前半 有機材料の中でも高分子材料(プラスチック)について、官能基と構造より材料としての性質を説明することができる。高分子材料の製法について説明することができる。
後半 有機材料が多用されているディスプレイ用材料について、実現されているディスプレイ方式の動作原理を説明できる。応用されている有機材料に要求される機能を説明できる。
概要:
有機材料は、液晶、LEDなどの情報材料、有機半導体などの電子材料、人工血管などの医療材料、電気自動車、航空機の構造材料など様々な分野で応用が広がっている最先端の重要な材料である。この講義では、今後新規材料開発を行うエンジニアに必要な有機材料について原理と機能について学ぶ。
前半は、有機材料の中でも高分子として機能性プラスチック、低分子としてLED、色素を取り上げ、分子の構造と分子間に働く力と材料の性質の関連、新規材料として現在研究が行われている材料について学ぶ。
後半は、現在有機材料が多用されているディスプレイ用材料について、実現されているディスプレイ方式の動作原理と機能による分類を行い、有機材料の応用例について学ぶ。
授業の進め方・方法:
前半の授業は、講師による講義を行うインプットのフェイズと、ペアワーク、ジグソー法、ピアインストラクションなどのグループワークにより受講者がアウトプットをするフェイズにより構成されている。この授業形式は、対人的なアウトプットが知識の定着度を向上させるという認知心理学の知見に基づいている。
有機化学Ⅰ・Ⅱ、材料物性Ⅰ・Ⅱ、化学概論、電磁気学、機能材料とも関連するので既開設科目の復習を行った上で、現履修科目の予習と復習を丹念に行うこと。理解を促進させるために必要に応じて課題レポートを科すこともある。
予習:授業トピックについて動画などのweb教材を用いた事前学習を行う。
復習:授業トピックについてレポートなどの事後課題を行う。
注意点:
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
ガイダンス 有機材料とは何か?〜プラスチック、エンプラ、スーパーエンプラの違いは?〜 |
結合の仕方から、金属、セラミック、有機材料の分類ができる 複合材料について、添加・配合・複合化の違いを説明できる 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂について構造の違いから、その性質の違いを説明できる
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2週 |
高分子の化学〜PE,PS,PP,PVCの違いは?〜 |
高分子の定義と分子間力による集合の仕方、性質について説明できる ゴムの性質を分子の構造から説明できる 共重合の仕組みと利点を説明できる
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3週 |
重合と共重合〜ABS樹脂とは何か?〜 |
重合反応について反応の種類を正しく分類できる
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4週 |
界面活性剤〜牛乳はなぜ白いのか?〜 |
界面活性剤の構造と機能の関連を説明できる ミセルとは何か説明できる ミセルの応用例を挙げることができる
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5週 |
光機能材料〜がん治療に使われる色素〜 |
共役構造から色素が発色する原理を説明できる がん治療への応用例(イメージング剤、PDT薬)を挙げることができる
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6週 |
有機EL〜透明ディスプレイの開発はどこまで進んでいるのか?〜 |
有機ELの発光原理を説明できる 有機半導体とは何か説明できる
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7週 |
医療材料〜賢い高分子、スマートポリマー〜 |
有機材料を医療応用する際の利点と欠点をあげることができる スマートポリマーとは何か、医療応用を例に作用機序を説明できる
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8週 |
演習 |
1週から7週の内容について、演習問題を解き、講義内容を解説できる
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2ndQ |
9週 |
光学特性の基礎、ディスプレイの原理と構成部材 |
屈折と反射、偏光、複屈折、透明性について説明できる。有機材料を中心としたディスプレイの構成部材を分類できる。
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10週 |
ディスプレイの原理と構成部材、偏光フィルム |
有機材料を中心としたディスプレイの構成部材を分類できる。偏光フィルムの機能を説明し、液晶表示素子への応用について説明できる。
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11週 |
位相差フィルム |
位相差フィルムの機能を説明し、種類・製法・応用について説明できる。
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12週 |
透明基板材料 |
透明基板材料の機能を説明し、要求される特性を説明できる。
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13週 |
フレキシブルエレクトロニクス材料 |
応用分野を分類でき、実現されている機能を説明できる。
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14週 |
反射防止材料、タッチパネル |
反射防止材料の機能を説明し、機能により分類できる。実現されているタッチパネルを分類でき、その動作の概略を説明できる。
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15週 |
タッチパネル |
実現されているタッチパネルを分類でき、その動作の概略を説明できる
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16週 |
3D用材料 |
3D表示装置の動作原理の概略を説明し、主要な構成材料を分類して説明できる。
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 材料物性 | 化学結合の種類および結合力や物質の例などを説明できる。 | 3 | 前1 |
電子が持つ粒子性と波動性について、現象を例に挙げ、式を用いて説明できる。 | 2 | 前9,前13 |
量子力学的観点から電気伝導などの現象を説明できる。 | 2 | 前10,前12,前14 |
半導体の種類について説明できる。 | 2 | 前4,前5,前10 |
不純物半導体の特徴を真性半導体と区別して説明できる。 | 2 | 前10 |
不純物半導体のエネルギーバンドと不純物準位を描き、伝導機構について説明できる。 | 2 | 前10 |
有機材料 | 高分子の定義と分子間力による集合の仕方、性質について説明できる。 | 4 | 前5,前7 |
低分子と高分子の違いを理解し説明できる。 | 4 | 前1,前10 |
分子量を計算し、官能基や構造から分子の性質を予測できる。 | 4 | 前3 |
高分子ついて、熱可塑性高分子と熱硬化性高分子の構造や性質の違いにより高分子を分類できる。 | 4 | 前1 |
高分子の結晶性・非晶性に基づき力学的性質について説明できる。 | 3 | 前1,前5 |
高分子の平均分子量を理解し、平均分子量と重合度の関係を説明できる。 | 3 | 前3 |
鎖状構造や官能基の立体配置(立体配座)による高分子の構造と性質を理解し説明できる。 | 3 | 前1,前2,前7 |
高分子を構成する分子鎖の構造およびその集合法と性質の関連性を説明できる。 | 3 | 前1,前2,前3,前7,前8 |
高分子の結合様式より合成に必要な重合反応(逐次重合:重縮合、重付加、付加縮合、連鎖重合:付加重合(ラジカル重合、イオン重合)、開館重合、配位重合)を正しく分類できる。 | 3 | 前3 |
逐次重合の反応機構について説明できる。 | 3 | 前3 |
逐次重合の特徴(反応度と数平均重合度の関係、官能基の等量性と数平均重合度の関係等)について説明できる。 | 3 | 前3 |
ラジカル重合の反応機構と動力学について説明できる。 | 3 | 前3 |
ラジカル共重合において、共重合体の分類、共重合組成式、モノマー反応性比と共重合組成式の関係について説明できる。 | 3 | 前3 |
開環重合の反応機構と特徴について説明できる。 | 3 | 前3 |
高分子材料に求められる機能について理解し、基本的な骨格と官能基の機能性について説明できる。 | 4 | 前2,前3,前4,前6 |
高分子の電気的機能や光学的機能等について分子構造から説明できる。 | 4 | 前4,前5,前6,前10,前11,前16 |
高分子の生体適合性や生体代替能等について分子構造から説明できる。 | 3 | 前7,前8 |
高分子の結晶、非晶、結晶化度について説明できる。 | 3 | 前1 |
ミセル、単結晶、球晶など高分子の形態について説明できる。 | 3 | 前6 |
高分子の熱的性質について説明できる。 | 3 | 前1,前3,前10,前11 |
高分子の力学的性質について説明できる。 | 4 | 前1,前3,前13 |
無機材料 | イオン結合の形成について理解できる。 | 3 | 前1 |
金属結合の形成について理解できる。 | 3 | 前1 |
セラミックス、金属材料、炭素材料、複合材料等、無機材料の用途・製法・構造等について説明できる。 | 2 | 前1,前9,前12,前13,前14,前16 |
物質表面が外界からうける作用を考察し、物理的、あるいは化学的な表面相互作用について説明できる。 | 2 | 前9,前11,前12,前14,前15,前16 |
化学・生物系分野 | 有機化学 | σ結合とπ結合について説明できる。 | 3 | 前4,前5 |
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。 | 3 | 前4,前5 |
共鳴構造について説明できる。 | 3 | 前4,前5 |
高分子化合物がどのようなものか説明できる。 | 3 | 前1 |
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。 | 3 | 前1 |
高分子の分子量、一次構造から高次構造、および構造から発現する性質を説明できる。 | 3 | 前1 |
高分子の熱的性質を説明できる。 | 3 | 前1 |