原料である鉄鉱石から鋼を製造する製錬工程、鉄鋼中の不純物について説明できる。鉄-炭素平衡状態図を用いて鉄鋼の標準組織、鋼の熱処理と組織制御を理解して、金属組織を説明できる。それに基づいて、鉄鋼の種類とその機械的性質を説明できる。非鉄金属材料について、製造法、組織学的性質、機械的性質、物理的・化学的性質およびそれらの要因や特性を説明できる。その上で、用途に合った最適な材料選択および材質改善方法を基本を説明できる。
概要:
工業的に最も広く利用されている構成材料は、鉄を主成分とする鉄鋼材料である。また、非鉄金属材料は、銅やアルミニウム、マグネシウム、チタンなどがよく知られている。これらは多様な応用性を有し、近年材料の高機能化のニーズが高まっている。
この前半では、鉄鋼材料について、その製造法から種類、機械的性質までを材料学的観点から講義する。後半は非鉄金属材料の製造方法から、組織学的性質、機械的性質、物理的・化学的性質について学習する。最も身近にある材料として関心を持ち、実用材料としての鉄鋼材料について学習する。
授業の進め方・方法:
この科目は、材料組織学Ⅰ、材料組織学Ⅱに続く科目で、並行する材料強度学とも関連する。金属組織学の基礎を習得しておくこと。評価は試験、課題ともにそれぞれ合格することで単位修得となる。
予習:講義で学んだ内容は、配布する次回講義内容の演習課題を予習すること。
復習:科学的観点に基づく理由・原理を伴った文章にて説明できるように、講義終了後に復習しておくこと。また、課題レポート(評価に含む)を配布するので、翌週までに提出すること。
注意点:
非鉄材料の内容は、5学年開講の構成材料IIへ引き継ぐ。
|
|
週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
組織制御と素材の加工 |
材料組織学で学んだ組織制御の基本を理解する。塑性加工、鋳造、溶接の方法と応用について理解し製品へ適用できる。
|
2週 |
1.鉄鋼材料の概要 |
鉄鋼材料の種類、用途を理解する。
|
3週 |
2.鉄鋼の製造法 〜原料、高炉操業、転炉操業〜 |
原料の種類、溶鉱炉による高炉操業(製銑法)を理解する。製銑および製鋼工程について、原料ならびに主設備、主な炉内反応が説明できる。
|
4週 |
2,鉄鋼の製造法 〜鉄鋼中の不純物,たたら製鉄〜 |
鉄鋼中の不純物と鋼材への影響を説明できる。たたら製鉄と西洋式製鉄の違いを理解する。
|
5週 |
3.鉄鋼の状態図と組織 〜鉄炭素系状態図と鉄鋼の熱処理〜 |
炭素鋼の状態図を理解し、標準組織および機械的性質が説できる。炭素鋼の焼鈍しの目的と焼鈍しによる機械的性質の変化、焼きならしの目的と焼きならしによる変化を説明できる。
|
6週 |
3.鉄鋼の状態図と組織 〜焼入れと焼もどし〜 |
炭素鋼のT.T.T.曲線の読み方ならびにC.C.T.曲線との相違が説明できる。炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。
|
7週 |
3.鉄鋼の状態図と組織 〜鉄鋼の表面処理〜 |
鉄鋼の表面処理についての目的、方法、効果を説明できる。
|
8週 |
4.純鉄・軟鋼の性質 |
純鉄・軟鋼の応力ひずみ曲線や不均一変形の原因となるコットレル雰囲気について説明できる。純鉄・軟鋼の加工や力学的性質について説明できる。
|
4thQ |
9週 |
5.合金鋼の状態図と組織 |
合金鋼の状態図、炭化物の種類や析出挙動、T.T.T.図、C.C.T.図を理解でき、目的に応じた適切な熱処理法と機械的性質について理解できる。
|
10週 |
6.鉄鋼材料のJIS規格 一般構造用鋼、機械構造用鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、高硬度鋼 |
JISにおける炭素鋼、合金鋼の機械的性質と合金元素の関連について理解できる。塑性加工,溶接などの加工法を考慮した上で用途に応じた鋼材を選択できる。
|
11週 |
7.鋳鉄 |
鋳造の手法、鋳鉄の性質、および組織と状態図について説明できる。
|
12週 |
8.非鉄金属材料の分類と特徴 |
非鉄金属材料の性質や用途、その分類を理解する。加工法と熱処理原理、伴う組織や機械的性質を理解する。
|
13週 |
9.銅と銅合金 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。黄銅や青銅について、成分および特徴を理解し応用できる。
|
14週 |
10.アルミニウムとその合金 |
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。鋳造・ダイカスト用・展伸用アルミニウムについて、加工法、その成分や熱処理条件による種類および特徴を理解し応用できる。
|
15週 |
11.マグネシウム合金 |
マグネシウムの性質とその合金の応用について理解し、製品へ適用できる。
|
16週 |
|
|
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 材料系分野 | 金属材料 | 製銑および製鋼工程について、原料ならびに主設備、主な炉内反応を説明できる。 | 4 | 後3,後4 |
純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。 | 4 | 後2,後5,後8,後9 |
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。 | 4 | 後2,後5 |
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。 | 4 | 後5,後9,後10 |
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。 | 4 | 後5,後9,後10 |
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。 | 4 | 後6,後9,後10 |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。 | 4 | 後6,後9,後10 |
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。 | 4 | 後9,後10 |
合金鋼の添加元素と機械的性質に関する知識を利用して、合金鋼の用途を選択できる。 | 4 | 後9,後10,後11 |
状態図を用いて、鋳鉄の性質および組織について説明できる。 | 4 | 後3,後11 |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。 | 4 | 後13 |
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。 | 4 | 後13 |
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。 | 4 | 後14 |
鋳造用・展伸用アルミニウムについて、その成分や熱処理による組織学的変化の観点から適切な合金を応用できる。 | 4 | 後14 |
材料組織 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 4 | 後1,後6,後8 |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
面欠陥である積層欠陥について説明できる。 | 4 | 後1,後6,後14 |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。 | 4 | 後1,後5,後6,後12 |
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。 | 4 | 後1,後4,後6,後12 |
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。 | 4 | 後1,後2,後5,後12 |
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。 | 4 | 後1,後5,後12 |
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。 | 4 | 後1,後2,後5,後12 |
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。 | 4 | 後1,後5,後12 |
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。 | 4 | 後1,後8 |
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。 | 4 | 後1,後8 |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 4 | 後1,後8 |
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。 | 4 | 後1,後5,後6 |
拡散係数の物理的意味を説明できる。 | 4 | 後1,後5,後6 |
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
再結晶粒の成長機構を説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。 | 4 | 後1,後6 |
工作 | 精密鋳造法、ダイカスト法およびその他の鋳造法における鋳物のつくりかたを説明できる。 | 4 | 後1,後11 |
鋳物の欠陥とその検査方法を説明できる。 | 4 | 後1,後11 |
ガス溶接やアーク溶接の接合方法とその特徴を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後8 |
溶接における欠陥について理解し、溶接に適した材料選択ができる。 | 4 | 後1,後2,後8 |
塑性加工法の種類を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後8 |
鍛造とその特徴を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後8 |
プレス加工とその特徴を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後8 |
転造、押出し、圧延、引抜きなどの加工法を説明できる。 | 4 | 後1,後2,後8 |