分析化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 茨城工業高等専門学校 開講年度 令和04年度 (2022年度)
授業科目 分析化学Ⅰ
科目番号 0011 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 国際創造工学科 化学・生物・環境系 対象学年 2
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:加藤正直,塚原聡「基礎からわかる分析化学」(森北出版)
担当教員 澤井 光

到達目標

1.水溶液内における酸塩基反応,酸化還元反応,沈殿生成反応や錯体生成反応等の化学反応を理解し,化学反応式を正しく記述できる。
2.酸塩基滴定や酸化還元滴定,沈殿滴定,キレート滴定の各滴定分析において反応する物質の量的関係を正しく把握しつつ,基本的な計算力を応用してデータから対象となる物質の量を求めることができる。
3.溶液の濃度,電離,pH,化学平衡,酸化と還元,錯体,沈殿平衡などの分析化学に関わる基本的事項について理解することができる。
4.金属イオンの化学的性質を理解し,系統的な分離分析ができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
溶液の濃度と計算濃度表現の単位換算が正確にできる。物質量と液量から指定された単位濃度の計算かできる。物質量と溶液量から指定された単位濃度の計算が理解できない。
化学平衡複雑な化学反応式から平衡定数を計算できる。単純な化学反応式と平衡定数の関係が理解でき,平衡定数が求められる。化学反応式と平衡定数の関係が理解できず,計算ができない。
酸・塩基とpH,酸塩基の電離平衡,塩の加水分解濃度,電離度,平衡定数とpHの関係を理解し,それらを用いて、水溶液のpHを求められる。水素イオン濃度とpHの関係を理解し,濃度,電離度を用いて水溶液のpHを計算できる。水素イオン濃度とpHの関係を理解できず,濃度および電離度を用いて水溶液のpHを計算できない。
中和滴定中和滴定の実験方法を理解し,実験結果から正確に目的の物質量を求めることができる。中和滴定の原理を理解し,酸と塩基の量的関係の計算ができる。中和滴定の原理を理解し,酸と塩基の量的関係の正確な計算ができない。
酸化還元滴定酸化還元滴定の実験方法を理解し,実験結果から正確に目的の物質量を求めることができる。酸化還元滴定の原理を理解し,酸化剤と還元剤の量的関係の計算ができる。酸化還元滴定の原理が理解できず,酸化剤と還元剤の量的関係の計算ができない。
沈殿平衡難溶性塩の沈殿平衡を十分に理解し,溶解度積や共存イオン濃度に基づいて沈殿の溶解度を計算できる。難溶性塩の沈殿平衡を理解し,溶解度積に基づいて単純な沈殿の溶解度を計算できる。難溶性塩の沈殿平衡について理解不足で,溶解度積に基づいて沈殿の溶解度を計算できない。
金属イオンの系統的定性分析金属イオンの性質を十分に理解し,沈殿試薬との化学反応式が書け,複雑な混合イオン溶液においても系統的な分離法を示すことができる。金属イオンの性質を理解し,沈殿試薬との化学反応式が書け,単純な混合イオン溶液においても系統的な分離法を示すことができる。金属イオンの性質を理解不足で,沈殿試薬との化学反応式が書けず,単純な混合イオン溶液においても系統的な分離法を示すことができない
沈殿滴定沈殿滴定の原理を十分に理解し,実験結果から正確に目的成分量を求めることができる。沈殿滴定の原理を理解し,沈殿剤と目的成分の量的関係の計算ができる。沈殿滴定の原理が理解できず,沈殿剤と目的成分の量的関係の計算ができない。
重量分析重量分析の原理を十分に理解し,実験結果から正確に目的成分量を求めることができる。重量分析の原理を理解し,沈殿剤と目的成分の量的関係の計算ができる。重量分析の原理を理解し,沈殿剤と目的成分の量的関係の計算ができない。
錯生成平衡,キレート滴定錯生成平衡の概念を明瞭に説明でき,さらにキレート滴定の実験方法を理解し実験結果から正確に目的の物質量を求めることができる。錯生成平衡の概念を説明でき,またキレート滴定の原理を理解し,金属イオンとキレート試薬の量的関係の計算ができる。錯生成平衡の概念を説明できず,またキレート滴定の原理が理解できず,金属イオンとキレート試薬の量的関係の計算ができない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 (A) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
分析化学に関する基礎的な諸概念を習得し,その知識を使って行われる各種滴定法の原理を理解したうえで実際に行われる分析法を学ぶ。さらに測定実験から得られるデータに基づき,目的成分を定量するための計算方法を理解する。
また金属イオンの化学的性質や特定の試薬との反応性を学び,その知識を用いて金属陽イオンを系統的に相互分離する方法について学ぶ。併せて,分離操作における金属イオンと試薬の化学反応式を作成できるようにする。
授業の進め方・方法:
講義は教科書を用いて行い,進度に合わせて演習問題を解きながら進める。
注意点:
「化学」「化学ゼミナール」の内容を十分に復習しておくこと。演習問題では関数電卓を用いるので,講義の際は必ず準備すること。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 溶液の濃度と計算 水溶液中の物質における容量モル濃度,パーセント濃度,百万分率濃度などの計算方法を理解する。
2週 化学平衡
化学平衡,ルシャトリエの原理について理解する。
3週 化学平衡定数 化学平衡(質量作用)の法則と平衡定数の計算方法について理解する。
4週 酸・塩基とpH 酸・塩基の定義と水の自己解離,pHについて理解する。
5週 酸・塩基の電離平衡(1)
強酸・強塩基の電離平衡とそれらの水溶液のpHの計算について理解する。
6週 酸・塩基の電離平衡(2) 弱酸・弱塩基の電離平衡とそれらの水溶液のpHの計算について理解する。
7週 (中間試験)
8週 塩の加水分解 塩の加水分解とそれによって決まる水溶液の液性,および緩衝溶液について理解する。
2ndQ
9週 中和滴定(1) 中和反応を利用した定量分析法(中和滴定法)の概要,中和滴定曲線と酸塩基指示薬の働きを理解する。
10週 中和滴定(2)
中和滴定の実際の方法として標準物質や標定の概念を理解する。
11週 中和滴定(3)
中和滴定の実用例について理論や計算方法を理解する。
12週 酸化還元滴定(1) イオン化傾向,酸化還元反応と電子の授受,酸化数について理解する。
13週 酸化還元滴定(2)
酸化還元反応を利用した定量分析法(酸化還元滴定)の概要,酸化還元滴定曲線と酸化還元指示薬の働きを理解する。
14週 酸化還元滴定(3)
酸化還元滴定の実用例について理論や計算方法を理解する。
15週 (期末試験)
16週 総復習,課題の解説 前期に学んだ水溶液内の化学反応と平衡の概念を復習し,それらを利用した定量分析の手法について確認する。また前期に行った課題,演習について解法を確認する。
後期
3rdQ
1週 錯生成平衡(1) 金属イオンと配位子による錯生成反応について学び,錯体の概念を理解する。
2週 錯生成平衡(2) 錯生成反応における逐次生成定数と全生成定数を理解する。またキレート試薬と金属イオンの錯生成反応について学ぶ。
3週 キレート滴定(1)
錯生成反応を利用した定量分析法(キレート滴定法)の概要,キレート滴定曲線と金属指示薬の働きを理解する。
4週 キレート滴定(2) キレート滴定の実用例について理論や計算方法を理解する。
5週 金属陽イオンの系統的定性分析(1) 金属陽イオンを系統別に分離し,同定する手法についてその概念を理解する。
6週 金属陽イオンの系統的定性分析(2) 金属陽イオンを系統別に分離し,同定する手法についてその具体例を個別に理解する。
7週 (中間試験)
8週 沈殿平衡(1) 難溶性塩の沈殿生成と溶解に関する化学平衡について理解する。
4thQ
9週 沈殿平衡(2) 難溶性塩の溶解度積と溶解度の関係を理解する。
10週 沈殿平衡(3) 難溶性塩の溶解度に及ぼす共通イオン効果を理解し,金属イオンの分別沈殿の方法を学ぶ。
11週 沈殿滴定 難溶性塩の生成を利用した定量分析法(沈殿滴定)の概要,沈殿滴定における指示薬の働きを理解するとともに,沈殿滴定を用いた物質の定量ができるようになる。
12週 重量分析法(1) 減量法と沈殿法からなる重量分析法の概念を理解する。
13週 重量分析法(2) 沈殿重量分析法の操作(沈殿剤,ろ過,洗浄,乾燥,灰化)について理解する。
14週 重量分析法(3) 沈殿重量分析法について,その具体例の理論や計算方法を理解する。
15週 (期末試験)
16週 総復習,課題の解説 後期に学んだ水溶液内の化学反応と平衡の概念を復習し,それらを利用した定性と定量分析の手法について確認する。また後期に行った課題,演習について解法を確認する。

評価割合

試験発表相互評価態度課題その他合計
総合評価割合10000000100
基礎的能力400000040
専門的能力600000060
分野横断的能力0000000