構成材料A

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 平成30年度 (2018年度)
授業科目 構成材料A
科目番号 0159 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 マテリアル環境工学科 対象学年 4
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材 PEL機械・金属材料学 実教出版
担当教員 浅田 格

到達目標

原料である鉄鉱石から鋼を製造する製錬工程、鉄鋼中の不純物について説明できる。鉄-炭素平衡状態図を用いて鉄鋼の標準組織、鋼の熱処理と組織制御を理解して、金属組織を説明できる。それに基づいて、鉄鋼の種類とその機械的性質を説明できる。非鉄金属材料について、製造法、組織学的性質、機械的性質、物理的・化学的性質およびそれらの要因や特性を説明できる。その上で、用途に合った最適な材料選択および材質改善方法を基本を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
鉄鋼製錬と不純物鉄鋼製錬の工程の反応、鉄鋼中の不純物と影響について説明できる。鉄鋼製錬の工程、鉄鋼中の不純物について理解できる。鉄鋼製錬の工程が理解できていない。鉄鋼中の不純物を挙げることができない。
鉄鋼の状態図と組織1鉄炭素系状態図を描き、冷却過程で出現する組織について組織写真を見ながら説明できる。鉄炭素系状態図を参考に、出現する組織について組織写真を見ながら説明できる。鉄炭素系状態図を読み取ることができず、組織写真を説明できない。
鉄鋼の状態図と組織2冷却速度に依存した熱処理の種類と出現する組織を説明できる。TTT線図、CCT線図を用いて、冷却過程の制御方法と出現する組織の種類と特徴を説明できる。冷却速度に依存した熱処理の種類を説明できる。TTT線図、CCT線図を用いて、冷却過程の違いと出現する組織の種類を説明できる。冷却速度に依存した熱処理について理解していない。TTT線図、CCT線図を読み取ることができない。
鉄鋼の状態図と組織3焼入れの目的と組織の特徴、焼戻しの目的と焼戻し段階での組織変化と特徴(硬化、脆化など)について説明できる。焼入れ組織の特徴、焼戻しの目的について説明できる。焼入れ組織や焼戻しの目的を説明できない。
純鉄、鋳鉄純鉄の応力歪み曲線を描くことができる。不均一変形とコットレル雰囲気、軟鋼の加工性や強化機構について、原因を理解して説明できる。鋳鉄の特徴、種類と組織の違いを説明できる。純鉄の応力歪み曲線、不均一変形とコットレル雰囲気について説明できる。鋳鉄の特徴を説明できる。純鉄の応力歪み曲線、不均一変形とコットレル雰囲気について説明できない。鋳鉄の特徴を説明できない。
合金鋼とJIS合金鋼の状態図やTTT線図などの特徴を説明できる。基本的なJIS鋼材について挙げることができ、それらの鋼材の特徴を説明でき、応用例を挙げることができる。基本的なJIS鋼材について挙げて、鋼材の特徴を説明できる。基本的なJIS鋼材を挙げることができない。
銅、アルミニウム、マグネシウム銅、アルミニウム、マグネシウムについて、基本的な製錬方法、純金属の特徴、合金の種類と添加元素による組織や物性への効果について、JIS規格を例にして説明できる。銅、アルミニウム、マグネシウムについて、純金属の特徴、合金の種類と添加元素による組織や物性への効果について説明できる。銅、アルミニウム、マグネシウムの性質を説明できず、添加元素の効果を理解していない。

学科の到達目標項目との関係

JABEE D1 専門分野に関する工業技術を理解し、応用する能力

教育方法等

概要:
工業的に最も広く利用されている構成材料は、鉄を主成分とする鉄鋼材料である。また、非鉄金属材料は、銅やアルミニウム、マグネシウム、チタンなどがよく知られている。これらは多様な応用性を有し、近年材料の高機能化のニーズが高まっている。
この前半では、鉄鋼材料について、その製造法から種類、機械的性質までを材料学的観点から講義する。後半は非鉄金属材料の製造方法から、組織学的性質、機械的性質、物理的・化学的性質について学習する。最も身近にある材料として関心を持ち、実用材料としての鉄鋼材料について学習する。
授業の進め方・方法:
この科目は、材料組織学Ⅰ、材料組織学Ⅱに続く科目で、並行する材料強度学とも関連する。金属組織学の基礎を習得しておくこと。評価は試験、課題ともにそれぞれ合格することで単位修得となる。
予習:講義で学んだ内容は、配布する次回講義内容の演習課題を予習すること。
復習:科学的観点に基づく理由・原理を伴った文章にて説明できるように、講義終了後に復習しておくこと。また、課題レポート(評価に含む)を配布するので、翌週までに提出すること。
注意点:
非鉄材料の内容は、5学年開講の構成材料IIへ引き継ぐ。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 組織制御と素材の加工 材料組織学で学んだ組織制御の基本を理解する。塑性加工、鋳造、溶接の方法と応用について理解し製品へ適用できる。
2週 1.鉄鋼材料の概要 鉄鋼材料の種類、用途を理解する。
3週 2.鉄鋼の製造法
〜原料、高炉操業、転炉操業〜
原料の種類、溶鉱炉による高炉操業(製銑法)を理解する。製銑および製鋼工程について、原料ならびに主設備、主な炉内反応が説明できる。
4週 2,鉄鋼の製造法
〜鉄鋼中の不純物,たたら製鉄〜
鉄鋼中の不純物と鋼材への影響を説明できる。たたら製鉄と西洋式製鉄の違いを理解する。
5週 3.鉄鋼の状態図と組織
〜鉄炭素系状態図と鉄鋼の熱処理〜
炭素鋼の状態図を理解し、標準組織および機械的性質が説できる。炭素鋼の焼鈍しの目的と焼鈍しによる機械的性質の変化、焼きならしの目的と焼きならしによる変化を説明できる。
6週 3.鉄鋼の状態図と組織
〜焼入れと焼もどし〜
炭素鋼のT.T.T.曲線の読み方ならびにC.C.T.曲線との相違が説明できる。炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。
7週 3.鉄鋼の状態図と組織
〜鉄鋼の表面処理〜
鉄鋼の表面処理についての目的、方法、効果を説明できる。
8週 4.純鉄・軟鋼の性質 純鉄・軟鋼の応力ひずみ曲線や不均一変形の原因となるコットレル雰囲気について説明できる。純鉄・軟鋼の加工や力学的性質について説明できる。
4thQ
9週 5.合金鋼の状態図と組織 合金鋼の状態図、炭化物の種類や析出挙動、T.T.T.図、C.C.T.図を理解でき、目的に応じた適切な熱処理法と機械的性質について理解できる。
10週 6.鉄鋼材料のJIS規格
一般構造用鋼、機械構造用鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、高硬度鋼
JISにおける炭素鋼、合金鋼の機械的性質と合金元素の関連について理解できる。塑性加工,溶接などの加工法を考慮した上で用途に応じた鋼材を選択できる。
11週 7.鋳鉄 鋳造の手法、鋳鉄の性質、および組織と状態図について説明できる。
12週 8.非鉄金属材料の分類と特徴 非鉄金属材料の性質や用途、その分類を理解する。加工法と熱処理原理、伴う組織や機械的性質を理解する。
13週 9.銅と銅合金 純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。黄銅や青銅について、成分および特徴を理解し応用できる。
14週 10.アルミニウムとその合金 アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。鋳造・ダイカスト用・展伸用アルミニウムについて、加工法、その成分や熱処理条件による種類および特徴を理解し応用できる。
15週 11.マグネシウム合金 マグネシウムの性質とその合金の応用について理解し、製品へ適用できる。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野金属材料製銑および製鋼工程について、原料ならびに主設備、主な炉内反応を説明できる。4後3,後4
純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。4後2,後5,後8,後9
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。4後2,後5
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。4後5,後9,後10
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。4後5,後9,後10
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。4後6,後9,後10
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。4後6,後9,後10
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。4後9,後10
合金鋼の添加元素と機械的性質に関する知識を利用して、合金鋼の用途を選択できる。4後9,後10,後11
状態図を用いて、鋳鉄の性質および組織について説明できる。4後3,後11
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。4後13
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。4後13
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。4後14
鋳造用・展伸用アルミニウムについて、その成分や熱処理による組織学的変化の観点から適切な合金を応用できる。4後14
材料組織点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。4後1,後6,後8
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。4後1,後6
面欠陥である積層欠陥について説明できる。4後1,後6,後14
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。4後1,後5,後6,後12
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。4後1,後4,後6,後12
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。4後1,後2,後5,後12
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。4後1,後5,後12
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。4後1,後2,後5,後12
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。4後1,後5,後12
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。4後1,後8
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。4後1,後8
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。4後1,後8
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。4後1,後5,後6
拡散係数の物理的意味を説明できる。4後1,後5,後6
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。4後1,後6
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。4後1,後6
再結晶粒の成長機構を説明できる。4後1,後6
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。4後1,後6
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。4後1,後6
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。4後1,後6
工作精密鋳造法、ダイカスト法およびその他の鋳造法における鋳物のつくりかたを説明できる。4後1,後11
鋳物の欠陥とその検査方法を説明できる。4後1,後11
ガス溶接やアーク溶接の接合方法とその特徴を説明できる。4後1,後2,後8
溶接における欠陥について理解し、溶接に適した材料選択ができる。4後1,後2,後8
塑性加工法の種類を説明できる。4後1,後2,後8
鍛造とその特徴を説明できる。4後1,後2,後8
プレス加工とその特徴を説明できる。4後1,後2,後8
転造、押出し、圧延、引抜きなどの加工法を説明できる。4後1,後2,後8

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合80000020100
基礎的能力0000000
専門的能力80000020100
分野横断的能力0000000