概要:
現代の技術者には,専門領域に関する能力のみならず,多面的な思考能力,技術(者)の倫理に関する理解,知識と理解を問題解決に応用する能力が求められている。多様な資料を通じて,このような事態に立ち至った歴史的背景を含めて技術者倫理の諸課題の理解を促進し,学生間のグループ討議を通じてコミュニケーション的な理性の必要性と有効性を理解する。
授業の進め方・方法:
「教科書・教材」に挙げた資料そのほかを前提に,笠松が近現代的生産様式における技術者・専門家の位置と責務や,生命倫理・環境倫理に関する概論を行い,以下菅谷・馬場・脇山が各々の専門的見地からチャレンジャー号事件・ココム事件等の具体的事例を題材にしつつ詳論する。この際,学生にはグループを組んで討論を行い,取りまとめて発表する等の積極的参与を求める。
注意点:
配布資料は各教員の技術者倫理に関する熟慮の成果である。教育の専門技術者として,現に受益者たる諸君の利益に配慮して最良の努力を尽くしたつもりであるが,なお不足があろう。ところで学生諸君は,殊に技術者倫理の領域においては受益者=公衆の位置に立ち続けることはできない。近い将来において諸君は実地に技術者倫理を用いざるを得ない。それゆえ,配布資料や提示された参考書に留まらず,積極的に学習して相互に検討する態度を養成することが求められる。グループ討議の場ではこうした点に留意されたい。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
「技術者倫理とは何か」 |
技術者倫理概論を行う。こうした課題がなぜ必要とされるか,その理由を理解する。
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2週 |
20世紀の科学の歴史(1) |
科学技術・技術者の倫理が問われるようになったのは割合新しい現象であることを理解し,ハーバー等が直面した科学者の倫理問題のあり方を理解する。
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3週 |
20世紀の科学の歴史(2):「科学者とジレンマ―人道と正義」 |
現代は既に緊張は緩和され,嘗てのような極限の判断を求められる局面自体は減った。だが,本質的には同類のことが我々の身に起こることを理解する。
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4週 |
「組織の論理と技術者の倫理―チャレンジャー号爆発事件」 |
チャレンジャー号爆発事件は,技術者倫理の教科書が常に使うであろう基礎的な・古典的な論題である。極めて常識的に概説し,次いで自分たちに引き比べて理解を深める。
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5週 |
「生体濃縮―化学物質と技術」 |
武谷からはじめ,レイチェル・カーソンを押さえつつ,水俣病の事例に言及して現代の環境問題まで関説する。
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6週 |
科学者とその倫理 |
データには学問的に,理性的に,誠実に当らねばならない。最近の事例に触れつつ,実際の心構えを涵養する。
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7週 |
きわどい科学の事例について考える① |
不正行為が疑われる事例を基に、科学者としての行動規範について考えることができる。
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8週 |
きわどい科学の事例について考える② |
不正行為が疑われる事例を基に、科学者としての行動規範について、考えを掘り下げることができる。
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2ndQ |
9週 |
きわどい科学の事例について考える③ |
不正行為が疑われる事例を基に、科学者としての行動規範について、考えを深く掘り下げることができる。
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10週 |
「技術者の倫理―事例研究」ケーススタディ |
耐震強度構造計算書偽装事件等を通して、倫理的責任が理解でき、法的責任との区別ができる。
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11週 |
「技術とコンプライアンス」 |
東芝機械ココム違反事件のコンプライアンス・プログラムの倫理的意味を理解できる。
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12週 |
「チャレンジャー号の爆発と技術者倫理」
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スペースシャトル・チャレンジャー号事件を科学技術倫理の問題として把握できる。関連して「応答責任」「説明責任」「予防原則」が説明できる。
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13週 |
情報通信と技術者倫理(1) |
インターネットで頻発している情報セキュリティ事案と代表的な手口について理解する。
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14週 |
情報通信と技術者倫理(2) |
情報セキュリティに関連する法律とその概要を把握できる。
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15週 |
情報通信と技術者倫理(3) |
情報通信における「秘密の保護」の問題について、情報セキュリティの現状や関連する法律から考察することができる。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 工学基礎 | 技術者倫理 | 技術者倫理 | 技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を理解し、社会における技術者の役割と責任を説明できる。 | 2 | 前1,前12,前13,前15 |
説明責任、内部告発、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的事項を理解し、説明できる。 | 3 | 前2,前10,前12,前15 |
技術者を目指す者として、社会での行動規範としての技術者倫理を理解し、問題への適切な対応力(どうのように問題を捉え、考え、行動するか)を身に付けて、課題解決のプロセスを実践できる。 | 1 | 前2,前9,前11,前15 |
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、及び個人情報保護法、著作権などの法律との関連について理解できる。 | 3 | 前13,前14,前15 |
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを理解できる。 | 3 | 前13,前14,前15 |
技術者を目指す者として、環境問題について配慮することができる。 | 3 | 前5 |
技術者を目指す者として、社会と地域について配慮することができる。 | 3 | 前3,前6 |
技術者を目指す者として、知的財産に関する知識(関連法案を含む)、技能、態度を身につける。 | 3 | |
知的財産の社会的意義や重要性を技術者として理解し、知的創造サイクルを支えることができる。 | 3 | |
技術者を目指す者として、知的財産を意識した創造性を発揮できる。 | 3 | 前1,前6,前14,前15 |
技術者を目指す者として各国・各地域での活動において、各国・各地域の文化、慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令などを守ることができる。 | 3 | 前1,前6,前11,前12 |
社会性、社会的責任、コンプライアンスが強く求められている時代の変化の中で、技術者として信用失墜の禁止と公益の確保が考慮することができる。 | 2 | 前6,前11,前14,前15 |
技術者を目指す者として持続可能な開発を通じて全ての人々が安心して暮らせる未来を実現するために配慮することができる。 | 3 | 前5,前12,前13,前15 |
技術者を目指す者として、さまざまな課題に力を合わせて取り組んでいくことができる。 | 3 | 前3,前5,前6 |