基礎物理化学

科目基礎情報

学校 秋田工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 基礎物理化学
科目番号 0015 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 ボール物理化学第2版 上・下 DAVID W. BALL著 化学同人/(参考書)アトキンス 物理化学要論(第6版) Peter Atkins ・ Julio de Paula 著 東京化学同人
担当教員 丸山 耕一

到達目標

1. 気体分子の運動と気体の様々な性質を関連づけることができる。
2. エネルギー保存則を力学系から熱力学系へ拡張して理解できる。
3. 様々な物理変化や化学変化のエンタルピーを理解し、未知の反応のそれを計算できる。
4. エントロピーと熱力学法則の概念を理解できる。
5. 基本的な反応速度論の概念を理解し、パソコンソフト等を活用して、速度定数等を計算できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1気体の様々な性質を気体の分子運動と絡めてイメージできる。気体の性質を理論体系や経験則から計算することができる。気体の性質を理論体系や経験則から計算することができない。
評価項目2熱力学系における、最大仕事の原理と平衡状態を議論できる。熱力学の第一法則を用いて、内部エネルギー、熱の移動量、仕事を計算できる。熱力学の第一法則を用いて、内部エネルギー、熱の移動量、仕事を計算できない。
評価項目3所期の化学反応を実現するための熱化学的な考察ができる。ヘスの法則を用いて未知の化学反応のエンタルピー変化を計算できる。ヘスの法則を用いて未知の化学反応のエンタルピー変化を計算できない。
評価項目4エントロピーによって、反応の自発性、可逆性等を議論できる。化学変化のエントロピー変化を計算できる。化学変化のエントロピー変化を計算できない。
評価項目5分光学などの実験により化学反応の速度式を見出すイメージができる。素反応の速度式をたて、中間反応物の定常状態近似などの概念を用いて速度定数を計算できる。素反応の速度式をたて、中間反応物の定常状態近似などの概念を用いて速度定数を計算できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 物質の熱力学的な平衡状態およびこれに至る過程・速度を理解する。このために、状態量を用いて気体の平衡状態を概観してから、物質の物理変化と化学変化に伴う熱力学的なエネルギー保存則およびエンタルピー変化から物質の微視的な状態を知らずに平衡状態を予測する、さらにはエントロピー変化から反応の自発性、可逆・不可逆性を知るという化学熱力学の初歩を学ぶ。さらに、平衡状態へ至るまでの反応速度、活性化エネルギー、拡散律速などの概念により、平衡状態へ至る過程を知る。これらは、物質の性質理解と合成技術の基盤となる専門的概念である。
授業の進め方・方法:
講義形式で行う。表計算ソフトを用いた解析を演習することがある。概念理解のための演習問題のレポート提出を求める。試験結果の平均点が合格点に達しない場合、再試験を行うことがある。
注意点:
到達度試験の結果を80%,レポート(欠課措置を含む)を20%の比率で評価する。
総合評価 =(到達度試験(前期中間)評価点+到達度試験(前期末)評価点+到達度試験(後期中間)評価点+到達度試験(後期末)評価点)/4 合格点は50点である。
(授業を受ける前)学習内容に関連する、基礎的な物理学概念(エネルギー、仕事等)および微分・積分の数学の知識を復習していることが望ましい。
(授業を受けた後)授業をとおして、上記内容の理解する。物質の巨視的な状態量と電子のエネルギー量子を考えることで、物質の性質と変化を議論するという方法論を身に着け、化学熱力学、固体化学、反応工学等の各々の学修内容に有機的に接続できるように意識することを望む。このためには、教科書の例題等の演習問題を有効に活用する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 授業ガイダンス・物理化学の領域 授業の進め方と評価の仕方について説明する。物理化学の学問領域と技術への接続を導入する。
2週 気体と熱力学第零法則(1)あらまし 気体の法則から自然を理解するために定量化が重要であることを理解できる。
3週 気体と熱力学第零法則(2)系、外界と状態、(3)熱力学第零法則 系と外界と状態を定義し、熱平衡という概念を説明できる。
4週 気体と熱力学第零法則(4)状態方程式 現象論的な熱力学は経験則からなる体系であることを説明できる。
5週 気体と熱力学第零法則(5)偏導関数と気体の法則 ある状態変数の、ほかの状態変数の変化による影響を説明できる。
6週 気体と熱力学第零法則(6)非理想気体 理想気体との相違から、非理想気体の状態を定量化できる。
7週 気体と熱力学第零法則(7)分子レベルでの熱力学 熱力学が分子論によって受けた影響を説明できる。
8週 到達度試験(前期中間) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
2ndQ
9週 試験の解説と解答、熱力学第一法則(1)仕事と熱 到達度試験の解説と解答、熱力学系の仕事について説明できる。
10週 熱力学第一法則(2)内部エネルギーと状態関数 熱力学の第一法則と状態関数の性質を合わせて説明できる。
11週 熱力学第一法則(3)エンタルピーと熱容量 エンタルピーという概念の有効性を説明できる。
12週 熱力学第一法則(4)相変化とエンタルピー 相変化におけるエンタルピーを計算できる。
13週 熱力学第一法則(5)化学変化とエンタルピー 化学変化におけるエンタルピーを計算できる。
14週 熱力学第一法則(6)圧力一定の化学変化 ヘスの法則を用いてエンタルピーを計算できる。
15週 到達度試験(前期末) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
16週 試験の解説と解答、授業アンケート 到達度試験の解説と解答、本授業のまとめ、および授業アンケート
後期
3rdQ
1週 熱力学第二法則と第三法則(1)熱力学第一法則の限界 第一法則からは反応の自発性を議論できないことが説明できる。
2週 熱力学第二法則と第三法則(2)カルノーサイクルと熱効率 カルノーによる熱機関の各段階の定義と熱効率を説明できる。
3週 熱力学第二法則と第三法則(3)エントロピーと熱力学第二法則 等温過程における可逆過程、不可逆過程、自発過程をエントロピーによって表現できる。
4週 熱力学第二法則と第三法則(3)エントロピーと熱力学第二法則 等温過程でない場合、断熱過程をエントロピーによって表現できる。
5週 熱力学第二法則と第三法則(4)系の秩序と熱力学第三法則 系の秩序(状態数)とエントロピーの関係を説明できる。
6週 熱力学第二法則と第三法則(5)化学反応のエントロピー 種々の化学変化におけるエントロピー変化を計算できる。
7週 反応速度論(1)反応速度と速度式 反応がどのように進むかを定量的に表現できる。
8週 到達度試験(後期中間) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
4thQ
9週 反応速度論(2)初速度式 濃度変化から簡単な速度式を導ける。複雑な速度式の単純化を行える。
10週 反応速度論(3)平衡反応、並発反応、逐次反応 平衡反応等の速度式を理解できる。
11週 反応速度論(4)反応の温度依存性 反応の温度変化から熱力学と速度論の関係を説明できる。
12週 反応速度論(5)反応機構と素過程 気相反応の反応機構を素過程から説明できる。
13週 反応速度論(6)定常状態近似 定常状態近似の原理を理解し、酵素反応に適用できる。
14週 反応速度論(7)遷移状態理論 理論的な速度論の基礎を説明できる。
15週 到達度試験(後期末) 上記項目について学習した内容の理解度を確認する。
16週 試験の解説と解答、授業アンケート 到達度試験の解説と解答、本授業のまとめ、および授業アンケート

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週

評価割合

到達度試験レポート合計
総合評価割合8020100
知識の基本的な理解501060
思考・推論・創造への適用力10010
汎用的技能20020
総合的な学習経験と創造的思考力01010