機械設計材料工学

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 機械設計材料工学
科目番号 062 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 システム制御情報工学科(2021年度以降入学者) 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 基礎機械材料学(松澤 和夫著,日本理工出版会),新機械設計 (実教出版)
担当教員 大柏 哲治,堀川 紀孝

到達目標

1. 各種工業材料の特性を理解し,その特性が出現するしくみを説明できる.
2. 材料の強さや変形と金属の組織との関係について理解し,材料試験方法とともに説明できる.
3. 組成や熱処理による金属材料の特性の変化について理解し,そのしくみを説明できる.
4. ねじや軸,キーなどの機構部品に作用する力について理解し,それに耐えうる設計ができる.
4. 金属材料,非金属材料の特性と用途を説明できる.

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1各種工業材料の特徴を理解し,その特性が出現するしくみを説明できる.各種工業材料の特徴を理解し,説明できる.各種工業材料の特徴を説明できない.
評価項目2材料の強さや変形と金属の組織,結晶構造との関係について理解し,材料試験方法とともに説明できる.材料の強さや変形と金属の組織,結晶構造との関係を説明できる.材料試験方法を説明できる.材料の強さや変形と金属の組織,結晶構造との関係や材料試験方法について説明できない.
評価項目3組成や熱処理による金属材料の特性の変化について理解し,そのしくみを説明できる.組成や熱処理による金属材料の特性の変化について説明できる.組成や熱処理による金属材料の特性の変化について説明できない.
評価項目4ねじや軸,キーに働く力について説明し,使用材料に基づいた強度の計算ができる.ねじや軸,キーに働く力について説明し,強度の計算ができる.ねじや軸,キーに働く力についての説明と,強度の計算ができない.
評価項目5金属材料,非金属材料の特性と用途を説明できる金属材料,非金属材料の主要な特性を説明できる金属材料,非金属材料の特性を説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
工業材料の強度などの特性とともに,材料が利用されるねじや軸などの設計の基礎を学ぶことで,機械構造物の強度設計と材料強度の関係を理解することが本授業の目標であり,以下のような構成である.
工業材料の基本的性質、微視構造、合金、材料試験法について学び,材料の性質が出現するしくみを学ぶ.
炭素鋼、鋳鉄、非鉄金属,非金属材料の特性ならびに実際の工業材料の性質・用途等を学ぶ。
ねじおよび軸に作用する力とそれに耐えうる材料強度の考え方を学ぶ.
授業の進め方・方法:
前期は金属を中心とする微小構造や強度・性質との関係,材料の性質と試験法について学び,その後,種々の材料についての性質や熱処理について学ぶ.その上で,鉄鋼材料を中心とした材料の強度を学ぶ.したがって,序盤の内容の理解が重要である.
後期の前半で,ねじ,軸等の強度計算を学ぶため,計算で求められる応力とそれに耐えうる材料の関係を理解することが必要である.
前期および後期の後半(4thQ)は堀川が担当し,後期前半(3rdQ)は大柏が担当する.
注意点:
工業材料は強度や加工性などの性質が重要視され,それらは材料の組織や成分でコントロールされる。材料の性質を理解するにはミクロとマクロ,両方の見方が必要であり,序盤の授業で扱う基礎が大切である。単なる暗記ではなく,材料の性質が「なぜ」違うのかを意識しながら学習すること。また,ねじや軸といった一般的な部品に作用する力を意識し,そうした部材に使用されている材料にも関心を持つと良い.

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 工業材料の分類と基礎
工業製品の製造とリサイクル
設計における材料の位置づけがわかる.
工業製品の製造工程とリサイクルについて説明できる.
原子の化学結合の種類と,工業材料の性質と分類を説明できる。
2週 金属の結晶構造 金属と合金の結晶構造を説明できる。
格子定数,充填率の計算ができる.
ミラー指数の説明ができる.
3週 材料の変形と結晶構造
金属の塑性変形と転位
金属を中心に弾性変形と塑性変形のしくみ,結晶格子,転位の関係を説明できる.加工硬化と再結晶について説明できる。
4週 応力・ひずみと引張試験 材料の応力とひずみについて説明できる.フックの法則を説明できる.引張試験・曲げ試験の方法を説明できる.
5週 曲げ試験,硬さ試験,衝撃試験,高温強さとクリープ試験 硬さ試験の方法と特徴を説明できる.衝撃試験,低温脆性について説明できる.
6週 疲労破壊と疲労試験 疲労破壊のプロセスについて説明できる.S-N線図と疲労強度について説明できる.
7週 顕微鏡観察と非破壊試験 材料の検査方法としての顕微鏡観察と非破壊試験の種類と特徴を説明できる.
8週 前期中間試験
2ndQ
9週 試験解説
合金の形態と平衡状態図
合金の状態,凝固について説明できる.平衡状態図と冷却曲線の関係を説明出来る.
10週 各種平衡状態図(全率固溶系,共晶系平衡状態図 全率固溶系および共晶形の状態図について説明できる.合金の平衡状態図から,てこの理を用いて種々の相の割合を求められる.
11週 部分固溶系状態図,その他の状態図
鉄-炭素系状態図
部分固溶系,金属間化合物を晶出する状態図について説明できる.
12週 鋼の組織と機械的性質
鋼の炭素量と組織,機械的性質の関係を説明できる.
13週 鋼の焼入れによる機械的性質・組織の変化
鋼の各種熱処理
焼き入れによる硬化のしくみ,S曲線を説明できる.焼入れによる問題と,その対策について説明できる.種々の熱処理の目的と熱処理条件を説明できる
14週 炭素鋼・構造用合金鋼の種類と特徴 合金元素の添加による効果について説明出来る.
15週 ステンレス鋼,耐熱鋼,特殊用途鋼 ステンレス鋼,耐熱鋼,耐熱合金の特徴を説明できる.工具鋼,ばね鋼,軸受鋼等の特徴を説明できる.
16週 前期末試験
後期
3rdQ
1週 前期末試験解説
加工精度とコスト・ねじの基本と、ねじの種類と用途
・全体コスト、加工コスト、全体コストについて学ぶ
・ねじの基本と、ねじの種類と用途について学ぶ
2週 ねじの種類と用途と、ねじに働く力 ・ねじの種類と用途について学ぶ
・ねじに作用する力について学ぶ
3週 ねじに働く力 ・ねじに働く力について学ぶ
4週 ねじに働く力 ・ねじに働く力について学ぶ
5週 ねじに働く力 ・ねじに働く力について学ぶ
6週 軸の種類と用途と軸の受ける力・キーの強度 ・軸の種類と用途と作用する力について学ぶ
・キーに作用する力を学
7週 軸継ぎ手の種類と用途 ・軸継手の種類と用途について学ぶ
8週 軸継ぎ手の種類と用途 ・軸継手の種類と用途について学ぶ
4thQ
9週 後期中間試験

10週 試験解説
鋳鉄の組織と特性
鋳鉄の特徴を説明できる.
11週 各種鋳鉄・鋳鋼 鋳鉄の強度特性と黒鉛形状・基地組織の関係を説明できる.
鋳鋼の特徴について説明できる.
12週 軽合金の熱処理
軽合金の種類と特徴
軽合金の強化法(熱処理等)について説明できる.
アルミニウム合金・マグネシウム合金・チタン合金の種類と特徴・用途について説明できる.
13週 非鉄金属材料 純銅,青銅,黄銅について特徴を説明できる.
亜鉛,すず等の用途について説明できる.
14週 非金属材料:セラミックス セラミックスおよび高分子材料の構造と特性について説明できる.
15週 非金属材料:高分子材料,複合材料 複合材料の強化機構について説明できる.複合材料の種類と特性を説明できる.
16週 学年末試験

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学機械系分野機械設計標準規格の意義を説明できる。2後5
許容応力、安全率、疲労破壊、応力集中の意味を説明できる。4前6,前9
標準規格を機械設計に適用できる。4
ねじ、ボルト・ナットの種類、特徴、用途、規格を理解し、適用できる。4
ボルト・ナット結合における締め付けトルクを計算できる。4
ボルトに作用するせん断応力、接触面圧を計算できる。4
軸の種類と用途を理解し、適用できる。4
軸の強度、変形、危険速度を計算できる。4
キーの強度を計算できる。4前6
軸継手の種類と用途を理解し、適用できる。4
力学荷重が作用した時の材料の変形を説明できる。3前3,前5
応力とひずみを説明できる。4前5
フックの法則を理解し、弾性係数を説明できる。3前5,前6
許容応力と安全率を説明できる。4前6
材料機械材料に求められる性質を説明できる。4前1
金属材料、非金属材料、複合材料、機能性材料の性質と用途を説明できる。4前1,前4
引張試験の方法を理解し、応力-ひずみ線図を説明できる。4前5
硬さの表し方および硬さ試験の原理を説明できる。4前7
脆性および靱性の意味を理解し、衝撃試験による粘り強さの試験方法を説明できる。4前7
疲労の意味を理解し、疲労試験とS-N曲線を説明できる。4前9
機械的性質と温度の関係およびクリープ現象を説明できる。4前10
金属と合金の結晶構造を説明できる。4前2,前12
金属と合金の状態変化および凝固過程を説明できる。4前12
合金の状態図の見方を説明できる。4前13,前14
塑性変形の起り方を説明できる。4前3
加工硬化と再結晶がどのような現象であるか説明できる。4前3
鉄鋼の製法を説明できる。4後1
炭素鋼の性質を理解し、分類することができる。4後2,後5
Fe-C系平衡状態図の見方を説明できる。4前15
焼きなましの目的と操作を説明できる。4後4
焼きならしの目的と操作を説明できる。4後4
焼入れの目的と操作を説明できる。4後3
焼戻しの目的と操作を説明できる。4後4

評価割合

試験課題合計
総合評価割合7525100
基礎的能力15015
専門的能力602080
分野横断的能力055