物理学特論

科目基礎情報

学校 鶴岡工業高等専門学校 開講年度 平成29年度 (2017年度)
授業科目 物理学特論
科目番号 0032 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 専攻科一般科目・共通専門科目 対象学年 1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 量子力学・統計力学入門 星野公三・岩松雅夫(裳華房)、基礎物理学選書2 量子論 小出昭一郎(裳華房)
担当教員 吉木 宏之

到達目標

半導体、固体発光素子(LED)、レーザー等の動作原理を理解する上で必要な量子力学、統計力学の基礎概念や基本法則を定性的かつ定量的に理解して、電子デバイス等の研究・開発で活用できる能力を養う。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1量子論、統計力学の基本原理や公式を用いてミクロな現象を論理的に考察および推論できる。量子論、統計力学の基本原理や公式を用いて簡単な現象を説明できる。量子論、統計力学の基本原理を系統的に説明することができない。
評価項目2量子力学の方程式に基づきミクロな力学系の諸物理量を定量的に求めることができる。量子力学の方程式に基づきミクロな力学系の物理現象を定性的に説明できる。量子力学の基本原理を系統的に説明することができない。
評価項目3統計力学の基本公式に基づきミクロな力学系の諸物理量を定量的に求めることができる。統計力学の基本公式に基づきミクロな力学系の諸現象を定性的に説明することができる。統計力学の基本原理を系統的に説明することができない。

学科の到達目標項目との関係

(C) 数学,自然科学の基礎学力と実験・実習による実践力を身につける。 C-1 説明 閉じる

教育方法等

概要:
前半に量子力学の基礎的概念とシュレーディンガー方程式および波動関数について理解し、井戸型ポテンシャルや水素原子内の電子のエネルギー状態、トンネル効果、その他のミクロ現象を学ぶ。後半では統計力学の基礎と、固体の比熱や磁性現象への応用について学ぶ。定性的理解に留まらず、簡単な物理モデルの数理解析が出来ることを目標とする。
授業の進め方・方法:
授業形態は講義・問題演習を主体とするが、最新の物理現象に関するDVD教材やCBT活用した演習も取り入れる。
注意点:
量子力学のシュレーディンガー方程式の理解と、その数値解を求めることができる様になることが必須うである。また、ミクロな多体系の統計的手法ではボルツマン分布則を理解する事が求められる。
【評価方法・基準】
授業中に行なう確認試験20%、期末試験40%、課題レポート30%、授業への取り組み姿勢10%で達成度を総合評価する。総合評価60点以上を合格とする。
試験問題は各達成目標に即した内容で、問題のレベルは教科書の問題および授業中に配布する演習問題程度のものを出題する。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 熱輻射とプランクの量子仮説 プランクの熱放射の公式を説明できる。光子のエネルギーを求めることができる。
2週 光子や電子の粒子性・波動性とボーアの水素原子模型 光量子仮説、コンプトン効果、X線回折や電子線回折を定量的に説明できる。また、水素原子のエネルギー準位を導出できる。
3週 シュレーディンガーの波動方程式 シュレーディンガーの波動方程式、波動関数の意味を理解して説明することができる。
4週 無限井戸型ポテンシャル内の粒子 1次元および3次元系の粒子のエネルギー準位と存在確率分布を求めることができる。
5週 有限井戸型ポテンシャル内の粒子 有限のポテンシャル内の粒子の存在確率分布や、トンネル効果について説明できる。
6週 量子力学の具体例 ベンゼン等の有機分子の分光スペクトルや江崎ダイオードのV-I特性を説明できる。
7週 水素原子の構造 シュレーディンガー方程式から得られる水素原子のエネルギー準位や電子軌道を定性的に説明できる。
8週 スピンと元素の周期律 電子スピンの物理的意味を説明できる。また、パウリの排他律と多電子原子の構造を説明できる。
2ndQ
9週 分子や固体の構造 水素分子の共有結合、金属・半導体・絶縁体のバンド構造を定性的に説明できる。
10週 熱力学と気体分子運動論 気体の状態方程式を原子・分子の運動論から説明できる。
11週 分配関数と自由エネルギー エルゴード定理と等重率の原理、ボルツマン因子と分配関数の概念を理解し、多自由度系の自由エネルギーを記述できる。
12週 2準位系の統計力学 2準位多体系のエネルギー、熱容量を分配関数から計算できる。また、負の温度とレーザーの原理について説明できる。
13週 磁性体の統計力学 強磁性体の相転移をIsing模型を用いて定性的に説明できる。
14週 フェルミ統計と半導体 電子の集団に適用されるFermi-Dirac統計について理解し、金属のFermi準位やn型・p型半導体の構造を説明できる。
15週 到達度確認問題演習 1次元粒子系のシュレーディンガー方程式の解法や、2準位多体系の物理量の導出に関する問題を解くことが出来る。
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力自然科学物理力学速度と加速度の概念を説明できる。4
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。4
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。4
平面内を移動する質点の運動を位置ベクトルの変化として扱うことができる。4
物体の変位、速度、加速度を微分・積分を用いて相互に計算することができる。5
自由落下、及び鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。5
鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。5
水平投射、及び斜方投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。5
物体に作用する力を図示することができる。5
力の合成と分解をすることができる。5
重力、抗力、張力、圧力について説明できる。5
フックの法則を用いて、弾性力の大きさを求めることができる。5
慣性の法則について説明できる。4
作用と反作用の関係について、具体例を挙げて説明できる。4
運動方程式を用いた計算ができる。4
簡単な運動について微分方程式の形で運動方程式を立て、初期値問題として解くことができる。5
静止摩擦力がはたらいている場合の力のつりあいについて説明できる。4
最大摩擦力に関する計算ができる。4
動摩擦力に関する計算ができる。4
仕事と仕事率に関する計算ができる。5
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。5
重力による位置エネルギーに関する計算ができる。5
弾性力による位置エネルギーに関する計算ができる。5
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。5
物体の質量と速度から運動量を求めることができる。4
運動量の差が力積に等しいことを利用して、様々な物理量の計算ができる。4
運動量保存則を様々な物理量の計算に利用できる。4
周期、振動数など単振動を特徴づける諸量を求めることができる。4
単振動における変位、速度、加速度、力の関係を説明できる。4
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。4
万有引力の法則から物体間にはたらく万有引力を求めることができる.4
万有引力による位置エネルギーに関する計算ができる。4
力のモーメントを求めることができる。4
角運動量を求めることができる。4
角運動量保存則について具体的な例を挙げて説明できる。4
剛体における力のつり合いに関する計算ができる。4
重心に関する計算ができる。4
一様な棒などの簡単な形状に対する慣性モーメントを求めることができる。4
剛体の回転運動について、回転の運動方程式を立てて解くことができる。4
原子や分子の熱運動と絶対温度との関連について説明できる。5
時間の推移とともに、熱の移動によって熱平衡状態に達することを説明できる。5
物体の熱容量と比熱を用いた計算ができる。5
熱量の保存則を表す式を立て、熱容量や比熱を求めることができる。4
動摩擦力がする仕事は、一般に熱となることを説明できる。5
ボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を用いて、気体の圧力、温度、体積に関する計算ができる。5
気体の内部エネルギーについて説明できる。5
熱力学第一法則と定積変化・定圧変化・等温変化・断熱変化について説明できる。5
エネルギーには多くの形態があり互いに変換できることを具体例を挙げて説明できる。4
不可逆変化について理解し、具体例を挙げることができる。4
熱機関の熱効率に関する計算ができる。4
波動波の振幅、波長、周期、振動数、速さについて説明できる。4
横波と縦波の違いについて説明できる。4
波の重ね合わせの原理について説明できる。4
波の独立性について説明できる。4
2つの波が干渉するとき、互いに強めあう条件と弱めあう条件について計算できる。4
定常波の特徴(節、腹の振動のようすなど)を説明できる。5
ホイヘンスの原理について説明できる。4
波の反射の法則、屈折の法則、および回折について説明できる。4
弦の長さと弦を伝わる波の速さから、弦の固有振動数を求めることができる。5
気柱の長さと音速から、開管、閉管の固有振動数を求めることができる(開口端補正は考えない)。4
共振、共鳴現象について具体例を挙げることができる。5
一直線上の運動において、ドップラー効果による音の振動数変化を求めることができる。4
自然光と偏光の違いについて説明できる。4
光の反射角、屈折角に関する計算ができる。4
波長の違いによる分散現象によってスペクトルが生じることを説明できる。4
電気導体と不導体の違いについて、自由電子と関連させて説明できる。4
クーロンの法則を説明し、点電荷の間にはたらく静電気力を求めることができる。4
オームの法則から、電圧、電流、抵抗に関する計算ができる。4
抵抗を直列接続、及び並列接続したときの合成抵抗の値を求めることができる。4
ジュール熱や電力を求めることができる。4

評価割合

試験発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合6001010020100
基礎的能力250550540
専門的能力3505501055
分野横断的能力0000055