分析化学特論(8916)

科目基礎情報

学校 八戸工業高等専門学校 開講年度 令和02年度 (2020年度)
授業科目 分析化学特論(8916)
科目番号 0011 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 産業システム工学専攻マテリアル・バイオ工学コース 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 教員作成資料
担当教員 中村 重人

到達目標

1.金属錯体の構造や結合理論から、磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できる。
2.液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1金属錯体の構造や結合理論から、磁性の計算や分光化学系列などの説明ができる。金属錯体の構造や結合理論から、磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できる。金属錯体の構造や結合理論の理解が不十分である。磁性、光吸収、安定度などとの関係が理解できない。
評価項目2液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解でき、実際の分離への方法が説明できる。液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論と応用が理解できる。液-液間や固-液間の物質の分配を用いた分離濃縮法の理論が理解できない。
評価項目3

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 DP3 専門分野・他分野の知識・技術と応用力 説明 閉じる

教育方法等

概要:
 分析化学において物質の分離や濃縮は重要なテーマであり、種々の方法がある。本科目では、一相内での分離に使われる金属錯体、および二相間での物質の移動に基づく分離法(溶媒抽出法等)について取り上げ、その基礎理論や応用について学ぶ。なお、金属錯体は、分離、マスキング、検出など分析化学での利用だけでなく、工業化学や材料化学における触媒や中間体、生命科学においても酵素等で重要な役割を担っていることから、結合理論など基礎的事項から学ぶ。
授業の進め方・方法:
 前半は、金属錯体の命名法、立体化学、結合に関する理論や諸物性(磁性、光吸収など)、錯体生成のしやすさについて学ぶ。後半は二相間分配に基づく分離濃縮法として重要な溶媒抽出法、固相抽出法、イオン交換法についてその理論と実際を学ぶ。演習問題を多く取り入れて、理解を深める。
 定期試験100%(中間試験50%、期末試験50%)の割合で評価する。総合評価は100点満点として60点以上を合格とする。答案は採点後返却し、到達度を確認させる。
注意点:
 本科の「無機化学」、「分析化学」において学んだことが基礎となる。量子化学、溶液化学などの物理化学、分析化学の知識が必要となる。分配平衡の解析など計算を用いた演習問題も行うので、電卓を用意すること。試験は返却し模範解答するので、自分の到達度を把握しさらに勉強すること。
 自学自習は到達度試験(中間試験を含む)にて評価する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 金属錯体の基礎、原子軌道、酸・塩基 原子軌道、量子数について復習し、理解を深める。置換基による効果や、HSAB則により、プロトンとの親和性や金属との結合力の関係が説明できる。
2週 金属錯体の命名法 単純な錯体の化学式、名称(英語名、日本語名)が書ける。
3週 錯体の異性 錯体の幾何異性体、光学異性体などの異性体を描ける。
4週 結晶場理論、錯体の磁性 結晶場理論から導かれる、正八面体型、正四面体型、正方平面型錯体におけるd軌道の分裂が理解でき、結晶場安定化エネルギー、磁性の予測ができる。
5週 分子軌道法、吸収スペクトル 配位子における「分光化学系列」を理解する。遷移金属化合物の発色の原因(d-d遷移、CT遷移、原子価間遷移、配位子の特性吸収)が説明できる。
6週 錯体の安定度 Irving-Williams系列とは何か、またなぜそのような順番になるか説明できる。Jahn-Teller効果とは何か説明できる。錯体の安定度を総合的に予測できる。
7週 中間試験
8週 溶媒抽出法(分配定数、分配比、有機酸の分配平衡) 溶媒抽出における分配比、抽出率、水相と有機相中の目的物質の濃度が計算できる。酸解離やプロトン化を伴う有機化合物の分配挙動を説明できる。
2ndQ
9週 溶媒抽出法(金属イオンの抽出平衡) 金属イオンの抽出における抽出定数、分配比、抽出率の計算ができる。
10週 溶媒抽出法(抽出で用いられる操作) 協同効果抽出、イオン対抽出とは何か説明できる。
11週 固相抽出法 固相抽出がどのようなものか説明できる。
12週 イオン交換法(イオン交換樹脂と交換容量) イオン交換樹脂の種類や性質がわかり、交換容量についての計算ができる。
13週 イオン交換法(イオン交換平衡) イオン交換平衡における各イオン濃度が計算できる。
14週 イオン交換法(イオンの相互分離とその他のイオン交換体) イオン交換樹脂を用いた分離について説明できる。種々のイオン交換体について説明できる。
15週 期末試験
16週 期末試験の答案返却とまとめ

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。5
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。5
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。5
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。5
錯体の命名法の基本を説明できる。5
配位数と構造について説明できる。5
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。5
分析化学錯体の生成について説明できる。5
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。5
溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。5

評価割合

試験合計
総合評価割合100100
基礎的能力00
専門的能力100100
分野横断的能力00