到達目標
『大人のための社会科』の精読を通じて批判的な読書のありようを学ぶ。本書によって現代社会の諸問題に触れ、その理解に必要な現代史・思想史の知見を深め、さらに進んで調査・検討の仕方を実践により学んで各自の思想的立脚点の形成に資する。
ルーブリック
| 理想的な到達レベルの目安 | 標準的な到達レベルの目安 | 未到達レベルの目安 |
基礎的概念の定着 | 言及する思想史上の重要人物・概念について9割程度が定着 | 言及する思想史上の重要人物・概念について7~8割程度が定着 | 言及する思想史上の重要人物・概念の定着が6割に満たない |
専門的概念の定着 | 言及する思想史上の諸概念を、その定義に応じて運用できる | 言及する思想史上の諸概念の7~8割程度について、定義の別・適用範囲を理解できる | 諸概念の適用範囲の適正な理解が6割に満たない |
調査検討 | 提示された課題について必要十分な調査検討ができる | 提示された課題について調査検討をこなせる | 提示された課題についての調査検討ができない |
学科の到達目標項目との関係
JABEE (D) 社会的要請を考えて研究・開発する能力
教育方法等
概要:
主に井出・宇野・坂井・松沢『大人のための社会科』の精読を通じて、1) 本書の読解に必要な現代史・世界史・思想史の基礎事項を確認し、2) 現代の政治的・経済的・社会的諸課題の所在を確認し、さらに3) 公正な社会の実現に向けた取り組みについて理解する。
授業の進め方・方法:
教科書を精読し、諸種の用語について解説を加え、思想史的背景の説明を行う。また、教科書が意図するだろう限りで現代的問題の分析・考察をも行う。
教科書は「敷居」を下げるために専門用語等々を可能な限り絞っている。しかしこれでは前提条件を共有しない者には理解しがたい点がでてくる。補うために追加資料を用意するので、受講者は事前学習として教科書に加えて追加資料を読み、諸種辞典を参照して講義内容を把握し、また事後学習としては教員が講義中に提示した内容を踏まえて考察するように。
成績評価は1. 期末試験(60%)、2. 発表(20%)及び発表に係る3. 資料作成(20%)に基づく。この2-3については、教科書および講義内容を踏まえた、独自性が認められるような内容であることが望ましい。
注意点:
著者たちの問題意識から、本書は現代的諸問題に主たる焦点があっているように見えるが、そうした知的営為が可能な背後には高校~大学1-2年度程度の概論的知識が存する。受講者は、安易な”解答”に一足飛びに飛びつくことを厳に戒め、多様な価値評価基準を学び、それらを用いて自己の思想的立場を批判し、練り上げる知的態度を養うこと。
授業の属性・履修上の区分
授業計画
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
ガイダンスおよび序説;GDP-「社会のよさ」とは何か
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本講義全体の意図・問題意識の説明、成績評価方法とレポート課題の方法を周知する。また、GDPなどの経済指標の概念を理解し、それらによって測られる「良さ」の内容と限界を理解する。
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2週 |
勤労―自己責任社会;時代区分―時代を分けること、捉えること |
その良さが自明と思われがちな「勤労」概念を歴史的に整理し、その性質と限界、社会に適用した場合の副作用を理解する。また、これまで自明のもとして扱ってきただろう時代区分の区分原理を理解し、現代の分析に応用できること。
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3週 |
多数決と運動:「自己決定」と異議申し立て、およびそれらの正統性について |
「多数決」の多様な在り方を学び、我々の普段の政治的意思決定の有り様と限界とを認識する。そうした制度の下「私たち」が成立するわけだが、これに漏れたり、過去の決定に盛り切れなかった課題を提起する運動とそれらの正統性の確保の問題点について理解する
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4週 |
公正―等しく取り扱われること;信頼ー社会を支えるベースライン |
以下の諸項目では社会を支える原理について学ぶ。そのうち「公正」について、いわゆる正義論的な視座を理解できること。正義のひとにはさらに友愛が必要である。人間相互の信頼は貴重な社会的資源であることを理解すること。
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5週 |
週 税とニーズ―共通の利益の実現のために;歴史認識ー過去をひらき未来に繋ぐ |
あるべき「助け合い」の諸条件、評価軸について学び、その複雑性・相互背反について理解できること。また、共同の社会を構築するにあたって、基礎的な認識は一定程度共有される必要がある。アーカイヴスの重要性について理解すること。
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6週 |
公共性と財政;希望ー「まだーない」ものの力 |
公共を実現するための前提条件、財政についての概括的理解ができること。ここまでの議論は基本的には現実の社会を認識して沈鬱になるようなものだが、希望・幸福を語る原理について講義し、共有したい。
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7週 |
演習1 |
上掲の諸題目から学生の希望をとり、幾つかを選んで発展的内容を講義し、理解をふかめる。
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8週 |
定期試験および定期試験講評;演習2 |
定期試験によって基礎的事項および専門知識の定着の確認を行う。また、上掲の諸題目から学生の希望をとり、1~2を選んで発展的内容を講義し、理解をふかめる。
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モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標
分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
評価割合
| 試験 | 発表 | ポートフォリオ | 合計 |
総合評価割合 | 60 | 20 | 20 | 100 |
基礎的能力 | 40 | 10 | 10 | 60 |
専門的能力 | 20 | 0 | 0 | 20 |
分野横断的能力 | 0 | 10 | 10 | 20 |