熱力学の普遍性を理解し,応用できる。エントロピー・自由エネルギーといった熱力学の状態量を理解し説明ができる。熱から仕事を取り出すことにおける限界と効率を説明できる。理想気体について熱力学的な諸量を計算できる。
概要:
典型的な熱力学のストーリーは,「熱から仕事を得る」という工学的な動機から出発して,その効率の限界を考察することで熱現象の本質に迫る。そこから発生する「エントロピー」や「自由エネルギー」といった概念は,熱機関だけでなくあらゆる系に対して適用できる極めて普遍的な性質を持つ。この授業ではなるべく急がずに,熱力学の本質を理解することを目指し,演習を多く取り入れて,問題を解く力も身につける。
授業の進め方・方法:
注意点:
熱力学は難しい学問である。その理由はこの学問があらゆる系に対して適用できる普遍的を持つ反面,その体系が抽象的であるからであると担当者は理解している。そのため,何度も繰り返して元に戻りつつ考える姿勢,疑問点を自身の中で明確化して言語化し,質問ができる姿勢が求められる。微分・積分に加えて偏微分の概念をよく理解している必要がある。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
熱力学とはなにか |
熱力学の目的,熱力学が扱う対象,他の学問分野との関係を理解する
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2週 |
状態量と熱力学,熱と仕事の関係 |
温度の定義を理解する,熱と仕事の関係を理解する。熱と仕事は状態量ではないことを説明できる。
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3週 |
内部エネルギーと熱力学第一法則
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エネルギー保存則を微分系で表現する考え方を理解する。過程における,熱・仕事・内部エネルギーの変化の関係を理解する。
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4週 |
堆積膨張率と圧縮率 |
熱力学に特有な,3つの変数が関係する2変数関数の微分の扱いに,演習を通して慣れる。
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5週 |
第一法則の応用,理想気体の熱力学的性質 |
定積熱容量と定圧熱容量の関係を理解する。理想気体の内部エネルギーや熱容量の性質を理解する。
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6週 |
理想気体の断熱変化 |
ポアソンの関係式の導出を理解する。
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7週 |
カルノーサイクル |
ピストン内の機体の操作を説明し,二つの熱源から仕事を取り出す手続きを理解する。
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8週 |
理想気体のカルノーサイクルと,逆カルノーサイクル |
理想気体のカルノーサイクルの効率が温度の比で与えられることを理解する。逆カルノーサイクルの働きを説明できる。
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2ndQ |
9週 |
カルノーの第一定理 |
カルノーサイクルの効率が作業物質に依存せず,普遍的であることを理解する。
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10週 |
現実的なサイクル |
オットーサイクル,スターリングサイクルの効率を考える。
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11週 |
クラウジウスの関係式 |
クラウジウスの関係式を理解する。
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12週 |
不可逆なカルノーサイクルと,カルノーの第二定理 |
不可逆なサイクルの効率は,可逆なサイクルよりも低いことを理解する。
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13週 |
エントロピーの増大則 |
断熱系において,不可逆過程では系のエントロピーが必ず増大することを理解する。
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14週 |
ヘルムホルツの自由エネルギー |
ヘルムホルツの自由エネルギーを定義し,その意味を説明できる。
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15週 |
エネルギーの方程式 |
エネルギーの方程式を応用して計算ができる
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16週 |
期末試験 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
専門的能力 | 分野別の専門工学 | 機械系分野 | 熱流体 | 熱力学で用いられる各種物理量の定義と単位を説明できる。 | 3 | |
閉じた系と開いた系、系の平衡、状態量などの意味を説明できる。 | 3 | |
熱力学の第一法則を説明できる。 | 3 | |
閉じた系と開いた系について、エネルギー式を用いて、熱、仕事、内部エネルギー、エンタルピーを計算できる。 | 3 | |
閉じた系および開いた系が外界にする仕事をp-V線図で説明できる。 | 3 | |
理想気体の圧力、体積、温度の関係を、状態方程式を用いて説明できる。 | 3 | |
定積比熱、定圧比熱、比熱比および気体定数の相互関係を説明できる。 | 3 | |
内部エネルギーやエンタルピーの変化量と温度の関係を説明できる。 | 3 | |
等圧変化、等積変化、等温変化、断熱変化、ポリトロープ変化の意味を理解し、状態量、熱、仕事を計算できる。 | 3 | |
熱力学の第二法則を説明できる。 | 3 | |
サイクルの意味を理解し、熱機関の熱効率を計算できる。 | 3 | |
カルノーサイクルの状態変化を理解し、熱効率を計算できる。 | 3 | |
エントロピーの定義を理解し、可逆変化および不可逆変化におけるエントロピーの変化を説明できる。 | 3 | |
サイクルをT-s線図で表現できる。 | 3 | |
材料系分野 | 材料物性 | 陽子・中性子・電子からなる原子の構造について説明できる。 | 3 | |
ボーアの水素原子模型を用いて、エネルギー準位を説明できる。 | 3 | |
4つの量子数を用いて量子状態を記述して、電子殻や占有する電子数などを説明できる。 | 3 | |
周期表の元素配列に対して、電子配置や各族および周期毎の物性の特徴を関連付けられる。 | 3 | |
結晶系の種類、14種のブラベー格子について説明できる。 | 3 | |
ミラー指数を用いて格子方位と格子面を記述できる。 | 3 | |
代表的な結晶構造の原子配置を描き、充填率の計算ができる。 | 3 | |
X線回折法を用いて結晶構造の解析に応用することができる。 | 3 | |
電子が持つ粒子性と波動性について、現象を例に挙げ、式を用いて説明できる。 | 3 | |
量子力学的観点から電気伝導などの現象を説明できる。 | 3 | |
不純物半導体のエネルギーバンドと不純物準位を描き、伝導機構について説明できる。 | 3 | |
真性半導体の伝導機構について説明できる。 | 3 | |
物理化学 | 熱力学第一法則と内部エネルギーの概念を説明できる。 | 3 | |
内部エネルギー、熱、仕事の符号の規則を説明でき、膨張の仕事を計算できる。 | 3 | |
エンタルピーの定義およびエンタルピーが状態量であることを説明できる。 | 3 | |
断熱変化に伴う温度変化を計算できる。 | 3 | |
標準生成エンタルピーの物理的意味を理解し、反応エンタルピーを計算できる。 | 3 | |
定圧熱容量と定容熱容量の関係式が導出できる。 | 3 | |
エントロピーの定義を理解し、不可逆過程におけるエントロピー生成について説明できる。 | 3 | |
ヘルムホルツエネルギーとギブズエネルギーの定義および自発的変化の方向性との関連について説明できる。 | 3 | |
標準モルギブズエネルギーの定義に基づいて標準反応ギブズエネルギーを計算できる。 | 3 | |
内部エネルギーと巨視的熱力学量の関係を導出できる。 | 3 | |
純物質の化学ポテンシャルの定義と物理的意味を理解し、理想気体の化学ポテンシャルを計算できる。 | 3 | |