高度に技術が発達した現代社会で技術者として生きるにあたって必要とされる倫理的課題に関する知識を習得し,その責務を引き受けて公衆に対する責任を十全にはたそうとする意識を涵養する。
概要:
現代の技術者には,専門領域に関する能力のみならず,多面的な思考能力,技術(者)の倫理に関する理解,知識と理解を問題解決に応用する能力が求められている。多様な資料を通じて,このような事態に立ち至った歴史的背景を含めて技術者倫理の諸課題の理解を促進し,学生間のグループ討議を通じてコミュニケーション的な理性の必要性と有効性を理解する。
この科目は,教員のうち1名は,企業においてストレージ機器の開発を担当し,多くの技術者倫理に関する事例を経験しており,その経験を生かし,技術者倫理の基本知識,実例等について講義形式で授業を行うものである.
授業の進め方・方法:
「教科書・教材」に挙げた資料そのほかを前提に,笠松が近現代的生産様式における技術者・専門家の位置と責務や,生命倫理・環境倫理に関する概論を行い,以下白根・馬場・脇山が各々の専門的見地からチャレンジャー号事件・ココム事件等の具体的事例を題材にしつつ詳論する。講義の開始時に各教員の担当内容の概要・参考文献を提示するので、学生は事前学習として提示された論題について予習し、授業後の事後学習としては、講義内容と予習内容とを対比して検討すること。そうした成果は、次回以降に行われるグループ討論および討論内容の取りまとめ・発表する際に反映すること。
注意点:
配布資料は各教員の技術者倫理に関する熟慮の成果である。教育の専門技術者として,現に受益者たる諸君の利益に配慮して最良の努力を尽くしたつもりであるが,なお不足があろう。ところで学生諸君は,殊に技術者倫理の領域においては受益者=公衆の位置に立ち続けることはできない。近い将来において諸君は実地に技術者倫理を用いざるを得ない。それゆえ,配布資料や提示された参考書に留まらず,積極的に学習して相互に検討する態度を養成することが求められる。グループ討議の場ではこうした点に留意されたい。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
「技術者倫理とは何か」 |
技術者倫理概論を行う。こうした課題がなぜ必要とされるか,その理由を理解する。
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2週 |
20世紀の科学の歴史(1) |
科学技術・技術者の倫理が問われるようになったのは割合新しい現象であることを理解し,ハーバー等が直面した科学者の倫理問題のあり方を理解する。
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3週 |
20世紀の科学の歴史(2):「科学者とジレンマ―人道と正義」 |
現代は既に緊張は緩和され,嘗てのような極限の判断を求められる局面自体は減った。だが,本質的には同類のことが我々の身に起こることを理解する。
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4週 |
「組織の論理と技術者の倫理―チャレンジャー号爆発事件」 |
チャレンジャー号爆発事件は,技術者倫理の教科書が常に使うであろう基礎的な・古典的な論題である。極めて常識的に概説し,次いで自分たちに引き比べて理解を深める。
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5週 |
「生体濃縮―化学物質と技術」 |
武谷からはじめ,レイチェル・カーソンを押さえつつ,水俣病の事例に言及して現代の環境問題まで関説する。
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6週 |
科学者とその倫理 |
データには学問的に,理性的に,誠実に当らねばならない。最近の事例に触れつつ,まずは概論的な理解を得た上で,実際の心構えを涵養する。
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7週 |
「技術者の倫理―事例研究」ケーススタディ |
耐震強度構造計算書偽装事件等を通して、倫理的責任が理解でき、法的責任との区別ができる。
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8週 |
「技術とコンプライアンス」 |
東芝機械ココム違反事件のコンプライアンス・プログラムの倫理的意味を理解できる。
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2ndQ |
9週 |
「チャレンジャー号の爆発と技術者倫理」 |
スペースシャトル・チャレンジャー号事件を科学技術倫理の問題として把握できる。関連して「応答責任」「説明責任」「予防原則」が説明できる。
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10週 |
情報通信と技術者倫理(1) |
インターネットで頻発している情報セキュリティ事案と代表的な手口について理解する。事前学習として情報処理推進機構(IPA)が公開している「情報セキュリティ10大脅威 2021」を閲覧しておくこと。事後学習では講義で紹介したインシデント事例についてネット上の資料等で再確認すること。
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11週 |
情報通信と技術者倫理(2) |
情報セキュリティに関連する法律とその概要を把握できる。事前学習として「通信の秘密」について予習しておくこと。事後学習では「違法性阻却」についてネット上の資料等で再確認すること。
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12週 |
情報通信と技術者倫理(3) |
情報通信における「秘密の保護」の問題について、情報セキュリティの現状や関連する法律から考察することができる。事前学習として「漫画村問題」とはなにか調べておくこと。事後学習として全3回の講義全体の振り返りを行うこと。
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13週 |
研究・開発の視点から(1) |
社会に出て研究・開発に携わる際に直面する様々なグレーゾーンの事象について、バイオテクノロジーの実例を基に考える。
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14週 |
研究・開発の視点から(2) |
社会に出て研究・開発に携わる際に直面する様々なグレーゾーンの事象について、ナノテクノロジーの実例を基に考える。
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15週 |
研究・開発の視点から(3) |
社会に出て研究・開発に携わる際に直面する様々なグレーゾーンの事象について、研究者が陥りやすい不正とされかねない実例を基に考える。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 工学基礎 | 技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 技術者倫理(知的財産、法令順守、持続可能性を含む)および技術史 | 説明責任、製造物責任、リスクマネジメントなど、技術者の行動に関する基本的な責任事項を説明できる。 | 3 | 前13,前14 |
現代社会の具体的な諸問題を題材に、自ら専門とする工学分野に関連させ、技術者倫理観に基づいて、取るべきふさわしい行動を説明できる。 | 3 | 前1,前6,前10,前11,前12,前13,前14,前15 |
技術者倫理が必要とされる社会的背景や重要性を認識している。 | 3 | 前1,前6,前10,前11,前12,前13,前14 |
社会における技術者の役割と責任を説明できる。 | 3 | 前1,前6,前10,前11,前12,前13,前14 |
情報技術の進展が社会に及ぼす影響、個人情報保護法、著作権などの法律について説明できる。 | 3 | 前10,前11,前12 |
高度情報通信ネットワーク社会の中核にある情報通信技術と倫理との関わりを説明できる。 | 3 | 前10,前11,前12 |
環境問題の現状についての基本的な事項について把握し、科学技術が地球環境や社会に及ぼす影響を説明できる。 | 3 | 前5,前14 |
環境問題を考慮して、技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。 | 3 | 前5,前14 |
国際社会における技術者としてふさわしい行動とは何かを説明できる。 | 3 | 前13,前15 |
過疎化、少子化など地方が抱える問題について認識し、地域社会に貢献するために科学技術が果たせる役割について説明できる。 | 3 | 前13 |
技術者の社会的責任、社会規範や法令を守ること、企業内の法令順守(コンプライアンス)の重要性について説明できる。 | 3 | 前10,前11,前12 |
技術者を目指す者として、諸外国の文化・慣習などを尊重し、それぞれの国や地域に適用される関係法令を守ることの重要性を把握している。 | 3 | 前13 |
全ての人々が将来にわたって安心して暮らせる持続可能な開発を実現するために、自らの専門分野から配慮すべきことが何かを説明できる。 | 3 | 前1,前2,前4,前5,前14 |
技術者を目指す者として、平和の構築、異文化理解の推進、自然資源の維持、災害の防止などの課題に力を合わせて取り組んでいくことの重要性を認識している。 | 3 | 前1,前2,前4,前5,前13 |
科学技術が社会に与えてきた影響をもとに、技術者の役割や責任を説明できる。 | 3 | 前2,前3,前13,前14,前15 |
科学者や技術者が、様々な困難を克服しながら技術の発展に寄与した姿を通し、技術者の使命・重要性について説明できる。 | 3 | 前2,前3,前15 |