化学特論

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 化学特論
科目番号 0055 科目区分 一般 / 選択
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 名取キャンパス一般科目 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 有機化学 発行所:東京化学同人
担当教員 佐藤 徹雄

到達目標

(目的)
体系的に化学について学ぶことで身近な現象や身の回りの物質の性質を説明できるようになる
(目標)
原子・分子の性質を用いて身の回りの物質の性質、身近な現象を説明できる
金属、セラミック、有機材料について性質とその応用例を説明できる
熱力学を用い、化学反応の制御手法を提案できる

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
原子・分子からマクロへ原子の電子配置、分子の形状から物質の性質を説明できる。原子の電子配置、分子の形状から物質の性質を説明できるが、論理的な誤りがある。原子の電子配置、分子の形状と物質の性質を関連付けることができない。
金属、セラミック、有機材料の性質金属、セラミック、有機材料の性質について身近な製品を例に説明できる。金属、セラミック、有機材料の性質について説明できるが、製品への応用との関連付けが不十分である。金属、セラミック、有機材料の性質について説明できない。
熱力学熱力学の法則を用いて、化学反応の制御を行う手法について説明し、環境問題など身近な問題への応用例を挙げることができる。熱力学の法則を用いて、化学反応の制御を行う手法について説明できる。熱力学の法則を用いて、化学反応の制御を行う手法について説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
産業界を支えるテクノロジーは全て材料となる物質に支えられています。故に物質について、その性質を原子・分子のミクロレベルから理解することは新しいテクノロジーの提案・開発につながります。
本授業では、前半では一般科目の化学で学んだ内容を発展させながら原子の結合の仕方で金属、半導体、セラミック、高分子、電池など様々な物質が作られる原理とその性質を体系的に学びます。また、後半では熱力学を通して物質の作り方について学ぶことで、講義修了時にエンジニアに必要な化学全般の知識とその使い方を習得します。
一般科目の化学では単に暗記で終わっていた知識に肉付けを行うことで、化学分野での研究に必要な背景が身につきます。また各論を学ぶ前に俯瞰的に化学を学ぶことで、これから学ぶ各論を自分で関連づけられるようになります。
授業の進め方・方法:
本授業では授業前半は教員による講義を通じて知識の獲得を行い、授業後半は四人一組でジグソー法、ピアインストラクション、ポスターツアーなどのグループワークにより受講者が知識を活用し議論する構成になっているため積極的な授業参加が求められます。
授業後半では文献をwebで調査する活動を行います。端末は自身のPC、タブレットを持参して構いませんが、各グループに一台ずつタブレット端末を準備しています。

予習:授業トピックについて動画などのweb教材を用いた事前学習を行う。
復習:授業トピックについてレポートなどの事後課題を行う。
注意点:
毎回の講義においてシャトルカードを提出する。シャトルカードには毎回の授業の評価と改善希望点を記入する。講師と共に、良い授業を作るため忌憚無い意見をフィードバックして下さい。この講義の主役は学習者である君達です。

授業への質問はシャトルカードに書いてくれれば回答します。
また、オフィスアワーに直接質問に来ること、メールでの質問どちらも歓迎します。
オフィスアワー 金曜日16:10~17:10、月曜日4校時
メール:sekido@sendai-nct.ac.jp

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 「ガイダンス」
「気体の研究と原子・分子仮説〜アボガドロはどうやって原子を見つけたか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
原子・分子の存在がどのような発見を通してなされたか説明できる
アボガドロ数、モルを使った計算ができる
2週 「原子核と電子の発見〜Bohrモデルは万能?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
原子核・電子がどのような発見を通してなされたか説明できる
Bohrモデルで扱えること、扱えないことを分類して説明できる
3週 「原子モデルの変遷〜なぜ量子モデルが必要か?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
Schrödinger方程式の解釈を説明できる
Bohrモデルと量子モデルの違いを説明できる
4週 「原子の集合の仕方〜金属・共有・イオン結合の違いは?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
イオン化傾向、電子親和力について半閉殻から説明できる
ルイス構造を用いて結合比を予測できる
5週 「金属結合〜金属光沢とは何か?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
金属結合と延性、展性、金属光沢を関連づけて説明できる
6週 「金属と合金〜金属の結晶は何によって決まるのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
結晶構造とイオンの大きさについて説明できる
7週 「半導体とLED〜青色LEDはなぜ凄い?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
バンド理論を用いて半導体とは何か説明できる
2原子で作る半導体(閃亜鉛鉱型)の組み合わせを予想できる
8週 「振り返り」
Think・Pair・Share、ジグソー法
1週から7週の内容について、演習問題を解き解説することができる
2ndQ
9週 「分子の形と相互作用〜氷はなぜ水に浮くのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
分子間に働く相互作用を分類し説明できる
分子の集合の仕方から物質の性質を説明できる
10週 「配位化学〜ルビーとサファイアは同じ物質〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
分子間力から熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の性質を説明できる
官能基と主鎖の構造から高分子の性質を予測できる
11週 「高分子〜プラスチックは硬い?柔らかい?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
分子間力から熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の性質を説明できる
官能基と主鎖の構造から高分子の性質を予測できる
12週 「電気化学と電池〜電池はいつ出来た?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
酸化・還元とは何か説明できる
電池の仕組みを説明できる
13週 「熱力学の基礎〜エントロピーとは何か?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
エントロピー、エンタルピーが状態量であることを説明できる
熱力学第一、第二法則を説明できる
14週 「化学平衡〜排気ガスをキレイにするには?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
ルシャトリエの原理を用い反応を制御する条件を提案できる
化学平衡について説明できる
15週 「振り返り」
Think・Pair・Share、ジグソー法
9週から14週の内容について、演習問題を解き解説することができる
16週 「反応速度論〜古い物質の年代鑑定はどうする?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
化学変化と反応物の濃度を関連付けて説明できる
触媒の役割を説明できる

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学化学(一般)化学(一般)代表的な金属やプラスチックなど有機材料について、その性質、用途、また、その再利用など生活とのかかわりについて説明できる。3
洗剤や食品添加物等の化学物質の有効性、環境へのリスクについて説明できる。3
物質が原子からできていることを説明できる。4
単体と化合物がどのようなものか具体例を挙げて説明できる。4
同素体がどのようなものか具体例を挙げて説明できる。4
純物質と混合物の区別が説明できる。3
物質を構成する分子・原子が常に運動していることが説明できる。3
水の状態変化が説明できる。3
物質の三態とその状態変化を説明できる。3
ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル-シャルルの法則を説明でき、必要な計算ができる。3
気体の状態方程式を説明でき、気体の状態方程式を使った計算ができる。3
原子の構造(原子核・陽子・中性子・電子)や原子番号、質量数を説明できる。3
同位体について説明できる。3
放射性同位体とその代表的な用途について説明できる。3
原子の電子配置について電子殻を用い書き表すことができる。3
価電子の働きについて説明できる。3
原子のイオン化について説明できる。3
代表的なイオンを化学式で表すことができる。3
原子番号から価電子の数を見積もることができ、価電子から原子の性質について考えることができる。3
元素の性質を周期表(周期と族)と周期律から考えることができる。3
イオン式とイオンの名称を説明できる。4
イオン結合について説明できる。3
イオン結合性物質の性質を説明できる。3
イオン性結晶がどのようなものか説明できる。3
共有結合について説明できる。4
構造式や電子式により分子を書き表すことができる。4
自由電子と金属結合がどのようなものか説明できる。3
金属の性質を説明できる。3
原子の相対質量が説明できる。3
天然に存在する原子が同位体の混合物であり、その相対質量の平均値として原子量を用いることを説明できる。3
アボガドロ定数を理解し、物質量(mol)を用い物質の量を表すことができる。4
分子量・式量がどのような意味をもつか説明できる。4
気体の体積と物質量の関係を説明できる。4
化学反応を反応物、生成物、係数を理解して組み立てることができる。4
化学反応を用いて化学量論的な計算ができる。4
電離について説明でき、電解質と非電解質の区別ができる。4
質量パーセント濃度の説明ができ、質量パーセント濃度の計算ができる。4
モル濃度の説明ができ、モル濃度の計算ができる。4
酸・塩基の定義(ブレンステッドまで)を説明できる。3
酸・塩基の化学式から酸・塩基の価数をつけることができる。3
電離度から酸・塩基の強弱を説明できる。3
pHを説明でき、pHから水素イオン濃度を計算できる。また、水素イオン濃度をpHに変換できる。3
中和反応がどのような反応であるか説明できる。3
中和滴定の計算ができる。3
酸化還元反応について説明できる。3
イオン化傾向について説明できる。3
金属の反応性についてイオン化傾向に基づき説明できる。3
ダニエル電池についてその反応を説明できる。3
鉛蓄電池についてその反応を説明できる。3
一次電池の種類を説明できる。3
二次電池の種類を説明できる。3
電気分解反応を説明できる。3
電気分解の利用として、例えば電解めっき、銅の精錬、金属のリサイクルへの適用など、実社会における技術の利用例を説明できる。3
ファラデーの法則による計算ができる。3
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料物性金属の一般的な性質について説明できる。3
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。3
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。3
陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。3
4つの量子数を用いて量子状態を記述して、電子殻や占有する電子数などを説明できる。3
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。3
電子が持つ粒子性と波動性について、現象を例に挙げ、式を用いて説明できる。3
量子力学的観点から電気伝導などの現象を説明できる。3
無機材料パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。3
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。3
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質について説明できる。3
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。3
化学結合の初期理論としてのオクテット則(八隅説)により電子配置をルイス構造で示すことができる。3
原子価結合法により、共有結合を説明できる。3
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比などの基本的な計算ができる。3
酸化還元の知識を用いて酸化還元の反応式から酸化剤、還元剤の濃度等の計算ができる。3
イオン化傾向と電池の電極および代表的な電池について説明できる。3
代表的な非金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。3
代表的な金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。3
セラミックス、金属材料、炭素材料、複合材料等、無機材料の用途・製法・構造等について説明できる。3
物理化学熱力学第一法則と内部エネルギーの概念を説明できる。3
エンタルピーの定義およびエンタルピーが状態量であることを説明できる。3
断熱変化に伴う温度変化を計算できる。3
標準生成エンタルピーの物理的意味を理解し、反応エンタルピーを計算できる。3
定圧熱容量と定容熱容量の関係式が導出できる。3
エントロピーの定義を理解し、不可逆過程におけるエントロピー生成について説明できる。3
ヘルムホルツエネルギーとギブズエネルギーの定義および自発的変化の方向性との関連について説明できる。3
標準モルギブズエネルギーの定義に基づいて標準反応ギブズエネルギーを計算できる。3
内部エネルギーと巨視的熱力学量の関係を導出できる。3
純物質の化学ポテンシャルの定義と物理的意味を理解し、理想気体の化学ポテンシャルを計算できる。3
理想溶液と実在溶液の違いを説明できる。3
化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。3
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。3
σ結合とπ結合について説明できる。3
混成軌道を用い物質の形を説明できる。3
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。3
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。3
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。3
高分子化合物がどのようなものか説明できる。3
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。3
重合反応について説明できる。3

評価割合

試験発表相互評価態度レポート提出合計
総合評価割合0002080100
基礎的能力00004040
専門的能力00004040
分野横断的能力000000
授業への参加状況00020020