物質工学実験Ⅳ

科目基礎情報

学校 群馬工業高等専門学校 開講年度 令和05年度 (2023年度)
授業科目 物質工学実験Ⅳ
科目番号 4K016 科目区分 専門 / 必修
授業形態 実験・実習 単位の種別と単位数 履修単位: 2
開設学科 物質工学科 対象学年 4
開設期 前期 週時間数 4
教科書/教材 教科書 物質工学実験Ⅳ 自作テキスト、アトキンス物理化学要論(千原ら訳)東京化学同人、化学工学実験(東畑ら著)産業図書
担当教員 齋藤 雅和,ルカノフ アレクサンダー,和田 善成

到達目標

物理化学、高分子化学、および化学工学で学習した内容を自ら実験する。
各実験テーマについて:
(1) 実験を計画し、遂行できる。
(2) パソコン等を使用して実験データを整理できる。
(3) 実験結果を理論に基づいて考察し、レポートにまとめることができる。

ルーブリック

理想的な到達レベルの目安標準的な到達レベルの目安未到達レベルの目安
評価項目1実験を計画し、精度よく遂行できる。実験を計画し、遂行できる。実験を遂行できない。
評価項目2パソコン等を使用して実験データを正確に整理できる。パソコン等を使用して実験データを整理できる。実験データを整理できない。
評価項目3実験結果を理論に基づいて深く考察し、レポートにわかりやすくまとめることができる。実験結果を理論に基づいて考察し、レポートにまとめることができる。実験結果をレポートにまとめることができない。

学科の到達目標項目との関係

準学士課程 D-3 説明 閉じる

教育方法等

概要:
「物理化学」、「高分子化学」、「化学工学」の基礎となる基本的事項について実験を行う。特に「化学工学」については、物質変換の素となる化学反応物の性質、反応理論、反応方法、生成物の生成速度、物性、および分離等に関連するテーマについて実験するとともに種々の測定装置の取り扱い方について学習する。レポート作成においては、パソコン等を使用した実験データの処理、表やグラフの正しい描き方等を学習する。
授業の進め方・方法:
以下の【化学工学実験】および【物理化学実験】の各実験テーマの中からそれぞれ3テーマについて、原則2名1組で1テーマあたり2週に渡って実験を行い、レポートを提出する。「反応速度」については最重要テーマと位置付け、必ず全員が実験を行う。

【化学工学実験】
○反応速度
擬1次反応の実験を行い、生成物量の時間変化から反応速度定数を求める。これを数種類の反応温度で行い、アレニウスの式より活性化エネルギーと頻度因子を求める。
到達目標:擬1次反応の反応速度定数、活性化エネルギー、頻度因子を求めることができる。

○晶析操作と画像解析
非溶媒添加晶析により有機結晶粒子群を創製する。画像解析により創製した粒子群の品質(粒径、形態)を評価する。
多成分相図を用いて過飽和度を計算し、結晶化現象ならびに粒子群品質との関係を整理する。
到達目標:多成分相図から、実験条件ごとに過飽和度を計算し、結晶粒子群の品質との関係を整理できる。

○屈折率  
ローレンツ-ローレンツの式を理解し、種々の液状化合物の屈折率を測定して分子屈折を求め、その値から分子の分極率を求める。また、原子屈折から計算される分子屈折の近似値と比較、考察する。
到達目標:ローレンツ-ローレンツの式を理解し、分子の分極率を計算できる。

○二重管式熱交換器
熱交換器の総括伝熱係数を測定し、文献値および推算値と比較するとともに、設計方法を学ぶ。
到達目標:熱交換器の総括伝熱係数を測定し、文献値および推算値と比較するとともに、設計方法を説明できる。

○流動/管内の圧力損失
化学プロセスでは、物質を流体の状態で移動・輸送する場合が多い。流体は管路(パイプライン)により輸送されることが多いが、管路での流体の輸送は、管内をどのように流体が流れるか(流量、圧力、レイノルズ数で整理されている流動状態など)、管内の圧力損失などを考慮しなければならない。 
到達目標:流量、差圧を測定して、流速、レイノルズ数、圧力損失を計算できる。

○単蒸留
合成反応などにおいて反応物の純度を上げることは重要であり、蒸留操作が一般的に用いられている。本テーマでは2成分系を試料として単蒸留を行い、理論値と比較する。また物質収支、図積分について学び、蒸留の原理を修得する。
到達目標:物質収支計算、図積分を行ない、蒸留を説明できる。

○蒸気圧の測定
種々の液体の蒸気圧を測定し、文献値と比較するとともに、Clapeyron-Clausius の式を理解する。
到達目標:Clapeyron-Clausius の式を説明できる。

〇CSTR 完全混合モデルの検証
連続式攪拌槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor; CSTR)は、代表的な反応装置の一種である。この装置内での物質の濃度は完全混合モデルに基づく物質収支で操作設計が行われる。本実験では、溶質が反応を伴わずに希釈される水溶液系を対象として、簡易型CSTRでの完全混合モデルの検証を行なう。
到達目標:完全混合に基づく装置内物質収支を計算できる。

〇回分式攪拌槽内の流体の自然冷却と伝熱
回分式攪拌槽での流体の自然冷却の温度プロファイルから、熱収支と伝熱現象を解析する。熱伝導度の異なる攪拌槽を用いて、それぞれ種々の攪拌速度で槽内の高温流体を自然冷却し、その温度変化を測定する。総括伝熱係数を算出し、条件ごとの違いを考察して熱伝導度について理解する。
到達目標:測定したデータを整理して総括伝熱係数を算出できる。熱伝導度の総括伝熱係数ならびに冷却速度への効果を理解する。

○通気攪拌槽の物質移動容量係数(KLa)の測定
バイオリアクターの代表である通気攪拌式反応器を用いて、好気性微生物培養槽を想定した酸素移動容量係数を測定する。隔膜型電極、DO測定法、およびガス
吸収理論について学ぶ。
到達目標:好気性微生物培養槽を想定した酸素移動容量係数を測定する。隔膜型電極、DO測定法、およびガス吸収理論について説明できる。

○流動層型バイオリアクターの流動特性
酵素の固定化は有効な方法であり、球状粒子に固定化する場合も多用されている。バイオリアクターの基本形式である粒子が動かない充填層、粒子が浮遊している流動層について、圧損、空隙率変化、最小流動化速度を測定し、理論と比較する。
到達目標:流動層について、圧損、空隙率変化、最小流動化速度を計算し、理論と比較できる。



【物理化学実験】
○反応速度
擬1次反応の実験を行い、生成物量の時間変化から反応速度定数を求める。これを数種類の反応温度で行い、アレニウスの式より活性化エネルギーと頻度因子を求める。
到達目標:擬1次反応の反応速度定数、活性化エネルギー、頻度因子を求めることができる。

○ラジカル重合と吸収・蛍光スペクトル
ビニルカルバゾールのラジカル重合によりポリビニルカルバゾールを合成し、NMRにより同定するとともに、その溶液の吸収・
蛍光スペクトルを測定する。
到達目標:ラジカル重合機構を説明でき、吸収・蛍光スペクトルについて説明できる。

○起電力と伝導率の測定
種々の電解質溶液濃度でダニエル電池の起電力を測定する。
酢酸、塩酸、塩化カリウム水溶液の伝導率を測定する。
到達目標1:起電力から標準ギブス自由エネルギーを求めることができる。
到達目標2:伝導度について、弱電解質と強電解質の違いを説明できる。

○粘度測定
エタノール水溶液について種々の混合比で粘度を求め、さらに、ポリビニルアルコール水溶液の粘度測定から分子量を求める。
到達目標:粘性が溶液組成や溶質の分子量に依存することを説明できる。

○色素吸着
濃度が異なる色素溶液にナイロンを浸漬し、ナイロンに対する色素の吸着等温線をフロイントリッヒの式およびラングミュアの式にもとづいて作成する。
到達目標:フロイントリッヒの式およびラングミュアの式にもとづいてナイロンに対する色素の吸着等温線を作成し、吸着状態について考察できる。
注意点:
実験ノート、実験着(白衣等)、保護メガネ、実験用靴、関数機能付き電卓を各自準備する。

授業の属性・履修上の区分

アクティブラーニング
ICT 利用
遠隔授業対応
実務経験のある教員による授業

授業計画

授業内容 週ごとの到達目標
前期
1stQ
1週 ガイダンスと各実験のテーマ説明:
「物質工学実験の意義」、「安全上の注意」、「報告書の書き方」、「各実験テーマの内容」について説明。
実験の意義と安全、および各実験テーマの概要について説明できる。
2週 1つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
3週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
4週 2つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
5週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
6週 3つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
7週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
8週 復習(中間試験期間)
2ndQ
9週 4つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
10週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
11週 5つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
12週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
13週 6つ目のテーマを実施 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
14週 同上 「授業の進め方と内容・方法」欄参照
15週 まとめ
16週

モデルコアカリキュラムの学習内容と到達目標

分類分野学習内容学習内容の到達目標到達レベル授業週
基礎的能力工学基礎工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法)物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。3
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。3
実験データの分析、誤差解析、有効桁数の評価、整理の仕方、考察の論理性に配慮して実践できる。3
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。3
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。3
実験データを適切なグラフや図、表など用いて表現できる。3
実験の考察などに必要な文献、参考資料などを収集できる。3
実験・実習を安全性や禁止事項など配慮して実践できる。3
個人・複数名での実験・実習であっても役割を意識して主体的に取り組むことができる。3
共同実験における基本的ルールを把握し、実践できる。3
レポートを期限内に提出できるように計画を立て、それを実践できる。3
専門的能力分野別の専門工学化学・生物系分野分析化学いくつかの代表的な陽イオンや陰イオンの定性分析のための化学反応について理解できる。4
溶解度・溶解度積について理解し必要な計算ができる。4
沈殿による物質の分離方法について理解し、化学量論から沈殿量の計算ができる。4
中和滴定についての原理を理解し、酸及び塩基濃度の計算ができる。4
光吸収について理解し、代表的な分析方法について説明できる。4
Lambert-Beerの法則に基づく計算をすることができる。4
イオン交換による分離方法についての概略を説明できる。4
溶媒抽出を利用した分析法について説明できる。4
無機および有機物に関する代表的な構造分析、定性、定量分析法等を理解している。4
クロマトグラフィーの理論と代表的な分析方法を理解している。4
特定の分析装置を用いた気体、液体、固体の分析方法を理解し、測定例をもとにデータ解析することができる。4
物理化学気体の法則を理解して、理想気体の方程式を説明できる。4
気体の分子速度論から、圧力を定義して、理想気体の方程式を証明できる。4
実在気体の特徴と状態方程式を説明できる。4
純物質の状態図(P-V、P-T)を理解して、蒸気圧曲線を説明できる。4
2成分の状態図(P-x、y、T-x、y)を理解して、気液平衡を説明できる。4
束一的性質を説明できる。4
蒸気圧降下、沸点上昇より、溶質の分子量を計算できる。4
凝固点降下と浸透圧より、溶質の分子量を計算できる。4
相律の定義を理解して、純物質、混合物の自由度(温度、圧力、組成)を計算し、平衡状態を説明できる。3
熱力学の第一法則の定義と適用方法を説明できる。4
エンタルピーの定義と適用方法を説明できる。4
内部エネルギー、熱容量の定義と適用方法を説明できる。4
平衡の記述(質量作用の法則)を説明できる。4
諸条件の影響(ルシャトリエの法則)を説明できる。4
均一および不均一反応の平衡を説明できる。4
反応速度の定義を理解して、実験的決定方法を説明できる。4
反応速度定数、反応次数の概念を理解して、計算により求めることができる。4
連続反応、可逆反応、併発反応等を理解している。4
律速段階近似、定常状態近似等を理解し、応用できる。4
電池反応と電気分解を理解し、実用例を説明できる。4
化学工学SI単位への単位換算ができる。4
物質の流れと物質収支についての計算ができる。4
化学反応を伴う場合と伴わない場合のプロセスの物質収支の計算ができる。4
管径と流速・流量・レイノルズ数の計算ができ、流れの状態(層流・乱流)の判断ができる。4
流れの物質収支の計算ができる。4
流れのエネルギー収支やエネルギー損失の計算ができる。4
流体輸送の動力の計算ができる。3
蒸留の原理について理解できる。4
単蒸留、精留・蒸留装置について理解できる。4
蒸留についての計算ができる(ラウールの法則、マッケーブシール法等)。4
基本的な抽出の目的や方法を理解し、抽出率など関係する計算ができる。4
吸着や膜分離の原理・目的・方法を理解できる。4
バッチ式と連続式反応装置について特徴や用途を理解できる。4
分野別の工学実験・実習能力化学・生物系分野【実験・実習能力】分析化学実験中和滴定法を理解し、酸あるいは塩基の濃度計算ができる。4
酸化還元滴定法を理解し、酸化剤あるいは還元剤の濃度計算ができる。4
キレート滴定を理解し、錯体の濃度の計算ができる。4
陽イオンおよび陰イオンのいずれかについて、分離のための定性分析ができる。4
代表的な定性・定量分析装置としてクロマト分析(特にガスクロ、液クロ)や、物質の構造決定を目的とした機器(吸光光度法、X線回折、NMR等)、形態観察装置としての電子顕微鏡の中の代表的ないずれかについて、その原理を理解し、測定からデータ解析までの基本的なプロセスを行うことができる。4
固体、液体、気体の定性・定量・構造解析・組成分析等に関して必要な特定の分析装置に関して測定条件を選定し、得られたデータから考察をすることができる。4
物理化学実験温度、圧力、容積、質量等を例にとり、測定誤差(個人差・器差)、実験精度、再現性、信頼性、有効数字の概念を説明できる。4前2
各種密度計(ゲールサック、オストワルド等)を用いて、液体および固体の正確な密度を測定し、測定原理を説明できる。4前11
粘度計を用いて、各種液体・溶液の粘度を測定し、濃度依存性を説明できる。4前13
熱に関する測定(溶解熱、燃焼熱等)をして、定量的に説明できる。4前13
分子量の測定(浸透圧、沸点上昇、凝固点降下、粘度測定法等)により、束一的性質から分子量を求めることができる。4前13
相平衡(液体の蒸気圧、固体の溶解度、液体の相互溶解度等)を理解して、平衡の概念を説明できる。4前12
基本的な金属単極電位(半電池)を組み合わせ、代表的なダニエル電池の起電力を測定できる。また、水の電気分解を測定し、理論分解電圧と水素・酸素過電圧についても説明できる。4前5
反応速度定数の温度依存性から活性化エネルギーを決定できる。4前3
化学工学実験流量・流速の計測、温度測定など化学プラント等で計測される諸物性の測定方法を説明できる。4前7
液体に関する単位操作として、特に蒸留操作の原理を理解しデータ解析の計算ができる。4前11
流体の関わる現象に関する実験を通して、気体あるいは液体の物質移動に関する原理・法則を理解し、物質収支やエネルギー収支の計算をすることができる。4前9

評価割合

レポート発表相互評価態度ポートフォリオその他合計
総合評価割合600030010100
基礎的能力0000000
専門的能力600030010100
分野横断的能力0000000