概要:
産業界を支えるテクノロジーは全て材料となる物質に支えられている。物質について、その性質を原子・分子のミクロレベルから理解することは新しいテクノロジーの提案・開発につながっている。
この講義では、一般科目の化学で学んだ内容を発展させながら原子の構造を学んだ後、その結合の仕方で金属、半導体、セラミック、高分子、電池など様々な物質が作られる原理とその性質を体系的に学ぶ。また、熱力学を通して、物質の作り方について学ぶことで、講義修了時にエンジニアに必要な化学全般の知識とその使い方を習得する。
具体的には1~4週は「化学I」「化学II」「有機化学I」と、5週は「材料組織」と、6,7,10,11週は「有機材料」「材料物性」と、9週は「セラミックス」と、12~14週は「物理化学」と関連があり、これら専門科目について俯瞰的なイメージを持つことを授業の目的としている。
専門用語、数式を多用せず、分かりやすく説明するように講師が心がけているので、上記科目が苦手な学生も安心して受講して欲しい。
授業の進め方・方法:
授業は講師による講義を行うインプットのフェイズと、ジグソー法、ピアインストラクションなどのグループワークにより受講者がアウトプットをするフェイズにより構成されてる。この授業形式は、対人的なアウトプットが知識の定着度を向上させるという認知心理学の知見に基づいている。
講義内容として教科書に従い「原子モデル」「原子の結合様式」、「金属」、「半導体」、「セラミック」「高分子」、「熱力学」について学ぶ。
予習:授業トピックについて動画などのweb教材を用いた事前学習を行う。
復習:授業トピックについてレポートなどの事後課題を行う。
注意点:
毎回の講義においてシャトルカードを提出する。シャトルカードには毎回の授業の評価と改善希望点を記入する。講師と共に、良い授業を作るため忌憚無い意見をフィードバックして下さい。この講義の主役は学習者である君達です。
授業への質問はシャトルカードに書いてくれれば回答します。
また、オフィスアワーに直接質問に来ること、メールでの質問どちらも歓迎します。
オフィスアワー 金曜日16:10~17:10、月曜日4校時
メール:sekido@sendai-nct.ac.jp
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
「ガイダンス〜化学は将来役にたつ?〜」 「気体の研究と原子・分子仮説〜アボガドロはどうやって原子を見つけたか?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
原子・分子の存在がどのような発見を通してなされたか説明できる アボガドロ数、モルを使った計算ができる
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2週 |
「原子核と電子の発見〜Bohrモデルは万能?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
原子核・電子がどのような発見を通してなされたか説明できる Bohrモデルで扱えること、扱えないことを分類して説明できる
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3週 |
「原子モデルの変遷〜なぜ量子モデルが必要か?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
Schrödinger方程式の解釈を説明できる Bohrモデルと量子モデルの違いを説明できる
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4週 |
「原子の集合の仕方〜金属・共有・イオン結合の違いは?〜」 peer |
イオン化傾向、電子親和力について半閉殻から説明できる ルイス構造を用いて結合比を予測できる
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5週 |
「金属と合金〜純粋な金属が柔らかいのはなぜ?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
金属結合と延性、展性、金属光沢を関連づけて説明できる 結晶構造とイオンの大きさについて説明できる
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6週 |
「半導体とLED〜青色LEDはなぜ凄い?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
バンド理論を用いて半導体とは何か説明できる 2原子で作る半導体(閃亜鉛鉱型)の組み合わせを予想できる
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7週 |
「分子の形と相互作用〜氷はなぜ水に浮くのか?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
分子間に働く相互作用を分類し説明できる 分子の集合の仕方から物質の性質を説明できる
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8週 |
「振り返り」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
1週から7週の内容について、演習問題を解き解説することができる
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2ndQ |
9週 |
「配位化学〜ルビーとサファイアは同じ物質〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
分子間力から熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の性質を説明できる 官能基と主鎖の構造から高分子の性質を予測できる
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10週 |
「高分子〜プラスチックは硬い?柔らかい?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
分子間力から熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の性質を説明できる 官能基と主鎖の構造から高分子の性質を予測できる
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11週 |
「電気化学と電池〜電池はいつ出来た?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
酸化・還元とは何か説明できる 電池の仕組みを説明できる
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12週 |
「熱力学の基礎〜エントロピーとは何か?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
エントロピー、エンタルピーが状態量であることを説明できる 熱力学第一、第二法則を説明できる
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13週 |
「化学平衡〜排気ガスをキレイにするには?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
ルシャトリエの原理を用い反応を制御する条件を提案できる 化学平衡について説明できる
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14週 |
「反応速度論〜古い物質の年代鑑定はどうする?〜」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
化学変化と反応物の濃度を関連付けて説明できる 触媒の役割を説明できる
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15週 |
「振り返り」 Think・Pair・Share、ジグソー法 |
9週から14週の内容について、演習問題を解き解説することができる
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 材料物性 | 金属の一般的な性質について説明できる。 | 3 | |
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。 | 3 | |
代表的な結晶構造の原子配置について説明でき、充填率の計算ができる。 | 3 | |
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。 | 3 | |
陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。 | 3 | |
ボーアの水素原子模型を用いて、エネルギー準位を説明できる。 | 3 | |
水素原子中の電子のエネルギー状態が離散的な値を取ることを説明できる。 | 3 | |
量子条件から電子のエネルギー状態および軌道半径を導出し、説明できる。 | 3 | |
4つの量子数を用いて量子状態を記述して、電子殻や占有する電子数などを説明できる。 | 3 | |
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。 | 3 | |
化学結合の種類および結合力や物質の例などを説明できる。 | 3 | |
電子が持つ粒子性と波動性について、現象を例に挙げ、式を用いて説明できる。 | 3 | |
量子力学的観点から電気伝導などの現象を説明できる。 | 3 | |
半導体の種類について説明できる。 | 3 | |
不純物半導体の特徴を真性半導体と区別して説明できる。 | 3 | |
不純物半導体のエネルギーバンドと不純物準位を描き、伝導機構について説明できる。 | 3 | |
有機材料 | 高分子の定義と分子間力による集合の仕方、性質について説明できる。 | 3 | |
低分子と高分子の違いを理解し説明できる。 | 3 | |
分子量を計算し、官能基や構造から分子の性質を予測できる。 | 3 | |
高分子ついて、熱可塑性高分子と熱硬化性高分子の構造や性質の違いにより高分子を分類できる。 | 3 | |
高分子の結晶性・非晶性に基づき力学的性質について説明できる。 | 3 | |
高分子の平均分子量を理解し、平均分子量と重合度の関係を説明できる。 | 3 | |
鎖状構造や官能基の立体配置(立体配座)による高分子の構造と性質を理解し説明できる。 | 3 | |
高分子を構成する分子鎖の構造およびその集合法と性質の関連性を説明できる。 | 3 | |
高分子の結合様式より合成に必要な重合反応(逐次重合:重縮合、重付加、付加縮合、連鎖重合:付加重合(ラジカル重合、イオン重合)、開館重合、配位重合)を正しく分類できる。 | 3 | |
逐次重合の反応機構について説明できる。 | 3 | |
逐次重合の特徴(反応度と数平均重合度の関係、官能基の等量性と数平均重合度の関係等)について説明できる。 | 3 | |
ラジカル重合の反応機構と動力学について説明できる。 | 3 | |
ラジカル共重合において、共重合体の分類、共重合組成式、モノマー反応性比と共重合組成式の関係について説明できる。 | 3 | |
イオン重合の反応機構と特徴について説明できる。 | 3 | |
開環重合の反応機構と特徴について説明できる。 | 3 | |
高分子材料に求められる機能について理解し、基本的な骨格と官能基の機能性について説明できる。 | 3 | |
高分子の電気的機能や光学的機能等について分子構造から説明できる。 | 3 | |
高分子の結晶、非晶、結晶化度について説明できる。 | 3 | |
ミセル、単結晶、球晶など高分子の形態について説明できる。 | 3 | |
高分子の熱的性質について説明できる。 | 3 | |
高分子の力学的性質について説明できる。 | 3 | |
無機材料 | パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。 | 3 | |
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。 | 3 | |
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質について説明できる。 | 3 | |
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。 | 3 | |
化学結合の初期理論としてのオクテット則(八隅説)により電子配置をルイス構造で示すことができる。 | 3 | |
原子価結合法により、共有結合を説明できる。 | 3 | |
電子配置から混成軌道の形成について説明できる。 | 3 | |
簡単な分子に対する分子軌道法から共有結合を説明できる。 | 3 | |
イオン結合の形成について理解できる。 | 3 | |
金属結合の形成について理解できる。 | 3 | |
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比などの基本的な計算ができる。 | 3 | |
酸化還元の知識を用いて酸化還元の反応式から酸化剤、還元剤の濃度等の計算ができる。 | 3 | |
イオン化傾向について理解できる。 | 3 | |
イオン化傾向と電池の電極および代表的な電池について説明できる。 | 3 | |
酸化還元電位と代表的な電極系について理解できる。 | 3 | |
錯体の命名法の基本を説明できる。 | 3 | |
配位数と構造について説明できる。 | 3 | |
代表的な非金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。 | 3 | |
代表的な金属元素の単体と化合物の性質を説明できる。 | 3 | |
セラミックス、金属材料、炭素材料、複合材料等、無機材料の用途・製法・構造等について説明できる。 | 3 | |
単結晶化、焼結、薄膜化、微粒子化、多孔質化などに必要な材料合成法について説明できる。 | 3 | |
物理化学 | 仕事、熱、エネルギーの概念について説明できる。 | 3 | |
熱力学第一法則と内部エネルギーの概念を説明できる。 | 3 | |
膨張の仕事が計算でき、仕事が状態量でないことを理解できる。 | 3 | |
内部エネルギー、熱、仕事の符号の規則を説明でき、膨張の仕事を計算できる。 | 3 | |
エンタルピーの定義およびエンタルピーが状態量であることを説明できる。 | 3 | |
断熱変化に伴う温度変化を計算できる。 | 3 | |
標準生成エンタルピーの物理的意味を理解し、反応エンタルピーを計算できる。 | 3 | |
反応エンタルピーの温度依存性に関するキルヒホッフの法則を理解し、いろいろな反応の反応エンタルピーを計算できる。 | 3 | |
定圧熱容量と定容熱容量の関係式が導出できる。 | 3 | |
エントロピーの定義を理解し、不可逆過程におけるエントロピー生成について説明できる。 | 3 | |
ヘルムホルツエネルギーとギブズエネルギーの定義および自発的変化の方向性との関連について説明できる。 | 3 | |
標準モルギブズエネルギーの定義に基づいて標準反応ギブズエネルギーを計算できる。 | 3 | |
内部エネルギーと巨視的熱力学量の関係を導出できる。 | 3 | |
ギブズエネルギーと巨視的熱力学量との関係を導出できる。ギブスーヘルムホルツの式を導出できる。 | 3 | |
純物質の化学ポテンシャルの定義と物理的意味を理解し、理想気体の化学ポテンシャルを計算できる。 | 3 | |
理想溶液と実在溶液の違いを説明できる。 | 3 | |
化学・生物系分野 | 有機化学 | 有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。 | 3 | |
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。 | 3 | |
σ結合とπ結合について説明できる。 | 3 | |
混成軌道を用い物質の形を説明できる。 | 3 | |
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。 | 3 | |
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。 | 3 | |
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。 | 3 | |
高分子化合物がどのようなものか説明できる。 | 3 | |
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。 | 3 | |
重合反応について説明できる。 | 3 | |