物理化学Ⅰ

科目基礎情報

学校 茨城工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物理化学Ⅰ
科目番号 0033 科目区分 専門 / 必修
授業形態 講義 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 国際創造工学科 化学・生物・環境系 対象学年 3
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:秋貞英雄,井上亨,杉原剛介「化学熱力学中心の基礎物理化学」(学術図書出版社)  教科書:セミナー化学基礎+化学(第一学習社)
担当教員 依田 英介

到達目標

1.理想気体や実在気体の状態方程式を用いて正しく計算ができる。
2.束一的性質を説明でき、蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧より、溶質の分子量を正しく計算できる。
3.化学平衡について理解し、気体反応についても平衡計算ができるようにする。
4.反応速度が温度や濃度によりどのような影響を受けるかを理解し、簡単な反応について解析ができるようにする。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
1.理想気体や実在気体の状態方程式を用いて正しく計算ができる。理想気体の方程式において、圧力、体積の単位を気体定数にあわせて正しく計算できる。理想気体の方程式において、圧力、体積の単位を気体定数にあわせなければならないことを理解している。理想気体の方程式において、圧力、体積の単位を気体定数にあわせなければならないことを理解していない。
1.理想気体や実在気体の状態方程式を用いて正しく計算ができる。実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。実在気体の特徴と状態方程式を理解している。実在気体の特徴と状態方程式を理解していない。
2.束一的性質を説明でき、蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧より、溶質の分子量を正しく計算できる。Raoultの法則を理解し、蒸気圧降下より、溶質のモル質量等を計算できる。蒸気圧降下より、溶質のモル質量等を計算できることを理解している。蒸気圧降下より、溶質のモル質量等を計算できることを理解していない。
2.束一的性質を説明でき、蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧より、溶質の分子量を正しく計算できる。沸点上昇、凝固点降下と浸透圧より、溶質のモル質量等を計算できる。沸点上昇、凝固点降下と浸透圧より、溶質のモル質量等を計算できることを理解している。沸点上昇、凝固点降下と浸透圧より、溶質のモル質量等を計算できることを理解していない。
3.化学平衡について理解し、気体反応についても平衡計算ができるようにする。平衡定数を濃度や圧力で表すことができ、ルシャトリエの法則を説明できる。平衡定数を濃度や圧力で表すことができ、ルシャトリエの法則を理解している。平衡定数を濃度や圧力で表すことができず、ルシャトリエの法則を理解していない。
3.化学平衡について理解し、気体反応についても平衡計算ができるようにする。平衡移動の量的関係を理解し、平衡移動における濃度等の変化を計算できる。平衡移動の量的関係や、平衡移動における濃度等の変化を計算できることを理解している。平衡移動の量的関係を理解しておらず、平衡移動における濃度等の変化を計算できない。
4.反応速度が温度や濃度によりどのような影響を受けるかを理解し、簡単な反応について解析ができるようにする。反応速度定数、反応次数の概念を理解して、微分形速度式を立てることができる。反応速度定数、反応次数の概念をや、微分形速度式を理解している。反応速度定数、反応次数の概念を理解しておらず、微分形速度式を立てることができない。
4.反応速度が温度や濃度によりどのような影響を受けるかを理解し、簡単な反応について解析ができるようにする。可逆反応、逐次反応、定常状態近似等を説明できる。可逆反応、逐次反応、定常状態近似等を理解している。可逆反応、逐次反応、定常状態近似等を理解していない。

学科の到達目標項目との関係

学習・教育到達度目標 (A) 説明 閉じる

教育方法等

概要:
理想気体の状態方程式は、体積、圧力、温度という測定しやすい物理量から、これらのうちの未知の物理量を知ることができるため、様々な場面で応用できる基本的な知識である。この授業では、理想気体の状態方程式を理解し、定量的に扱えるようにする。また、化学反応を考える上では、最終的にどのような状態(各物質の濃度)になっているかを知ることは有用である。その最終的な状態を平衡状態といい、温度、圧力や、反応に関与する物質の濃度や圧力を変えると、平衡状態が変化する。この授業では、平衡を理解し、定量的に扱えるようにする。一方、いくら平衡状態で目的物が多く得られていようと、平衡状態に達するまでに年単位の時間がかかるようでは、実用できない。したがって、目的の反応が進行するのにどれくらい時間がかかるかということも、重要な情報である。この授業では、素反応の反応速度の表し方を学んだあとに、素反応が組み合わされて起こる一連の反応の速度について学ぶ。反応速度を理解することは、化学反応がどのような経路で起きているかという反応機構を考えることにつながる。
授業の進め方・方法:
板書、スライドによる講義形式を中心に授業を進めていく。教科書(セミナー化学を含む)の演習問題を解くことがあるので、教科書や電卓は必ず授業開始前に用意しておくこと。タブレット(スマートフォン)やノートパソコンを使用することがあるので、使えるように準備しておくこと。
【評価について】
毎週、webで解答する宿題を出します。宿題には基本的な問題を出題します。ノートや教科書を見ながら解くことができるので、授業の内容を復習しながら解いてください。宿題の問題が理解できないと、そのあとの授業についてくるのが難しくなります。宿題には期限があるので、期限内に提出し、返却された際には間違えた問題を復習してください。小テストにも基本的な問題が出題されます。一方、定期試験には応用的な問題を多く出題します。好成績を目指したい人は、セミナー化学や教科書の応用的な問題を解けるようにしましょう。応用問題に自信がない人は、宿題や小テストなどの日々の勉強に力を入れ、基本的なところはできるようになりましょう。
注意点:
法則や式自体は簡単なものが多いが、それらを使いこなせなければ意味がない。式や法則がどのように導かれたのかを理解した上で、正しく使える(計算できる)ようにして欲しい。
講義ノートの内容を見直し、講義に関係する例題・演習問題を解いておくこと。
化学反応速度では、簡単な微分・積分を使うので、復習しておくこと。
電卓の使用可。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 イントロダクション、単位 前期の授業の流れを理解する。SI基本単位、SI誘導単位を理解する。
2週 単位の換算と有効数字 常用単位とSI単位間の換算をできるようにする。有効数字を理解する。
3週 ボイルの法則、シャルルの法則、理想気体の状態方程式(1) ボイルの法則、シャルルの法則を理解する。ボイル-シャルルの法則から理想気体の状態方程式を導く。
4週 理想気体の状態方程式(2)、理想混合気体
理想気体の方程式において、圧力、体積の単位を気体定数にあわせて正しく計算できるようにする。Daltonの分圧の法則、モル分率を理解し、混合気体の分圧の計算ができるようにるする。
5週 実在気体の状態方程式
分子間引力、排除体積を理解し、van der Waalsの状態方程式を理解する。圧縮因子を理解する。
6週 臨界現象と臨界点近傍の特徴 臨界現象と臨界点近傍の特徴を理解する。相応状態を理解する。
7週 (中間試験)
8週 気体分子運動論 気体分子の運動モデルから圧力を定義して、理想気体の方程式を説明できる。
2ndQ
9週 分子の速度とGrahamの法則、純物質の物理的性質(1) 根平均2乗速度とGrahamの法則を理解し、計算できる。純物質の状態図と蒸気圧曲線を理解する。相律の定義を理解して、自由度を計算できる。
10週 純物質の物理的性質(2)、混合物の物理的性質 沸騰と蒸発を理解する。Raoultの法則を理解し、混合溶液の液体-気体組成を算出できる。2成分の状態図と、気液平衡を理解する。
11週 蒸気圧降下、水蒸気蒸留 蒸気圧降下から、溶質のモル質量を計算できる。水蒸気蒸留の原理と利点を理解する。
12週 沸点上昇 沸点上昇から、溶質のモル質量等を計算できる。
13週 凝固点降下、浸透圧 冷却曲線、凝固点降下から、溶質のモル質量等を計算できる。浸透圧を理解し、溶質のモル質量等を計算できる。溶液の束一的性質を理解する。
14週 前期の内容の復習および演習 前期の内容を理解し、演習問題が解ける。
15週 (期末試験)
16週 総復習 前期の重要ポイントを理解する。
後期
3rdQ
1週 可逆反応と化学平衡、平衡定数の表し方 可逆反応と化学平衡の概念を理解する。平衡定数を濃度や圧力で表すことができる。
2週 濃度平衡定数と圧平衡定数の関係 濃度平衡定数と圧平衡定数の関係を理解する。
3週 ルシャトリエの原理 濃度や圧力、温度変化による平衡の移動を説明できる。
4週 平衡の量的関係 反応開始時と平衡時の濃度から平衡定数を計算できる。解離度を理解し、平衡定数等を計算できる。
5週 酸の解離による平衡 酸解離定数を理解し、濃度やpHの計算ができる。
6週 塩基の解離による平衡、溶解度積 塩基解離定数を理解し、濃度やpHの計算ができる。溶解度積を理解し、難溶性塩の飽和溶液濃度の計算ができる。共通イオン効果を理解し、共通イオンを添加した際の飽和溶液の濃度を計算できる。
7週 (中間試験)
8週 化学反応速度の表し方と実験的決定法 反応速度の定義、反応速度に影響する因子を理解する。反応速度の実験的決定法を理解する。総括反応と素反応の違いを理解する。
4thQ
9週 速度式と反応次数 反応速度の濃度依存性を理解する。素反応の微分形速度式を立てることができる。反応次数を求めることができる。
10週 速度式の立て方、1次反応 複合反応において、ある物質に対して反応全体の微分形速度式を立てることができる。1次反応の微分形速度式から、積分形速度式を導出できる。
11週 2次反応 1種類の分子による2次反応の微分形速度式から、積分形速度式を導出できる。2種類の分子による2次反応の微分形速度式から、積分形速度式を導出できる。
12週 擬1次反応、半減期、反応速度の温度依存性 擬1次反応を理解する。1次反応と2次反応の半減期を求めることができる。アレニウスの式、活性化エネルギー、頻度因子を理解する。
13週 可逆反応の反応速度 可逆反応の各素反応の速度式を立てることができる。可逆反応の積分形速度式の求め方を理解する。
14週 逐次反応の反応速度 逐次反応の各素反応の速度式を立てることができる。逐次反応の積分形速度式の求め方を理解する。律速段階を理解し、定常状態近似を理解する。
15週 (期末試験)
16週 総復習、Excelによる反応速度の解析 後期の重要ポイントを理解する。Excelなどの表計算ソフトを用いて反応速度の解析ができる。

評価割合

試験小テスト宿題合計
総合評価割合602020100
基礎的能力0000
専門的能力602020100
分野横断的能力0000