無機化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 福島工業高等専門学校 開講年度 2017
授業科目 無機化学Ⅰ
科目番号 0074 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義・演習 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科(R2年度開講分まで) 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 1)ステップアップ基礎化学、梶本興亜編、培風館 2)無機化学演習、合原、他、三共出版
担当教員 田中 利彦

到達目標

電子構造および化学的結合の基礎概念を元に多様な物質の基本的な性質や反応性の違いを周期律表に基づいて相対的に説明するための最小限の基盤となる知識を収得する。さらに本格的な化学熱力学の学習を円滑に成功させる為の基盤となる基礎概念を取得する。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1各授業項目の内容を理解し、応用できる。各授業項目の内容を理解している。各授業項目の内容を理解していない。
評価項目2
評価項目3

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 (B) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
多様の物質の構造と機能を理解するための基盤的概念、具体的には電子構造および化学的結合の基礎概念とその周期律表との相関,さらに化学熱力学の基礎について学ぶ。
授業の進め方・方法:
中間試験は授業時間中に50分間の試験を実施する。期末試験は50分間の試験を実施する。
定期試験 70%、課題等その他30%として総合的に評価し、60点以上を合格とする。
注意点:
専門科目の基盤をなす核心部分に相当する内容が中心となる。無闇な暗記でなく納得できるまで考えて理解すること。電子軌道は100%納得できなくてもその結論と周期律表との相関だけは身につけること。

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 序論 錬金術的化学と物理化学
2週 量子の世界(1) 光とドブロイ波
3週 量子の世界(2) 水素原子のスペクトルとボーアモデル
4週 量子の世界(3) 波動の表現と定在波
5週 量子の世界(4) 水素原子モデル
6週 量子の世界(5) 周期律表と水素原子モデル
7週 前期中間試験 授業時間中に50分で実施する。
8週 総合復習 中間試験の解説と復習
2ndQ
9週 化学結合(1) 共有結合とイオン結合
10週 化学結合(2) 混成軌道
11週 化学結合(3) 水と水素結合
12週 化学結合(4) 配位結合と錯体(1)
13週 化学結合(5) 配位結合と錯体(2)
14週 化学結合(6) 結晶と固体中の電子
15週 総合復習 期末試験の解説と復習
16週
後期
3rdQ
1週 熱力学の基礎(1) 熱力学とは何か?
2週 熱力学の基礎(2) エンタルピーとエントロピー
3週 熱力学の基礎(3) 自由エネルギー
4週 物質の変化(1) 相変化と自由エネルギー
5週 物質の変化(2) 相平衡と化学平衡(1)
6週 物質の変化(3) 相平衡と化学平衡(2)
7週 後期期中間試験 授業時間中に50分で実施する。
8週 溶液(1) 酸と塩基(1)
4thQ
9週 溶液(2) 酸と塩基(2)
10週 溶液(3) 電極反応(1)
11週 溶液(4) 電極反応(2)
12週 溶液(5) 溶解
13週 溶液(6) 電解質溶液の電気伝導(1)
14週 溶液(7) 電解質溶液の電気伝導(2)
15週 総合復習と総括 期末試験の解説と復習
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野有機化学有機物が炭素骨格を持つ化合物であることを説明できる。4
代表的な官能基を有する化合物を含み、IUPACの命名法に基づき、構造から名前、名前から構造の変換ができる。4
σ結合とπ結合について説明できる。4
混成軌道を用い物質の形を説明できる。4
誘起効果と共鳴効果を理解し、結合の分極を予測できる。4
σ結合とπ結合の違いを分子軌道を使い説明できる。4
ルイス構造を書くことができ、それを利用して反応に結びつけることができる。4
共鳴構造について説明できる。4
炭化水素の種類と、それらに関する性質および代表的な反応を説明できる。4
芳香族性についてヒュッケル則に基づき説明できる。4
分子の三次元的な構造がイメージでき、異性体について説明できる。4
構造異性体、シスートランス異性体、鏡像異性体などを説明できる。4
化合物の立体化学に関して、その表記法により正しく表示できる。4
代表的な官能基に関して、その構造および性質を説明できる。4
それらの官能基を含む化合物の合成法およびその反応を説明できる。4
代表的な反応に関して、その反応機構を説明できる。4
高分子化合物がどのようなものか説明できる。4
代表的な高分子化合物の種類と、その性質について説明できる。4
高分子の分子量、一次構造から高次構造、および構造から発現する性質を説明できる。4
高分子の熱的性質を説明できる。4
重合反応について説明できる。4
重縮合・付加重合・重付加・開環重合などの代表的な高分子合成反応を説明でき、どのような高分子がこの反応によりできているか区別できる。4
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の反応を説明できる。4
ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の特徴を説明できる。4
電子論に立脚し、構造と反応性の関係が予測できる。4
反応機構に基づき、生成物が予測できる。4
無機化学主量子数、方位量子数、磁気量子数について説明できる。4
電子殻、電子軌道、電子軌道の形を説明できる。4
パウリの排他原理、軌道のエネルギー準位、フントの規則から電子の配置を示すことができる。4
価電子について理解し、希ガス構造やイオンの生成について説明できる。4
元素の周期律を理解し、典型元素や遷移元素の一般的な性質を説明できる。4
イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度について説明できる。4
イオン結合と共有結合について説明できる。4
基本的な化学結合の表し方として、電子配置をルイス構造で示すことができる。4
金属結合の形成について理解できる。4
代表的な分子に関して、原子価結合法(VB法)や分子軌道法(MO法)から共有結合を説明できる。4
電子配置から混成軌道の形成について説明することができる。4
各種無機材料の機能発現や合成反応を結晶構造、化学結合、分子軌道等から説明できる。4
結晶の充填構造・充填率・イオン半径比など基本的な計算ができる。4
配位結合の形成について説明できる。4
水素結合について説明できる。4
錯体化学で使用される用語(中心原子、配位子、キレート、配位数など)を説明できる。4
錯体の命名法の基本を説明できる。4
配位数と構造について説明できる。4
代表的な錯体の性質(色、磁性等)を説明できる。4
代表的な元素の単体と化合物の性質を説明できる。4
セラミックス(ガラス、半導体等)、金属材料、炭素材料、半導体材料、複合材料等から、生活及び産業を支えるいくつかの重要な無機材料の用途・製法・構造等について理解している。4
現代を支える代表的な新素材を例に、その機能と合成方法、材料開発による環境や生命(医療)等、現代社会への波及効果について説明できる。4
単結晶化、焼結、薄膜化、微粒子化、多孔質化などのいくつかについて代表的な材料合成法を理解している。4
分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。4
電離平衡と活量について理解し、物質量に関する計算ができる。4
溶解度・溶解度積について理解し必要な計算ができる。4
沈殿による物質の分離方法について理解し、化学量論から沈殿量の計算ができる。4
強酸、強塩基および弱酸、弱塩基についての各種平衡について説明できる。4
強酸、強塩基、弱酸、弱塩基、弱酸の塩、弱塩基の塩のpHの計算ができる。4
緩衝溶液とpHの関係について説明できる。4
錯体の生成について説明できる。4
陽イオンや陰イオンの関係した化学反応について理解し、溶液中の物質の濃度計算(定量計算)ができる。4
中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。4
酸化還元滴定についての原理を理解し、酸化剤及び還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定についての原理を理解し、金属イオンの濃度計算ができる。4
光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。4
Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。4
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。4
溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。4
無機および有機物に関する代表的な構造分析、定性、定量分析法等を理解している。4
クロマトグラフィーの理論と代表的な分析方法を理解している。4
特定の分析装置を用いた気体、液体、固体の分析方法を理解し、測定例をもとにデータ解析することができる。4
物理化学放射線の種類と性質を説明できる。4
放射性元素の半減期と安定性を説明できる。4
年代測定の例として、C14による時代考証ができる。4
核分裂と核融合のエネルギー利用を説明できる。4
気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4
臨界現象と臨界点近傍の特徴を説明できる。4
混合気体の分圧の計算ができる。4
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4
束一的性質を説明できる。4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。4
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
化合物の標準生成エンタルピーを計算できる。4
エンタルピーの温度依存性を計算できる。4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4
熱力学の第二・第三法則の定義と適用方法を説明できる。4
純物質の絶対エントロピーを計算できる。4
化学反応でのエントロピー変化を計算できる。4
化合物の標準生成自由エネルギーを計算できる。4
反応における自由エネルギー変化より、平衡定数・組成を計算できる。4
平衡定数の温度依存性を計算できる。4
気体の等温、定圧、定容および断熱変化のdU、W、Qを計算できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
微分式と積分式が相互に変換できて半減期が求められる。4
コロイドと界面の定義・特徴を説明できる。4
表面張力の定義を理解して、測定法・計算法を説明できる。4
コロイドの分類を理解して、身近な実例を説明できる。4
コロイドの運動学的性質(ブラウン運動、沈降、粘度、拡散等)を説明できる。4
界面活性剤の種類と性質を説明できる。4
乳化とその実例を説明できる。4
ぬれの理論を定量的に説明できる。4
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4
衝突理論を理解して、アレニウスプロットを説明できる。4
活性錯合体理論を理解して、アイリングプロットを説明できる。4
活性状態のエンタルピー、エントロピー、自由エネルギーの関係を定量的に説明できる。4
触媒の性質・構造を理解して、活性化エネルギーとの関係を説明できる。4
表面の触媒活性を理解して、代表的な触媒反応を説明できる。4
ボーアの水素モデルを説明できる。4
1次元波動方程式を解くことができる。4
ネルンストの式を用いて、起電力、自由エネルギー、平衡定数の関係が説明できる。4
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。4
化学工学SI単位への単位換算ができる。4
物質の流れと物質収支についての計算ができる。4
化学反応を伴う場合と伴わない場合のプロセスの物質収支の計算ができる。4
管径と流速・流量・レイノルズ数の計算ができ、流れの状態(層流・乱流)の判断ができる。4
流れの物質収支の計算ができる。4
流れのエネルギー収支やエネルギー損失の計算ができる。4
流体輸送の動力の計算ができる。4
分級や粒径分布について理解している。4
粉体の固定層・流動層など流動性について理解している。4
粉砕、沈降、ろ過、集じん方法について理解し、必要な計算ができる。4
熱交換器の構造、熱収支について説明できる。4
熱伝導による熱流量について説明できる。4
熱交換器内の熱流量について説明できる。4
放射伝熱について説明できる。4
蒸発装置について説明できる。4
蒸発缶の物質収支と熱収支の計算ができる。4
蒸留の原理について理解できる。4
単蒸留、精留・蒸留装置について理解できる。4
蒸留についての計算ができる(ラウールの法則、マッケーブシール法等)。4
基本的な抽出の目的や方法を理解し、抽出率など関係する計算ができる。4
吸着や膜分離の原理・目的・方法を理解できる。4
バッチ式と連続式反応装置について特徴や用途を理解できる。4
温度、圧力、液位、流量の計測方法と代表的な測定機器(装置)について理解している。4
プロセス制御の方法と代表的なプロセス制御の例について理解している。4
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】有機化学実験加熱還流による反応ができる。4
蒸留による精製ができる。4
吸引ろ過ができる。4
再結晶による精製ができる。4
分液漏斗による抽出ができる。4
薄層クロマトグラフィによる反応の追跡ができる。4
融点または沸点から生成物の確認と純度の検討ができる。4
収率の計算ができる。4
沸点から生成物の確認と純度の検討ができる。4
分析化学実験中和滴定法を理解し、酸あるいは塩基の濃度計算ができる。4
酸化還元滴定法を理解し、酸化剤あるいは還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定を理解し、錯体の濃度の計算ができる。4
陽イオンおよび陰イオンのいずれかについて、分離のための定性分析ができる。4
代表的な定性・定量分析装置としてクロマト分析(特にガスクロ、液クロ)や、物質の構造決定を目的とした機器(吸光光度法、X線回折、NMR等)、形態観察装置としての電子顕微鏡の中の代表的ないずれかについて、その原理を理解し、測定からデータ解析までの基本的なプロセスを行うことができる。4
固体、液体、気体の定性・定量・構造解析・組成分析等に関して必要な特定の分析装置に関して測定条件を選定し、得られたデータから考察をすることができる。4
物理化学実験温度、圧力、容積、質量等を例にとり、測定誤差(個人差・器差)、実験精度、再現性、信頼性、有効数字の概念を説明できる。4
各種密度計(ゲールサック、オストワルド等)を用いて、液体および固体の正確な密度を測定し、測定原理を説明できる。4
粘度計を用いて、各種液体・溶液の粘度を測定し、濃度依存性を説明できる。4
熱に関する測定(溶解熱、燃焼熱等)をして、定量的に説明できる。4
分子量の測定(浸透圧、沸点上昇、凝固点降下、粘度測定法等)により、束一的性質から分子量を求めることができる。4
相平衡(液体の蒸気圧、固体の溶解度、液体の相互溶解度等)を理解して、平衡の概念を説明できる。4
基本的な金属単極電位(半電池)を組み合わせ、代表的なダニエル電池の起電力を測定できる。また、水の電気分解を測定し、理論分解電圧と水素・酸素過電圧についても説明できる。4
反応速度定数の温度依存性から活性化エネルギーを決定できる。4
生物工学実験光学顕微鏡を取り扱うことができ、生物試料を顕微鏡下で観察することができる。4
滅菌・無菌操作をして、微生物を培養することができる。4
適切な方法や溶媒を用いて、生物試料から目的の生体物質を抽出し、ろ過や遠心分離等の簡単な精製ができる。4
分光分析法を用いて、生体物質を定量することができる。4
クロマトグラフィー法または電気泳動法によって生体物質を分離することができる。4
酵素の活性を定量的または定性的に調べることができる。4

評価割合

試験課題相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合70300000100
基礎的能力70300000100
専門的能力0000000
分野横断的能力0000000