構造有機化学

科目基礎情報

学校 鶴岡工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 構造有機化学
科目番号 0062 科目区分 専門 / 選択
授業形態 講義 単位の種別と単位数 学修単位: 2
開設学科 生産システム工学専攻 対象学年 専1
開設期 前期 週時間数 2
教科書/教材 有機合成科学 S.Warren 講談社サイエンティフィック
担当教員 瀨川 透,森永 隆志

到達目標

第一部では、主にπ-電子系の分子軌道と物性や反応の仕組みとの関係性を理解することを目標とする。(瀬川透 担当)
第二構造をよく観察し、その分子を何から、どのような経路を通って、どのような反応条件を使って組み立てていくかを考える。レトロ合成の手法を用いて、合成等価体を導き、的確な合成経路を構築できる能力を身に着ける。(森永 担当)

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1二原子団の切断を伴う有機化合物の合成経路を構築することが出来る。一原子団の切断を伴う有機化合物の合成経路を構築することが出来る。分子切断と合成等価体の概念は理解できるが、合成経路を構築することが出来ない。
評価項目2分子軌道と物性や反応の関係性を利用して、応用問題を解くことができる。分子軌道と物性や反応の関係性を説明することができる。分子軌道と物性や反応の関係性を説明することができない。
評価項目3

学科の到達目標項目との関係

③専門分野に加えて基礎工学をしっかり身につけた生産技術に関る幅広い対応力 説明 閉じる

教育方法等

概要:
多種多様な有機化学反応も、その基本原理はわずかしかない。有機分子の構造に着目しながら、数ある反応を分類・整理することによって、その基本原理を身につける。本講義は、二部構成で実施される。
第一部では、主にπ-電子系の関与する物性(紫外可視吸収や電荷移動)や立体選択的や立体特異的な反応を取上げ、分子の構造との関係性について考える。π-電子系の分子軌道が物性や反応にどのように関わっているのかを解説し、有機分子デザインの基本的な考え方を学ぶ。
第二部では、与えられた有機分子(ターゲット分子)の構造をよく観察し、その分子を何から、どのような経路を通って、どのような反応条件を使って組み立てていくかを考える。レトロ合成の手法を用いて、合成等価体を導き、的確な合成経路を構築できる能力を身に着ける。簡単な分子から、比較的複雑な分子の構造解析と合成経路構築に関する有機化学を学ぶ。
評価は、試験により行う。試験は、ノート、テキスト、プリントなどの持ち込みは一切認めない。期末試験(80%)、受講姿勢(20%)で評価し、60点以上を合格とする。
授業の進め方・方法:
第一部では、分子軌道の基礎的な考え方について学習し、化合物の吸収や発光の色、Cope転移、Diels-Alder反応、光付加環化反応、電荷移動錯体について、物性や反応の仕組みと分子軌道の関係性を理解することを目標とする。テキストは特に用いないが、参考図書については随時指示する。第二部では、有機分子の切断、シントン(切断によって生じるフラグメント)、官能基変換、合成等価体、合成経路について、簡単な分子からスタートして、比較的大きくやや複雑な分子の合成経路の構築までを目標とする。テキストはS.Warren 著の『プログラム学習 有機合成化学』(講談社サイエンティフィック)を使用する。事前にプリントを配布するので、入念に予習を行っておくこと。講義時間内には、分子切断や合成経路の考え方の説明、演習問題の解答などを学生に問う。
評価は、試験により行う。試験は、ノート、テキスト、プリントなどの持ち込みは一切認めない。期末試験(80%)、受講姿勢(20%)で評価し、60点以上を合格とする。
注意点:
第一部では積極的に質問し理解をすることを心がけること。
第二部は入念な予習をしておくこと。受講生に説明を求めます。

事前・事後学習、オフィスアワー

オフィスアワー:授業実施日の16:00~17:00(遠隔授業中においてはメールにて随時受付)

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業
選択必科

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 講義内容、進め方のガイダンス 講義の進め方を理解する。
2週 分子軌道について 分子軌道の概念について理解する。
3週 π-電子系と最高被占分子軌道(HOMO)・最低空分子軌道(LUMO)について π-電子系分子軌道を理解し、簡単な記述方法を身に付ける。
4週 化合物の色とπ-電子系の関係について 化合物の色とπ-電子軌道との関係を説明できる。
5週 Cope転移について Cope転移の仕組みを理解し、様々な類似の反応生成物を予想し、その構造を記述できる。
6週 Diels-Alder反応について Diels-Alder反応の仕組みを理解し、様々な類似の反応生成物を予想し、その構造を記述できる。
7週 光付加環化反応について 光付加環化反応の仕組みを理解し、様々な類似の反応生成物を予想し、その構造を記述できる。
8週 電荷移動錯体について 電子供与性や吸引性とπ-電子系分子軌道との関係を理解し、電荷移動の仕組みを説明できる。
2ndQ
9週 切断の基礎、アルコールの切断、アルコールから導かれる化合物 アルコール化合物の切断について説明でき、アルコール関連化合物の合成経路を構築できる。
10週 オレフィンの切断、アリールケトンの切断、ケトンの切断 関連化合物の切断について説明できる。また合成経路が構築できる。
11週 1,3-ジオキシ化骨格を有する化合物と練習問題 関連化合物の切断について説明できる。また合成経路が構築できる。
12週 1,2-ジオキシ化物の切断と合成 関連化合物の切断について説明できる。また合成経路が構築できる。
13週 1,4-ジオキシ化物の切断と合成 関連化合物の切断について説明できる。また合成経路が構築できる。
14週 まとめの練習問題 原子団の切断を伴う有機化合物の合成経路を構築することが出来る。
15週 期末試験
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。5
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。5
σ結合とπ結合について説明できる。5
混成軌道を用い物質の形を説明できる。5
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。5
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。5
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。5
共鳴構造について説明できる。5
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。5
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。5
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。5
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。5
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。5
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。5
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。5
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。5
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。5
反応機構に基づき、生成物が予測できる。5
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
水素結合について説明できる。4

評価割合

試験合計
総合評価割合100100
基礎的能力6060
専門的能力4040
分野横断的能力00