電子物性工学

科目基礎情報

学校 群馬工業高等専門学校 開講年度 令和03年度 (2021年度)
授業科目 電子物性工学
科目番号 4E018 科目区分 専門 / 必修
授業形態 授業 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 電子メディア工学科 対象学年 4
開設期 通年 週時間数 2
教科書/教材 教科書:「理系のための基礎化学(増田芳男、澤田清)化学同人」、参考書:「半導体デバイス―基礎理論とプロセス技術(南日康夫 ほか訳)産業図書」
担当教員 平井 里香,佐藤 真一郎

到達目標

□ 半導体とは何かをエネルギーバンドの観点から説明できる。
□ キャリアの輸送現象やpn接合を定性的に説明できる。
□ バイポーラトランジスタの仕組みと動作について、半導体物性工学の観点から説明できる。
□ MOSFET の仕組みと動作について、半導体物性工学の観点から説明できる。
□ 原子の成り立ちを電子の軌道の観点から説明できる。
□ 物質・分子の形成にかかわる結合力の種類と起源を説明できる。
□ 化学反応速度を分子の衝突の観点から説明できる。
□ 反応速度論の立場から化学反応の平衡状態を説明できる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1エネルギーバンド描像にもとづき、金属・半導体・絶縁体の違いを詳しく説明できる。エネルギーバンド描像にもとづき、金属・半導体・絶縁体の違いを説明できる。エネルギーバンド描像にもとづき、金属・半導体・絶縁体の違いを説明できない。
評価項目2キャリアの輸送現象およびpn接合とは何かを定性的に詳しく説明できる。 キャリアの輸送現象およびpn接合とは何かを定性的に説明できる。 キャリアの輸送現象およびpn接合とは何かを定性的に説明できない。
評価項目3バイポーラトランジスタおよび MOSFET の仕組みと動作について、半導体物性工学の観点から詳しく説明できる。バイポーラトランジスタおよび MOSFET の仕組みと動作について、半導体物性工学の観点から説明できる。バイポーラトランジスタおよび MOSFET の仕組みと動作について、半導体物性工学の観点から説明できない。
評価項目4原子の成り立ちを電子軌道の観点から説明でき、物質・分子の形成にかかわる結合力の種類と起源を詳しく説明できる。原子の成り立ちを電子軌道の観点から説明でき、物質・分子の形成にかかわる結合力の種類と起源を説明できる。原子の成り立ちを電子軌道の観点から説明でき、物質・分子の形成にかかわる結合力の種類と起源を説明できない。
評価項目5化学反応速度を分子の衝突の観点から説明でき、その理解に基づいて化学反応の平衡状態を詳しく説明できる。化学反応速度を分子の衝突の観点から説明でき、その理解に基づいて化学反応の平衡状態を説明できる。化学反応速度を分子の衝突の観点から説明でき、その理解に基づいて化学反応の平衡状態を説明できない。

学科の到達目標項目との関係

教育方法等

概要:
 半導体デバイスは世の中で様々な用途に使用されており、私たちの生活に不可欠な存在となっています。しかし、半導体デバイスが半導体という物質材料から構成され、その半導体がどの様な物性を有するかは人々にあまり知られていません。半導体デバイスをブラックボックスでなく理解して使えるようになってもらうため、半導体の物性や、それに立脚した半導体デバイスの動作原理解説をできればと考えます。
 半導体デバイスについてブラックボックスでない理解を目指す立場から考えれば、原子や分子の成り立ちを把握することも不可欠です。その観点から、本科目ではひととおり半導体デバイスを学んだあとに化学を学びます。化学を学ぶ意義は、単に半導体デバイスの動作を知るためだけにとどまりません。電子デバイスは、様々な手法の測定原理の発見や計測機器に活用されており、化学探求の現場でも積極的に生かされているからです。その進歩は、簡単には知り得ない、いろいろな物質の構造や性質を明らかとし、化学の分野はもちろん、社会全体の発展に寄与してきました。基礎分野と応用分野は、相互に密接に関連しながら進歩しています。量子論に基礎をおいた原子や分子の構造の理解や、原子の組換えがどのように起こりどの程度まで進むかの基礎的な考え方は、電子メディア工学ともさまざまな面で密接な関連をもつものとして捉えてください。
 基礎分野、応用分野、どちらも同じように勉強しましょう。
授業の進め方・方法:
○電子メディア工学の立場に立ち、半導体物性工学と化学を学ぶ。
○電子デバイスを総合的に理解するには、仮想物でない具体的物質の性質を意識する必要がある。その観点より、
 物質科学としての化学も学習する。
○前期は、半導体物性工学を学ぶ。まず、物質がどのような条件を満たしたとき半導体と呼ばれることになるかを
 整理し、絶縁体および金属との関係を把握する。次に、半導体デバイス動作に際した根幹現象であるキャリア
 輸送について学び、pn接合の働きをエネルギーバンドの観点から理解する。中間試験後は、それまでに得た
 半導体の動作への理解を元にして、バイポーラトランジスタおよびMOSFETの仕組みと動作を学ぶ。
○後期は、化学の基礎を学ぶ。1年次の化学の復習から始め、量子論に基礎をおいた電子の分布から原子の構造を
 理解する。次に、電子の軌道と分子の構造との関係について学習する。金属原子の場合に期待される結合様式も
 意識する。中間試験後は、微視的な観点から反応速度を学び、速度論の考察が反応のしくみに深く関わることを
 理解する。その後、速度論に基づく反応の平衡状態をもとに、化学平衡の具体的事例を学ぶ。また、熱力学的に
 化学平衡が説明されることに触れる。
注意点:
 電子物性工学は仮想物でない具体的物質についての性質を意識して初めて理解できる。工学における素養を涵養す
るためにも、4年前期に共通科目として開設される化学Ⅲを聴講しておくべきである。また、それに引き続いて後期
に開設される物質科学総論についても聴講をすべきである。本授業の理解度を上げるには、それらの科目群に対する
高度な自覚が求められる。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 半導体とは(1) 半導体材料の例
結晶構造
2週 半導体とは(2) エネルギーバンド
状態密度
3週 半導体とは(3) 真性半導体
真性キャリア濃度
4週 半導体とは(4) 外因性半導体
ドナーとアクセプタ
レポート
5週 キャリアの輸送(1) キャリアドリフト
キャリア拡散
比抵抗
6週 キャリアの輸送(2) キャリア濃度
キャリア生成・再結合
レポート
7週 キャリアの輸送(3) 連続の式
熱電子放出
8週 中間試験 「半導体」および「キャリアの輸送」に関する試験
2ndQ
9週 pn 接合(1) 熱平衡状態
空乏領域
10週 pn 接合(2) 電流―電圧特性
11週 バイポーラトランジスタ(1) トランジスタ作用
電流利得
12週 バイポーラトランジスタ(2) 理想トランジスタ電流の静特性
動作モード
13週 MOSFET(1) MOS とは
FET とは
MOS キャパシタ
14週 MOSFET(2) オーミック接触
15週 期末試験 「pn 接合」および「バイポーラトランジスタ」および「MOSFET」に関する試験
16週 答案返却
MOSFET(3)
期末試験問題の解説
MOSFET の基本特性
後期
3rdQ
1週 原子の構造(1) 原子の構造
2週 原子の構造(2) 軌道と電子配置
周期表と元素の分類
3週 原子の構造(3) イオン化エネルギーと電子親和力
4週 分子の形成(1) 共有結合
分子の形と軌道の混成
5週 分子の形成(2) 電子対反発則
電気陰性度と結合のイオン結合性
6週 分子間相互作用(1) 配位結合
7週 分子間相互作用(2) 金属結合
イオン結合
8週 中間試験 「原子の構造」および「分子の形成」および「化学結合」に関する試験
4thQ
9週 反応速度(1) 化学反応の分類と積分法
10週 反応速度(2) 反応が起こるメカニズム
11週 反応速度(3) アレニウスの式
12週 反応速度(4) 触媒反応
13週 化学平衡(1) 化学平衡の法則
14週 化学平衡(2) 水の解離平衡
酸塩基平衡
15週 期末試験 「反応速度」および「化学平衡」に関する試験
16週 答案返却
化学平衡(3)
期末試験問題の解説
溶解度積

評価割合

中間試験期末試験レポート合計
総合評価割合404020100
前期20201050
後期20201050