概要:
線香から立ち上る煙、雲の流れ、川のせせらぎや荒れる海など、流体の運動は日常のあらゆる場面に見ることが出来る。このような流体の運動を理解する為の学問が流体力学である。流体力学は、19世紀にその体系が整えられた「古典物理学」の一分野である。しかし、流体現象は極めて複雑であり、未解明な現象は数多く残されている。そのような意味で「古くて新しい学問」と言える。
流体工学の時間では、4年生までに学んだ流体力学を再度復習し、オイラーの運動方程式とベルヌーイの定理の導出、運動量の保存則までを詳しく述べる。残りの時間は、それらの高度な応用:乱流や管摩擦、音速領域の圧縮流などについて、理解することをねらう。授業では、様々な流れのデモンストレーションを行い、流体の不思議さと楽しさを伝えたいと考えている。
この科目は、企業で航空機の最新翼設計を担当していた教員が、その経験を活かし流体力学の基礎・発展、最新の研究等について講義形式で授業を行なうものである。
授業の進め方・方法:
講義と演習、デモ実験などを行う
事前学習(予習):授業中に学習する内容を把握するため、教科書等を用いて予めトピックを眺めておくこと。
事後学習(復習):授業中に解説した内容を解説できるまで復習を行なうこと。
注意点:
担当教員の印象では、工学部で学ぶ「3力」のうち、流体力学は熱力学に次いで難しい学問である。本講義は、ベクトル解析を知らなくても理解できるよう工夫がなされているが、諸君がもし微分と積分を十分に習得していないならば、本講義を理解しテストで60点を獲得することはほぼ絶望的である。授業の内容は、機械システム工学科の平均的な4年生のクラスの、上位15名くらいの学生を念頭に置いて設定されている。
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 工学基礎 | 工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法) | 工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法) | 物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。 | 3 | |
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。 | 3 | |
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。 | 3 | |
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。 | 3 | |
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。 | 3 | |
情報リテラシー | 情報リテラシー | 情報を適切に収集・処理・発信するための基礎的な知識を活用できる。 | 3 | |
論理演算と進数変換の仕組みを用いて基本的な演算ができる。 | 3 | |
コンピュータのハードウェアに関する基礎的な知識を活用できる。 | 3 | |
情報伝達システムやインターネットの基本的な仕組みを把握している。 | 1 | |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 熱流体 | 流体の定義と力学的な取り扱い方を理解し、適用できる。 | 4 | |
流体の性質を表す各種物理量の定義と単位を理解し、適用できる。 | 4 | |
ニュートンの粘性法則、ニュートン流体、非ニュートン流体を説明できる。 | 4 | |
絶対圧力およびゲージ圧力を説明できる。 | 4 | |
パスカルの原理を説明できる。 | 4 | |
液柱計やマノメーターを用いた圧力計測について問題を解くことができる。 | 4 | |
平面や曲面に作用する全圧力および圧力中心を計算できる。 | 4 | |
物体に作用する浮力を計算できる。 | 4 | |
定常流と非定常流の違いを説明できる。 | 4 | |
流線と流管の定義を説明できる。 | 4 | |
連続の式を理解し、諸問題の流速と流量を計算できる。 | 4 | |
オイラーの運動方程式を説明できる。 | 4 | |
ベルヌーイの式を理解し、流体の諸問題に適用できる。 | 4 | |
運動量の法則を理解し、流体が物体に及ぼす力を計算できる。 | 4 | |
層流と乱流の違いを説明できる。 | 4 | |
レイノルズ数と臨界レイノルズ数を理解し、流れの状態に適用できる。 | 4 | |
ダルシー・ワイスバッハの式を用いて管摩擦損失を計算できる。 | 4 | |
ムーディー線図を用いて管摩擦係数を求めることができる。 | 4 | |
境界層、はく離、後流など、流れの中に置かれた物体の周りで生じる現象を説明できる。 | 4 | |
抗力について理解し、抗力係数を用いて抗力を計算できる。 | 4 | |
揚力について理解し、揚力係数を用いて揚力を計算できる。 | 4 | |