社会科学

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 社会科学
科目番号 1104 科目区分 一般 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 総合工学科Ⅰ類 対象学年 5
開設期 後期 週時間数 2
教科書/教材
担当教員 笠松 直

到達目標

本講義では「異人論」をめぐる社会哲学を講じる。この際、この議論の基礎をなす日本史・世界史・思想史・宗教史・民俗学などの諸事項をも講じるが、学生諸君はそうした基礎事項(おもに高校の履修内容)を復習・確認して定着させたうえ、複数の要素を関連付けて考察することを試み、さらには統合して論じることを求めたい。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
基礎知識の定着関連する高校社会科履修範囲に属する基礎知識の定着が9割以上である関連する高校社会科履修範囲に属する基礎知識の定着が8割程度ある関連する高校社会科履修範囲に属する基礎知識の定着が7割に満たない
領域の専門知識の定着関説する専門知識の定着が9割程度である関説する専門知識の定着が8割程度ある関説する専門知識の定着が7割に満たない
綜合的な理解の内容の表明上掲の諸事項を統合して意見表明・問題作成ができる上掲の諸事項を統合して試験問題の予想・制作ができる上掲の諸事項の統合に難があり、成績評価に値する試験問題の作成ができない

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
本学学生諸君は専門領域に責任ある技術者として社会に出る。ならば他の市民=公衆にとってはある種の「異人」の立場に立つことになるが、そこにはある種の人間疎外の状況が観取される。この間の事情と意味を赤坂憲雄『異人論序説』を手掛かりとして学ぶ。
授業の進め方・方法:
第一学年「現代社会」と第二学年「世界史」の知識を前提に、さらに発展的な内容を教示しながら、我々が社会を構成し、維持する際に働く(しばしば微細でもある)暴力の行使のありようについて講じる。本校の現在のカリキュラムでは人文科学系の講義の時間配当が少ない。間説できる限りで日本史・宗教史・民俗学など、多様な領域について講義し、他学校種の学生に比してやや不足しがちな領域の知識水準向上に努める。
注意点:
教科書は指定しない。教員作成のハンドアウトを用意する。この際、参考図書の紹介を付するので、受講者諸君は1. ハンドアウトを利用した復習、2. 提示された参考図書を起点とした読書・自学自習をもとに、さらに3. 関連する話題の探索、をするよう心掛けて欲しい。3. については、レポート課題で成果を報告してもらうこととする。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
後期
3rdQ
1週 ガイダンスと問題の枠組みの概説。「家屋」と「円環」、ジンメルに言及しつつ「橋と扉」のメタファーの講義。 「排除の構造」の概念とその適用の概要について理解できる
2週 枠組みの概説を続ける。定住農耕民の「光・昼・我々⇔闇・夜・他者」の世界観と「聖なるもの」概念を講じる R.オットーの議論とその背景について理解できる
3週 日本史を古代から辿る。三輪山の神と天皇、夜刀神の神話を講じるが、この際、網野義彦的な「無主無縁」モデルに言及する 前週までの議論を想起し、今週から提示される新しい話題(未開発の世界から「有主有縁」の世界の拡張)に適用することができる
4週 「森の放浪者」をテーマに、聖なる山林がだんだんに世俗権力に包摂されてゆく状況を講じる 平安・鎌倉と時代が下るにつれ、世俗の法的支配が津々浦々に展開していく状況を理解できる
5週 中世都市鎌倉を論題に、境界領域のあり様を論じる。また、鎌倉版の「夜刀神」神話を講じる 「我々」常民と、境界領域を介した「外部」との交渉がいかように理解され、行われていたかを理解する
6週 足利義教の比叡山対応を切り口に、「無主無縁」世界の終焉を論じる。最終段階として秩父事件を例示する 世俗権力が貫徹した状況(現代社会の状況)がいかなるものかを理解できる
7週 「異人」とそのイメージの豊饒さに目を向ける。放浪の異人としての商業従事者と「第三項排除」を講じる 第一週で提示した議論を、別の文脈に適用して理解することができる
8週 引き続き「ほかいびと」「まれびと」「山人譚」を講じる 柳田・折口の議論とその概要を、マージナル・マン概念を援用しながら理解できる
4thQ
9週 世俗化が貫徹し、逃亡する「山林」を失ったあとの世界の「排除」の暴力のあり様を講じる。 宗教的な救いが機能しなくなった我々の世界では排除の暴力は陰惨な姿を取りがちであることを理解する
10週 現代社会における社会秩序=差異の体系の維持のあり様について概説する 現代の我々のアイデンティティのあり様について、フロイト、ユング、フーコーなどを援用して理解できる
11週 「王と天皇」1:第3週の概説を踏まえつつ、天皇制の歴史を概説する 天皇制論は複雑多様で、個々の時代においてそれぞれ別個のあり方をしていたことを理解し、一面的な理解は不可能と理解できる
12週 「王と天皇」2:靖国神社の概略を提示し、昭和天皇の位置づけの推移を確認してゆく 明治憲法と戦後憲法とを対比し、その本質的な差異を確認しつつ、現行憲法の想定する価値観を理解できる
13週 「王と天皇」3:昭和は過ぎ、平成も代替わりした。現代の天皇は既に過去の天皇たちと異なる位置を占めてはいないか、考察する 最近の諸事項を取り上げて、その論点を指摘することができることが望ましい。情報収集し、過去の事例との対比ができること。
14週 定期試験 5年生は学年暦の関係上、定期試験がやや早い。暦の実際と教員の予定にもよるが、この位置に想定しておく
15週 定期試験返却と概説;現代の問題―ミャンマーの「国民統合」の問題1:近現代ミャンマーの状況を概説する 卒業後の任地として可能性が高まったミャンマーについての基礎情報を得て、諸課題を本講義との関連で理解することが出来る
16週 ミャンマーの「国民統合」の問題2:Rohingya危機と軍政の問題を概説する ミャンマーの現代的問題の所在を理解し、「国民」統合という課題の危うさを理解できる

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合602000200100
基礎的能力40100010060
専門的能力2050010035
分野横断的能力0500005