有機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 平成28年度 (2016年度)
授業科目 有機化学Ⅰ
科目番号 0015 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 マテリアル環境工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 1
教科書/教材 マクマリー 有機化学 著者:John E McMurry他  発行所:東京化学同人
担当教員 関戸 大

到達目標

有機化合物についてIUPAC命名法を使い、構造と名前を結びつけることができる
基礎的な化学反応について電子の構造から反応機構の説明、生成物の予想ができる
分子の官能基、基本骨格の性質について電子的性質からその性質が説明できる

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
分子の命名命名法に従い、化合物名と構造を正確に変換できる命名法に従い、化合物名と構造を変換できる。その際、官能基の位置などが曖昧であっても主鎖の構造が正しく表記されていて、構造・名前を再現することができる命名法に従い、化合物名と構造を変換する際、主鎖に誤りがあり、構造を正しく再現できない
反応機構反応について、反応機構を記述し、生成物を予測することができる反応について、生成物を予測することができるが、反応機構が曖昧である反応について、生成物を正しく予測できない
分子の性質分子の性質について、官能基・基本骨格から論理的な予測ができる分子の性質について、説明することができるが、官能基・基本骨格に基づく論理性に欠ける分子の性質について、説明できない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
有機化学で扱う物質(有機化合物)はプラスチックをはじめとする材料、医薬品、石油化学分野など現在多岐に渡り実用化されており、有機化学の知識とその理解は今後産業界で活躍するのに必要なスキルである。また、有機化合物は生体関連物質であり、有機化学の知識とその理解が必要となる。
本講義では原子から分子の形や性質を考える量子力学的モデル、基礎的な有機反応及びその原理を学ぶことで、講義修了時に有機化合物の反応と性質にについて論理的に考察する能力を身につける。
授業の進め方・方法:
授業は講師による講義を行うインプットのフェイズと、ジグソー法、ピアインストラクションなどのグループワークにより受講者がアウトプットをするフェイズにより構成されてる。この授業形式は、対人的なアウトプットが知識の定着度を向上させるという認知心理学の知見に基づいている。
講義内容として教科書1章「構造と結合」、2章「有機化合物の性質」、3章「有機反応の性質」、4章「アルケンとアルキンの反応」、5章「芳香族化合物」を学び、電子の性質と分子の構造に関連付け、有機分子の性質、反応機構について理解する。
注意点:
毎回の講義においてシャトルカードを提出する。シャトルカードには毎回の授業の評価と改善希望点を記入する。講師と共に、良い授業を作るため忌憚無い意見をフィードバックして下さい。
この講義の主役は学習者である君達です。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週
2週
3週
4週
5週
6週
7週
8週
2ndQ
9週
10週
11週
12週
13週
14週
15週
16週
後期
3rdQ
1週 「ガイダンス〜化学は将来役にたつ?〜」
「原子と電子配置〜ボーアモデルは万能じゃない〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
ボーアの水素モデルで理解していた原子モデルを量子力学モデルに置換する。
軌道とは何か説明できる
C,N,O原子の電子配置を正しく記述できる
2週 「共有結合〜二重結合の結合二本、意味は一緒?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
3種の混成軌道を説明できる
σ結合、π結合を用いてethene、ethyneの形を予測できる
3週 「分子の書き方と分子間力〜なぜ氷は水に浮くのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
Lewis構造、Kekule構造、線結合構造を用い分子を書くことができる
電気陰性度と分子の形から分子の間に働く力と性質を予測できる
4週 「アルカンの基礎〜有機化合物の名前の付け方〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
アルカンの構造と名前を相互に変換できる
異性体を書くことができる
5週 「シクロヘキサン〜なぜ薬の構造は環なのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
環状アルカンを立体的に書くことができる
立体障害から環状アルカンの性質を予測できる
6週 「アルケンの基礎〜目で見た光はどうやって脳に届くのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
アルケンの構造と名前を交互に変換できる
アルケンの立体異性体を命名できる
アルケンの立体異性体の安定性を説明できる
7週 「振り返り①」
Think・Pair・Share、ジグソー法
1週から6週の内容について、演習問題を解き解説することができる
8週 「化学反応〜反応の種類はたったの4つ〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
反応の種類を4つ挙げることができる
アルケンの付加反応の生成物を予測できる
4thQ
9週 「反応エネルギー図と反応機構〜なぜ生成物は決まるのか?〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
反応エネルギー図を書き、活性化エネルギーについて説明できる
アルケンの付加反応の反応機構が書ける
10週 「Markovnikov則〜実験結果を説明するには?〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
Maokovnikov則に基づき付加反応の生成物が説明できる
Maokovnikov則の理由を反応機構から説明できる
11週 「逆Markovnikov則と付加反応〜反応を制御して欲しい物質を得るには?〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
逆Maokovnikov則の反応条件を説明できる
逆Maokovnikov則で生成物を得る理由を説明できる
syn付加について説明できる
12週 「酸化とラジカル重合〜プラスチックはどう作る?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
酸化反応の生成物を予測できる
ラジカル重合について、反応機構と生成物を予測できる
13週 「共役ジエンの反応〜導電性プラスチックとは何か?〜」

Think・Pair・Share、ジグソー法
共役について軌道から定義と性質を説明できる
ジエンの付加反応の生成物を反応機構を書き予測できる
14週 「芳香族の基礎〜なぜベンゼンは環境を破壊するのか?〜」
Think・Pair・Share、ジグソー法
芳香族化合物の定義と安定性を説明できる
Friedel-Crafts反応の反応機構を説明できる
15週 「振り返り②」
Think・Pair・Share、ジグソー法
8週から14週の内容について、演習問題を解き解説することができる
16週 「芳香族の反応〜頭痛薬を作るには?〜」
Think・Pair・Share、ピアインストラクション
商業的に入手可能な出発物質から、アスピリンを合成する反応経路を提案できる

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料物性陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。3後1,後7
ボーアの水素原子模型を用いて、エネルギー準位を説明できる。3後1,後7
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。4後1,後7
化学結合の種類および結合力や物質の例などを説明できる。4後2,後3,後7
有機材料ラジカル重合の反応機構と動力学について説明できる。3後12
ラジカル共重合において、共重合体の分類、共重合組成式、モノマー反応性比と共重合組成式の関係について説明できる。3後12
無機材料Bohrの原子模型について説明できる。3後1,後7
殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。3後1,後7
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。3後1,後7
化学結合の初期理論としてのオクテット則(八隅説)により電子配置をルイス構造で示すことができる。3後2,後7
原子価結合法により、共有結合を説明できる。3後2,後7
電子配置から混成軌道の形成について説明できる。3後2,後7
簡単な分子に対する分子軌道法から共有結合を説明できる。3後2,後7
化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。4後4,後5,後7
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4後4,後5,後6,後7
σ結合とπ結合について説明できる。4後2,後6,後7,後13
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4後2,後7
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4後3,後7
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4後2,後7,後13
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4後3,後7,後9
共鳴構造について説明できる。4後13
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4後4,後5,後7
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4後14
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4後4,後7,後11,後12,後13,後14,後16
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4後8,後10,後11,後12,後13,後14,後16
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4後9,後10,後11,後12,後13,後14,後16
重合反応について説明できる。4後12
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の反応を説明できる。4後12
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の特徴を説明できる。4後12
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4後9,後10,後11,後13,後14
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4後9,後10,後11,後14

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70000300100
基礎的能力0000000
専門的能力70000300100
分野横断的能力0000000