到達目標
赤坂憲雄『異人論序説』の精読を通じて,批判的な読書の方法を学び,併せて思想史一般,日本中世史,民俗学・文学史の知識を補う。さらに進んで国家間や国家内に見られる民族問題など,文化的相違に起因する諸問題の根源,社会内部の組織化と疎外のメカニズムを理解し,問題の解消への努力について理解する。また,一般市民=公衆との関係において専門技術者としての自覚を形成する。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
基礎事項の定着:講義中に解説した基礎事項の理解 | 本講義の理解に必要な歴史的・思想史的事項の名称を概ね9割程度記憶している | 同,概ね8割程度記憶している | 同,7割未満の記憶に留まる |
諸事項の思想史的・歴史的・地理的連関の理解 | 諸事項の定義を概ね理解し,相互の連関を正しく指摘できる | 同,概ね7割程度の概念について関連事項の連関を正しく指摘できる | 同,6割未満に留まり,論理的に的確な文章を構築できない |
資料調査能力(Cinii等の適切な利用能力) | 自己の興味関心に従い,講義内容を踏まえて当該分野の学術論文を検索し,読解して報告できる | 指示された課題について学術論文を読解し,内容を報告できる | 課題に対して適切な学術論文を探せず,講義内容の諸概念についての理解が不足していると判断される |
学科の到達目標項目との関係
教育方法等
概要:
本学学生諸君は専門領域に責任ある技術者として社会に出る。他の市民=公衆にとっては,ある種の「異人」の位置に立つことになるが,そこにはある種の人間疎外の状況が看取される。この間の事情と意味を赤坂憲雄『異人論序説』を手掛かりに学ぶ。また,同書が言及する文化人類学・民俗学・社会学・宗教学的知識によって,人文学的教養を養うこともめざす。本キャンパスでは日本史が開講されていない。そこで本講義では,講義内容に関係する限りで日本史も講じる。なお,世界史(二年),倫理(二年)の学習内容を前提とし,人文科学特論(四年)の内容にも一部関説する。
授業の進め方・方法:
赤坂憲雄『異人論序説』を手がかりにしつつ思想史一般,日本中世史,民俗学・文学史の知識を補う。さらに進んで国家間や国家内に見られる民族問題など,文化的相違に起因する諸問題の根源,社会内部の組織化と疎外のメカニズムを理解し,問題の解消への努力について理解する。また,一般市民=公衆との関係において専門技術者としての自覚を形成する。
注意点:
本講義は日本史,日本文芸史や世界史,宗教史,哲学史の一般的な知識を前提とする。是非とも知っておかなければならない事項については特に強調するが,諸君もこれまで使った世界史・倫理,国語の教科書をおさらいし,一般教養の養成につとめること。また,毎朝の新聞記事・ニュースを視聴し(30分程度でよい),本講義の論題(乃至自身の興味関心)に引き寄せて考察を試みるなどするとよい。本講義は社会的不公正と問題の根源を論じる。その背景に存する現代社会の政治的・経済的諸課題,および公正な社会の実現に向けた現在までの取り組みについて,学生は個人的にもよく考察し,理解を深めること。
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
序論(1) |
例話を引きながら「第三項排除」の概念を理解する
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2週 |
序論(2) |
家屋や円環のメタファーにより「我々」と「彼ら」との二分割思考の問題の所在を理解し,さらに網野善彦の無主無縁の概念を理解する
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3週 |
日本古代宗教社会史概説 |
三輪山の神と天皇,夜刀神の神話を題材に,有縁有主の世界が無主無縁の世界を制圧しゆく次第を理解する
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4週 |
日本中世政治史の復習と「森の放浪者」 |
源頼朝が義経を追い詰める次第を確認,無主無縁領域の縮減を学ぶ
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5週 |
中世都市・鎌倉 |
化粧坂を例に「境界」の機能を理解する。また,足利家家系を例に女性の社会的立場の変遷を理解する
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6週 |
中世から近世へ:比叡炎上と楽市楽座 |
足利義教・織田信長に関説,さらに無主無縁の世界の消滅を秩父事件を例に理解する
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7週 |
「市」の機能(1) |
ヘロドトスを参照しながら沈黙交易の構造と問題を理解する
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8週 |
「市」の機能(2) |
柳田国男を利用して山人と市の関係を学び,こうした〈異人〉との接触の意味を理解する
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4thQ |
9週 |
「王と天皇」(1) |
モックキングと「王の廃棄」の事例を学び,天皇制の分析の視点を学ぶ
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10週 |
「王と天皇」(2) |
日本史上の幾人かの天皇をとりあげ,明治政府が意図した国民統合と天皇制度構想との違いを理解する
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11週 |
「王と天皇」(3) |
明治政府的な天皇制は破綻した。現代の天皇制は別種の様相を呈している。このことを理解する
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12週 |
〈異人〉の現象学:内なる他者・無意識・狂気(1) |
世俗化が済んだ後の我々の現代社会において「排除の暴力」が如何様に機能しているか,新聞記事等を利用し,実例に即して分析する
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13週 |
〈異人〉の現象学:内なる他者・無意識・狂気(2) |
フロイト,フーコー,アルチュセールの諸説を参照しつつ,「精神病者」の社会的位置づけに潜む暴力の様態を理解する
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14週 |
演習:現代ミャンマーと「国民統合」の問題 |
諸種のメディア報道にくわえ,担当教員の現地調査の情報を加味し,現代ミャンマー社会の現象を理解する
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15週 |
期末試験 |
1-14週の学習内容の定着度合いを確認する
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16週 |
答案返却と講評 |
答案を返却,レポートと併せて講評を行う
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 社会 | 地歴 | 日本を含む世界の様々な生活文化、民族・宗教などの文化的諸事象について、歴史的または地理的観点から理解できる。 | 2 | |
国家間や国家内で見られる、いわゆる民族問題など、文化的相違に起因する諸問題について、地理的または歴史的観点から理解できる。 | 3 | |
文化の多様性を認識し、互いの文化を尊重することの大切さを理解できる。 | 4 | 後1,後4,後5,後6 |
公民 | 哲学者の思想に触れ、人間とはどのような存在と考えられてきたかについて理解できる。 | 3 | 後2,後3,後10,後12,後13 |
諸思想や諸宗教において、自分が人としていかに生きるべきと考えられてきたかについて理解できる。 | 3 | 後7,後11,後14 |
諸思想や諸宗教において、好ましい社会と人間のかかわり方についてどのように考えられてきたかを理解できる。 | 3 | 後8,後9 |
評価割合
| 試験 | 発表 | 相互評価 | 態度 | ポートフォリオ | 小試験 | 合計 |
総合評価割合 | 60 | 0 | 0 | 0 | 20 | 20 | 100 |
基礎的能力 | 60 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 | 80 |
専門的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
分野横断的能力 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 | 0 | 20 |