材料組織学Ⅱ

科目基礎情報

学校 仙台高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 材料組織学Ⅱ
科目番号 0019 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 1
開設学科 マテリアル環境コース 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 書名:金属材料組織学、著者:松原英一郎、田中功、大谷博司、安田秀幸、沼倉宏、古原忠、辻伸泰 発行所:朝倉書店
担当教員 武田 光博

到達目標

材料組織領域では、材料組織の基礎となる原子の幾何学的な配列状態や平衡状態図の見方、変形や熱処理における組織変化を学習することを目標とする。
・ 金属材料の結晶構造とその表示法を理解し説明できる。
・ 平衡状態図を用いてミクロ組織変化を説明できる。
・ 金属材料の性質とミクロ組織を関連付けて説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
自由エネルギー曲線と状態図の関係を説明できる。相変態の自由エネルギーの変化を用いて説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員の助言があれば相変態の自由エネルギーの変化を用いて説明できる。関連する問題を解くことができる。相変態の自由エネルギーの変化を用いて説明できない。
金属の凝固過程の説明ができる凝固の特徴、液相中に出現する固相の臨界半径と自由エネルギーの関係、固相が出現しやすい場所、拡散現象等を説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員の助言があれば凝固の特徴、液相中に出現する固相の臨界半径と自由エネルギーの関係、固相が出現しやすい場所等を説明できる。関連する問題を解くことができる。金属が液相から固相に変化すること以外説明ができない
金属における拡散変態が説明できる固相中の拡散機構、時効、拡散や相変態のための駆動力等を自由エネルギー変化から定性的に説明ができる。過飽和固溶体からの析出現象が説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員の助言があれば固相中の拡散機構、時効、拡散や相変態のための駆動力等を自由エネルギー変化から定性的に説明ができ、過飽和固溶体からの析出現象も説明できる。関連する問題を解くことができる。固体中においても原子が拡散することが理解できない
金属における無拡散変態が説明できるマルテンサイト変態の相変態時、結晶学的特徴、駆動力が説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員の助言があればマルテンサイト変態の相変態時、結晶学的特徴、駆動力が説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員が助言しても無拡散変態の特徴を説明することが困難である
加工組織に関連する現象(回復と再結晶・粒成長)を説明できる。回復機構および回復に伴う諸特性の変化、1次再結晶過程ならびに再結晶温度に影響を与える因子、再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員の助言があれば回復機構および回復に伴う諸特性の変化、1次再結晶過程ならびに再結晶温度に影響を与える因子、再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。関連する問題を解くことができる。指導教員が助言しても回復機構および回復に伴う諸特性の変化、1次再結晶過程ならびに再結晶温度に影響を与える因子、再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
材料組織学Iに続く科目である。材料開発で有用な平衡状態図の見方、材料組織と機械的性質などの関係を学ぶ。
材料組織の基本的な形態とその成因を理解し、材料の機械的性質と組織の関連性について学ぶ。
授業の進め方・方法:
材料の製品化やその際の組織制御と関連する析出現象、加工と再結晶、マルテンサイト変態などについて講義する。
予習:教科書の授業内容に関わる内容を確認する。
復習:授業内容をA4用紙1枚にまとめて次回授業時に提出する。
注意点:
3学年までに学習した基礎材料学、材料組織学Ⅰ、化学、物理、数学などの基礎科目を理解していること。本科目はマテリアル環境工学実験、構成材料等にも深く関連する科目であることを留意して授業に臨むこと。
試験による評価は期末試験のみとする。
再試験を行う場合があるが、再試験を実施する場合の実施回数は原則1回とする。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンス、材料組織学Iの復習 3学年開講科目の復習を行う。共晶反応、包晶反応などの基本状態図が説明できる。
結晶構造に関連する演習問題が解ける。
2週 格子欠陥 点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。
面欠陥である積層欠陥について説明できる。
格子欠陥に関連する演習問題が解ける。
3週 相平衡と自由エネルギー(1) 相変態を自由エネルギーの変化を用いて説明できる。
4週 相平衡と自由エネルギー(2) 正則容体の自由エネルギー曲線と状態図の関係を説明できる。
相平衡と自由エネルギーに関連する演習問題が解ける。
5週 凝固(1) 凝固の特徴を説明できる。
液相中に出現する固相の臨界半径と自由エネルギー変化の関係を説明できる。
6週 凝固(2) 不均一核生成において核生成サイトを説明できる。
固液界面の形態を説明できる。
凝固に関連する演習問題が解ける。
7週 拡散 拡散係数の物理的意味を説明できる。
活性化エネルギーの物理的意味を理解し、拡散係数と温度の関係を説明できる。
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。
拡散に関連する演習問題が解ける。
8週 中間試験
2ndQ
9週 中間試験解説
拡散変態と析出(1)
拡散変態の種類を説明できる。
過飽和固溶体からの析出現象を説明できる。
臨界核形成と活性化エネルギーを説明できる。
10週 拡散変態と析出(2) 異相界面の種類を説明できる。
温度と核生成速度との関係を説明できる。
11週 拡散変態と析出(3) 析出過程での状態変化や特徴を説明できる。
析出強化理論を説明できる。
拡散変態に関連する演習問題が解ける。
12週 マルテンサイト変態(1) マルテンサイト変態の相変態時および結晶学的特徴について説明できる。
13週 マルテンサイト変態(2) マルテンサイト変態の駆動力が説明できる。
形状記憶効果について説明できる。
無拡散変態に関連する演習問題が解ける。
14週 回復と再結晶・粒成長(1) 加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。
15週 回復と再結晶・粒成長(1) 回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。
1次再結晶過程ならびに再結晶温度に影響を与える因子を説明できる。
硬さ、電気抵抗、熱量等の変化から再結晶温度を求めること
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。
回復と再結晶・粒成長に関連する演習問題が解ける。
16週 振り返り

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学材料系分野材料組織点欠陥である空孔、格子間原子、置換原子などを区別して説明できる。4
線欠陥である刃状転位とらせん転位を理解し、変形機構と関連して説明できる。4
面欠陥である積層欠陥について説明できる。4
物質系の平衡状態について、安定状態、準安定状態、不安定状態を説明できる。4
ギブスの相律から自由度を求めて系の自由度を説明できる。4
純金属の凝固過程での過冷却状態、核生成、結晶粒成長の各段階について説明できる。4
2元系平衡状態図上で、てこの原理を用いて、各相の割合を計算できる。4
全率固溶体型の状態図を、自由エネルギー曲線と関連させて説明できる。4
共晶型反応の状態図を用いて、一般的な共晶組織の形成過程について説明できる。4
包晶型反応の状態図を用いて、一般的な包晶組織の形成過程について説明できる。4
塑性変形におけるすべり変形と双晶変形の特徴について説明できる。4
刃状転位とらせん転位ならびに塑性変形における転位の働きを説明できる。4
加工硬化、固溶硬化、析出硬化、分散硬化の原理を説明できる。4
格子間原子型および原子空孔型の拡散機構を説明できる。4
拡散係数の物理的意味を説明できる。4
回復機構および回復に伴う諸特性の変化を説明できる。4
再結晶粒の核生成機構および優先核生成場所を説明できる。4
再結晶粒の成長機構を説明できる。4
自由エネルギーの変化を利用して、相変態について説明できる。4
共析変態で生じる組織を描き、相変態過程を説明できる。4
マルテンサイト変態について結晶学的観点からの相変態の特徴を説明できる。4

評価割合

試験合計
総合評価割合100100
専門的能力100100