼン類の合成経路を提案できる。
7週 A. 高温構造材料(1)
高温構造材料に必要な機能
B. 有機化合物のスペクトル解析(1)
紫外分光法の基本的なデータ解析
次週,中間試験を実施する。
A. 高温構造材料に必要な機能を説明できる。
B. 基本的なUVスペクトルデータの解析ができる。
次週,中間試験を実施する。
8週 中間試験 学んだ知識の確認ができる。
2ndQ
9週 A. 高温構造材料(2)
高温構造材料に必要な機能
B. 有機化合物のスペクトル解析(2)
実際のデータ解析と応用例
A. 高温構造材料の特性について化学結合の特徴に基づいて説明できる。
B. 実際的なUVスペクトルデータの解析ができる。
10週 A. 高温構造材料(3)
代表的なセラミックス材料
B. 有機化合物のスペクトル析(3)
赤外分光法の基本的なデータ解析
A. 代表的なセラミックス材料を挙げ、その特徴を説明できる。
B. 基本的なIR スペクトルの解析ができる。
11週 A. 高温構造材料(4)
高温セラミックスの製法
B. 有機化合物のスペクトル解析(4)
実際のデータ解析と応用例
A. 高温構造材料の製法について説明できる。
B. 実際的なIRスペクトルデータの解析ができる。
12週 A. 高温構造材料(5)
高温セラミックスの複合化
B. 有機化合物のスペクトル解析(5)
核磁気共鳴分光法の基本的なデータ解析
A. 高温セラミックス材料の複合効果について説明できる。
B. 基本的な1H・13C NMR スペクトルの解析ができる。
13週 A. 高温構造材料(6)
複合高温セラミックスの機能
B. 有機化合物のスペクトル解析(6)
実際のデータ解析と応用例
A. 複合高温セラミックスの特性データに基づいて材料の特性を説明できる。
B. 実際的なNMRスペクトルデータの解析ができる。
14週 A. 高温構造材料(7)
高温構造材料の設計
B. 有機化合物のスペクトル解析(7)
各種分光データによる総合解析
A. 自ら考案して高温構造セラミックスの特性や製法を表現することができる。
B. 各種分光データの解析結果に基づいて総合的に未知化合物の同定ができる。
15週 A. 機能性材料と構造材料
B. 有機化合物のスペクトル解析(8)
各種分光データによる総合解析
A. 機能性材料と構造材料について自ら考案した材料を具体的に表現することができる。
B. 各種分光データの解析結果に基づいて総合的に未知化合物の同定ができる。
16週 期末試験 学んだ知識の確認ができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。3
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4
σ結合とπ結合について説明できる。3
混成軌道を用い物質の形を説明できる。3
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4
共鳴構造について説明できる。4
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。2
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。3
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。3
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。3
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。2
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。2
金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。2
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。2
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。2
配位結合の形成について説明できる。3
水素結合について説明できる。2
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。3
錯体の命名法の基本を説明できる。3
配位数と構造について説明できる。3
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。3
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。3
分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。3
無機および有機物に関する代表的な構造分析、定性、定量分析法等を理解している。4
特定の分析装置を用いた気体、液体、固体の分析方法を理解し、測定例をもとにデータ解析することができる。4

評価割合

試験小テストレポート合計
総合評価割合702010100
基礎的能力3010040
専門的能力2010535
分野横断的能力200525