分析化学

科目基礎情報

学校 旭川工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 分析化学
科目番号 077 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質化学工学科(2021年度以降入学者) 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 これならわかる分析化学(古田直紀著、三共出版)
担当教員 宮越 昭彦

到達目標

1. 分析化学で汎用される誤差の表現法や濃度について説明でき、必要な計算ができる。
2. 代表的な陽イオンや陰イオンが関与する化学反応について説明ができる。
3. 化学反応(酸塩基反応、酸化還元反応、沈殿形成、錯体形成など)による状態変化について説明でき、そのために必要な計算ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1分析化学で用いる誤差や濃度について正しく説明でき、自らの判断で必要に応じた数値を計算できる。分析化学で用いる誤差や濃度について説明でき、必要に応じた数値を計算できる。分析化学で用いる誤差や濃度を説明できず、必要な数値が計算できない。
評価項目2化学平衡の理論を正しく説明でき、例えば酸塩基滴定に関する濃度計算や滴定曲線の作成が正確にできる。化学平衡の理論を説明でき、例えば酸塩基滴定に関する濃度計算や滴定曲線の作成ができる。化学平衡の基本を理解できず、酸例えば、塩基滴定に関する濃度計算や滴定曲線の作成ができない。
評価項目3酸化・還元平衡の理論を正しく説明でき、酸化・還元反応に関する反応式の表現や濃度計算、および電池の起電力計算が正確にできる。酸化・還元平衡の理論を説明でき、酸化・還元反応に関する反応式の表現や濃度計算、および電池の起電力計算ができる。酸化・還元平衡の理論を説明できず、酸化・還元反応に関する反応式の表現や濃度計算、および電池の起電力計算ができない。

学科の到達目標項目との関係

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教育方法等

概要:
 この科目は企業で製品の市販化や液剤試薬の開発を担当していた教員が、その経験を活かし、溶液内化学反応に関する基礎理論を取り上げ、前半は有効数字や各種濃度の求め方などの基本事項、およびpH 計算を含めた中和反応について講義形式で授業を行うものである。後半は酸化還元・沈殿形成・錯体形成の各反応について学習し、適宜、実例を交えながら各種溶液分析実験との関係について講義形式で授業を行う。
授業の進め方・方法:
前期:分析化学の実験で使用する実験器具の取り扱い方やデータのまとめ方について学び、酸塩基平衡論に基づいた中和反応の基礎に関して様々な溶液別にpH計算の仕方を習得する。前半の最後には中和滴定曲線の作成法や特徴を理解できるようにする。
後期:酸化還元平衡における基礎を習得するとともに電池に関連する基礎理論を学ぶ。沈殿生成平衡については溶解度積の考え方を習得し、沈殿剤濃度に対する沈殿生成の関係を学ぶ。後期最後には錯体に関する命名法や特徴を学び、錯形成反応の基礎理論を習得する。
注意点:
授業進度に応じて練習問題を提示するので、積極的に問題を解く姿勢を持ってもらいたい。また、分析化学実験の内容と対応させて考えてみることが大切である。授業の途中に講義の要点をまとめたプリントを配るので、復習するときに利用してもらいたい。なお、小テストは毎回実施する。評価については、合計点数が60点以上で単位修得となる。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 分析化学で用いる器具と取扱い方 分析実験用器具の名称と取り扱い方が説明できる。
2週 分析化学で用いる機器と数値計算 その1 分析実験用器具の取り扱い方に基づき、入用容器・出用容器など器具の特徴を説明できる。
3週 分析化学で用いる機器と数値計算 その2 %濃度、モル濃度、規定度について理解し、各濃度間の変換や希釈における濃度変化を含めた単純な計算ができる。
4週 分析化学で用いる機器と数値計算 その3 ppm 濃度を含め、%濃度、モル濃度、規定濃度について理解し、各濃度間の変換や希釈における濃度変化を含めた様々な計算ができる。
5週 分析データの取り扱い その1
有効数字について
有効数字の考え方に沿って、濃度計算や各種計算ができる。
6週 分析データの取り扱い その2
精度と確度について
分析データにおける精度と確度の違いを理解し、標準偏差や相対誤差率を用いて説明ができる。
7週 化学平衡論に従う成分濃度の求め方
活量の理解と計算
化学平衡論の考え方に基づいて、変更前後の溶液成分濃度を求めることができる。活量の考え方が理解でき、活量を求めることができる。次週、中間試験を実施する。
8週 中間試験 これまでに学んだことが、具体的にどのように利用されるかを理解できる。また知識の再確認と修正ができる。
2ndQ
9週 酸・塩基平衡 その1
酸・塩基の定義
代表的な酸や塩基の定義を理解し、共役の関係を説明できる。
10週 酸・塩基平衡 その2
強酸・強塩基の考え方とpH計算
代表的な強酸や強塩基を挙げて、その特性を説明できる。また、pH値を求めることができる。
11週 酸・塩基平衡 その3
弱酸・弱塩基の考え方とpH計算
代表的な弱酸や弱塩基を挙げて、その特性を説明できる。また、pH値を求めることができる。
12週 酸・塩基平衡 その4
弱酸の塩・弱塩基の塩の考え方とpH計
代表的な弱酸の塩や弱塩基の塩を挙げて、弱酸や弱塩基との違いを説明できる。また、pH値を求めることができる。
13週 酸・塩基平衡 その5
緩衝液の考え方とpH計算
緩衝液の定義をもとに緩衝作用を説明できる。また、pH値を求めることができる。
14週 酸・塩基平衡 その6
多酸塩基,多塩基酸の考え方とpH計算
多酸塩基や多塩基酸の定義と実例を挙げることができる。これらのpH値を求めることができる。
15週 酸・塩基平衡 その7
各種酸・塩基の組合せによるpH曲線の違いと中和指示薬の実際
さまざまな酸と塩基の組合せによるpH曲線を描くことができる。また、中和指示薬を選定できる。
16週 期末試験 これまでに学んだことが、具体的にどのように利用されるかを理解できる。また知識の再確認と修正ができる。
後期
3rdQ
1週 酸化・還元平衡 その1
酸化・還元の定義とイオン価傾向
酸化・還元の定義を説明できる。また、代表的な金属のイオン価傾向を理解し、溶解の程度を説明できる。
2週 酸化・還元平衡 その2
代表的な酸化剤と還元剤の反応
代表的な酸化剤や還元剤を挙げることができ、半反応式をもとに全体の化学反応を組み立てることができる。
3週 電極電位と化学電池 その1
代表的な電池の構造と酸化・還元反応
ボルタの電池・ダニエル電池の構造や特徴を説明できる。また、各極の反応を表すことができる。
4週 電極電位と化学電池 その2
ネルンストの式と電池の起電力
ネルンスト式を理解して半電池の単極電位を計算できる。また、電池の起電力を求めることができる。
5週 電極電位と化学電池 その3
様々な化学電池とその特徴
鉛蓄電池等の代表的な化学電池の構造や特徴を説明できる。自ら新しい電池開発をイメージすることができる。
6週 電極電位と化学電池 その4
酸化・還元平衡に関する総合的な考え方
これまでの酸化・還元平衡に基づいて化学反応式や電池への応用について具体的に説明ができる。
7週 電極電位と化学電池 その5
化学電池の基本構成と特徴
次週、中間試験を実施する、次週、中間試験を実施する
化学電池の基本構成を理解し、実用電池の実例を挙げて具体的に説明ができる。次週、中間試験を実施する。
8週 中間試験 これまでに学んだことが、具体的にどのように利用されるかを理解できる。また知識の再確認と修正ができる。
4thQ
9週 沈殿生成平衡 その1
物質の溶解度積と沈殿生成
沈殿生成と溶解度積の関係が説明でき、単純な沈殿生成反応における各種計算ができる。
10週 沈殿生成平衡 その2
沈殿反応を利用した系統的な分離法
溶解度積を利用した金属成分の分別の仕方を説明できる。自ら沈殿剤濃度と沈殿生成の関係グラフを作成できる。
11週 沈殿生成平衡 その3
沈殿剤濃度と溶解度積による分別沈殿
溶解度積を利用した金属成分の分別の仕方を説明できる。自ら沈殿剤濃度と沈殿生成の関係グラフを作成できる。
12週 沈殿生成平衡 その4
物質の溶解度積とPH依存性
前週の応用として水酸化物の沈殿生成におけるpHとの関係を定量的に表し、説明ができる。
13週 錯形成平衡 その1
錯体の定義と命名法
錯体の定義を理解し、錯体の命名と構造について表すことができる。
14週 錯形成平衡 その2
キレートの考え方とキレート剤の特性
錯体の定義におけるキレートの考え方(違い)を理解し、代表的なキレート剤の命名法や構造、特徴を説明できる。
15週 錯形成平衡 その3
錯形成速度と成分濃度の計算
錯形成反応の反応速度定数を用いて錯形成速度を表すことができる。また、各種成分イオン濃度が計算できる。
16週 学年末試験 これまでに学んだことが、具体的にどのように利用されるかを理解できる。また知識の再確認と修正ができる。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。4後9,後10
電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。4前7,後15
溶解度・溶解度積について理解し必要な計算ができる。4後10,後11
沈殿による物質の分離方法について理解し、化学量論から沈殿量の計算ができる。4後8,後9,後10,後11
強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。4前8,前9,前10,前11,前13,前14,前15
強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。4前9,前10,前11,前13,前14,前15
緩衝溶液とpHの関係について説明できる。4前9,前10,前11,前12,前13,前14,前15
錯体の生成について説明できる。4後12,後13,後14
陽イオンや陰イオンの関係した化学反応について理解し、溶液中の物質の濃度計算(定量計算)ができる。4後14
中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。4前14,前15
酸化還元滴定についての原理を理解し、酸化剤及び還元剤の濃度計算ができる。4後1
キレート滴定についての原理を理解し、金属イオンの濃度計算ができる。3後13
光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。2
Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。2
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。3
溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。3
無機および有機物に関する代表的な構造分析、定性、定量分析法等を理解している。3
クロマトグラフィーの理論と代表的な分析方法を理解している。3
特定の分析装置を用いた気体、液体、固体の分析方法を理解し、測定例をもとにデータ解析することができる。3

評価割合

試験小テスト課題合計
総合評価割合801010100
基礎的能力405550
専門的能力405550
分野横断的能力0000