【目的】 原子・原子核のミクロな世界を扱う本講義では、電子の発見と原子・原子核の構造が大きなテーマである。前半は、CBT試験対策も兼ねて、力学を中心とした物理の総復習:力学、波動のまとめ授業を行っていく。(ただし、波動については音波分野の補足を行う)。前期中間後にCBT試験を行う。力学は特に。力のつり合い、運動方程式、等速円運動、エネルギー保存則が重要である。電磁気学については、授業を進めながら準備項目として一部復習を行う。具体的には電場から荷電粒子が受ける力、電場からされる仕事、クーロン力による位置エネルギー、一様電場中における位置エネルギー、電位と位置エネルギーや電場と電位の関係、ローレンツ力)が、ミクロな粒子の測定や本講義の内容理解に不可欠である。原子・原子核物理の基礎実験を行い放射線の取り扱いを学ぶとともに、放射線特有の現象を学ぶ。電子や原子などのミクロな世界の物理量の測定方法と得られた結果の物理的解釈ができる。
※物理の実験レポートは、主語と述語を必ず対応させて表現できるようになることを目標とする。(伝わらないレポートは減点。不備レポートは0点または大幅減点。)
※ノート課題では、範囲表の裏面全面糊付けして貼り付けることは必須とする。(満たしていない場合は大幅減点。)
※定期試験のテスト直しでは、問題を貼り付けることは必須である。正答した問題も含めて大問3題以上すべてやり直すこと。(条件を満たしていない場合は大幅減点。)
概要:
学生は、演示実験や実験を行いながら、ミクロな世界の物理現象を想像力を持って頭に少しづつ描いていくことが求められる。目に見えないほど小さな粒子を扱うので、実験からわかることを積み上げていく思考方法に慣れなければならない。そのための道具が、力学と電磁気学である。講義は対話的に進め、復習もなるべく多く取り入れるが、個々に復習を進めていってほしい。また、前を向いて授業中に考える癖をつけてほしい。質問をすることで、分からないことが整理されることもあるので、授業を止めて質問することに挑戦してほしい。
授業の進め方・方法:
授業は大きく分けて、電子・原子・原子核・放射線の基礎を扱う部と、力学・波動の総復習を行いつつ、原子物理の段階的導入を行う。原子物理は、電磁気学を必要に応じて導入・復習しつつ、復習済みの力学分野を参照しながら、原子の物理の理解につなげていく。実験は、放射線測定を中心としたものを用意してある。
注意点:
授業の欠課数が1/3以上でD評価となる。提出物は締め切りまでに必ず出すこと。
授業の予習・復習及び演習については自学自習で取り組むこと。中間試験の半分程度は,1-3年の復習の応用問題で、広大な範囲が試験範囲となります。
つらいかもしれないが、3年間の総復習的意味合いで、課題は大量に出すので、できるものから順にやって、少しでも物理の理解を前へ進めること。例えば、プロセス、例題、問題、発展例題・・・の順にやると、抵抗が少なく徐々に難しくなっていくのでよいであろう。
後期期末は原子物理が主なテーマとなる。
定期テストは、中間試験・期末試験がある。CBT試験は授業時間外の実施という体制になっている。現在、クラスごとにHR等の放課後時間帯に担任の先生に監督していただいて一斉実施できないか相談中である。一斉実施が決まった場合、BYOD(Bring Your Own Device)を前提として演習室で行うことになるためCBT当日には自分のノートPCを持ってきてログインして受験すること。***@tokyo.kosen-ac.jpへのログインはCBT試験前日にログインのチェックを済ませておくこと。また、CBT試験の試験の正答率は成績に入れ「ない」が、CBT試験を受験の有無の情報は、後期末の「提出物点」に含めて評価する。再テストは、必ずしも行うとは限らないが、再テストを行う場合の合格基準は、再テストのみで60点以上が合格条件である。再テストが不合格になった場合の追加課題等の補填は、いかなる理由であっても行わない。再テストをやる場合は、1回のみであり、それ以外の再評価は行わない。初見の問題にも対応できるよう、普段から授業をよく聞き、暗記型学習から脱却することがとても大事なる。4年生の応用物理への基礎力を備えることも念頭におく。
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週 |
授業内容 |
週ごとの到達目標 |
後期 |
3rdQ |
1週 |
ガイダンス、放射線の実験1 |
放射線の実験は、β線の吸収実験、比電荷の測定、身近な放射線、の3テーマのうちから2つを実験的に説明できる。
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2週 |
放射線の実験2 |
同上
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3週 |
ホイヘンスの原理、反射の法則、屈折の法則の導出、絶対屈折率と光学距離、全反射 |
ホイヘンスの原理に基づいて、屈折の法則が説明できる。全反射の生じる条件も説明できる。光学距離が 真空中の波長を基準にした距離であることが説明できる
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4週 |
波動:音波・うなり・開管・閉管・補足:光の自由端反射・固定端反射、ドップラー効果 |
音波・うなり・閉管と開管、ドップラー効果・補足
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5週 |
ドップラー効果、電子の電荷と質量(真空放電・陰極線)、時間が余れば電場とは何か?など第7週の先取り。 |
ドップラー効果を学び、原子分野の始まりとなった放電現象についてみていく。
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6週 |
力学のまとめ(基礎概念の再構築:力の単位・意味、運動方程式・力のつり合い、重力と質量、力積・仕事、「大きさか実数かの変数」、運動方程式と円運動)、力学の復習:位置エネルギー、仕事と運動エネルギー変化(スカラー量としての取り扱い)、エネルギー保存則 |
力学の基礎概念からの総ざらいをすることによって、物理を使いこなすための共通理解をそろえていく。位置エネルギーや運動エネルギー変化を仕事との関係から導く。クーロン力などの電磁気学へ力学を適用できる。
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7週 |
電場とは何か?コンデンサー内の電場、仕事の観点を中心にし、電場による電子の加速、電子ボルト、時間が余れば、比電荷の測定(トムソンの実験) |
特に、原子分野の装置理解に重要となるコンデンサー内の一様電場、電場による電子の加速を説明できる。
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8週 |
後期中間試験 |
中間試験の半分くらいは,1-3年の復習(力学・電磁気・波動(音波中心)の応用問題、原子分野から出題予定。
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4thQ |
9週 |
後期中間試験返却、実験レポートの直し、時間が余れば陰極線を用いた比電荷の測定 |
1-3年の物理の全分野を見渡し自分の弱点を補強できる。
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10週 |
陰極線を用いた比電荷の測定(トムソンの実験)、時間が余ればミリカンの実験 |
実験系に対して電子の運動方程式をたてることができる。観測可能量のみを用いて比電荷を導ける。
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11週 |
電子の電荷と質量(ミリカンの実験)、時間が余れば水素原子のスペクトル(または水素原子のボーアモデル) |
素電荷の測定実験に対して、力のつり合い、運動方程式が立てられる。素電荷を求める方法を説明できる。
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12週 |
原子核(ラザフォードの実験)・時間が余れば水素原子のスペクトル(または水素原子のボーアモデル) |
散乱実験からどのように原子核の構造が決まったか説明できる。
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13週 |
放射線・半減期 |
同位体、放射性同位体、原子核の崩壊が起こる背景と、崩壊と放射線の関係、半減期が説明できる。
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14週 |
結合エネルギーと、質量欠損、原子核反応と核エネルギー(遅れている場合は、前回の続き) |
核エネルギーの特徴を説明できる。質量欠損・結合エネルギーの関係を説明できる。
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15週 |
後期期末試験
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14週までの到達度を確認する。
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16週 |
補足 |
原子分野での基礎事項の補足
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分類 | 分野 | 学習内容 | 学習内容の到達目標 | 到達レベル | 授業週 |
基礎的能力 | 自然科学 | 物理 | 力学 | 速度と加速度の概念を説明できる。 | 3 | 後3,後4 |
直線および平面運動において、2物体の相対速度、合成速度を求めることができる。 | 3 | 後4 |
等加速度直線運動の公式を用いて、物体の座標、時間、速度に関する計算ができる。 | 3 | 後3,後4 |
自由落下、及び鉛直投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。 | 3 | 後4,後5 |
水平投射、及び斜方投射した物体の座標、速度、時間に関する計算ができる。 | 3 | 後4 |
物体に作用する力を図示することができる。 | 3 | 後3,後4 |
力の合成と分解をすることができる。 | 3 | 後4 |
運動方程式を用いた計算ができる。 | 3 | 後3,後4,後5 |
仕事と仕事率に関する計算ができる。 | 3 | 後3,後4,後5,後6 |
物体の運動エネルギーに関する計算ができる。 | 3 | 後3,後4,後5,後6 |
力学的エネルギー保存則を様々な物理量の計算に利用できる。 | 3 | 後3,後4,後5,後6 |
等速円運動をする物体の速度、角速度、加速度、向心力に関する計算ができる。 | 3 | 後4,後5,後7,後11 |
物理実験 | 物理実験 | 電子・原子に関する分野に関する実験に基づき、代表的な物理現象を説明できる。 | 3 | 後1,後2,後6,後7,後10,後11,後12,後13,後14 |
工学基礎 | 工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法) | 工学実験技術(各種測定方法、データ処理、考察方法) | 物理、化学、情報、工学における基礎的な原理や現象を明らかにするための実験手法、実験手順について説明できる。 | 3 | 後1,後2,後9 |
実験装置や測定器の操作、及び実験器具・試薬・材料の正しい取扱を身に付け、安全に実験できる。 | 3 | 後1,後2,後9 |
実験テーマの目的に沿って実験・測定結果の妥当性など実験データについて論理的な考察ができる。 | 3 | 後1,後2,後9 |
実験ノートや実験レポートの記載方法に沿ってレポート作成を実践できる。 | 3 | 後1,後2,後9 |