概要:
・根源的な欲求のひとつである〈食欲〉を視座として、近現代文学を読む。「食べたい」というのは独立した欲望ではなく、さまざまな社会規範のなかで複雑に変化したり、錯綜したりする。そのありさまを描いた近現代文学作品を読解・解釈することを通して、社会と個人の関係を欲望という側面から考えてみることを目指す。
・前半では食べることの意味が問われることの多い戦後文学を中心に、後半ではそれ以外の時代をふくめて時代横断的に読む。
授業の進め方・方法:
・授業は基本的に講義形式で行うが、各回にグループワークの時間を設けるため、受講者一人ひとりがテクストを読み、その解釈や考察を他の受講者と共有することが求められる。
・中間試験、期末試験ともに50分の試験を実施する。定期試験の成績を80%、課題等の提出率及びその内容を20%で評価し、60点以上を合格とする。
注意点:
受講者は予め議論の対象となるテクストを読んでから授業に望むこと。また、授業内の議論に積極的に参加すること。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
前期 |
1stQ |
1週 |
イントロダクション:文学を学ぶこと・欲望を考えること |
文学を学ぶ意義について考え、自分なりの意見を述べることができる。
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2週 |
梅崎春生「飢えの季節」 |
共通テストを題材として、文学と国語の違いについて考え、欲望に着目する意義を理解できる。
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3週 |
大岡昇平「食慾について」1 |
戦地における食事について学び、戦争と食欲の関係性を考えることができる。
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4週 |
大岡昇平「食慾について」2 |
「野火」と見比べながら「食慾について」を再読し、戦地の表象についての意見を述べることができる。
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5週 |
武田泰淳「もの食う女」1 |
食欲がほかの欲望と混淆するさまを読み取ることができる。
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6週 |
武田泰淳「もの食う女」2 |
戦後の都市空間と、食欲・性欲の相互関係について理解し、自分なりの読み方を提示することができる。
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7週 |
古川緑波「悲食記」 |
食事を日記に書き残すことの意味について考え、自分なりに説明することができる。
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8週 |
福田恆存「ニュー・ヨークの焼豆腐」 |
他文化からみた和食の性質について、自分なりに考えて説明することができる。
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2ndQ |
9週 |
小泉八雲「食人鬼」1 |
日本的なるものの特徴を読みとるとともに、昔語りの構造について理解できる。
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10週 |
小泉八雲「食人鬼」2 |
仏教的な倫理観・世界観をもとに、食と業の関係を把握し、自分なりのことばで説明することができる。
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11週 |
岡本かの子「家霊」1 |
芸術家の考え方を読みとり、芸と老いの関係について理解することができる。
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12週 |
岡本かの子「家霊」2 |
家という制度について認識し、それに対する自分の意見を述べることができる。
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13週 |
近藤紘一「夫婦そろって動物好き」 |
他国の文化や考え方を学び、自分の倫理観や生命観を相対化することができる。
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14週 |
赤瀬川源平「食い地獄」1 |
諷刺の構造を学び、食べることと〈善/悪〉について現在の価値観を相対化することができる。
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15週 |
赤瀬川源平「食い地獄」2 |
これまでの授業をふまえ、食べることについて自分なりの考え方を述べることができる。
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16週 |
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 人文・社会科学 | 国語 | 国語 | 論理的な文章(論説や評論)の構成や展開を的確にとらえ、要約できる。 | 3 | |
論理的な文章(論説や評論)に表された考えに対して、その論拠の妥当性の判断を踏まえて自分の意見を述べることができる。 | 3 | |
文学的な文章(小説や随筆)に描かれた人物やものの見方を表現に即して読み取り、自分の意見を述べることができる。 | 3 | |
常用漢字の音訓を正しく使える。主な常用漢字が書ける。 | 3 | |
類義語・対義語を思考や表現に活用できる。 | 3 | |
社会生活で使われている故事成語・慣用句の意味や内容を説明できる。 | 3 | |
専門の分野に関する用語を思考や表現に活用できる。 | 3 | |
実用的な文章(手紙・メール)を、相手や目的に応じた体裁や語句を用いて作成できる。 | 3 | |
報告・論文の目的に応じて、印刷物、インターネットから適切な情報を収集できる。 | 3 | |
収集した情報を分析し、目的に応じて整理できる。 | 3 | |
報告・論文を、整理した情報を基にして、主張が効果的に伝わるように論理の構成や展開を工夫し、作成することができる。 | 3 | |
作成した報告・論文の内容および自分の思いや考えを、的確に口頭発表することができる。 | 3 | |
課題に応じ、根拠に基づいて議論できる。 | 3 | |
相手の立場や考えを尊重しつつ、議論を通して集団としての思いや考えをまとめることができる。 | 3 | |
新たな発想や他者の視点の理解に努め、自分の思いや考えを整理するための手法を実践できる。 | 3 | |