材料物性Ⅰ

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 材料物性Ⅰ
科目番号 0131 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 マテリアル環境工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 書名:電気電子材料工学 著者:岩本光正 発行所:オーム社
担当教員 松原 正樹

到達目標

材料の様々な物理現象を理解する上で必須となる電子の量子力学的挙動、それを反映した原子の構造、結晶構造に関する基礎知識を習得することを目標とする。
・ 物質の結晶構造や結合の種類と特徴について説明できる。
・ 電子の量子力学的な挙動の基本問題について、シュレディンガー方程式により記述できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
原子の構造と量子力学的計算教員の助言が無くても原子の構造を理解し、量子力学的計算により電子のエネルギー状態を説明できる。教員の助言があれば原子の構造を理解し、量子力学的計算により電子のエネルギー状態を説明できる。原子の構造を理解しておらず、量子力学的計算により電子のエネルギー状態を説明できない。
化学結合の種類教員の助言が無くても化学結合の種類を理解し、物質の結合方式を説明できる。教員の助言あれば化学結合の種類を理解し、物質の結合方式を説明できる。化学結合の種類を理解しておらず、物質の結合方式を説明できない。
固体の構造教員の助言が無くても結晶系およびブラベ格子から結晶構造を説明できる。教員の助言があれば結晶系およびブラベ格子から結晶構造を説明できる。結晶系およびブラベ格子から結晶構造を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
材料のもつさまざまな性質を理解する上で基礎となる電子物性に関する授業である。授業は、ナノスケール以下の世界での電子の量子力学的挙動に始まり、それを反映した原子の構造、さらには原子の集合としての結晶構造とその結合について学ぶ。この科目は、4年次に設定されている材料物性Ⅱへ継続し、機能材料を学習するための基礎となる。
材料の諸物性を決定する電子の微視的振舞いに関する学習を通して、現象とその原因について物理・化学的立場から説明できる。
授業の進め方・方法:
事前に教科書および配布資料等を参照し、予習をして授業に臨むこと。
授業中に演習課題を課す。講義資料等を参照しながら自ら解くこと。復習として授業後に同演習課題を複数回解き、知識を定着させること。
予習:事前に教科書および配布資料をよく読んでおく。
復習:次週以降に確認の演習問題を行うので、授業の板書内容や教科書の確認問題をよく確認しておく。
注意点:
本科目は、物理I,Ⅱ、化学I,Ⅱの知識を前提とし、応用物理と関連する。4年次に設定されている材料物性Ⅱへ継続し、機能材料を学習するための基礎となることを念頭において、単に数式を丸暗記することなく、常に数式で表出される物性現象の本質に立ち返って理解するよう努めて欲しい。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 1. 材料物性概説 マテリアルエ学および環境工学に占める材料物性の役割を理解できる。
2週 2. 量子力学の基礎
2.1 物質の粒子性と波動性
物質の粒子性と波動性を説明できる。
3週 2.2 シュレディンガ一方程式の導出 シュレディンガー方程式を導出し、波動関数を説明できる。
4週 2.3 井戸形ポテンシャル中の電子 井戸形ポテンシャル中の電子の分布とエネルギーを説明できる。
5週 3. 原子の構造と周期律 陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。ボーアの水素原子模型について、説明できる。
6週 3. 原子の構造と周期律 シュレディンガー方程式を水素原子中の電子のエネルギー状態が離散的な値を取ることを説明できる。
7週 3. 原子の構造と周期律 量子条件から電子のエネルギー状態および軌道半径を導出し、説明できる。
8週 3. 原子の構造と周期律+中間試験 4つの量子数を用いて、電子軌道を記述でき、占有する電子数などを説明できる。
2ndQ
9週 4. 化学結合
4.1 化学結合と分子の構造
化学結合の種類および結合力や物質の例などを説明できる。
化学結合の初期理論としてのオクテット則(八隅説)により電子配置をルイス構造で示すことができる。
10週 4.2 共有結合(1) 原子価結合法から共有結合を説明できる。
電子配置から混成軌道の形成について説明できる。
11週 4.2 共有結合(2) 簡単な分子に対する分子軌道法から共有結合を説明できる。
12週 4.3 イオン結合 イオン結合の形成について理解できる。
13週 4.4 金属結合 金属結合の形成について理解できる。
14週 4.5 水素結合 水素結合の形成について理解できる。
15週 4.6 ファンデルワールス結合
ファンデルワールス結合の形成について理解できる。
16週 前期期末試験の返却 試験答案の返却、問題の解説と正答の説明。
後期
3rdQ
1週 5. 固体の構造(1)
結晶系の種類について説明できる。
2週 5. 固体の構造(2)
格子面とミラー指数の導出方法について説明できる。
3週 5. 固体の構造(3)
格子方位と格子面を記述できる。
4週 5. 固体の構造(4)
14種のブラベー格子について説明でき、描くことができる。
5週 5. 固体の構造(5)
代表的な結晶構造の原子配置について説明できる。
6週 5. 固体の構造(6)
充填率の計算ができる。
7週 5. 固体の構造(7)
X線回折の原理を理解している。
8週 5. 固体の構造(8)+中間試験
X線回折を結晶構造の解析に応用できる。
4thQ
9週 6. 格子振動
6.1 一次元単原子格子の振動
一次元単原子格子の振動に対して運動方程式を立て、分散関係式を導出できる。
10週 6.2 2種類の原子よりなる一次元格子の振動 2種類の原子よりなる一次元格子の振動に対して運動方程式を立て、分散関係式を導出できる。
11週 6.3 格子振動が関わる物性(1) 音波の伝搬を格子振動に基き説明できる。
12週 6.3 格子振動が関わる物性(2) 赤外光の吸収を格子振動に基き説明できる。
13週 6.4 固体の比熱
6.4.1 金属と絶縁体の比熱
金属と絶縁体の比熱の違いを説明できる。
14週 6.4.2 アインシュタインの格子比熱モデル アインシュタインの格子比熱モデルを説明できる。
15週 6.4.3 デバイの格子比熱理論 デバイの格子比熱理論を説明できる。
16週 後期期末試験の返却 試験答案の返却、問題の解説と正答の説明。

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料物性金属の一般的な性質について説明できる。4
原子の結合の種類および結合力や物質の例など特徴について説明できる。4
代表的な結晶構造の原子配置について説明でき、充填率の計算ができる。4
結晶構造の特徴の観点から、純金属、合金や化合物の性質を説明できる。4
陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。4
ボーアの水素原子模型を用いて、エネルギー準位を説明できる。4
水素原子中の電子のエネルギー状態が離散的な値を取ることを説明できる。4
量子条件から電子のエネルギー状態および軌道半径を導出し、説明できる。4
4つの量子数を用いて量子状態を記述して、電子殻や占有する電子数などを説明できる。4
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。4
化学結合の種類および結合力や物質の例などを説明できる。4
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。4
無機材料原子の構成粒子を理解し、原子番号、質量数、同位体について説明できる。4
Bohrの原子模型について説明できる。4
主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4
殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質について説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオ演習合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力10000000100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000