概要:
最適な特性・機能を持った材料を開発するために必要な材料組織の制御方法について学習する。材料組織は、材料の機械的、物理的、化学的性質を大きく左右するため、その制御は高性能な材料を得るためだけではなく、耐久性や安全にも関わる重要な技術である。
この講義では、平衡状態図や析出過程の講義・演習を通して組織学の基礎知識を習得し、それに基づいて鉄鋼材料や非鉄金属材料の種類とその強度特性など物性向上のための組織制御について理解し、説明できることがねらいです。
授業の進め方・方法:
本科目は、材料システム学に続く科目であり、専攻科2年後期のより専門性の高い科目へと繋がる。
材料組織に関する基礎から応用までが講義範囲となる。後半の各金属材料に関する講義では、前半で学んだ専門用語を理解し使い分けられるように。授業内容に関する課題演習を行う場合がある。
予習:授業計画に沿ってテキストを読んでおくこと。
復習:授業内容を復習し、テキストの課題を解くこと。
注意点:
自学自習として、次回の授業内容と達成目標、テキスト内容を確認しておくこと。また、復習を重視して学習すること。授業ノートの内容とテキストの説明を読み合わせて現象の理解に努めること。特に課題演習は重要な項目であるので、理解のもとに解き進めること。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
1.物質と結晶構造 |
一般的な結晶構造について説明できる。結晶方位と結晶面をミラー指数で表すことができる。
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2週 |
2.純物質の自由エネルギー |
エネルギーとエントロピー、自由エネルギーの関係について説明できる。
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3週 |
3.溶体と化合物 |
混合や溶体などの状態について、熱力学的に説明できる。
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4週 |
4.状態図 |
異相平衡を熱力学的に説明できる。 種々の状態図の反応を説明できる。
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5週 |
4.状態図(演習) |
2元系状態図を例に、状態図上の不変系反応を読み取ることができ、結晶組織を予測できる。
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6週 |
5.拡散 |
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。フィックの第1,第2法則について説明できる。
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7週 |
6.核生成と成長 |
析出過程、連続・不連続析出を区別して理解できる。これらの析出過程で生じる組織と強度などの物性について説明できる。
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8週 |
7.凝固と界面 |
界面の状態と凝固過程、結晶粒成長について、ギブストムソン効果などを用いて説明できる。
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2ndQ |
9週 |
8.鉄鋼1 |
鉄炭素系状態図と標準組織について説明できる。
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10週 |
8.鉄鋼2 |
焼入れとマルテンサイト変態、恒温変態について説明できる。
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11週 |
8.鉄鋼3 |
合金鋼やステンレス鋼などの特殊鋼の特徴を組織学的に説明できる。
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12週 |
9.非鉄材料1 |
鋳造材と展伸材、強化方法を組織と関連して理解できる。
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13週 |
9.非鉄材料2 |
銅合金、アルミニウム合金の種類と性質を区別できる。
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14週 |
9.非鉄材料3 |
マグネシウム合金、チタン合金などの種類と性質を理解する。
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15週 |
10.まとめ1 |
合金設計を組織学的な観点からまとめることができる。
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16週 |
10.まとめ2 |
試験の解説。本講義のまとめ。
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 材料 | 機械材料に求められる性質を説明できる。 | 5 | |
金属材料、非金属材料、複合材料、機能性材料の性質と用途を説明できる。 | 6 | |
機械的性質と温度の関係およびクリープ現象を説明できる。 | 6 | |
金属と合金の結晶構造を説明できる。 | 5 | |
金属と合金の状態変化および凝固過程を説明できる。 | 5 | |
合金の状態図の見方を説明できる。 | 6 | |
塑性変形の起り方を説明できる。 | 5 | |
加工硬化と再結晶がどのような現象であるか説明できる。 | 6 | |
Fe-C系平衡状態図の見方を説明できる。 | 6 | |
焼きなましの目的と操作を説明できる。 | 5 | |
焼きならしの目的と操作を説明できる。 | 5 | |
焼入れの目的と操作を説明できる。 | 5 | |
焼戻しの目的と操作を説明できる。 | 5 | 後1 |
材料系分野 | 金属材料 | 純鉄の組織と変態について、結晶構造を含めて説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の状態図を用いて標準組織および機械的性質を説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の焼なましと焼ならしについて冷却速度の違いに依存した機械的性質の変化を説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方が説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の焼きならしの目的と焼きならしによる機械的性質の変化を説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の恒温変態(T.T.T.)曲線と連続冷却変態(C.C.T.)曲線の読み方とこれらの相違を説明できる。 | 5 | |
炭素鋼の焼入れの目的と得られる組織、焼入れによる機械的性質の変化を説明できる。 | 5 | |
焼入れた炭素鋼の焼戻しの目的とその過程に関する知識を活用し、焼入れ焼き戻しによる機械的性質の変化を説明できる。 | 5 | |
合金鋼の状態図の読み方を利用して炭化物の種類や析出挙動を説明できる。 | 5 | |
合金鋼のT.T.T.図、C.C.T.図の読み方が理解でき、目的に応じた適切な熱処理法を説明できる。 | 5 | |
純銅の強度的特徴、物理的、化学的性質について説明できる。 | 5 | |
黄銅や青銅について、その成分および特徴を理解し、適切な合金を応用できる。 | 5 | |
アルミニウムの強度的特徴、物理的・化学的性質について説明できる。 | 5 | |
鋳造用・展伸用アルミニウムについて、その成分や熱処理による組織学的変化の観点から適切な合金を応用できる。 | 5 | |
材料組織 | 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。 | 5 | |
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。 | 5 | |
面欠陥である積層欠陥について説明できる。 | 5 | |
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。 | 5 | |
ギブスの相律から自由度を求めて系の自由度を説明できる。 | 5 | |
熱分析の原理について説明できる。 | 5 | |
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。 | 5 | |
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。 | 5 | |
相分離型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。 | 5 | |
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。 | 5 | |
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。 | 5 | |
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。 | 5 | |
偏晶型の反応と状態図を説明できる。 | 5 | |
中間相生成型の反応と状態図を説明できる。 | 5 | |
固溶体の自由エネルギー曲線から求められる合金の安定状態について理解できる。 | 5 | |
自由エネルギー曲線と状態図の関係を系統的にまとめ、説明することができる。 | 5 | |
弾性変形の変形様式の特徴、フックの法則について説明できる。 | 5 | |
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。 | 5 | |
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。 | 5 | |
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。 | 5 | |
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。 | 5 | |
拡散係数の物理的意味を説明できる。 | 5 | |
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。 | 5 | |
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。 | 5 | |
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。 | 5 | |
凝固過程での状態変化や特徴を説明できる。 | 5 | |
析出過程での状態変化や特徴を説明できる。 | 5 | |
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。 | 5 | |
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。 | 5 | |